特発性間質性肺炎の父が、風邪をきっかけに急性増悪を起こし、余命1ヵ月との宣言を受けました。最後は病院ではなく、自宅で看取りたいと思っています。
間質性肺炎の終末期の症状とはどのようなものなのでしょうか。また、間質性肺炎の看取りとはどのようなものなのでしょうか。心構えのためにも教えてください。
間質性肺炎の自宅での看取りについての質問ですね。特発性間質性肺炎は、原因が明らかではない間質性肺炎のことです。難病として国から指定されています。一般的には緩やかに進行しますが、急激に病状が悪化する急性増悪の場合は死につながる危険性もあるため注意が必要です。
お父様が急性増悪により余命1ヶ月となり、自宅で看取るとのこと。自宅での看取りの流れについては、「自宅での看取り介護【準備~終わりまで】」をご参考ください。
この記事では、間質性肺炎の基礎知識と日常生活の注意点、そして看取りについてまとめています。間質性肺炎の看取り時の症状は人によって様々ですので、安心介護会員の経験談を中心にまとめました。参考にしていただけるとうれしいです。
間質性肺炎について知ろう
まずは、間質性肺炎についての基礎知識をみていきましょう。
間質性肺炎とは
肺には、空気の通り道である気道と、酸素を血液に取り込んで二酸化炭素を排出する肺胞があります。間質とは、肺胞の壁の部分のこと。間質性肺炎とは、この壁の部分に炎症が起こって肺が厚くなり、進行するにつれて線維化して固く縮んでいく病気です。固く縮んだ部分が膨らみにくくなるので、肺の機能が落ちて息苦しさなどの症状が出ます。
肺炎という名前がついていますが、細菌などにより実質と呼ばれる肺胞の内側が侵される肺炎とは全く異なる病気です。
間質性肺炎の種類
間質性肺炎は多くの場合、原因が特定できません。原因が特定できないものを、「特発性間質性肺炎」と呼びます。間質性肺炎のうち、関節リウマチなど膠原病に合併したものやカビなどのアレルギー性のもの、アスベスト(石綿)など、原因が特定できるものは少数です。
特発性間質性肺炎は、主要な6つの病型とまれな2つの病型、そして分類不能型に分類されます。80~90%が特発性肺線維症で、次いで特発性非特異性間質性肺炎が5~10%、特発性器質化肺炎が1~2%です。
特発性間質性肺炎で最も治療が難しいものが、特発性肺線維症です。50歳以上の男性に多く、ほとんどが喫煙者なため、喫煙は特発性肺線維症の危険因子であると考えられています。
間質性肺炎の症状と進行
間質性肺炎の初期には、肺に変化が起こっていても症状が出ないことが多いです。活動時の息苦しさ(労作性呼吸困難)や痰を伴わない空咳が続くといった症状が起こりますが、年のせいだと思って受診が遅くなることがあります。進行すると、日常生活でも酸素投与が必要になることがあるので、体調の異変に気づいたら、早めに受診するようにしましょう。
間質性肺炎は人によって経過が異なります。一般的には数か月から数年単位でゆっくり進行していきます。安定していても、急性増悪に気を付けましょう。数日で急激に病気が進み、突然の激しい息切れや発熱が出る急性増悪は、特発性肺線維症で亡くなる方の40%程度を占めています。
日常生活上の注意
間質性肺炎の方が日常生活で気を付けたいことは、主に3つあります。医師の指導に従うことはもちろんですが、次のような点にも気を付けましょう。
身体に負担がかからない生活を
過労や睡眠不足などを避け、栄養バランスの取れた食事をとりましょう。体重が増加すると呼吸困難が強くなる可能性があるので、過食や体重増加を避けて適正体重を保つことも大切です。咳が続くことで体力や筋肉が減少して痩せてしまうことがあります。しっかりとカロリーや栄養をとり、医師の指導に従った生活を送りましょう。
感染症を予防しましょう
急性増悪を起こさないためにも、風邪やインフルエンザなどの身近な感染症を予防することが大切です。マスクの着用や手洗い・うがいなどの基本的な感染予防を欠かさないこと、栄養や睡眠をしっかりとって体力をつけておくこと、インフルエンザなどの予防接種や肺炎のワクチン接種をすることなどを心がけましょう。もし、風邪などの感染症にかかってしまったら、早めに病院を受診してください。
