脳梗塞で片麻痺が残り、現在は老健でリハビリ中です。退所後の行き先についてですが、慢性疾患があることと、夜間の痰吸引が必要なため、医療の手厚い施設の方が良いなと思っています。
費用面からも介護医療院を考えており、終の棲家として看取りまでいて欲しいとは考えています。ただし、医療に手厚くても、ベッドにずっと寝たままになるのはかわいそうです。
介護医療院では特養のような機能訓練やレクリエーションなどはあるのでしょうか? 入居までに長く待機しなくてはいけないのでしょうか?
医療ニーズの高いお父様の入居先についての質問ですね。介護医療院は医療ニーズが高い人が療養をしながら生活をする施設です。介護療養型医療施設(介護療養病床)よりも、生活の場であることに重点が置かれています。
ここでは、介護医療院での生活や介護療養病床との違い、待期期間などについて紹介します。現在や今後の生活の参考にしてください。
介護医療院とは
まずは、介護医療院の基礎知識についてみていきましょう。
介護医療院の特徴
介護医療院とは、すでに廃止が決まっている介護療養型医療施設(介護療養病床)の受け皿として、2018年4月に新設された介護保険施設のひとつです。介護と長期療養が必要な要介護1以上の方を対象としています。
医療的ケアが必要なため、特別養護老人ホームや有料老人ホームへの入居が難しい方に選ばれています。食事や排せつなど日常生活上の介護、医療的ケアやレクリエーションなどのサービスを提供しており、ターミナルケアや看取りの対応も可能です。
介護医療院の対象者
介護医療院は要介護1以上で、介護と療養が必要な方を対象としています。病状が急性期の方は利用できません。
I型とⅡ型があり、I型は医師の配置が利用者48人に1人以上(介護療養病床相当)、Ⅱ型は100人に1人以上(老健相当)となっており、I型の方が重篤な身体疾患や身体合併症ある認知症の方を受け入れています。介護職員の配置もI型の方が手厚く、看護職員の配置はどちらも利用者6人当たり1人以上です。薬剤師やリハビリ専門職員なども配置されています。
介護医療院でかかる費用
介護医療院では、1日ごとに以下の料金がかかります。
- 基本料金(部屋のタイプや要介護度によって異なる)
- 食費
- 居住費(部屋のタイプによって異なる)
介護医療院は介護保健施設です。所得に応じて食費や居住費の負担軽減を受けられる「特定入所者介護サービス費」が適用されます。
>>特定入所者介護サービス費とは?対象者や申請方法を解説します
その他にも個別機能訓練加算など介護保険の各種加算、日用品やレクリエーションにかかった費用の実費が掛かります。
また、介護保健施設なので、入所時に支払う初期費用はありません。
介護医療院での生活について
それでは、介護医療院での生活をする際に、提供されるサービスについてみてみましょう。
介護医療院での医療的ケア
医師や看護職員の配置が手厚い介護医療院では、施設サービス計画に基づき、次のようなケアが提供されています。
- 喀痰(かくたん)吸引
- 胃ろうなどの経管栄養(胃ろう、経鼻経管栄養、腸ろう)
- インスリン注射
- 点滴
- 在宅酸素療法
- 褥瘡のケア
- 薬の処方や投薬
- 検査
- 看取りやターミナルケア など
日常的な医学管理の他に、医学的管理の下で介護や機能訓練が提供されているので、安心して生活することができます。
レクリエーションなどについて
介護医療院では、「適宜入所者のためのレクリエーション行事を行うよう努めるものとする」と定められていますが、レクリエーションや季節のイベント、理美容などの日常生活上のサービスの取り組み方は、施設によって様々です。事前に確認しておくと良いでしょう。
機能訓練について
介護医療院では、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士といったリハビリ専門職の指導の下で、運動機能や ADL(日常生活動作能力)の改善を中心とした機能訓練が提供されています。入所後3ヵ月まで利用できる、短期集中リハビリテーションも受けることが可能です。
ただし、介護療養型医療施設(介護療養病床)や介護医療院では、リハビリ専門職の配置は「適当数」とされており、実際の配置人員やリハビリ設備は施設によって異なります。入所前にどれくらいリハビリが充実しているのかを確認しておきましょう。
生活の場を重視した居住スペース
