高齢者の病気やケガがきっかけとなって、急にスタートすることもある在宅介護。大切な家族だからとついつい頑張りすぎて、介護をする人が倒れてしまってはいけません。要介護者本人だけではなく、介護をする家族のためにも知っておきたい“在宅介護のコツ”をまとめました。
- 【コツ1】介護保険を使う
- 【コツ2】使える介護サービスを知る
- 【コツ3】介護疲れを防ぐ
- 【コツ4】経済的な負担軽減制度を利用する
- 【コツ5】仕事と介護を両立させる制度を知る
- 【コツ6】相談先を見つける
- 【コツ7】介護スキルを身に付ける
- まとめ
【コツ1】介護保険を使う
介護や高齢者の身の回りの世話に時間や身体的・精神的負担がかかるようになったら、まず利用したいのが介護保険です。
介護保険制度とは
介護保険は、社会全体で介護が必要な人を支えるために創設された制度です。「要支援1、2」または「要介護1~5」だと認定されると、様々な介護サービスを利用することができます。
サービスを利用した際には費用の一部を支払います。自己負担割合は所得金額によって異なり、1割、2割、3割のいずれかです。
要介護認定を受ける
介護保険制度を利用するには、「要支援1、2」または「要介護1~5」に認定される必要があります。その認定を受けるために必要なのが要介護認定です。
要介護認定の申請は、市区町村の役所の高齢者関係窓口が受け付けます。申請はケアマネジャーのいる居宅介護支援事業者や地域包括支援センターなどの代行も可能です。
その後、専門家による訪問調査と主治医意見書を基に調査と判定が行われ、要介護度が決定します。
要介護認定が出るまでの期間は、目安として申請から30日以内です。
【コツ2】使える介護サービスを知る
続いて、利用できる介護サービスを把握しておきましょう。
介護保険サービス
「要支援1、2」または「要介護1~5」の方が受けられるサービスです。自宅で利用できるもの、デイサービスなど日帰りで施設を利用するもの、短期間施設に入居する宿泊サービス、特別養護老人ホームなどの長期に施設で生活するものなど、数多くあります
福祉用具の貸与や購入、住宅の改修についても補助を受けることができます。介護保険制度を活用して、在宅で介護をする環境を整えましょう。
介護保険外サービス
自宅で利用できる介護サービスには、全額自己負担で受けられる介護保険外のサービスもあります。例えば食事を宅配してもらうサービスや一緒に旅行に行ってくれるトラベルヘルパー、自宅に来て髪を切ってくれる訪問理美容などがあります。
利用者の幅広いニーズに対応できるのがメリットですが、費用が高額になってしまう場合があります。
>>全額自己負担で利用する介護保険外サービス そのメリットと種類は?
市町村のサービス
市町村では介護にかかわる幅広いサービスを提供しています。大人用紙おむつ給付・おむつ代補助や、緊急通報システムの設置、T字杖の無料支給など、サービス内容や対象者は自治体によって様々です。
>>第9回 介護のおむつ代を抑える おむつ給付、おむつ代の助成とは?[PR]
詳しくはケアマネジャーやお住まいの地域包括支援センター、市町村の役所にある高齢者窓口にお問い合わせください。
【コツ3】介護疲れを防ぐ
介護を続けるためには、介護をしている人自身のケアも忘れてはいけません。無理をしないように、上手に次のサービスを利用して、レスパイト(小休止)をとりましょう。
通所介護(デイサービス)を使う
通所介護施設に通い、食事や入浴などのサービスを受けられるサービスです。日中の空いた時間を仕事やリフレッシュのために利用することができます。
ショートステイを使う
短期間(1泊2日から連続して30日以下)入所して、食事や入浴などのサービスを受けられるサービスです。まとまった期間、介護者が介護から離れられるというメリットがあります。
訪問介護サービスを使う
訪問介護サービスには、入浴や排泄の介助を行う身体介護や掃除や調理などの家事を行う生活支援があります。家族にかかる身体的・精神的・時間的負担を軽減することができます。
【コツ4】経済的な負担軽減制度を利用する
介護費用が負担になってしまっている方は、ケアマネジャーや地域包括支援センターなどに利用できる負担軽減制度がないかを相談してみてください。負担軽減制度には、以下のようなものがあります。
高額介護サービス費
介護サービスの1ヵ月の利用料が高額になった際に、申請により負担上限額を超えた分の金額が後から支給される制度です。負担上限額は、所得によって5段階に分けられています。
>>高額介護サービス費で介護費用が安く?手続き方法や具体例も紹介
