50代の夫ですが、最近数秒前に考えていたことを忘れてしまうことや物忘れが増えました。これは若年性認知症でしょうか? 他に考えられる原因があれば教えてください。

質問

質問者50代の夫ですが、最近数秒前に考えていたことを忘れてしまうことが増えました。何かを考えて立ち上がったのに、「何だっけ?」と思うことは誰にでもありますが、その回数が非常に多いです。また、人の名前が出てこないこと、約束を忘れてしまうことも増えています。

 

最近は部署移動と、義父の脳梗塞などが重なったこともあり、ストレスや疲れもあるのかもしれません。仕事でのうっかりミスも増えていること、物忘れの自覚があることで、本人も落ちこんでいますし、ささいなことでイライラすることも増えてきました。

これは若年性認知症でしょうか? 他に考えられる原因があれば教えてください。

専門家生活に変化があったタイミングとお義父様の病気が重なったとのこと。大変だったことでしょう。数秒前に考えていたことを忘れてしまうことや物忘れは、誰にでも起こることです。それでも回数が今までになく増えると、心配になってしまいますよね。

最近目立つ物忘れの原因として考えられるものの1つに、脳疲労があります。この記事では、脳疲労とは何か、若年性認知症との違いについて解説します。また、気になるときの受診科についても紹介するので、ぜひ現在や今後の生活の参考にしてください。

50代の夫ですが、最近数秒前に考えていたことを忘れてしまうことや物忘れが増えました。これは若年性認知症でしょうか? 他に考えられる原因があれば教えてください。

脳疲労とは

脳疲労とは、名前の通りに脳が疲れた状態です。まずは、脳疲労の基礎知識についてみていきましょう。

脳疲労の症状

質問者さんのケースのように、人の名前が出てこなくなったり、何かをしようとして立ち上がったのに何をしようとしたのか忘れたり、約束を忘れてしまったり、うっかりミスが増えたりといった症状が現れます。脳の記憶に関する機能のうち、「検索をして取り出す」機能が落ちるために出る症状です。

また、思考力、判断力、集中力、意欲が低下したり、感情のコントロールができずにすぐに怒ったり泣いたりするようになります。

その他には、自律神経の乱れによる倦怠感、頭痛、めまい、便秘、不眠などの身体症状も引き起こされることがあります。

脳疲労の原因

脳に情報を入れる作業(インプット)とそれを取り出す作業(アウトプット)のバランスが崩れていることが原因です。情報化社会により、私たちは常日頃からスマートフォンやパソコンで多くの情報に触れています。脳が働き過ぎの状態になると、記憶や感情にかかわる神経伝達物質の動きが低下してしまい、脳疲労が起こるのです。

また、複数の業務を並行して行うマルチタスクも、脳を疲れさせる原因です。質問者さんのケースでは、部署移動に伴って業務が立て込んでいる時期に、ご家族の病気が重なったために、脳が疲れてしまったのかもしれません。

また、20代や30代に多い物忘れでは、脳で考える機会や刺激が減ったことで起こるものもあります。

>>まだ30代なのですが、最近文字を忘れたり、いつも入力している暗証番号を忘れたりといったことが続いています。これって若年性健忘症や若年性認知症というものでしょうか?

若年性認知症と脳疲労の違い

それでは、若年性認知症と脳疲労にはどのような違いがあるのかをみていきましょう。

若年性認知症とは

若年性認知症とは65歳未満で発症する認知症のことです。認知症にはいくつかの原因疾患がありますが、高齢者の認知症では、アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症が4大認知症と呼ばれています。若年性認知症では、アルツハイマー型認知症が最も多いのは高齢者の認知症と同様ですが、脳血管性認知症、前頭側頭型認知症、外傷による認知症が続いています。

