認知症と慢性疾患のある父ですが、グループホームへの入居を検討しています。グループホームの医療体制はどうなっていますか? グループホームでは看取りもお願いできますか?

質問

質問者現在ひとり暮らしをしている90歳の実父ですが、認知症はあるものの穏やかで人と話すのが好きなことから、グループホームへの入居を考えています。ただ、慢性疾患があるので医療体制が不安です。また、看取りをしていないのであれば将来的に移動しなくてはいけないのは、大変かなと…。

グループホームの医療体制や看取りについて教えてください。

 

 

専門家施設選びは悩んでしまいますよね。認知症グループホーム(認知症対応型共同生活介護)は、認知症の方が共同生活を送る施設です。24時間体制で介護職員のサポートを受けながら生活しますが、看護師の配置については必須ではないため、医療ニーズが高くなると対応が難しい施設もあります。ただし、病院やクリニックを併設しているグループホームもあり、医療体制は施設によって異なります。看取りについても同様です。

この記事ではグループホームの医療体制や看取りについて、グループホーム以外で看取りのできる施設について紹介しています。ぜひ今後の参考にしてください。

 

グループホーム(認知症対応型共同生活介護)とは?

認知症グループホーム(認知症対応型共同生活介護)とは

まずは、認知症グループホーム(認知症対応型共同生活介護)の内容を確認しましょう。

認知症グループホームの特徴

認知症グループホームは、認知症の方が24時間体制の介護職員のサポートを受けながら共同生活を送る施設です。介護保険では、「認知症対応型共同生活介護」と呼ばれています。

認知症グループホームでは、台所やリビングなどの共同スペースを共有する共同生活住居(ユニット)で、5人~9人の利用者が一緒に生活を送ります。食事の買い出しや調理、配膳、そして居室の清掃や洗濯などを、利用者とスタッフが一緒に行います。入浴・排泄などの身体介護も提供され、レクリエーションやお散歩などの外出、季節ごとのイベントなども充実した施設です。

少人数でアットホームな環境で、できるだけ役割を持って日常を送ることで、認知症の症状を改善し、本人の失いかけた能力を維持することを目指します。

認知症グループホームの対象者

要介護1~5の認定を受けていて、認知症と診断されている方が対象です。要支援2で認知症の方は、介護予防認知症対応型共同生活介護になります。65歳未満の若年性認知症の方も、上記に当てはまれば利用が可能です。詳しくは地域包括支援センターや市区町村の高齢者担当窓口にお問い合わせください。

また、介護が必要になっても、住み慣れた地域で生活できるように支援する事を目的とした「地域密着型サービス」のため、原則としてグループホーム(認知症対応型共同生活介護)の事業所と同じ市区町村に住んでいる必要があります。

認知症グループホームでかかる費用

認知症グループホームでは、1日ごとに認知症対応型共同生活介護(要支援2は介護予防認知症対応型共同生活介護)費がかかります。この費用は施設内のユニットが、1つか2つかで異なります。

ユニットが1つの場合に、ひと月(30日)にかかる金額をみてみましょう。

※自己負担割合が1割の方の金額です。一定の所得がある場合は、所得に応じて2割または3割負担となります。

※上記は基本的な利用料(「介護報酬の算定構造」令和3年4月改定版)です。サービス内容、サービス提供事業所の所在地などによって金額は異なります。詳しくは担当のケアマネジャー、もしくは市区町村の高齢者窓口や地域包括支援センターにお問い合わせ下さい。

この他に、各種加算、居住費、光熱費、共益費、食材費、おむつ代、理美容代などの日常生活費が別途かかります。

また、入居時には0円~数十万円の初期費用が掛かります。この初期費用は、敷金として使われ、退去時に発生経費分を差し引いて返還される場合や、入居一時金として預けておき、入居期間に応じた金額が退去時に返還される場合があります。詳しくはそれぞれの施設にご確認ください。

医療体制と看取りについて

続いて、認知症グループホームの医療体制や看取りについてみていきましょう。

認知症グループホームの医療体制

平成27年度に老人保健健康増進等事業が実施した「認知症グループホームを地域の認知症ケアの拠点として活用するための調査研究事業報告書」によると、死亡を除く退去の判断に至った背景として最も多かったのが、「医療ニーズの増加」(34.5%)です。

認知症グループホームには提携の医療施設がありますが、医師は配置されていません。看護師については、事業所の職員、または病院、診療所、訪問看護ステーションとの連携により、1名以上確保している事業所もあり、医療ニーズの高い利用者さんに対応しています。