定期的に検査を受けましょう
特に喫煙歴のある間質性肺炎の方は、肺がんができやすいことが知られています。症状が安定していても、定期的に検査を受けることが大切です。
間質性肺炎の看取りについて
続いて、間質性肺炎の看取りについて触れていきます。間質性肺炎では、看取り時の症状は人によって様々ですので、ここではサイトに投稿されている安心介護会員の経験よりご紹介します。
終末期の症状について
間質性肺炎の看取りを経験された安心介護会員から、次のような症状が投稿されています(文脈によるニュアンスの違いが生まれないように、文章をそのまま貼り付けました)。
ケース1)
父も間質性肺炎2型だったと思います(というのも医師から説明は無く、私自身がネットで調べたまでですが)
去年の1月、年に1度の動脈血酸素濃度の検査をし、看護士資格を持つケアマネに結果を見せたところ、いつ呼吸が止まるかもだから覚悟しておくように言われました。当時はピンと来ませんでしたが今思えば血中二酸化炭素が高く、在宅酸素をしていたのでCO2ナルコーシスの事です。当時の父の様子は、
新しい事を記憶する事が難しくなった
痛がりの父が採血等々痛みを感じなくなった
呼吸苦を感じにくくなった1月に覚悟するように言われたながらも、上記の変化はあるものの2月も在宅でトイレまで歩き、少食ながらも食卓で食事し、大好きな日本酒も飲んでいました。
2週間おきに往診に来て頂だいていた主治医から3月15日の往診で、衰弱が進んでいるので覚悟してください。と言われました。上記のケアマネからの話しと同様の話があり、その時の連絡方法など話し合いました。
当時の父の様子は
1月の様子に加え薬の飲み忘れ(長年1度もありませんでした)
眠気が強かった(朝食を食べたか忘れるほどに眠ってる時間が長かった)3月18日 同居してくれてた伯母から「お父さんの元気が無い」と連絡が入る。緊急で訪問看護士に駆けつけて貰ったが、褥瘡の処置中も眠ってしまって喘ぐような呼吸をしていた。
当時の私は在宅で看取る覚悟(というか実感?)が無く、看護士の勧めもあり、救急車でかかりつけ医へ搬送。目が覚めている時の父は今日が何日かもわかるし、車椅子へも歩いて自分で乗りました。救急の医師からは「元気そう」なんて言われましたよ。動脈血採取の結果入院。
主治医、ケアマネ、私との話し合いで、在宅での看取りは難しいのでこのまま病院で。と、なり
2週間目に誤飲性肺炎で発熱し、2日後にCO2ナルコーシスで急変後5分でした。調べたり、ケアマネからの話では、二酸化炭素が吐き出せず体内に溜まると、麻酔にかかったようになるそうです。なので、痛み、苦しみを感じなくなります。父も最期は痛み苦しみから解放され、穏やかな最期でした。
ケース2)
うちの場合は、麻薬等(モルヒネ塩酸塩やアンペック)は使いませんでした。
肺がんの疑いもあったのですが、精査できませんでしたので・・・
また、主症状は酸素を十分に取り込むことができない呼吸苦とパニックでしたのでHOTと精神安定剤や眠剤で対応しておりました。
父は入退院を繰り返し、最後は在宅で3日過ごしました。訪問診療と訪問看護に入ってもらっていました。
合併症として糖尿病もありインスリン注射もしていましたが、最後はやはり即時記憶低下が強く出現していました。
ケース3)
間質性肺炎の終末期の症状ですが・・
・早くて浅い呼吸
・呼吸苦によるパニック
・臥床時間が多くなるので腰痛や強い胸痛等があります。
あとは、下顎呼吸になれば人工呼吸器への切り替えとなります。
上記症状・経過により実父を看取りましたが、個人差もあると思います。
上記は全て、介護のQ&A「石綿肺 間質性肺炎の終末期の症状を教えて下さい」から引用しました。石綿肺に限定せず、広く間質性肺炎について、回答が寄せられています。
在宅で看取った方の経験談
続いて、在宅で看取った方の対応を含めた経験談を紹介します。
10年以上前で正確には覚えてないかもしれませんがその点をご了承下さい。
父の場合は急性憎悪を2~3回くり返していたように思います。
確か2回くらい救急車で運ばれました。
