高齢の親が入院をしたら、せん妄のような症状が出てきました。認知症になってしまったのでしょうか?治るか心配です。

質問

質問者入院中の78歳の父。手術は無事に終わりましたが、夜中に混乱して点滴の針を抜いてしまったり、大きな声を出したりします。看護師さんにはせん妄だと言われたものの、もう5日間続いていて治るか心配になってきました。認知症になってしまったのかも?とも考えてしまい不安です。

 

専門家

入院後や手術後に高齢者がせん妄状態になることは珍しいことではありません。手術後は身体的な負担に加え、点滴による拘束感や足音、機械の音などの環境の変化に適応できないことが原因の一つと考えられます。

脳の細胞に障害のある認知症とは異なり、ほとんどの場合は一過性でいずれは落ち着きます。ご本人の混乱を少しでも緩和させられれば、せん妄の症状を和らげることが可能です。可能であれば家族の面会時間を多くとり、昼間は屋外に散歩に出かけるようにしましょう。

ここでは、入院中の高齢者のせん妄の原因や症状、対応の仕方などを詳しく解説していきます。 

せん妄とは?主な症状と認知症との違い

せん妄とは?主な症状と認知症との違い

高齢者に見られることがある「せん妄」。言葉は聞いたことがあっても、症状の特徴についてはよくわからない、という方は多いのではないでしょうか。 個人差はありますが、せん妄の主な症状は以下の通りです。

  • 幻覚、幻聴(ないものが見える、聞こえる)
  • 意識がもうろうとする
  • 意味不明なことを言う
  • 自分の居場所や時間がわからなくなる
  • 突然暴れる、大声を出す
  • 睡眠リズムが乱れる(昼夜逆転)

実際にはいない人や物が見えると言い出したり、突然暴力的になったりするので、目の当たりにしたご家族は大変困惑されます。

せん妄は一過性のもの

せん妄が何日も続くと「このまま治らなかったらどうしよう…」と思うかもしれませんが、多くは一過性のものです。たいていの場合、数日から1週間程度で改善するので、過度に心配する必要はないでしょう。

とはいえ、暴れて点滴のチューブを抜いたり、ベッドから転落したりする危険性があるため、注意深く対応する必要があります。せん妄が強く出ていると別人のように見えることがありますが、症状が治まるといつもの様子に戻ります。

夜間や手術後に発症することが多い

せん妄は、夜間や手術後、入院中に発症しやすいという特徴があります。日中は問題なく過ごしていても、夜間に突然せん妄が起こり、付きっきりで見守らなくてはならないケースも。また、手術を受けた後や入院中に発症しやすい傾向があるので、ご高齢の方の手術・入院の際は注意が必要です。

認知症との見分け方

せん妄が起こると、記憶が飛んだり意思疎通ができなくなったりすることがあるので、認知症と見分けがつきにくいことがあります。ですが、せん妄の特徴には以下のようなものがあり、認知症とは症状の現れ方などが異なります。

  • 意識がはっきりしない(意識障害)
  • 発症時期が特定できる
  • 発症期間が短期間
  • 症状が時間とともに変化する

少しずつ進行する認知症は発症時期を特定するのは困難です。また、認知症を発症しても意識は割とはっきりしていることが多く、1日のうちで症状はあまり変動しません。

一般的にはこのようなポイントで見分けることが可能ですが、「せん妄か認知症か」を自己判断するのはNGです。せん妄のような症状が現れたら、必ず医師の判断を仰ぎましょう。

高齢者がせん妄を発症するきっかけ

高齢者がせん妄を発症するきっかけ

せん妄を発症するはっきりとした原因やメカニズムは解明されていません。ですが、高齢者に見られるせん妄には、以下のような要因があると考えられています。

加齢による心身の虚弱状態

そもそも、加齢にともない身体機能や脳機能に衰えが見られると、せん妄を引き起こしやすいと言われています。ですから、心身が虚弱状態にある高齢者は、若い人であれば特に影響がない環境変化や服薬でもせん妄を起こすことがあります。

入院・手術などの環境変化・ストレス

せん妄は、生活環境の変化や大きなストレスがあるときに起こりやすいです。入院や手術はご本人にとっては相当なストレスでしょうから、病院でせん妄を起こす方はとても多いです。拘束感を感じさせる点滴や、耳慣れない足音や機械音などもストレス要因となるでしょう。