高額医療介護合算
高額医療・高額介護合算療養費制度とは、世帯単位で医療保険と介護保険の自己負担額の合計金額が基準額を超えた場合に、超えた分の金額が支給される制度です。基準額は所得によって分けられています。
>>意外と多くの人が当てはまる!? 高額医療・高額介護合算療養費制度
特定入所者介護サービス費
所得の低い方が介護保険施設に入所する場合に、食費や居住費の負担を軽減するための制度です。
>>特定入所者介護サービス費とは?対象者や申請方法を解説します
【コツ5】仕事と介護を両立させる制度を知る
急に家族の介護が必要となり、仕事との両立が難しくなってしまった場合には、次の支援制度を利用しましょう。いずれも家族が要介護認定を受けているかどうかにかかわらず利用できます。
詳細はケアマネジャーや地域包括支援センター、勤め先の人事部、ハローワークなどに相談してみましょう。
介護休暇
介護休暇とは要介護状態になった家族の介護や世話を行うために取得できる休暇です。1年に5日間取得することができ、介護の対象となる家族が2人以上の場合は10日まで取得することが可能です。
介護休業
介護休業とは要介護状態の家族を介護するために休業することです。対象家族1人につき、通算93日を限度に3回まで取得することが可能です。
それ以外にも
上記に挙げたほかにも、勤務時間短縮や時差出勤などに関する制度、1ヵ月24時間や1年150時間を超える残業の禁止などの制度があります。 また、こうした制度の利用を申し出たことを理由に解雇や降格など、不利益な取り扱いをすることを禁止しています。
【コツ6】相談先を見つける
介護のプロを頼る
要支援または要介護の認定を受けると、一般的に地域包括支援センターまたは居宅介護支援事業所のケアマネジャーにケアプランを作成してもらいます。ケアマネジャーは身近な介護の専門家として、定期的に利用者宅を訪問します。介護について困ったことがあったら、相談できる心強い存在です。
ケアマネジャーと会う時間が取れないという場合には、自宅を訪れる訪問介護員(ヘルパー)や看護師などに相談をしてみてもいいでしょう。
介護者仲間を作る
介護について話し合える仲間がいるのは心強いものです。家族会やケアラーズカフェ、認知症カフェを利用して、介護者同士で情報交換や相談する時間を取るようにしましょう。
また、安心介護内のQ&Aやみんなの広場を活用してみてください。
【コツ7】介護スキルを身に付ける
介護は知識やスキルを身に着けることで、不安や負担が解消されるものです。
認知症を知る
認知症は種類が多くて症状も幅広いため、介護をしている家族が戸惑ってしまうのはよくあることです。家族がどの種類の認知症であり、症状にはどんなものがあるのかを理解しておきましょう。
介護職員初任者研修を受ける
もし本格的に介護の知識やスキルを身に着けたくて、週に1日の時間を作れるのであれば、介護職員初任者研修の受講もおすすめです。介護の制度や認知症、そして効率的で腰を痛めない体の動かし方などについて学べます。
数万円の受講料がかかりますが、介護の仕事に就けば無料という学校もあります。介護と両立できる仕事として、訪問介護員の仕事に就けるのも魅力のひとつです。
介助のコツを知る
排泄や体を清潔に保つ介助の方法を知っておくと、介助がぐっと楽になります。前述の介護職員初任者研修を受けるほかに、自宅で介護サービスを提供してくれている訪問介護員(ヘルパー)や看護師、リハビリの専門職にやり方を聞いてみるといいでしょう。
まとめ
在宅介護がスタートしたら、まずは介護保険制度を利用するためにも要支援・要介護認定を受けましょう。介護保険制度以外でも、利用できる介護サービスはたくさんあります。ケアマネジャーや地域包括支援センターを活用して、上手に情報を収集してみてください。
介護の相談相手を見つけること、そして介護のために仕事を辞めないことも在宅介護の大切なコツです。
ケアマネジャーや介護の専門職は、利用者本人だけではなく介護家族の味方でもあります。気軽に相談をしてみてください。金銭的な負担が重くなったときには、負担軽減制度の利用も忘れずに!
※この記事は2020年2月時点の情報で作成しています。

訪問介護事業所職員、福祉用具専門相談員。2015年から安心介護に関わっており、お話を伺った介護家族や介護職員の影響で介護職員初任者研修を取得し、訪問介護の仕事をスタートしました。2022年には介護福祉士、認知症ケア専門士の資格を取得し、自宅で介護をされる人・介護をする人、どちらも大切にしながら訪問介護の仕事を続けています。