親が入院することになりました。高齢者の入院は普通の入院とは違いますか?お金やそのほかのことで、いろいろと心配なのですが家族として何ができるのか教えてください。

高齢者の入院は普通の入院とは違いますか?

質問

質問者高齢の親が足の手術を受けることになりました。2週間程度の入院が必要とのことです。現在はおむつパンツですが、介助をされながらトイレを使うことができています。また軽い認知症の傾向があります。入院しているうちに状態が悪化してしまうことはあるのでしょうか。特に高齢者の入院で気を付けることはありますか?お金についてもどの程度必要となるのか不安です。家族は共働きですが、毎日誰かは顔を出すことができると思います。入院前後での注意点などがあれば教えてください。   

専門家

入院を控えて予測していなかったことが起こるのではないかなど、いろいろと心配ですね。高齢者は入院や手術などの環境の変化に適応できず、一時的に不穏な状態に陥ることがしばしば見られます。

そのような状態を緩和するためには、ご家族は入院や手術の後はできる限り長い時間面会できる体制にしておいたり、病院から急な呼び出しがあった場合にも駆けつけられるようにしておいたりすると良いでしょう。

入院費用に関しては手術の内容や入院する病室の金額などで大きく左右されますが、高額療養費の制度などによって医療費が返ってくるケースもあります。

ここでは高齢者が入院することで考えられるリスクや費用、家族が準備しておくことなどについてわかりやすく解説します。

高齢者が入院することによる生活への影響やリスク

高齢者が入院することによる生活への影響やリスク

高齢者の入院には若い世代と違い、考慮すべき点が数多くあります。入院することによる影響やリスクについて見ていきます。

入院により状態が悪化しやすい高齢者

高齢者の場合、入院しても状態がなかなか回復しないという場合が多く見られます。強い薬の使用に制限があるなどで治療効果が出にくいことと、重篤な症状での入院が多いことが理由に挙げられます。

病院は介護施設と同じような対応はできません。

高齢者の状態にもよりますが、自分の身体についてうまく伝えられない場合もあります。もっとも懸念されるのが、生活環境の変化による戸惑いです。知らない場所で見知らぬ人々に囲まれている不安から精神的に混乱状態となり、錯乱行動やせん妄が生じるケースもあります。

安静にしていることによる影響

入院すれば自宅にいるときよりも、安静状態が多くなります。例えば車いすで生活していた人でも、ベッドの上で過ごす時間が増えます。

身体を動かさずにいることで生じる問題としては、床ずれがあります。皮膚の薄い高齢者は、長時間同じ姿勢でいると血流が悪くなり皮膚が損傷しやすくなります。

また動かずにいれば、生活の動作に必要な筋肉が減少していきます。

運動器全体が衰退し、退院後の生活に支障が出たり転びやすくなったりする場合もあります。退院直前にベッドから落ちて再入院するというケースを耳にしますが、これも筋力の低下で思うような動作ができなくなっていると考えられます。

また刺激がないため、認知症の症状が進んでしまうということも起こり得ます。

環境によるリスク

病院という特殊な環境から生じるリスクもあります。

高齢者が多い病棟では感染症対策が非常に重視されています。しかし抵抗力が弱まった患者は、一般的な人以上に感染する可能性が高くなっています。消毒などを徹底していても、普通の病室では無菌状態にすることができないため、一度病院内に何らからの病気の感染者が出ると蔓延する恐れがあります。

入院中は症状を抑えるために、投薬治療が行われます。症状が重いほど強い薬が使われる可能性があり、薬の副作用のリスクも高くなります。また薬の種類も増え、体力の低下している高齢者にとっては、身体への強い負担がかかります。

入院中は限られた数のスタッフがケアにあたるため、自宅や介護施設のようにトイレへの対応ができません。どうしてもおむつや尿管による対応が多くなる可能性があります。

退院後の機能回復がカギ

退院後の機能回復がカ

入院中に低下してしまった身体機能や生活力を元に戻すためには、どうしたら良いのでしょうか。

入院先の病院のケア状態を知る

入院している病院・病棟が、急性期なのか慢性期なのかによって扱いが異なってきます。

急性期の場合には命の危険のある患者に対して、救命のための治療を行うことがメインとなります。そのため、生活のための機能の低下などについてはあまり考慮されません。安静を保つためには、おむつや尿管による排せつの対応が必要になります。

