どんな時に遺産相続を破棄するべきか?

相続放棄のイメージ

マイナスの財産(借金等)がある場合

 遺産相続で相続を放棄した方が良いときとは、どんな状況の時が多いでしょうか。相続放棄をおこなうおもな理由としては、被相続人の残した遺産がマイナスである場合が最も多いです。遺産が借金などで債務超過しており、プラスの財産を見込めないときは相続放棄をおこなうことによって相続人にマイナスの財産を引き継がなくてすむようになります。相続をすると、相続人は、「無限に被相続人の権利義務を承継する」ことになりますので(民法920条)、プラスの財産が見込めない場合には、相続放棄をする必要があります。

 相続放棄がおこなえる期間はほかの相続手続きに比べて時間がかなり短いです。ですので、被相続人の遺産が完全にマイナスであることが明らかなときには早めに相続放棄の手続きをおこなうことをおすすめします。

相続放棄のメリットとデメリット

 先ほどはマイナスの財産がある場合、相続放棄をおこなった方がよいとお伝えしました。次は具体的な相続放棄のメリットとデメリットについておはなししましょう。まず、メリットについてはどんなものがあるでしょうか。

 相続放棄のメリットの理由としてはおもにふたつ挙げられます。ひとつめは、先ほどもおはなしした通り被相続人の借金を引き継がなくてすむというこです。ふたつめは、相続に絡むもめ事や争いに関わりたくない場合、そのようなもめ事や争いに巻き込まれることを回避するというメリットもあります。例えば疎遠である親戚の遺産の相続人になったとき、相続放棄をおこなうことによって無駄な争いを回避することができます。

 以上の2点が相続放をすることよっての利点といえるでしょう。では反対にデメリットとはどんなものがあるのでしょうか。

 相続放棄のデメリットは4つあり、以下のようになります。

  1. 被相続人が残した財産の一切を引き継げなくなる。
  2. いったん相続放棄をおこなうと撤回できない。
  3. 相続放棄前に遺産に属する財産を処分していると相続放棄が出来なくなる。
  4. 自身が相続放棄することによって、他の相続人の順位が変わり、争いに発展する可能性がある。

 以上、4点が相続放棄のデメリットと言えます。相続放棄をお考えの方は、被相続人の遺産が本当にマイナスになるかをしっかり確認してから手続きをおこなった方が、後々のトラブルを防ぐことができます。プラスかマイナスかわからない場合、後述するように、相続放棄をするか否かを考える期間を伸長してもらうこと(のばしてもらうこと)も可能です。

相続放棄手続きをすることが可能な期間

 今まで相続放棄のメリット、デメリットについておはなしをさせて頂きました。そこから、遺産を引き継ぎたくないという方にとって、相続放棄がどれだけ大切な手続きかが理解できたかと思います。では実際に相続放棄が可能な期間はどれくらいになるのでしょうか。

 相続放棄の手続きは原則として、相続開始(被相続人が死亡した日、もしくは死亡したと知った日)から3か月以内になります。ただし、実務上、被相続人に負債(借金など)があることが分かったときを「相続の開始を知った日」として相続放棄の申述(相続放棄の申し立て)をすると、家庭裁判所は、相続放棄の申述(申し立て)を受理してくれるそうです。相続放棄の申述を家庭裁判所におこなう際、事情説明書という書類を提出することになります。事情説明書に相続放棄ができなくなる事情が書かれていると、家庭裁判所において相続放棄の申述(申し立て)は受け付けられませんので、注意が必要です。特別な事情があったときには、必ず書類に不備がないようにしましょう。

 また、相続放棄ができる期間は、相続開始から3か月以内ですが、この期間を延ばすことも出来ます。これを期間の伸長といいます。期間伸長の理由は、3か月以内に相続財産の内容が把握できない場合です。その場合は、伸長を申し立てる人が(利害関係人といい、相続人や検察官が申し立てを行います)家庭裁判所にいくつかの書類を提出することで受理されます。なお、期間の伸長を申し立てる事ができるのも、相続開始から3か月以内ですので、注意が必要です。

遺産相続放棄手続きの流れ

 ここまで相続放棄の期間や、相続放棄のメリット・デメリットについて紹介をしてきました。次におはなしするのは、遺産の相続放棄の基本的な流れになります。上記で説明している通り、相続放棄は基本的に3か月以内に家庭裁判所へ申し立てを行わなければなりません。では、実際どのような申し立てをおこなえばいいのか考えていきましょう。

 まず相続放棄の手続きは被相続人が最後に住んでいた場所を管轄する家庭裁判所になります。また、相続放棄をおこなうための費用は、800円の収入印紙+郵便の切手代です。なお、郵便切手の金額は申し立てをする裁判所によって異なりますので、事前に確認をしておきましょう。

 では、次に相続放棄の申し立てをする裁判所に何を提出すればいいのかを確認しましょう。提出書類は、おもに以下の3種類になります。

  1. 相続放棄申述書(申述をおこなう人が青年か、未成年かによって書き方が異なるので注意しましょう)
  2. 被相続人の住民票除票、もしくは戸籍附票
  3. 申し立てる人の戸籍謄本

 以上、3つを用意しましょう。なお、申し立てをおこなう人と被相続人の関係性によって追加で提出をしなければならない書類があるので、自身と被相続人の関係に必要な書類を把握しておくことが大切になります。

 以上の書類を、相続開始から3か月以内に所定の家庭裁判所へ提出して、不備がなければ裁判所から相続放棄申述受理通知書が郵送されます。

遺産相続放棄の注意点

 相続放棄の基本的な流れを把握できたならば、次は相続放棄の注意点について確認していきましょう。相続放棄のメリットとデメリットの項目ですでに上述している部分もありますが、ここでは注意点について詳しく説明をさせて頂きたいと思います。

相続放棄をおこなう前に、被相続人の遺産を使ってしまうと相続放棄が認められない?