介護医療院は、介護療養型医療施設(療養病床)と比べて、「住まいとしての機能」が充実しています。
居住スペースは、介護療養型医療施設(療養病床)の6.4平方メートル(約4畳)から、老健と同等の8.0平方メートル(約5畳)へと広くなりました。4人部屋であっても、ベッドの間はパーティションや家具で仕切られており、プライバシーに配慮されています。
看取りまで可能
介護医療院には、利用者の看取りやターミナルを支えるという役割もあります。
2019年に実施された「医療提供を目的とした介護保険施設における看取りの在り方等に関する調査研究」では、調査に協力した介護医療院の97.3%が、最近1年間に施設で亡くなられた入所者が「いた」と回答しています。
看取りまで考えて入居する場合、あらかじめ次のような項目を確認しておきましょう。
- 施設の看取りに関する考え方
- 終末期にたどる経過とそれに応じた介護の考え方
- 看取りに際して行う医療行為の選択肢
- 夜間や緊急時を含む、医師や医療機関との連携体制
- 入居者などへの情報提供や意思確認の方法
- 家族への心理的支援に関する考え方
介護医療院では、厚生労働省の定めた「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」などに沿った、看取り・ターミナルケアの実施を目指しています。ガイドラインで重視されているのは、「本人による意思決定を基本としたうえで、人生の最終段階における医療・ケアを進めること」です。
本人の意思が確認できない場合には、家族が変わって決定することになります。本人がどのような希望を持っているのかを、早いうちから確認しておくと良いでしょう。なかなか話題に出せない場合には、エンディングノートを書いてもらうのがおすすめです。
介護医療院の待期期間について
続いて、介護医療院への入居のしやすさについて説明します。
増加傾向だが地域差がある
介護医療院は、廃止の決まっている介護療養型医療施設(療養病床)などからの移行や新設が進んでおり、2021年3月時点で570施設を超えました。ただし、地域差がある状態です。北海道や福岡県、熊本県は30施設以上ありますが、7県が3施設以下となっています。
自治体に確認を
入居時にかかる初期費用がなく、サービスの手厚い介護保険施設である介護医療院は、入居までに待機期間があることは珍しくありません。特別養護老人ホームと比べると、一般的に待機者数は少ない傾向があります。
介護医療院などの各介護保険施設の空床や待機者情報については、市区町村の介護保険関連窓口や地域包括支援センターで確認してください。自治体によっては、インターネット上で情報を公開しているので、検索してみてください。
まとめ
長期間、介護を受けながら療養できる介護医療院は、医療ニーズの高い方にはとても魅力的な施設です。介護療養型医療施設(介護療養病床)と比べて、住まいとしての機能が重視されています。レクリエーションや季節のイベント、機能訓練などについては、施設によって取り組みが異なるので、入居前に確認しておくと良いでしょう。
看取りやターミナルケアにも対応しています。施設の考え方や対応などについて確認しておくのと共に、本人の意思について早いうちから話し合っておきたいものです。
2018年に新設された施設で、設置状況は都道府県によって差があります。介護医療院への入居を検討している方は、各自治体の介護保険関連窓口や地域包括支援センターにて、希望する施設の空き状況を確認しておきましょう。
※この記事は2022年2月の情報を元に作成しています。

【経歴】
1982年生まれ。
医療福祉系学校を卒業後、約11年医療ソーシャルワーカーとして医療機関に勤務。
その後、一生を通じた支援をしたいと思い、介護支援専門員(ケアマネジャー)へ転身。
2017年1月 株式会社HOPE 設立
2017年3月 ほーぷ相談支援センター川越 開設
代表取締役と共に、介護支援専門員(ケアマネジャー)として、埼玉県川越市で高齢者の相談支援を行っている。
他に、医療機関で、退院支援に関するアドバイザーと職員の指導・教育にあたっている。
医療・介護に関する新規事業・コンテンツ開発のミーティングパートナーとしても活動。大学院卒(経営研究科)MBA取得している。
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