高齢者についての記事でフレイルということばを見かけるようになりました。親には最期まで元気で過ごしてほしいのですが、家族ができることとはどのようなことなのでしょうか。具体的に教えてほしいです。

質問

質問者

元気だった両親も2人そろって後期高齢者となりました。普通の生活には問題がありませんが、最近ちょっとしたふらつきやつまずきが見られるようになってきました。いつまでも若々しさを保っていてほしいですが、「年だから」と本人たちも周囲もあきらめているところがあります。要介護だけは避けたいのですが、フレイルという状態なのではないかと思われます。それについて詳しく知りたいと思っています。どのような点に注意をしてあげれば良いのでしょうか。       

 

 

専門家

高齢になると身体面や精神面などの少しのトラブルをきっかけにして、容易に要介護状態に移行してしまいます。このように健康な状態と介護などのサポートが必要な状態の中間にある状態をフレイルと呼びます。つまりフレイルは要介護状態になる可能性が非常に高く、いわば入り口とも呼ぶことができます。 その反面、高齢であってもいつまでもお元気な方もいらっしゃいます。フレイルは予防することが可能なのです。

ここでは、フレイルに関する基礎知識と介護予防のためにできることを解説していきます。

要介護防止のキーワード?フレイルとは

要介護防止のキーワード?フレイルとは



高齢化が急激に進む中、要介護予防の施策が次々に打ち出されています。そこで注目されているのがフレイルということばです。最初にフレイルの基本的な情報をご紹介していきます。

フレイルの基礎知識

フレイルは要介護状態の入り口、つまり「未病」と似たような状態を指すと考えれば分かりやすいかもしれません。まだ介護が必要なわけではないけれど、いつそうなってもおかしくはない、というところです。

フレイルということばは海外で使われている「Frailty」が語源となっており、これは「虚弱」「脆弱」という意味です。

加齢にともなって筋肉や心身が弱り、脆くなった状態を指します。身体や心の活力が失われつつあり、慢性疾患や神経痛などでやや生活が不便になっている状態です。イメージとしては歩けるけれど、立ち座りに時間がかかったり杖が必要だったりといった感じでしょうか。

フレイルはまだ完全に介助を必要としているわけではなく、適切な対処によって生活機能の維持が向上する可能性があります。

足腰だけの問題ではないフレイル

フレイルには、身体の衰えのように表面的なものだけではなく、さまざまな状態があります。もっとも分かりやすいのは足腰や背中などの衰えに現れる筋肉フレイルですが、認知機能の衰え、老人性のうつ症状となる精神的なフレイルもあります。

また歯肉炎や歯周病、歯のぐらつきといった口腔関連のフレイルも生活の質を低下させる原因となります。さらに独居などによって世間との接点を失い、人間関係が希薄になるり閉じこもりるといった社会的な状態もフレイルのひとつとされています。

このようにフレイルは生活全般にわたって、要介護の要因となる可能性のある状況を指しており、目に見えるものだけでないことに留意しなければなりません。

75歳から一気に増加

フレイルは年齢が上になるほど、リスクが高まります。60代の割合は5%にとどまりますが、70代後半では20%、さらに80代では35%と年代ごとに増えていきます。

特に神経疾患や認知機能についての障害が見られない場合でも、1割以上の高齢者がフレイルであると見られています。

きっかけとなるものに多く見られるのは持病や生活習慣病の悪化、転倒などによる骨折があり、日常生活の中で安全と健康を保つことの重要性が分かります。

フレイルのかんたんチェック

フレイルのかんたんチェック


 

親や家族がフレイルではないかと考えたとき、どのような点に着目すれば良いのでしょうか。かんたんにできるフレイルのチェックをご紹介します。

急激な体重低下

特に内臓疾患などがないのに、急に痩せてきたという場合にはフレイルの疑いがあります。目安は6か月で2~3kg以上の体重の低下です。食が進まず、食べたいものがない。食べ物に興味を示さないなど、これまでと違う様子がないか注意してみましょう。

筋力の低下

若いころと比べれば、年齢とともに多少は歩行速度が落ちてくるものです。しかし同年代と比べても極端に遅い、短期間のうちに歩くのが遅くなったと感じるのであれば、筋力が低下している可能性があります。 サッシ窓のカギが開けられない、ボトルキャップを回せないなど、それまで普通にできていたことが難しくなったら要注意です。

社会性がなくなった

社会的なフレイルでは、極端に人との付き合いに対して億劫がるといった様子が見られます。誘っても外に出たがらない、それまで日課にしていた散歩を止めてしまったなどという様子があれば、フレイルによるものかもしれません。 顔見知りとも話をしたがらないのであれば、認知機能に衰えが生じ、コミュニケーションが取りにくくなっているとも考えられます。 

介護予防としてのフレイル

介護予防としてのフレイル

フレイルは要介護への入り口とも言える段階ですが、先にあったように適切な対応ができれば進行を食い止められます。介護予防の観点から、フレイルを受け止めることが大切です。

フレイルの時点なら改善できる

年齢によって次第に体力が低下してくるのは、る程度はいたし方ない部分もあります。しかし生理的な衰えに加え、外的なストレスなどの要因などで、急激に衰弱するのは避けたいものです。

高齢者は少し体調を崩したり、小さなケガでも、日常生活を送るのに大きなダメージとなることがあります。できるだけ体力や抵抗力が落ちないように気をつけるだけでも、要介護状態に陥ることへの回避策となります。