慢性期病棟では患者の病状が落ち着いているため、日常生活への復帰のサポートも行われます。リハビリが実施されます。

どのようなケアが行われるのかは、入院先の病院によって変わってきます。また機能の低下は、入院期間によってもかなり差が出てきます。

その病院ではどのようなケアが可能なのかを把握しておくことで、退院後に必要となる措置を予測できます。入院した後はどのようなケアが受けられるのか、わらかないときには担当のスタッフに確認しておくと良いでしょう。

急性期治療を行う病院であっても、地域包括ケア病棟による退院支援を提供しているところもあります。そうした病院では病状の改善によりいきなり退院させるのではなく、生活に必要となる機能の回復に向けたサポートが行われます。

入院前の水準に戻すために

高齢者の入院では、退院後に以前と同じ生活に戻れるかどうかが大きなカギとなります。

そのためには入院時の状況を家族が良く観察し、かかりつけ医や訪問看護師、ケアマネジャー、介護スタッフなどに詳細を伝えていく必要があります。

周辺の専門職によるサポート体制を整えられれば、入院前の水準に戻せる可能性が高まります。

入院中もケアマネジャーなどを通じてそうした専門家とのつながりを密にし、患者の様子をできるだけ伝えるようにしていきましょう。

体力の回復とともに、生活に必要とされる機能と精神的な面での回復を図れる準備をしておきます。

高齢者の入院にかかる費用

高齢者の入院にかかる費用

入院による影響と共に気になるのが、入院の費用です。個人の負担分はどの程度になるのでしょうか。

高齢者の医療費負担

高齢者の医療費の自己負担は以下のように設定されています。

  • 65歳~70歳未満:3割負担
  • 70歳~75歳未満:2割負担(誕生日が昭和19年4月1日以前の方は1割)
  • 75歳以上:1割負担

ただし70歳以上であっても現役並みの所得者(世帯年収520万以上、単身で383万円以上)の場合は3割負担となります。

入院が長くなればなるほど自己負担額が増えることになりますが、高額医療費制度によって月ごとに限度額が定められています。

ただし上記の現役並み所得の場合には、限度額適用認定証がないと立替をする必要があります。

高額療養費制度の活用

高額療養費制度における入院の場合の月ごとの上限額は以下のように定められています。

  • 一般所得者:~57,600円
  • 住民税非課税低所得者:15,000円~24,600円
  • 現役並み所得者:所得336万円以上で高齢受給者証の負担割合が3割:所得金額と医療費に応じて変動

また現役並み所得者で1年(直近12か月)の間に、同一世帯で3か月以上高額療養費に該当するときには、4か月目からは自己負担限度額が44,400円に引き下げられます。

この制度の対象となるものには、食事代は含まれていません。栄養管理師または栄養士による管理を行っている病院の食費は、1食あたり460円です。また慢性期療養病床に入院した場合には、居住費として1日370円かかります。

医療補助対象外の支出に注意

高額療養費制度があるため入院費が天井知らずにかかるということはありませんが、医療補助の対象外となる費用に注意が必要です。以下の項目については、医療補助の対象となりません。

  • 差額ベッド代
  • 公的医療保険象外の治療費
  • 家族の交通費
  • 身の回り品

個室利用がなく、高度な治療を行わない場合でも、入院すればパジャマの貸与や洗濯代など意外なところからの支出があるものです。 特に大きいのは病院で使われるおむつ代です。