医療ニーズの高い方や心配な慢性疾患がある方は、病院やクリニックが運営している認知症グループホームや複合型施設のグループホームを探すのが良いでしょう。複合型施設とは、「1階:特別養護老人ホーム」+「2階:グループホーム」+「3階:看護小規模多機能型居宅介護」などのように、いくつもの高齢者向け施設が同じ建物内にある施設です。グループホームには看護師が常駐していなくても、同じ敷地内のどこかに看護師がいる複合型施設なら安心です。

このように、グループホームによって対応できる医療的ケアは異なります。どこまで対応が可能なのか、医療ニーズが高くなった際に提携先の介護施設に移動できるのかなどを、事前に確認しておくといいでしょう。

看取りについて

認知症グループホームでは、施設で看取りを行うと「看取り介護加算」が算定されます。国も認知症グループホームでの看取りを進めていく方針ですが、実際に対応しているかどうかは、施設によって異なっています。

看取りまでお願いしたい場合には、看取りの指針や実績について確認しておくようにしましょう。

看取りのできる施設について

グループホームの他に、看取りまで対応できる施設には、次のようなものがあります。

特別養護老人ホーム

原則として要介護3以上の、常に介護が必要な方が利用できる施設です。日常生活上の支援を受けながら暮らします。ターミナルや看取りにも対応しており、終の棲家として選択する方も少なくはありません。介護保健施設の中でも特に利用料金が安く、サービスが手厚いため、利用希望者が多く、入所までに時間がかかることあります。

介護療養型医療施設(介護療養病床)

要介護1以上で、長期療養が必要な病状が安定期の方が利用できる施設です。胃ろうなどの経管栄養やインスリン注射、たん吸引、カテーテルなどの医療的ケアを必要とする安定期の方を対象としています。

医学的管理の下での長期療養が可能で、日常生活上の支援、医療的ケア、リハビリテーションなどのサービスを提供しています。ターミナルケアや看取りの対応も可能です。すでに廃止が決定しています。

介護医療院

廃止が決定している介護療養型医療施設(介護療養病床)の受け皿となる施設です。要介護1以上で、長期療養が必要な病状が安定期の方が利用できます。介護療養型医療施設(介護療養病床)と同様に、医学的管理の下での長期療養が可能で、日常生活上の支援、医療的ケア、リハビリテーションなどのサービスを提供しています。

1人当たりの床面積も広く、プライバシーへの配慮も考えられており、長期療養の場だけではなく生活の場であることを重視しています。

介護付有料老人ホームなど

24時間365日体制で施設の職員、または提携している外部の事業所から介護サービスを受けられる「特定施設入居者生活介護」に対応している施設でも、看取り加算が適用されます。

「特定施設入居者生活介護」に対応している施設には、介護付有料老人ホーム、介護型ケアホーム(軽費老人ホームC)、一部のサービス付き高齢者住宅などがあります。

ただし、実際に看取りを行う体制が整っているかは、施設によって異なります。看取りまでお願いしたい場合には、看取りの指針や実績について確認しておくようにしましょう。

まとめ

認知症グループホーム(認知症対応型共同生活介護)では、認知症の方が介護スタッフの支援を受けながら、役割を持って共同生活を送ります。住み慣れた地域で暮らし続けながら、日々の生活を通して認知症の進行予防や症状の改善を目指す施設です。認知症だけれども、支援があれば自立した生活が送れる方、人と関わりながらアットホームな環境で生活したい方に適しています。

対応できる医療的ケアには、施設によって差があり、医療ニーズが増えたことをきっかけに退居される方も少なくはありません。医療ニーズが高い方は、医療機関との連携体制や看護師が常駐しているかどうかを確認しておきましょう。看取りについても、施設によって取り組みや実績が異なります。看取りまでお願いしたい場合には、看取りの指針や実績について確認しておくようにしましょう。

※この記事は2022年2月の情報を元に作成しています。

 

i.ansinkaigo.jp

 

i.ansinkaigo.jp

 

ケアマネジャー:森裕司(株式会社HOPE)
ケアマネジャー  森 裕司(もり ゆうじ)

【経歴】 1982年生まれ。
医療福祉系学校を卒業後、約11年医療ソーシャルワーカーとして医療機関に勤務。
その後、一生を通じた支援をしたいと思い、介護支援専門員(ケアマネジャー)へ転身。
2017年1月 株式会社HOPE 設立
2017年3月 ほーぷ相談支援センター川越 開設
代表取締役と共に、介護支援専門員(ケアマネジャー)として、埼玉県川越市で高齢者の相談支援を行っている。
他に、医療機関で、退院支援に関するアドバイザーと職員の指導・教育にあたっている。
医療・介護に関する新規事業・コンテンツ開発のミーティングパートナーとしても活動。大学院卒(経営研究科)MBA取得している。

ホームページはこちら