常に介護が必要になると、在宅での生活が難しくなることがあります。本記事では、介護度の高い方が安心して生活できる特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)の対象者やサービス内容、費用などについて解説しています。“終の棲家”をお探しの方は、ぜひご確認ください。
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- 特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)とは?知っておきたい基本ポイント
- 特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)のメリットとデメリット
- 介護特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)の対象者
- 特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)のサービス内容
- 特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)の退去要件
- 特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)でかかる料金
- 特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)に入所するまでの流れ
- 看取りまで任せられる終の棲家をお探しの方に
特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)とは?知っておきたい基本ポイント
特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)の基本ポイントを確認していきましょう。
常に介護が必要な方のための生活施設
特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)とは、常に介護が必要なため自宅での生活が難しいと認められた方が、食事や排せつなどの介護を受けながら生活する介護施設です。略して“特養”と呼ばれ、社会福祉法人や地方自治体などが運営しています。
有料老人ホームとの大きな違いは、介護保険が適用される公的な生活施設だという点です。入所時に支払う初期費用もなく、費用に対してサービスが充実しているので、非常に人気があります。そのため入居までに順番待ちをする必要があるケースも少なくはありません。安心介護内の投稿を見てみると、「申し込みをして半月で順番がきた」という声もあれば、「1年以上待つのはざら」という声もあがっています。待機中はサ高住や有料老人ホームに入居したり、ショートステイの日数を増やして過ごしているという方もいます。
特別養護老人ホームには、どこに居住していても申し込める広域型特別養護老人ホーム(利用定員30名以上)と、その事業所のある市区町村の住民だけが申し込めるサテライト型特別養護老人ホーム(利用定員29名以下)などの地域密着型特別養護老人ホームがあります。
>>サテライト型特別養護老人ホーム(地域密着型介護老人福祉施設)とは?
特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)の職員体制
入所者3人に対して、介護職員または看護職員が1人以上。医師は、健康管理や療養上の指導を行うために必要な数が配置されています。その他には、管理者、栄養士、機能訓練指導員、介護支援専門員などが配置されています。
特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)のメリットとデメリット
特別養護老人ホームのメリットとデメリットを比較してみましょう。
特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)のメリット
- 介護保険が適用される公的な施設なので利用料が安く、所得によっては軽減制度の対象となる
- 初期費用がかからない
- 重度の要介護者を受け入れてくれる
- 終の棲家として看取りの対応も可能
- 24時間、必要な介護を受けられる
特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)のデメリット
- 原則として要介護3以上の方のみが利用できる
- 医療ニーズの高い方は入居ができないことがある
- 利用希望者が多く、希望しても入居までに時間がかかることが多い
介護特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)の対象者
特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)に入居できる対象者を確認しましょう。
特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)の入居対象者
要介護3~5の方で常に介護が必要な方が利用できます。要介護2以下の方は、原則として利用できません。
要介護1、2でも例外が認められるケース
