脳出血の母が退院しました。通所リハビリ以外にリハビリを増やす方法はありますか?

質問

質問者

70歳の母ですが、脳出血でかなり危ない状態から持ち直すことができ、数カ月間かけてリハビリをして、何とか車いすを自分で動かせるようになって、自宅に帰ってきました。

現在、介護保険で週に2回の通所リハビリに通っていますが、本人はもっとリハビリを受けたいと考えています。「せめて一人でトイレに行けるようになりたい」「手を借りずにできることを増やしたい」と考えているのですが、どのような方法がありますか? 

 

専門家

介護保険サービスには、リハビリが必要な方が利用できる通所リハビリ(デイケア)と訪問リハビリがあります。それぞれメリットがあるサービスですが、希望すれば必ず両方を利用できるというわけではありません。また、介護保険のリハビリと併用はできませんが、病院の外来リハビリもあります。

すでに通所リハビリに通っているとのことなので、ここでは訪問リハビリという選択肢を中心に解説していきましょう。訪問リハビリではどんなリハビリを受けられるのか、回数や時間、通所リハビリとの違い、それぞれのリハビリサービスの併用についてなどについて紹介します。現在や今後の生活の参考にしてください。

 

訪問リハビリで受けられるサービス

リハビリのイメージ

まずは、訪問リハビリテーションのサービス内容を確認していきましょう。

訪問リハのサービス内容

訪問リハビリテーションとは、自宅に病院や老健からリハビリの専門職が訪問し、医師が作成した指示書に基づいて、その人や生活環境に合わせたリハビリを受けられるサービスです。 具体的には、次のようなサービスが提供されます。

  • 健康管理(血圧測定、体温測定、健康状態の把握など)
  • 室内の歩行訓練、座位保持訓練、買い物などの外出支援などの日常動作訓練
  • 歩行、寝返り、起き上がり、立ち上がり、座るなどの機能訓練
  • 口腔体操、食事内容のアドバイスなど摂食嚥下訓練
  • 症状に合わせた言語訓練
  • マヒや褥瘡解消のためのマッサージ
  • 住宅改修など自宅の環境に関するアドバイス
  • 福祉用具に関するアドバイス
  • ご家族への介助方法の指導 など

訪問リハで来てくれる人

訪問リハビリを提供するのは、国家資格を持ったリハビリの専門職です。専門職によって、リハビリの内容は異なります。

理学療法士(Physical Therapist 、PT)

「寝返りを打つ」「立つ」「歩く」などの機能を維持・改善するための運動を中心としたリハビリを行います。 例えば、筋力をつける運動や家の中や外で歩く練習、トイレや着替えなど日常生活に必要な動作の練習などです。歩行器を使って歩いている方と杖で歩く訓練を一緒にしたり、マヒがあっても残った能力を活かして日常生活に必要な動作を行う訓練をしたりします。

作業療法士(Occupational Therapist、OT)

服を着る、料理をする、食事をするなど、手を使った日常生活に必要な動作の訓練、認知機能訓練などを行います。

言語聴覚士(Speech Therapist、ST)

脳卒中や認知症などで言葉を出しにくくなった方には、症状に合わせた言語訓練を行います。食事や服薬時などでむせてしまう方には、安全に食べる訓練や嚥下機能(飲み込む機能)の改善を図る訓練をします。食べやすい食事形態の指導もしてくれます。

訪問リハが利用できる人

介護保険を利用して訪問リハビリテーションが受けられるのは、在宅で生活をしている要介護1~5の認定を受けた方で、訪問リハビリテーションが必要だと医師が判断した方です。要支援1、2の方は、介護予防訪問リハビリテーションを利用できます。

