遺産相続の手続きと期限

遺産相続にあたりやらなければいけないことのイメージ

遺産相続の手続きは、期限が短いと言われています。相続の手続きの期限や流れについて確認しましょう。

 

遺産の承継ついて

 遺産とは、亡くなられた方(被相続人)に属していた財産のことを意味します。相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継するとされています(民法896条)。従って、人が死亡すると、その瞬間に、遺産は法定相続人に直ちに帰属することになります。民法では、法定相続分というものが定められています(民法900条)。法定相続分は、割合(相続人が配偶者と子の場合は各2分の1ずつとするなど)で定められています。具体的に、どの財産を誰が取得するかということは、遺言書によって定めるか、相続人全員で遺産分割協議をしなければ決まらない場合もあります。

  1. 遺言…被相続人の意思表示(※1)
  2. 遺産分割協議…相続人全員で財産の取り分や、分配の取り決め方を決める(※2)

なお、被相続人の死亡によって、相続人が死亡保険金を取得する場合、この保険金は遺産とはなりません。ただし、死亡保険金の受取人が相続人である場合、非課税限度額(500万円×法定相続人の数)を超えるとき、その超える部分が相続税の課税対象となります。

※1…遺言では財産の帰属や分割方法だけでなく、非嫡出子を認知する等の身分上の行為も行うことができます。また、遺産分割を禁止する期間を定めることもできます。

※2…遺産分割協議によって、法定相続分と異なる財産の帰属を定めることもできます。

相続の手続きに関わる期限

相続人が被相続人の死亡したことを知った日の翌日から起算して3か月以内とされていること

遺産には、積極財産(不動産や預貯金など)のほか、消極財産(借金や滞納している税金など)も含まれます。相続によって、被相続人の財産に属した一切の権利義務は法定相続人に承継されることになりますが、消極財産の方が多い場合には、法定相続人は相続放棄といって、財産が承継されないようにする事ができます。相続放棄をした者は、初めから相続人とならなかったものとして扱われます(民法939条)。他方、遺産のうち消極財産の方が積極財産よりも多いか不明な場合、限定承認といって、承継された積極財産の範囲でしか債務の負担を負わないという手続もあります(民法922条)。これらは、相続が開始したことを知ったときから3ヶ月以内に手続をしなければなりません。

相続人が被相続人の死亡したことを知った日の翌日から起算して4か月以内とされていること

所得税は、毎年1月1日から12月31日までの1年間に生じた所得について計算し、その所得金額に対する税額を算出して翌年の2月16日から3月15日までの間に申告と納税をすることになっています。年の途中で亡くなられた場合、その年の1月1日から死亡した日までに確定した所得金額及び税額を計算して、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内に申告と納税をしなければなりません。これを準確定申告といいます ※準確定申告をおこなう必要のあるひとには、一定の条件があります。詳細の条件を確認されたい方は、国税庁が公表している「No.2022 納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)」をご確認ください。

相続人が被相続人の死亡したことを知った日の翌日から起算して10ヵ月以内とされていること

相続税の申告及び納付…相続税が発生した場合の納税と、特例などを受ける場合の相続税の申告を提出する。  

以上がおもな相続の手続きと期限になります。

手続きの流れ

相続放棄

相続開始より3か月以内に家庭裁判所へ書類を提出する必要があります。必要書類は被相続人との相続人の関係によって異なります。

相続放棄をおこなった場合、被相続人の残した財産の一切を相続することが出来なくなります。相続放棄に至るケースとしては、遺産が借金などのマイナスのものだったり、他の相続人とトラブルを回避するために利用したりすることがあげられます。

相続放棄をする前に、被相続人の遺産に属する財産を処分すると、相続放棄をすることができなくなります。被相続人の遺産に属する財産を処分すると、「相続を承認した」とみなされてしまい、相続放棄が利用できなくなってしまいます。

限定承認

相続開始より3か月以内に家庭裁判所に申立をしなければなりません。相続放棄との違いはとしては、相続により承継した積極財産の範囲で負債を負うこととなる点、相続人が複数いる場合には相続人全員の合意が必要となる点です。相続放棄が単独で申請が出来るものに対し、限定承認は相続人全員が同意し、手続きをおこなわなければなりません。

プラスの財産がマイナスの財産よりも多ければ、残った分のプラスの財産を各相続人で分配することが出来ます。マイナスの財産がプラスの財産を超えた場合には、プラスの財産の範囲内で返済し、それを超えた分については引き継がれることはありません。

限定承認は遺産がプラスかマイナスかわからない状態や事業承継をおこないたいが、負債は最小限に食い止めたいというときに有効な方法です。

しかし、相続人が共同で手続きしなければいけない制度であるので、相続放棄にくらべ、利用するハードルが高いです。

相続税の申告や納税

相続税は、原則として被相続人の死亡日の翌日から10か月以内に申告や納税をおこなわなければなりません。

相続税の計算について

相続税を計算するには、まず、個々の相続人の課税価格を計算します。課税価格の計算手順は以下の通りです。

相続又は遺贈により取得した財産の価格 + みなし相続等により取得した財産の価額 - 非課税財産の価格 + 相続時精算課税に係る贈与財産の価額 - 債務及び葬式費用の額

 みなし相続財産とは、亡くなられたことで相続人のものとなった財産で弔慰金や保険金などがあります。

相続時精算課税による贈与財産とは、贈与税の制度の一種で、相続時精算課税を選択した以後の贈与財産の合計額と相続財産を合わせた財産に対して相続税を計算します。 非課税財産とは、墓石や仏壇などです。