特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)は、原則として要介護3以上の方が入居できる施設ですが、要介護1、2の方でも下記の特例要件に当てはまれば入居が可能です。
- 認知症や知的障害、精神障害などにより、日常生活に支障を来すような症状や行動、意思疎 通の困難さが頻繁に見られ、在宅生活が困難な状態であること
- 家族などからの虐待の疑いがあり、心身の安全や安心の確保が困難な状態であること
- 一人暮らしや老々介護、同居家族が病弱などの理由で、家族などによる支援が期待できず、地域での介護サービスや生活支援の供給が不十分なこと
こうした特例は市区町村ごとに定められています。横浜市などではさらに、「同居家族が就労中や育児中のため支援が期待できないこと」も特例事項として記載されています。詳しくは、入居を希望する特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)のある市区町村の高齢者窓口や地域包括支援センターでご確認ください。
特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)のサービス内容
特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)のサービス内容を見ていきましょう。
特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)のサービス内容
- 日常生活上の世話 移動、排泄、入浴などの介護、居室や共有スペースの清掃、洗濯 など
- 機能訓練 日常生活動作のリハビリテーション
- 健康管理や療養上の世話
- 食事やおやつの提供
- レクリエーション
- 看取り など
特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)の1日の流れ(例)
※サービスの内容は、サービス提供事業者によって異なります
特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)ので入居する部屋のタイプ
- ●従来型個室
- 居室が個室になっているタイプです。トイレや浴室は共用で、洗面台は寝室内にあることが多いです。洗面台やトイレ、ミニキッチンが個室内にあるところもあり、個室内の設備は施設によって異なります。
- ●多床室
- 1部屋4床以下の相部屋です。ベッドの間には棚などで仕切りが作られており、プライベートが確保できるように工夫されています。
- ●ユニット型個室/ユニット型個室的多床室
- 10人以下を1つのユニットとして、共同で食堂や生活室、トイレ、浴室を利用します。居室には個室タイプと、天井と壁との間に隙間がある個室的多床室タイプがあります。
日中は1ユニットごとに介護職員または看護職員が常時1人以上、夜間は2ユニットごとに1人以上配置されています。
特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)の退去要件
終の棲家のつもりで入居する方の多い特別養護老人ホーム。退去しなくてはいけなくなるケースとはどんなものなのでしょうか。主な3つの理由を挙げてみましょう。
医療ニーズが高まった
特別養護老人ホームは医療提供を主目的とした施設ではないため、医療ニーズが高い利用者のサポート体制は十分ではありません。入居後に人工透析が必要になったり、気管切開をしたりなど、医療ニーズが高まると特別養護老人ホームでの生活が難しくなってしまいます。 ただし、胃ろうやたん吸引に関しては、特別養護老人ホームでの対応も可能です。ケアマネジャーや施設にお問い合わせください。
要介護が改善された
特別養護老人ホームは、常に介護が必要な方向けの施設なため、要介護度が改善されると他の施設の利用を考える必要があります。
他の入居者の安全が確保できない時
認知症の症状は人それぞれです。中には「暴力」や「暴言」といった他の入居者や職員に危害を与える症状が出る場合があります。「他の入居者の心身や生命、生活に危険を及ぼす可能性がある」と判断されると退去が迫られますので、注意が必要です。
また、各特別養護老人ホームで定められている「禁止事項」を行ってしまった場合にも、退去を求められます。 その他のケースとしては、利用料金の滞納や入居時の申請に虚偽が発覚した場合などが退去の要件です。
また、入居者が入院した場合、主治医が3ヵ月以内の退院が困難だと判断した場合には退去となる場合があります。詳しくは入居している特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)にご確認ください。
特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)でかかる料金
特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)を利用すると、どのくらいの費用が掛かるのでしょうか。その金額を見ていきましょう。
特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)の1日ごとの基本料金
特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)費は、部屋のタイプや要介護度によって異なります。
従来型個室 多床室 |