こんな時に訪問リハビリを検討しましょう

以下のような状態があり、生活に合わせたリハビリを受けたい場合には、かかりつけ医やケママネジャーに訪問リハビリの利用を相談してみてはいかがでしょうか。

  • 歩くのが以前よりも辛そうで、引きこもりがちになった
  • ケガの治療で固定していたところの動きが悪くなった
  • 食べ物や飲み物、服薬時にむせることがある
  • 座った姿勢を保つのが難しくなった
  • 1人でトイレに行けるようになりたい
  • しゃべるのが大変そうで塞ぎがちになった
  • 本人の身体の状態がよくわかる専門家に相談をしたい
  • 介護者だが車いすへの移乗などの介助方法を指導してもらいたい
  • 福祉用具や住宅環境のアドバイスが欲しい など

訪問リハビリの費用について

リハビリ費用のイメージ

続いて、訪問リハビリの費用をみていきましょう。

1回ごとにかかる料金

訪問リハビリテーションは、1回(20分)のサービスを行った場合で307円かかります。40分のサービスについては、20分を2回行ったと考えます。

※自己負担割合が1割の方の金額です。一定の所得がある場合は、所得に応じて2割または3割負担となります。

※上記は基本的な利用料(「介護報酬の算定構造」令和3年4月改定版)です。時間帯(早朝・深夜)やサービス内容、サービス提供事業者の所在地などによって金額は異なります。詳しくは担当のケアマネジャー、もしくは市区町村の高齢者窓口や地域包括支援センターにお問い合わせ下さい。

回数と時間

介護保険には、要介護度ごとに支給限度額があります。その支給限度額内であれば、20分を1回として週6回(例:20分×6回、40分×3回)まで、訪問リハビリテーションが受けられます。

訪問リハビリ以外の選択肢と併用について

続いて、他のリハビリテーションにはどのようなものがあるのか、併用できるのかをみていきましょう。

通所リハビリ

自宅で生活をしている高齢者が、介護保険を利用して受けられるリハビリに、「通所リハビリ(デイケア)」があります。

通所リハビリ(デイケア)では、施設で1~8時間過ごしながらリハビリや体操などを行います。専用のリハビリ機器がそろっていることや、昼食や入浴のサービスも受けらえることが魅力です。集団のリハビリテーションなどもあり、他の利用者との交流の機会にもなります。

一方で訪問リハビリは、自宅で利用者の日常生活に沿った、個別のリハビリが受けられるのが大きなメリットです。他者との交流や専門のリハビリ機器はありませんが、リハビリを通して、日常生活の不自由の解消を目指します。

通所リハビリの利用だけでは、自宅の環境での自立が難しく、自宅の環境に特化したリハビリが必要だとケアマネジャーが判断した場合には、訪問リハビリとの併用が可能です。

医療保険のリハビリ

医療保険でもリハビリを提供しています。病院の外来リハビリについては、介護保険の通所リハビリとは異なり、昼食や入浴、送迎のサービスはありません。

病院の外来リハビリと介護保険の通所リハビリ(デイケア)や訪問リハビリは、原則として併用できません。ただし、質問者さんのケースには当てはまりませんが、医療保険での訪問看護やリハビリが優先される「厚生労働大臣が定める疾病等」に当たる疾病の方は、医療保険の訪問看護のサービスとして自宅でリハビリを受けることができます。詳しくはケアマネジャーにご確認ください。

厚生労働大臣が定める疾病等には、以下があります。

  • 末期の悪性腫瘍
  • 多発性硬化症
  • 重症筋無力症
  • スモン
  • 筋萎縮性側索硬化症
  • 脊髄小脳変性症
  • ハンチントン病
  • 進行性筋ジストロフィー症
  • パーキンソン病関連疾患
    • 進行性核上性麻痺
    • 大脳皮質基底核変性症
    • パーキンソン病(ホーエン・ヤールの重症度分類がステージ3以上であって、生活機能障害度がⅡ度又はⅢ度のものに限る)
  • 多系統萎縮症
    • 線条体黒質変性症
    • オリーブ矯小脳萎縮症
    • シャイ・ドレーガー症候群
  • プリオン病
  • 亜急性硬化性全脳炎
  • ライソーゾーム病
  • 副腎白質ジストロフィー
  • 脊髄性筋委縮症
  • 球脊髄性筋委縮症
  • 慢性炎症性脱髄性多発神経炎
  • 後天性免疫不全症候群
  • 頸髄損傷または人工呼吸器を使用している状態