フレイルは介護が必要になる可能性が高い状態にはありますが、周囲が早くそれに気づき、でき得る限りのサポートをすることによって改善へと導けます。

フレイルを放置することでその先には、要介護状態、そして寝たきりになるかもしれないという状態が待っているかもしれません。本人はもちろん、それを見守る人たちにとってもフレイルの時点で食い止めることが、将来的に幸せな生活を継続できることにつながります。

フレイルへの気づきが重要

高齢者が自分自身でフレイルの状態であることや、その深刻さに気づくのは難しいかも知れません。これまでと同じ生活を送ってきたはずなのに、何か疲れやすい、意欲が起きないと感じても、年のせいだと納得してしまっている人もいるでしょう。フレイルから状態を悪化させないためには、周囲による早期発見が介護予防のカギとなります。

家族だけでは負担が大きいと思われるときには、ケアマネージャーや医師、理学療法士など、適宜、多方面からのサポートを受けるようにしてください。

まだ介護認定を受けていないという場合でも、地域包括支援センターなど市町村が高齢者に関する相談窓口を設けています。介護認定を受けていなくても参加できる介護予防教室などを開催している場合もありますので「年齢で弱ってきただけだ」と決めつけずに、フレイルチェックの結果をもとに問い合わせてみるのがおすすめです。

フレイルサイクルを阻止する

心身の衰えについて悪循環に陥ると、抜け出すことがかんたんではなくなります。食欲不振から低栄養、筋力と体力の低下が基礎代謝の低下きたし活動量を減少させます。行動が少なくなると食欲不振となり、この一連の流れはフレイルサイクルと言われます。その先には、さらなる筋肉量の低下や病気への抵抗力の低下という悪循環が待ち受けています。

また食事量が落ちることで、脳に十分な栄養が行きわたらなくなることでり、認知機能に障害をきたすとの衰えから精神活動にも大きな影響を与えるようになります。

どこかでこのフレイルサイクルを断ち切らなければ、やがては介護が必要となっていきます。

フレイルを防止・改善するために

フレイルを防止・改善するために 

フレイルは普通に生活ができる状態と介護が必要になる状態との中間ラインです。フレイルの状態から改善し、生涯にわたって現在と変わりなく過ごしてもらうために、できることはあります。

栄養状態をチェックする

高齢者になると、あまり栄養のバランスに気を回さなくなります。特に年代が高いほど、炭水化物に偏った食事内容を長年続けている傾向があるため、年齢に合わせた適切なカロリーや必須栄養素を考えてあげる必要があります。

ただ本人の意志を無視して、無理強いするようなことは避けてください。食欲不振がある場合には、本人の好きなものや無理なく食べられるものからスタートし、少しずつ他のものも食べられるように工夫していきましょう。気になる状況がある場合には、医師と相談すると良いでしょう。

高齢になると特に恐ろしいのが、骨折です。寝たきりになる原因として、常に上位に挙げられています。骨が脆くなり、知らないうちに圧迫骨折していることもあります。

骨粗鬆症の検査を行い、現状を把握しながら対応を考えていきましょう。

病気をコントロールする

もともと持っている病気や、生活習慣からフレイルが進行していくケースも多く見られます。定期的な診察を受け、受診や投薬が中断しないように注意しておきましょう。

喫煙者では慢性閉塞性肺疾患(COPD)の症状が多く見られ、フレイルの原因となる可能性が高くなります。喘息を悪化させるなどの要因ともなるため、喫煙を止めさせる努力を家族でしていきましょう。

流行性の病気にも注意する必要があります。感染症の予防に努め、早めにワクチン接種を受けるなどできる限りの手段を講じるようにしていきます。

活動を促す

フレイルの改善には、活動量を増やすことが重要ですが、その為には本人の心理面も大きく関係します。

天気の良い日には、家族が散歩に誘う、ドライブや買い物に連れ出すといった積極的な声かけをしていくと行動を促すきっかけとなります。

趣味やサークルなどへの参加を促すには、知人や友人の力を借りることも一つの方法です。出かけることが億劫になっていても楽しく打ち解けたひと時を過ごすことができれば、本人も再び意欲を示す可能性が出てきます。

身体を動かせば、つられて心にも動きが出てきます。家族一緒にかんたんな体操を、笑顔で続けてみてください。

フレイルを知ることは要介護防止の第一歩

親に対して「何だか急に年を取ったなあ」と感じたら、それがフレイルに気づくチャンスです。具体的にどのような点からそう感じたのかを、考えてみましょう。

おしゃれ好きだった人が服装に構わなくなった、井戸端会議をしなくなった、最近急に痩せた、などの異変は家族にしか気づけません。足元がおぼつかなくなったのを「年のせい」と見逃していると、やがては要介護のリスクとなる可能性もあります。

フレイルということばを良く知れば、その重要性が理解できるでしょう。いつまでも自宅で元気に過ごしてもらうためにも、フレイルを意識しながら生活していきましょう。

※この記事は2019年10月時点の情報で作成しています。

 

監修者:寺岡純子

監修者:寺岡純子(てらおか じゅんこ)

主任介護支援専門員 看護師
合同会社 カサージュ代表
看護師として病院勤務8年、大手介護事業者で約19年勤務し管理職を経験。
2019年8月合同会社カサージュを立ち上げ、「介護特化型研修事業」「介護離職低減事業」など介護に携わる人への支援を行っている。企業理念は「介護に携わるすべての人の幸せな生活をサポートする」。