若年性認知症は、仕事や子育ての現役世代である40代後半から、比較的男性の方がなりやすい傾向がみられます。

若年性認知症で最初に気づく症状

若年性認知症では、高齢者の認知症と同様に、原因疾患によって初期のうちに現れる症状は異なります。

東京都健康長寿医療センター研究所の調査によると、若年性認知症ではないかと最初に症状に気づいた年齢は、全体の平均で56.8歳です。最初に気づいた症状で最も多かったのは、「物忘れが多くなった」(66.6%)。「職場や家事などでミスが多くなった」(38.8%)、「怒りっぽくなった」(23.2%)、「何事にもやる気がなくなった」(22.6%)がこれに続いています。

脳疲労との違い

上記で紹介した最初で気づく症状は、脳疲労の症状と非常によく似ています。しかし、脳疲労と認知症の物忘れには違いがあります。

認知症の物忘れは、体験自体を忘れてしまうのが特徴で、本人に物忘れの自覚はありません。脳疲労の物忘れは、記憶を検索して取り出す機能が低下して起こるものであり、体験自体を忘れているわけではありません。また、本人には物忘れの自覚があります。

 

若年性認知症のチェックポイント

また、若年性認知症では日常生活で次のような変化が起こります。

  • 同じことを何度も聞く/話す
  • 大切な約束を忘れる
  • 財布や携帯電話、鍵などを無くしてよく探している
  • 無くしたものを、家族が盗ったと主張する
  • よく知っているはずの道で迷ってしまう
  • 使い慣れた家電製品の使い方を忘れてしまう
  • やり慣れた仕事の手順を忘れる/ミスが増える
  • いつも同じ服を着ている/季節に合った服装ができなくなる
  • 風呂に入りたがらない
  • 趣味を辞めてしまう/外出をしたがらない
  • 怒りやすくなった/攻撃的になった

>>まだ50代ですが父の様子がおかしいです。仕事でもミスをしているようで、若年性認知症ではないかと心配しています。どのような症状があり、どの診療科を受診したらいいのかを教えてください

受診科について

気になる症状が出てきたら、こんなことで病院に行っていいのかな? と思うかもしれませんが、気づいた症状に大きな疾患が隠れている可能性もあります。安心するためにも病院を受診してみると良いでしょう。

診療科について

物忘れが気になる場合に受診する科は、精神科、脳神経外科、神経内科、物忘れ外来などです。迷ったらかかりつけ医に相談してみてもいいでしょう。専門医療機関への紹介状を書いてもらうこともできます。

若年性認知症かもと不安なら

若年性認知症の相談窓口が、都道府県ごとに設置されています。認知症支援コーディネーターが配置されており、本人や家族だけではなく、職場の人などの周囲の人も相談できます。

(参考):全国各地の専門相談窓口(外部サイト)

その物忘れは脳の疲れが原因かも

人の名前が出てこなくなったり、数秒前に考えていたことを忘れてしまったりする、いわゆる「ど忘れ」は誰にでも起こるもので、それは「脳疲労」が原因かもしれません。最近では、スマートフォンなどで大量の情報に触れる機会も多く、脳がオーバーワーク気味になりがちです。脳が疲れているなと思ったら、ボーっとする時間を意識して作る、入ってきた情報をアウトプットして一度情報を整理する、しっかりと眠る、栄養バランスの良い食事を取る、など、脳に良い生活を意識してみてはいかがでしょうか。

物忘れの自覚がない、日常生活に支障が出ている、今までできていたことができなくなった…など、このような症状に気づいた場合は、若年性認知症の可能性もありますので、病院を受診するようにしましょう。

※この記事は2022年2月の情報を元に作成しています。

 

i.ansinkaigo.jp

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医師:谷山由華
監修者:谷山 由華(たにやま ゆか)

医師:谷山 由華(たにやま ゆか)

【経歴】
・防衛医科大学校医学部医学科卒業
・2000年から2017年まで航空自衛隊医官として勤務
・2017年から2019年まで内科クリニック勤務
・2019年から内科クリニックに非常勤として勤務、AGA専門クリニック常勤

内科クリニックでは訪問診療を担当。内科全般、老年医療、在宅医療に携わっている