訪問看護でのリハビリ

介護保険サービスの訪問看護でも、医師が作成した訪問看護指示書にリハビリが入っている場合に、看護師やリハビリの専門職からリハビリを受けることができます。定期的に看護師が訪問し、看護師とリハビリ専門職が密に連携を取りながらリハビリに当たります。

リハビリの併用について

それでは、各種リハビリの併用についてまとめます。

介護保険の通所リハビリ(デイケア)+介護保険の訪問リハビリテーション

→通所リハビリに合わせて、自宅でのリハビリが必要だとケアマネジャーが判断したら併用可。

●医療保険のリハビリ+介護保険のリハビリ

→原則不可。ただし、医療保険での訪問看護やリハビリが優先される「厚生労働大臣が定める疾病等」に当たる疾病の方が、医療保険の訪問看護にて自宅でリハビリを受けている場合には、通所リハビリ(デイケア)との併用が可能。

●医療保険のリハビリ+介護保険の通所介護(デイサービス)

→デイサービスでも機能訓練を提供していますが、リハビリではないので併用可

通所リハビリに通いながら訪問リハビリを利用するには

男女の介護スタッフ

最後に、通所リハビリ(デイケア)に通いながら、訪問リハビリを利用する基本手順を確認しておきましょう。

なぜ訪問リハビリを利用したいのか

通所リハビリ(デイケア)と訪問リハビリは基本的に併用可能ですが、通所リハビリと同様のサービス内容になる場合には、通所リハビリ(デイケア)が優先されます。

なぜ訪問リハビリが必要なのか、通所リハビリと併用したい理由、訪問リハビリでの目標について、しっかりと考えをまとめておきましょう。

利用までの流れ

  1. ケアマネジャーに相談をしましょう
  2. ケアマネジャーがケアプランを作成します
  3. 主治医が指示書を作成します
  4. 訪問リハビリテーションのサービス提供事業者を選び、契約をします
  5. 指定日時よりサービス開始 ※上記は基本的な流れです。サービス提供事業所やケアマネジャー、利用者の状況によって異なります。

まとめ

ケガや疾患によりマヒや拘縮がある、だんだん身体が動かしにくいと感じ始めた、退院直後で日常生活に戻るのが不安、飲みこみが悪くなってきた…など、リハビリを始めるきっかけはたくさんあります。

介護保険で受けられるリハビリには、専門機器のある施設に通う通所リハビリ(デイケア)と訪問リハビリの2つがあります。ただし、リハビリをしたい人なら誰でも、両方のサービスを受けられるわけではありません。通所リハビリでは得られないリハビリが必要な場合に、併用が認められます。また、医療保険のリハビリと介護保険のリハビリは、原則として併用はできません。 今後の生活の質を向上させるためにも、ぜひリハビリを継続していきたいところです。リハビリをしたい! という本人や家族のサポートを、この記事ができたのならうれしいです。

※この記事は2021年11月時点の情報で作成しています。

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i.ansinkaigo.jp

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ケアマネジャー:森裕司(株式会社HOPE)
ケアマネジャー  森 裕司(もり ゆうじ)

【経歴】 1982年生まれ。
医療福祉系学校を卒業後、約11年医療ソーシャルワーカーとして医療機関に勤務。
その後、一生を通じた支援をしたいと思い、介護支援専門員(ケアマネジャー)へ転身。
2017年1月 株式会社HOPE 設立
2017年3月 ほーぷ相談支援センター川越 開設
代表取締役と共に、介護支援専門員(ケアマネジャー)として、埼玉県川越市で高齢者の相談支援を行っている。
他に、医療機関で、退院支援に関するアドバイザーと職員の指導・教育にあたっている。
医療・介護に関する新規事業・コンテンツ開発のミーティングパートナーとしても活動。大学院卒(経営研究科)MBA取得している。

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