 相続放棄をおこなう前に、被相続人の預貯金などを引き出して利用してしまうと、単純承認とみなされ相続放棄が出来なくなります。単純承認とは、被相続人の遺産をマイナスも含めすべてを受け継ぐことを指します。相続放棄をお考えの方は、被相続人の財産を使用しないよう注意が必要です。

いったん相続放棄をおこなうと撤回が出来ない?

 相続放棄の申し立てを家庭裁判所に申請をして、承認された場合原則として撤回は認められません。ただし、以下のようなケースに当てはまる時には撤回や取り消しが認められます。

  1. 詐欺、または脅迫によって相続放棄を強制されたとき
  2. 未成年者が法定代理人の同意を得ずに相続放棄をした場合
  3. 後見監督人がいるのにもかかわらず、後見人・被後見人が承諾を得ずに相続放棄をしたとき
  4. 成年被後見人本人が相続放棄をした場合

 上の4点がおもに相続放棄を撤回できるケースです。それ以外に受理される前であれば取り消しをすることも可能です。しかしながら繰り返しになりますが基本的に相続放棄は特別な理由がない限り撤回できません。

相続放棄の期間内に手続きをおこなわなければ承認されない

 相続放棄の手続き期間は、原則として相続開始から3か月以内になります。特別な理由がない限り、3か月を超えてしまうと単純承認になってしまうので注意が必要です。なお、相続放棄の手続きの伸長についても、3か月以内に申し立てをおこなわなければなりませんので、期限について必ず確認をしておきましょう。 以上が相続放棄に関するおもな注意点になります。相続放棄をしたいとお考えの方は、注意点や問題点を踏まえて準備を進めていきましょう。

遺産相続放棄するなら・・・

 ここまで、遺産相続について、さまざまなお伝えをさせて頂きました。今回は以下のような場合、相続放棄をすれば回避できるかどうかを考えていきたいと思います。

未払いの介護施設費用の請求は払わなくてよい?

 介護保険の未払いや介護施設費用の請求は、相続放棄をすることによって支払いを免れることができます。また、同じように家賃の滞納や、携帯電話の支払い遅延も相続放棄の手続きをすれば、支払う義務は発生しません。しかしながら、生前に被相続人の保証人になっている場合は、支払わなければならなくなる可能性がありますので、事前に確認をしておきましょう。

父親の借金の保証人になっているけど、それも放棄できる?

 父親の借金の保証人になっていた場合、相続放棄をおこなっても放棄することは出来ません。父親の借金の保証人になったのは生前に結んだ契約なので、相続放棄をおこなっても支払い義務が発生する可能性があります。ただし、父親が誰かの連帯保証人になっており、死後にその事実が発覚した際は相続放棄をすることによって連帯保証人の責任を介することができます。

現金や不動産、株式などの資産や負債はそのままにしていいの?

 相続放棄をすると、プラスの財産遺産(資産)を引き継ぐことはできなくなりますが、マイナスの財産(負債)を引き継ぐこともなくなります。ただし、相続放棄をしたとしても、他の相続放棄をしていない相続人が相続財産の管理を始めることができるようになるまで、「自己の財産におけるのと同一の注意をもって」相続財産を管理がしなければならないとされています(民法940条1項)。したがって、相続放棄をした場合には、できる限りすみやかに、他の相続放棄をしていない相続人に、相続財産を引き渡しておくべきでしょう。

さいごに

 今回は相続放棄についてのおはなしでした。相続放棄をお考え方は以下の3つのポイントをおさえてもらえればと思います。

  1. 相続放棄の期間は他の相続の手続きに比べ期限が短いので、早めの準備が必要。
  2. 相続放棄の前に被相続人の遺産を使ってしまうと相続放棄が認められなくなる可能性があるので注意
  3. 被相続人の生前に自身が負債の保証人になった場合は、相続放棄しても負債が消えないので注意が必要

以上の点を考慮して、相続放棄の準備をすすめましょう。また、不安な点や困ったことが起きた時には専門家に相談することも方法のひとつです。相談することによって新たな選択肢が増えることも考えられるので、一度検討してみてはいかがでしょうか。

※この記事は2019年12月時点の情報で作成しています。

 

監修者:鈴木 一
監修者:弁護士 鈴木 一 (虎ノ門協同法律事務所)

1994.03 青山学院大学法学部卒業
2002.10 弁護士登録(第一東京弁護士会)
2002.10〜2004.05 津山法律事務所
2004.09〜2006.01  弁護士法人渋谷シビック法律事務所
2006.2~  虎ノ門協同法律事務所

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