2018(平成30年)4月に創設された介護医療院は、医療的ケアが必要な方が利用できる施設です。廃止が決定している介護療養型医療施設(介護療養型病床)の受け皿としてスタートしました。本記事ではそのサービス内容や対象者、費用などについて解説しています。ぜひご確認ください。
- 介護医療院とは?知っておきたい基本ポイント
- 介護医療院の種類
- 介護医療院のメリットとデメリット
- 介護医療院の対象者
- 介護医療院のサービス内容
- 介護医療院でかかる料金
- 介護医療院に入所するまでの流れ
- 長期療養できる住まいを探している方に
介護医療院とは?知っておきたい基本ポイント
まずは、介護医療院の基本ポイントを確認していきましょう。
療養と生活の場を兼ね備えた介護保険施設
介護医療院とは、病状が安定しているものの胃ろうなどの経管栄養やインスリン注射、たん吸引、カテーテルなどの医学的管理が必要な方を対象とした施設です。食事や排せつなど日常生活上の支援と医療的ケアを一体的に提供しており、長期にわたる療養が可能です。ターミナルケアや看取りにも対応しています。
長期療養ができる介護保険施設には、すでに廃止が決まっている介護療養型医療施設(介護療養病床)があります。介護医療院は、その受け皿となる施設として2018(平成30年)4月に創設されました。長く暮らす人が多いので、長期療養の場だけではなく生活の場であることを重視した施設であることが介護療養型医療施設(介護療養病床)との違いです。
1人当たりのスペースが1床あたり8平方メートル以上となっており、介護療養型医療施設(介護療養病床)よりも広く設定されています。多床室でもパーテーションや家具で間仕切りを作るなど、プライバシーに配慮されています。
有料老人ホームとは異なり、介護保険が適用される公的な施設です。入所時に支払う初期費用もありません。
介護医療院の退去について
退去条件は施設によって異なります。問題行動がひどくなり、周囲に迷惑をかけてしまう場合には退去せざるを得ないこともあります。対応できる医療処置の範囲、認知症の方の受け入れ態勢、退去の条件については、契約時に確認しておくといいでしょう。
介護医療院の設備内容
施設の設備も、生活の場であることを重視しています。診察室や療養室、機能訓練室、談話室、食堂、浴室などの他に、介護療養型医療施設(介護療養病床)には定められていなかった十分な広さのレクリエーションルームの設置が定められています。レクリエーションルームは、談話室と兼用されていることがあります。
介護医療院の種類
介護医療院には2つの種類あります。それぞれの違いを見ていきましょう。
Ⅰ型(介護療養病床に相当する施設)
重篤な身体疾患がある方や身体合併症のある認知症高齢者向けの施設です。職員の配置は以下の通りで、介護療養型医療施設(介護療養病床)に相当します。
医師:3人以上。入所者48人に対して1人以上 看護職員:入所者6人に対して1人以上 介護職員:入所者6人に対して1人以上 |
Ⅱ型(介護老人保健施設以上に相当する施設)
Ⅰ型と比べて、状態が安定している方向けの施設です。職員の配置は以下の通りで、介護老人保健施設に相当します。
医師:1人以上。入所者100人に対して1人以上 看護職員:入所者6人に対して1人以上 介護職員:入所者6人に対して1人以上 |
それぞれの施設の数
厚生労働省の資料によると、2019(令和元)年6月30日時点での介護医療院の数は、I型が146施設、Ⅱ型が75施設、Ⅰ型とⅡ型の混合が2施設の合計223施設です。
まだまだ施設の数は少ないですが、2018(平成30)年12月31日時点では合計113施設だったので、半年で倍増しています。今後も施設の数は増えていくことが見込まれています。
介護医療院のメリットとデメリット
介護医療院のメリットとデメリットを比較してみましょう。
介護医療院のメリット
- 医療看護面での対応が手厚い
- 初期費用がかからない
- 介護保険施設なので比較的安く利用でき、所得によっては住居費や食費が減免される費用軽減措置を利用できる
- ターミナルケアや看取りも対応可能
- 介護療養型医療施設(介護療養病床)と比べて生活の場としての機能が充実している
介護医療院のデメリット
- 看護や医師の人員配置が手厚いため、特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)と比べると割高
- まだ施設の数が少ない
- 積極的な治療は行っていない
介護医療院の対象者
介護医療院に入所できる対象者を確認しましょう。
介護医療院が利用できる方
要介護1以上の認定を受けた方で、長期療養が必要な方が利用できます。病状が安定している方が対象で、急性期の方は利用できません。
介護医療院のサービス内容
介護医療院のサービス内容を見ていきましょう。
介護医療院のサービス内容
日常生活上の支援
医師や看護師による管理の下で、排泄介助や移動の介助、口腔ケア、入浴や食事などの日常生活上の支援を行います。
食事は利用者の状態に応じて提供されます。きざみ食やミキサー食、経管栄養、糖尿病・腎臓病などの制限食にも対応が可能です。
療養上の管理、看護
医師や看護職員による健康管理や、症状や体調などに応じた療養上の世話、医療的ケアが受けられます。
ターミナルケア
痛みの緩和や終末期医療などを受けられます。
リハビリ
日常生活を通したリハビリテーションを中心に、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士といったリハビリの専門家によるリハビリテーションの提供が行われています。
レクリエーションなど
療養しながら生活する施設として、レクリエーションや季節のイベントなどが行われています。施設によってレクリエーションの取り組みは異なるので、事前に確認しておくといいでしょう。
※サービスの内容は、サービス提供事業者によって異なります
介護医療院で入所する部屋のタイプ
多床室