また、介護施設への入所や引越し、旅行などもせん妄のきっかけとなることがあります。日常生活が大きく変わるタイミングは、せん妄のリスクがあることを知っておきましょう。

病気・服用薬の影響

病気や服用薬の影響でせん妄が起こるケースもあります。例えば、脳卒中やパーキンソン病、髄膜炎、神経の変性を起こす病気を患っている方は、病状が軽度であってもせん妄が起こることがあります。身体機能が落ちている高齢者は、風邪やインフルエンザによるせん妄にも注意しましょう。

処方薬の影響でせん妄のような症状が現れる場合があります。もちろん、全員にせん妄が現れるわけではありませんが、睡眠補助薬や抗うつ薬、抗ヒスタミン薬などの中には、せん妄につながりやすい薬があるようです。

また、複数の薬の飲み合わせや、長年服用し続けた薬をやめたことがきっかけとなるケースがあるため、医師に相談する際は服薬状況も伝えましょう。

脱水や睡眠不足も引き金に

高齢者は脱水や睡眠不足によるせん妄にも注意が必要です。加齢による体力低下に加え、水分補給の不足や生活リズムの乱れがあると虚弱状態に拍車がかかり、せん妄を引き起こしやすくなります。

高齢者は若い人と比べて喉の渇きを感じにくいので、意識的に水分を摂るようにしないと脱水状態になりやすいです。特に認知機能が低下している方は「そろそろ水分を摂らなくては」といった判断力も衰えがちですから、周囲の方は気にかけてあげるようにしましょう。

せん妄がみられた場合の接し方・対応方法

せん妄がみられた場合の接し方・対応方法

せん妄のような症状が現れたら、どのように対処すればよいのでしょうか。対応のポイントを見ていきましょう。

慌てず、穏やかに接する

まず心がけていただきたいのは「落ち着いて対応する」ということです。せん妄を目の当たりにすると、こちらも混乱してしまう気持ちはわかります。ですが、ご家族や身近な方が大きな声を出したりすると、ご本人の混乱や不安感がさらに強まることがあります。

意味不明のことを言い出しても、指摘や否定はせず、調子を合わせながら見守りましょう。

ケガにつながるものは置かない

興奮し、暴れ出す場合は、周りにケガにつながるものは置かないようにしてください。ご家族が止めに入るとかえって危険なことがあります。暴力があったら、少し離れた場所で見守りましょう。ベッドからの転落を防ぐため、柵を設置したり、ベッドを低くしたりするのもおすすめです。

落ち着いて過ごせる環境づくりを

せん妄を起こりにくくするには、ご本人が落ち着いて過ごせる環境づくりも大切です。入院中、見えるところに時計やカレンダーがあれば生活リズムが整いやすいですし、自宅で使い慣れた愛用品や家族の写真があると気持ちが落ち着くかもしれません。可能であれば、ご家族の面会を増やすのも一案です。

症状が落ち着いている日中に、散歩や軽い体操をしておけば寝つきがよくなり、せん妄の症状緩和につながる可能性もあります。

症状に応じた医療ケアも

ご本人の興奮が収まらないときや、眠らないときなどは医師に適切な処置をお願いしてください。興奮や不眠の症状に対しては、薬物療法で対処できる場合があります。ご本人の症状に合わせた対処をしてもらえるので、せん妄への対応はご家族だけで抱え込まず、医師や看護師に相談しましょう。

せん妄はご家族だけで対処しない

高齢者のせん妄の原因はさまざまです。主に、生活環境の変化やストレスが引き金となるケースが多いので、せん妄につながりそうなストレス要因を減らしてあげると症状の緩和が期待できます。

とはいえ、せん妄の症状には個人差があり、ご家族で対処しきれないケースもよくあります。症状によっては医療ケアで緩和することも可能ですから、ご家族は決して無理をせず、対処方法については医師や看護師に随時相談することをおすすめします。

専門家のサポートを借りながら、せん妄にうまく対処しましょう。

※この記事は2019年11月時点の情報で作成しています。

 

監修者:寺岡純子

監修者:寺岡純子(てらおか じゅんこ)

主任介護支援専門員 看護師
合同会社 カサージュ代表
看護師として病院勤務8年、大手介護事業者で約19年勤務し管理職を経験。
2019年8月合同会社カサージュを立ち上げ、「介護特化型研修事業」「介護離職低減事業」など介護に携わる人への支援を行っている。企業理念は「介護に携わるすべての人の幸せな生活をサポートする」。