介護したから多く相続したい!親の面倒を見ない兄弟の相続は減らせる?

親の面倒を見ない親族の相続は減らせる?

現在の日本は、超高齢化社会と呼ばれ、13年が経とうとしています。 2019年度の調査によると、65歳以上の人口は3,588万人となり、総人口のおよそ3割が高齢者になるという結果になりました。 そこで問題になってくるのが、介護や遺産相続です。 今回は、自身が介護をした親が亡くなった場合、介護していた人が相続財産を多くもらえるのか、ということを確認していきたいと思います。

介護したから他の兄弟より多く相続することはできる?

介護したからほかの兄弟より多く相続することはできる?

長年、兄弟の中で1人だけが介護を全て引き受け「介護した分、遺産を多く相続したい、考慮してもらいたい」という場合は、他の兄弟より多く遺産を受け取る事はできるのでしょうか。

まず、共同相続人となった兄弟全員が、兄弟の中で長年親の介護を一人で引き受けてきた者に、特別の貢献があると認めて、その者が他の兄弟よりも多く財産を承継することを認めることで円満に話し合いがつけば問題はありません。しかし、このように円満に話し合いがつかなかった場合、介護を引き受けていた者は、何も多くをもらえないのでしょうか?

この点、「寄与分」というものが法律上認められています。寄与分とは、被相続人(亡くなった親)の財産の維持や増加に特別の寄与をした共同相続人(亡くなった親の子供)がいる場合に、この者に対して特別に与えられる相続財産への持分のことを意味します。この寄与分が認められれば、介護を引き受けていた兄弟が遺産を多く取得することが可能です。

なお、この寄与分については、法律上「特別の寄与」と認められなければ、寄与分とは認められません。というのも、法律上、親族は相互に扶助(助け合う)ことが規定されています。ある相続人(子供)と他の相続人(子供)との間で、被相続人(親)の療養看護の程度に差があったとしても、そのことで当然に「特別の寄与」となるわけではありません。親族として通常期待される程度を越えた「特別の寄与」でなければ寄与分とは認められません。実際には、寄与分が認められることは、ごくわずかいうのが実情です。

例えば…

  • 高齢の親が農業を営んでいた場合、子供が複数いたが、そのうちの一人だけが会社勤めの傍ら、高齢の親を助けて農作業に従事し、農地の維持と経営規模の拡張に多大な貢献をしたと認められた場合
  • 認知症の進んだ高齢の親に複数の子供がいたが、子供の一人だけがその親を引き取り、入退院の付き添いや日常の世話をしていたというような場合
  • 高齢の親が所有する自宅が老朽化したためリフォームをしようとしたところ、複数いる子供のうち一人が400万円を援助したような場合

といった場合になります。労務の提供、療養看護の程度、財産を支出した場合、いずれでもよいですが、通常期待される程度を越えた寄与出なければ認められません。

相続人間の協議がまとまらない場合や、そもそも協議ができない場合は、調停を申し立てることができますが、特別の寄与と認められる場合は、多くないことからしますと、事前に専門家に相談して、特別の寄与となるか否かについて聞いておいた方がよいでしょう。

介護した長男のお嫁さんは相続することができる?

介護した長男のお嫁さんんは相続することができる?

長男のお嫁さんが仕事をやめ、介護を一手に引き受けていた場合、遺産相続時に「私も遺産をもらいたい」となった場合、長男のお嫁さんは遺産相続で何かしらをもらえる可能性はあるのでしょうか?

長男のお嫁さんは相続権がないため、相続を受ける事はできません。

なお、長男一家が家族全体で介護したと認定されれば、長男に「特別の寄与」が認められる余地はあります。

また、平成30年の相続法改正によって、被相続人(亡くなった親)に対して無償で療養看護その他の労務(※1)の提供をしたことにより被相続人(亡くなった親)の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族(相続人、相続の放棄をした者などは除きます)は、相続の開始後、相続人に対し、特別寄与者の寄与に応じた額の金銭(特別寄与料といいます)の支払を請求することができるとされました。これによって、長男の嫁が特別寄与料を請求できることは考えられます。

特別寄与料の請求は、あくまで相続人に対して主張できるものであって、長男(相続人)の引き継ぐ財産が増えるというわけではありません。 特別寄与料の制度は、2019年7月以降に発生した相続に対して適用されます。 従来の制度ですと、相続人でなければ介護をしても、遺言書で記載されていない限り、 被相続人の財産を貰うことが出来ませんでした。

そこで、長男のお嫁さんのような、相続人以外の親族の貢献を考慮する目的として、新設されることとなったのです。

特別寄与の制度が適用される範囲は、被相続人の親族が対象です。

具体的な親族の範囲は、6親等(※2)以内の親族、または、3親等以内の姻族(※3)です。

 

※1…そのほかの労務…被相続人の事業に関する手伝いや、金銭的な援助も労務に含まれます。

※2…具体的に言うと、又従兄弟姉妹(またいとこ)までの親等になります。

※3…3親等以内の姻族…甥姪の配偶者、またひ孫の配偶者などが当てはまります。

 

親の面倒を見ない場合は相続させない事はできる?