1部屋4床以下の相部屋です。一人当たりの床面積は、8.0平方メートル以上と設定されています。ベッドの間には棚などで仕切りが作られており、プライベートが確保できるように工夫されています。
従来型個室
トイレや浴室は共用で、居室が個室になっているタイプです。一人当たりの床面積は、8.0平方メートル以上と設定されています。洗面台やトイレ、ミニキッチンが個室内にあるところもあり、個室内の設備は施設によって異なります。
ユニット型個室/ユニット型個室的多床室
居宅に近い住環境を意識しているため、一人当たりの床面積は10.65 平方メートル以上とより広く設定されています。10人ほどを1つのユニットとして、共同で食堂や生活室、浴室などを利用します。
ユニット型個室的多床室は、「ユニット型準個室」と呼ばれていた部屋タイプです。天井と壁との間に隙間があるため、隣室から音や臭気、照明の明かりが漏れるため、完全な個室とは呼べません。
介護医療院でかかる料金
介護医療院の料金は、Ⅰ型かⅡ型かによって異なります。ここでは数の多いI型の金額を見ていきましょう。
介護医療院の1日ごとの基本料金
介護医療院費は、以下の金額となります。
従来型個室 | 要介護1 | 714円 |
要介護2 | 824円 | |
要介護3 | 1,060円 | |
要介護4 | 1,161円 | |
要介護5 | 1,251円 | |
多床室 | 要介護1 | 825円 |
要介護2 | 934円 | |
要介護3 | 1,171円 | |
要介護4 | 1,271円 | |
要介護5 | 1,362円 | |
ユニット型個室 ユニット型個室的多床室 |
要介護1 | 842円 |
要介護2 | 951円 | |
要介護3 | 1,188円 | |
要介護4 | 1,288円 | |
要介護5 | 1,379円 |
※自己負担割合が1割の方の金額です。一定の所得がある場合は、所得に応じて2割または3割負担となります。
※上記は基本的な利用料(「介護報酬の算定構造」令和3年4月改定版)です。サービス内容、サービス提供事業所の所在地などによって金額は異なります。詳しくは担当のケアマネジャー、もしくは市区町村の高齢者窓口や地域包括支援センターにお問い合わせ下さい。
その他にかかる費用
上記の金額の他に、部屋代と食事代がかかります。基準費用額は、1日当たり以下の通りです。
- 食費:1,445円
- 従来型個室:1,668円
- 多床室:377円
- ユニット型個室:2,006円
- ユニット型個室的多床室:1,668円
また、利用者の所得に応じた軽減制度があります。詳しくは担当のケアマネジャーにご確認ください。 その他、おむつ代や洗濯代などの日常生活費、理美容代(実費相当額)がかかります。
ひと月毎にかかる費用
ひと月毎にかかる費用は、「介護保険の基本料金」+「部屋代」+「食事代」+「日常生活費」+「各種加算」などです。 「要介護3の方がⅠ型の介護医療院で多床室を利用した場合」では、部屋代と食事代を基準費で計算すると、30日当たりで89,790円*となります。 部屋代、食事代は施設によって異なりますのであくまでも目安としてください。また、日常生活費や各種加算は入っていません。
*「介護報酬の算定構造」(令和3年4月改定版)を基に計算しています。
入所時にかかる費用
入所時にかかる初期費用はありません。
介護医療院に入所するまでの流れ
最後に、介護医療院を利用する基本手順を確認しておきましょう。
介護医療院の利用方法と入所手続き
1.入所したい施設を探す
ケアマネジャーまたは治療を受けている病院の地域連携室に相談するか、インターネットなどを利用して自分で探すといいでしょう。サービス内容だけでなく、立地や周辺環境、利用料金などにも注意しましょう。
2.気になる施設に見学に行く
条件に合う施設を見つけたら、まずは見学に行き、実際の施設の雰囲気や食事の内容を見たり、実際に利用している方やスタッフとお話したりして、利用者にとって適した環境であるかどうかを確認することが大切です。事前にショートステイを利用してみてもいいでしょう。
3.申し込む
見学して気に入った施設を見つけたら、入所申し込みをしましょう。この時に初回面談が行われることもあります。診療情報提供書、検査データ、日常生活動作(ADL)などの身体状況のわかる書類などが必要です。
4.入所判定会議
申込み時に提出した資料や面談の内容から、入所が可能かどうかと優先順位(入所待ちがある場合)が決まります。
5.入所前面談
入所が決まったら、施設の医師や看護師、相談員などと面談して、療養生活について話し合います。施設に利用者本人や家族が行く場合もあれば、自宅や入院先に施設の担当者が来る場合もあります。
6.入所日決定/契約
入所日が決まったら契約です。契約内容と共に重要事項説明書という書類が交わされます。わからないことは質問をしておきましょう。
※上記は基本的な流れです。サービス提供事業者やケアマネジャー、利用者の状況によって異なります。
長期療養できる住まいを探している方に
日常的な介護だけではなく、たん吸引や経管栄養、インスリン注射などの医療的ケアが必要になってくると、介護をしている家族には身体的・精神的に大きな負担となります。また、仕事や育児などの自分の生活と介護の両立も難しくなってくるでしょう。
介護医療院は長期療養をしながら、生活することを重視した施設です。医学的管理を受けながら安心して過ごせる施設を探している方は、介護医療院を検討してみてはいかがでしょうか。
※この記事は2021年3月時点の情報で作成しています。

訪問介護事業所職員、福祉用具専門相談員。2015年から安心介護に関わっており、お話を伺った介護家族や介護職員の影響で介護職員初任者研修を取得し、訪問介護の仕事をスタートしました。2022年には介護福祉士、認知症ケア専門士の資格を取得し、自宅で介護をされる人・介護をする人、どちらも大切にしながら訪問介護の仕事を続けています。