最後の憎悪の前にはお医者さんから「絶対に風邪をひかないように」と言われておりました。
自宅では酸素ボンベを使って管で鼻から酸素を供給していました。よく酸素をショッピングキャリーに入れて歩いている人が居ますがああいう状態でした。その状態で週3日ほど店番として働いていました(働くのが好きでした)。父の場合は片肺が全部駄目で、もう片方もずいぶん硬くなっていたとの事です。前々から肺が悪く「煙草のせいかな」なんて言っておりました。間質性肺炎と気付かなかっただけで、それなりに長く患っていたのではないかと思います。
モルヒネですが、本人が苦しさを感じなくなるくらい投与すると、意識も無くなります。でも耳だけは最後まで聞こえるらしいです。なので家族でたくさん話しかけました。結局はお医者さんや看護師さんが一番たくさん同じ病気の人を見ていると思うので、納得がいくまで話をよく聞いてみると良いと思います。「先生から話を聞きたい」と看護師さんに言えば、時間を作ってくれるはずです。私たちが経験した時よりさらに治療法・緩和法が発達しているかもしれません。参考になりましたら幸いです。 2014年12月17日 18:18
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ふと思いついたので追記です。
お医者さんの中には無駄な時間を使いたくない人が少なくないように思います。患者さんのために時間を割く事はもちろん積極的にしたいが、何が聞きたいのか良く分からないとか、愚痴を聞かされただけとかだとお医者さんにとっても困ると思います。なので、気になる点(お義母さん、家族の意向)・質問したい事等を箇条書きにして、先に医療スタッフにに渡して「この件について医者側から話を聞きたい」と伝えておくと良いと思います。
(引用元:介護のQ&A「間質性肺炎急性増悪~在宅介護とモルヒネについて教えてください~」)
また、介護のQ&A「間質性肺炎~在宅介護とモルヒネ その後」という記事では、看取りをされた経験談をとても臨場感のある文章で、詳細にわたり書いてくれています。読む人によっては辛いことを思い出してしまうかと思い、記事を基にこれから間質性肺炎での看取りを経験される方があらかじめ知っておいた方が良いと感じたことを、以下にまとめさせていただきます。
これから在宅介護でモルヒネを使う方は、しっかり家族で話し合っておく
「キーパーソンの決断が遅ければ遅いほど病気の本人は苦しみます」と指摘されています。 モルヒネについては、未だに誤解が多く、末期がんの人が使う、余命が縮まる、意識が低下するといった誤解から、モルヒネの使用を躊躇してしまう方が多いようです。
モルヒネはがん末期患者の呼吸困難だけでなく、間質性肺炎終末期の呼吸困難の苦痛も緩和することができます。また、呼吸困難が重度になってからモルヒネを使用開始するより、移動時に呼吸苦を感じるようになった時期くらいから開始することが、本人や家族の生活の質(QOL)を維持するのに有用です。 適切なモルヒネの使用は、余命を縮めることはありませんし、意識を過剰に下げることもありません。 本人と家族でしっかり話し合っておき、適切なタイミングでモルヒネを使用できるようにしておくとよいでしょう。
看取りを前提という希望をきちんと伝える
希望をきちんと伝えることで、看取りに理解のある訪問看護ステーションと、訪問診療の医師に出会えたと振り返っています。
まとめ
ここまで、間質性肺炎について、基礎知識や日常生活で気を付けたいこと、そして看取りについてまとめました。間質性肺炎の看取りについてはあまり情報がないため、安心介護内でもいくつか質問が投稿されています。その中から、安心介護会員の経験談をいくつか紹介させていただきました。
※この記事は2022年1月の情報を元に作成しています。

医師:谷山 由華(たにやま ゆか)
【経歴】
・防衛医科大学校医学部医学科卒業
・2000年から2017年まで航空自衛隊医官として勤務
・2017年から2019年まで内科クリニック勤務
・2019年から内科クリニックに非常勤として勤務、AGA専門クリニック常勤
内科クリニックでは訪問診療を担当。内科全般、老年医療、在宅医療に携わっている