親の面倒を見ない場合、相続をさせないことはできる?

先ほどまでは介護をした場合、相続する財産は増額されかどうかのお話をさせていただきました。

次にお話するのは、親の介護を全くしなかった子供の相続財産を減らしたり、もしくは相続させないようにすることができるかを考えてみたいと思います。

親が死亡し、複数の子供がいる場合、兄弟姉妹で遺産を承継する方法としては、親が遺言書を残した場合、兄弟で話し合って分割する場合(いわゆる遺産分割協議をして分割する場合)、遺言書も遺産分割協議もなく法定相続分のまま承継する場合、この3つが主に考えられます。

介護をしない子供の取得する遺産を減らす方法としては、遺言書を作成することが考えられます。遺言書を作成するとしても、介護をしなかった子供には遺留分の権利(※1)がありますので、絶対に遺産を承継させないということが確保される訳ではありません。 介護をしない人が相続の意思が無い、もしくは被相続人に対して欠格事由(※2)にあたる行為をしていなければ、財産を相続できなくすることは難しいと考えられます。

 

※1 遺留分…兄弟姉妹以外の相続人に付与された最低限の遺産の取り分のことです。

※2 欠格事由…相続法によって相続人の欠格事由が定められており、以下の事柄に当てはまる場合は、遺言書によって、相続人廃除することが可能となります。

 

親族間で揉めないために事前に話し合いをしましょう

親族間でもめないために事前に話し合いをしましょう

遺産相続はしばしば仲の良い家族内でも起こっていることであり、「争族」と呼ばれているほどトラブルが多いものです。

また、介護をしたのに相続する遺産額が介護していない人と一緒であると、不満を覚える方も多いでしょう。

そこで、まず親の相続について相続人になる人同士で話し合うことが大切です。

その際に、介護をするのであれば介護をした分遺産の取り分を多くしてほしいなど自身の要望を伝えておいた方が良いと思います。

しかしながら、親である被相続人が亡くなる前に相続人同士で遺産の分割協議をおこなって書面に残したとしても、法的な拘束力はありません。

相続発生前の相続人同士で話し合い、取り決めしたことを後になって反故にする方がいるという点を留意しておきましょう。

遺言書を作っておく

先ほど、相続が発生する前の遺産分割協議は法的な拘束力を持たないとお話をしました。 そこで相続発生前にできる一番の対処法は、遺言書を残すことです。

遺言書は被相続人になる親が残した意向として、3つある相続方法の中で一番強い効力を持つものです。

そのため、自分の親の介護をしている方は、親と話し合いをして遺言書を書いてもらっておくと良いと思います。

ただし、遺言書は書き方をまちがえると効力を失ってしまうものになります。

特に自分で書ける自筆証書遺言や秘密証書遺言は専門家の手が入っていないため無効になるケースがあります。

ですので、遺産額にもよりますが確実に遺言を残してほしいということであれば公正証書遺言の利用を考えても良いかもしれません。

専門家に相談する

相続遺産に関して悩んでいる場合は、弁護士や司法書士、税理士や行政書士などの専門家に依頼した方が良いケースもあります。

また、事務所の中には自分で書く自筆証書遺言のサポートをおこなっているところもあります。

金額は多少かかってしまいますが、親族同士での揉めごとに発展してしまった方や、相続争いを回避したいとお考えの方は専門家に頼ってみるのも手段のうちです。

さいごに…

今回は介護をした方の遺産相続にお話をしました。

2019年1月から相続法が順次改正されており、同年7月には介護に関する「特別寄与料」の制度も施行されました。

この制度のおかげで今まで遺言書が無ければ介護をしても相続人の対象でなかった人が、被相続人の残した財産内で貢献料を請求できるようになったのです。

しかしながら、特別寄与料は、遺産を相続した相続人に対して金銭等を請求する制度なので、親族同士の争いに発展する可能性は否定できません。

そのため、従来のとおり被相続人が遺言書を残す方法が一番争いを回避できるのではないかと考えられます。

親が亡くなった後も、家族が仲良くいられるよう、相続について考えてみてはいいかがでしょうか。  

遺言書を作成しておけば、未然に紛争を防ぐことができることは多々あります。相続がいつ発生するかは予想できないことです。残された親族のためにも、遺言書を作成しておくことをおすすめします。

※この記事は2020年6月時点の情報で作成しています。

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監修者:鈴木 一
監修者:弁護士 鈴木 一 (虎ノ門協同法律事務所)

1994.03 青山学院大学法学部卒業
2002.10 弁護士登録(第一東京弁護士会)
2002.10〜2004.05 津山法律事務所
2004.09〜2006.01  弁護士法人渋谷シビック法律事務所
2006.2~  虎ノ門協同法律事務所