要介護1 |
573円 |
要介護2 |
641円 |
|
要介護3 |
712円 |
|
要介護4 |
780円 |
|
要介護5 |
847円 |
|
ユニット型個室 ユニット型個室的多床室 (経過的含む) |
要介護1 |
652円 |
要介護2 |
720円 |
|
要介護3 |
793円 |
|
要介護4 |
862円 |
|
要介護5 |
929円 |
※自己負担割合が1割の方の金額です。一定の所得がある場合は、所得に応じて2割または3割負担となります。
※上記は基本的な利用料(「介護報酬の算定構造」令和3年4月改定版)です。サービス内容、サービス提供事業所の所在地などによって金額は異なります。詳しくは担当のケアマネジャー、もしくは市区町村の高齢者窓口や地域包括支援センターにお問い合わせ下さい。
その他にかかる費用
上記の金額の他に、部屋代と食事代がかかります。基準費用額は、1日当たり以下の通りです。
- 食費:1445円
- 従来型個室:1171円
- 多床室:855円
- ユニット型個室:2006円
- ユニット型個室的多床室:1668円
また、利用者の所得に応じた軽減制度があります。詳しくは担当のケアマネジャーにご確認ください。
その他、おむつ代や洗濯代などの日常生活費(実費相当額)がかかります。
ひと月毎にかかる費用
ひと月毎にかかる費用は、「介護保険の基本料金」+「部屋代」+「食事代」+「日常生活費」+「各種加算」などです。
「要介護3の方が多床室を利用した場合」では、部屋代と食事代を基準費で計算すると、30日当たりで90,660円*となります。
部屋代、食事代は施設によって異なりますのであくまでも目安としてください。また、日常生活費、各種加算は入っていません。
*「介護報酬の算定構造」(令和3年4月改定版)を基に計算しています。
入居時にかかる費用
入居時にかかる保証金などはありません。
特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)に入所するまでの流れ
最後に、特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)を利用する基本手順を確認しておきましょう。
利用方法と入所手続き
- 1.入居したい施設を探す
- ケアマネジャーに相談するか、インターネットなどを利用して自分で探すといいでしょう。サービス内容だけでなく、立地や周辺環境、利用料金などにも注意しましょう。
- 2.気になる施設に見学に行く
- 条件に合う施設を見つけたら、まずは見学に行き、実際の施設の雰囲気や食事の内容を見たり、実際に利用している方やスタッフさんとお話したりして、利用者にとって適した環境であるかどうかを確認することが大切です。体験入居を申し込んだり、ショートステイで利用してみたりしてもいいでしょう。
- 3.申し込みをして待機
- 見学して気に入った施設を見つけたら、事業者に直接申し込みます。複数の事業所への申し込みが可能です。申し込み後、施設が訪問または電話などで本人の状態や環境の調査をして実状を把握。施設の入所検討委員会にて、入所順番が検討されます。多くの場合は待機が必要となります。
- 4.契約
- 入所の順番が来てから改めて意思確認をします。入所希望を伝えると、施設のケアマネジャーが「暫定サービス計画」を作成し、契約に進みます。契約時は、疑問に思うことは積極的に質問をしましょう。
- 【契約時に必要なもの(例)】
- 契約者の戸籍抄本
- 契約者の住民票
- 介護保険被保険者証
- 契約者の印鑑証明、実印
- 身元引受人の印鑑証明、実印
- 健康診断書や診療情報提供書 など
- ※上記は基本的な流れです。サービス提供事業者やケアマネジャー、利用者の状況によって異なります。
特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)の入居の順番の決まり方
特別養護老人ホームの入居の順番は、申し込み順ではありません。本人の調査をしたうえで、施設の入所検討委員会にて下記の項目が評価され、入所順番が決定されます。
- 認知症高齢者の日常生活自立度(主治医意見書)
- 本人の要介護度
- 介護者の状況(単身かどうか、介護者がいても在宅での介護が困難かなど)
- 在宅サービスの利用率
- 施設サービスなどの利用期間
- 特記事項(虐待や本人による暴力、経済状況など)
評価の基準や入所検討委員会が開かれる頻度などについての詳細は、それぞれの施設にご確認ください
看取りまで任せられる終の棲家をお探しの方に
要介護度が重くなったり、認知症の症状により常に介護が必要になると、介護サービスを利用していても在宅での生活が難しくなることがあります。これは一人暮らしや老々介護のケースだけではなく、子世帯の家族と同居していても同じです。「看取りまで任せられる終の棲家で、安心して生活を送って欲しい」という方は、まずは担当のケアマネジャーや地域包括支援センターなどに相談をしてみてはいかがでしょうか。

訪問介護事業所職員、福祉用具専門相談員。2015年から安心介護に関わっており、お話を伺った介護家族や介護職員の影響で介護職員初任者研修を取得し、訪問介護の仕事をスタートしました。2022年には介護福祉士、認知症ケア専門士の資格を取得し、自宅で介護をされる人・介護をする人、どちらも大切にしながら訪問介護の仕事を続けています。