次に相続税の総額の計算をします。

課税額の総額から基礎控除額を控除します。基礎控除額は、3,000万円+600万円×法定相続人の人数によって計算されます。法定相続人の数は、相続放棄をした者がいてもその数に含めます。法定相続人の中に用紙がいる場合、被相続人に実施がいる場合、養子のうち1人までを法定相続人に含めます。被相続人に実施がいない場合は、養子のうち2人までを法定相続人に含めます。

また、相続税には特例があり、基礎控除額を超えたとしても相続税が減額されたり免除されるケースもあります。

No.4152 相続税の計算|国税庁

誰が遺産をもらうのか

 被相続人の遺産を引き継げる人は大きく下記の2つにわけることが出来ます。

  • 相続人
  • 受遺者(遺言によって財産を承継することとなった者)

相続人

民法上で定められた相続人を法定相続人といいます。遺言書で相続財産の指定が無い場合、民法で定められた法定相続人の中から、相続人が選ばれます。

また、法定相続人の中にも相続の優先順位が決まっています。詳細の順位については、下記の表をご確認ください。

相続順位 被相続人との関係
必ず相続の権利がある 配偶者
1位 子供およびその代襲相続人
2位 両親、祖父母など直系尊属(※2)
3位 兄弟姉妹その代襲相続人

【受遺者】  受遺者とは、被相続人が遺言書で財産指定した人のことを指します。受遺者は被相続人が指定した人ならば誰でもなることが出来、血縁関係による順位がありません。 以上が相続人と受遺者の説明でした。 

相続税はどれくらいかかるのか?

相続が発生したとき、相続税が発生するのか、発生した場合いくらかかるのか心配になる方もいらっしゃると思います。

相続税が発生するかどうかの基準は、基礎控除額を超えるかどうかです。

一方で相続税がいくらになるのかは、基礎控除額を超えた金額によって異なります。というのも相続税は累進課税が適用されており、消費税のように一律で課税されるわけではないからです。

累進課税とは金額に応じて税率が高く設定されているものです。身近な税でいうと所得税とが相続税と同じように累進課税が適用されています。

実際どれくらいの税率になるのか、以下の表をご参考ください。

法定相続人に応ずる取得金額 税率 控除額*1
1,000万円以下 10% ×
3,000万円いか 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4200万円
6億円超 55% 7,200万円

※国税庁ホームページより

No.4155 相続税の税率|国税庁

*1 表にある控除額は基礎控除額とは別に引ける控除額 表だけではイメージがつきにくいと思いますので具体例を出して考えていきましょう。

【例】 被相続人が夫で、法定相続人が配偶者である妻・子ども3人、遺産額が2億円の場合

まずは基礎控除額を計算します。法定相続人は妻と子ども3人なので計4人になります。

これを先ほどの式に当てはめると

3000万円+(600×4)=5400万円 遺産の2億円-5400万円=1億4600万円

相続税のかかる額は1億4600万円になります。

そこから、法定相続の分配にすると配偶者である妻に半分、子どもは残った分を3等分するので、それぞれの相続税がかかる金額は以下のようになります。

妻(配偶者) 7300万円

子どもたち およそ2433万円

この金額を上記の表に当てはめると、妻(配偶者)の場合

7300万円-700万円(控除額)×30%=1980万円(相続税)

子どもたちの場合

2433万円-50万円(控除額)×10%=238.3万円(相続税)

 

以上から考えられることは、法定相続人はなるべく多い方が、基礎控除額が増え、引いては支払う相続税も少なくできます。また、被相続人との間柄によっては減税出来る特例もあるので、適用できるかどうか調べておくのも重要です。

遺産相続で揉めた時の対処法

ここまで、相続に関する知識について解説していきました。本章では遺産相続でトラブルに発生した場合、どのような対処をすればいいのかを確認していきたいと思います。

現代の日本では、総人口に対して高齢者の人口が占める割合は3割を超えており、政界でも有数の超高齢化社会となっています。

高齢者の数が多ければ多いほど、必然的に相続のトラブルが増えていきます。事前に相続トラブルのリスクを下げる方法として遺言書があげられます。 というのも、遺言書は被相続人の意向を反映しているもののため、非常に強い効力があるからです。しかしながら、遺言書があったとしても避けられないトラブルもあります。

また、被相続人が遺言書を残しておらず、相続人同士で遺産の取り分をめぐり争いになるケースも少なくありません。

さいごに

今回は、相続についてたくさんお話してきました。今回のポイントとしては、以下3点です。

  • 相続の手続きは期間が限定されているものがあり、その期間は比較的短い
  • 相続税の課税対象になる財産には死亡保険金や死亡退職金も含まれることがある
  • 法定相続人や受遺者など遺産を相続できる人の把握

上記で上げた3つのポイントはいずれも基本的なことですが、相続を考えるうえでとても大切です。 また、相続のトラブルを回避するためにも事前に相続についてご家族で話し合ってみても良いかもしれませんね。

※この記事は2021年3月時点の情報で作成しています。

監修者:鈴木 一
監修者:弁護士 鈴木 一 (虎ノ門協同法律事務所)

1994.03 青山学院大学法学部卒業
2002.10 弁護士登録(第一東京弁護士会)
2002.10〜2004.05 津山法律事務所
2004.09〜2006.01  弁護士法人渋谷シビック法律事務所
2006.2~  虎ノ門協同法律事務所

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