介護施設で使われるものよりも高い傾向があり、請求があるまで見当がつきにくいので少し余裕を持って費用の準備をしておく必要があります。

高齢者の入院に際して家族ができること

高齢者の入院に際して家族ができること



ここまで高齢者の入院についての情報を整理してきましたが、入院に際して家族ができること、留意すべきことにはどのようなものがあるのでしょうか。

入退院の段取りを決めておく

高齢者の入院は、退院後の生活も含めて若い世代とは違う視点を持つ必要があります。情報を得ながら入院する家族に合わせ、入院前後の段取りを決めていきましょう。

具体的なことがわからないときには、ケアマネジャーなど高齢者の入院に詳しい人に相談をして理解を深めます。

入院にかかる費用がどれくらいになるのかは、素人ではわかりにくいものです。しかし先に挙げた高額療養費制度などを知れば、ある程度の試算が可能になります。ざっくりとした金額が出たら、退院時になって慌てないよう、どのように工面していくのか予め考えておきましょう。

入退院の事務手続きも、なかなか面倒なものです。最近は入院費の未払いなどの問題もあり、入院時に同居家族以外の保証人を求める病院が増えてきています。

入院することが決まったら、そのときになって慌てないように保証人の候補を探しておくようにすると安心です。

また一般病室が満床のため、差額ベッドを使うことを病院から言われる例もあります。この点については、厚生労働省の通達で“患者の意思に反した差額ベッドへの入院はあってはならない” とされており、家族への十分な説明を行い合意の下で使用することが求められています。差額ベッドは医療補助から外れるため、支払いが高額化します。納得できない場合には、合意書の提出を保留することができることを知っておくと良いでしょう。

退院後の回復支援についても、十分に検討しておくことが必要です。すでに介護保険を利用しているのであれば、今後どのような支援が受けられるのかケアマネジャーと相談しておきましょう。

認定されていない場合には、なるべく早く介護の調査が受けられるように早めに手続きを進めましょう。

できる限り声かけできる状態をつくる

高齢者は知らない場所にひとりで置かれると、精神的に不安定になり不穏な行動を起こしてしまうことがあります。環境の変化に適応しにくいということを良く理解し、なるべく安心できるように頻繁に訪問して家族の顔を見せるようにしたいものです。

そのためにはいつ誰がどのくらいの頻度で訪問できるのか、仕事の調整なども念頭に、家族で良く話し合っておきます。家族からの声かけや励まし、慰めで高齢者の心が穏やかに保たれます。

加えて入退院の付き添いは誰がするのかも決める必要があります。入院に際しては書類の記入が多いため、高齢者の生活状況を良く知る人が適役です。

医師・スタッフとの十分な疎通を

ケアマネジャーと医師が直接話すこともありますが、家族の口からも状態を伝えるようにすることが重要です。家族が入院していても医師と話す機会はあまり多くありません。少しでも適正な治療に役立つ情報を提供するために、本人を良く知る家族が生活状況を話す必要があります。

また担当看護師には日頃の様子や経歴を伝えておくと、患者本人との間で会話が成立しやすくなります。家族が来られないときでも、看護スタッフとの間で良好な関係があれば何かと安心です。

治療や看護ケアについて疑問があるときには、そのままにせず必ず回答をもらうようにしましょう。家族が病院に対して不信感を持っていると、患者にも伝わり不安な気持ちを抱かせる可能性があります。安心してゆだねられるよう、家族が病院に対して信頼感を持てるように行動していきましょう。

高齢者ならではの入院事情を理解する

高齢者の入院は若い世代と違い、今までと同じ生活に戻れなくなるかも知れないというリスクもあります。そうした事情について理解していないと、万が一の場合に家族が動揺してしまい、正しい判断ができなくなる可能性もあります。

入院せずに済ませられればそれが一番ですが、治療のためにやむを得ないときも出てきます。高齢の家族が入院する際には、周囲のサポートや費用、家族の訪問、退院後の扱いなどさまざまなことを考慮しながら、できるだけの準備をしていく必要があります。

※この記事は2019年9月時点の情報で作成しています。

 

監修者:寺岡純子

監修者:寺岡純子(てらおか じゅんこ)

主任介護支援専門員 看護師
合同会社 カサージュ代表
看護師として病院勤務8年、大手介護事業者で約19年勤務し管理職を経験。
2019年8月合同会社カサージュを立ち上げ、「介護特化型研修事業」「介護離職低減事業」など介護に携わる人への支援を行っている。企業理念は「介護に携わるすべての人の幸せな生活をサポートする」。