療養病床に入所中の義母を自宅に戻したいと考えています。一番心配なのが、腸ろうについてです。腸ろうの人が自宅で過ごすのは可能でしょうか? また、日常生活で気を付けることを教えてください。

腸ろうでの在宅介護は可能?

質問

質問者

3回目の誤嚥性肺炎をきっかけに腸ろうになった義母についてです。現在は療養病床で過ごしていますが、日に日に元気を無くし、自宅に戻りたいと訴えています。

自宅に戻してあげたいとは思っているのですが、気になるのが腸ろうのことです。施設で栄養を注入する様子を見ていたことがあるのですが、自宅で家族ができる自信がありません。特に昼間は、私たち夫婦は日中に仕事をしているため、自宅には90歳の義父しかいません。このような環境で、腸ろうの義母を自宅に戻すのは難しいでしょうか? また、日常生活で気を付けることを教えてください。

 

専門家

経管栄養の1つである腸ろうは、お腹から腸に開けた穴からカテーテルを通して栄養を摂取する方法です。 誤嚥性肺炎を繰り返している方などに選択されています。お腹から胃に穴を開ける胃ろうの造設が一般的ですが、何かしらの事情があると腸ろうが造設されます。腸ろうを造設していても、もちろん自宅で生活していただくことが可能です。

この記事では腸ろうの基礎知識や日常生活で気を付けたいことなどをまとめています。ぜひ、今後の参考にしてください。

 

腸ろうについて知ろう

腸ろうについて理解する

まずは、腸ろうの基礎知識からみていきましょう。

腸ろうとは

腸ろう(腸瘻)とは、お腹から腸に穴を開け、カテーテル(管)を通して栄養を直接入れる「経管栄養法」のひとつです。嚥下障害や認知症などによって、口からの食事が難しくなった方に選択されます。誤嚥や窒息などを防ぎつつ、栄養や水分を摂取できるようにすることで、健康状態を回復させる目的があります。

胃ろうとの違い

腸ろうは聞いたことがないという方でも、「胃ろう」なら聞いたことがあるという方もいることでしょう。胃ろうも経管栄養法の1つで、お腹から胃に穴を開けて、カテーテル(管)を通して栄養を直接入れます。胃がんなどで胃を切除しているなど、何らかの理由で胃ろうが造設できない場合には、腸ろうが造設されます。

腸ろうのメリットとデメリット

【メリット】

  • 栄養を安定的に摂取できる
  • 不快感や苦痛が少なく、生活しやすい
  • 並行して食事や嚥下訓練ができる
  • 胃ろうに比べて栄養剤の逆流が少なく、逆流による誤嚥が予防できる
  • 胃ろうに適さない方にも造設できる

【デメリット】

  • 手術が必要
  • カテーテルの交換が自宅で行えず受診が必要
  • 胃ろうよりチューブが細いため、栄養剤の注入に時間がかかり、内容物が詰まりやすい
  • 腸に直接栄養を入れるため下痢をしやすい
  • 皮膚トラブルや腹膜炎等のリスクがある
  • 誤って抜いてしまった際にろう孔がふさがりやすい
  • 特別養護老人ホームや老人保健施設といった施設での受け入れが難しい場合がある

在宅で腸ろうの方を介護するポイント

腸ろうの介護で気を付けるポイントとは?

続いて、在宅で腸ろうの方を介護するポイントを見てみましょう。

在宅介護での注意点

腸ろうの造設手術をした際には、本人や家族が病院で指導を受け、医師の指示に従うことが大切です。

口からの食事に戻したいと考えている方は、リハビリを始める時期についても医師に相談をして、無理のない範囲で始めてください。

抜去に注意

家族が最も注意したいのが、抜去です。カテーテルを自分で抜いてしまったり、うっかりひっかけたりして抜けてしまうことも少なくありません。腸ろうの穴はふさがりやすいので、抜けていることに気づいたら、すぐに医療機関に連絡をしましょう。

注意したい症状

栄養剤を注入中に以下のような症状が出た場合には、すぐに注入を中止し、かかりつけ医や訪問看護師などに連絡をしましょう。

  • しゃっくり
  • 吐き気や嘔吐
  • 苦しそうな呼吸や顔色の変化、痰が絡むなど、いつもと違う様子 など

詳細については、かかりつけ医や訪問看護師にご確認ください。

日常生活で気を付けたいこと

腸ろうの日常生活で気を付けるポイントは?

最後に、日常生活で気を付けたいことをまとめます。

介護保険サービスを利用しましょう

在宅で暮らしている方は、必ず同居をしている家族が栄養剤の注入をしなくてはいけないというわけではありません。ひとり暮らしの方や高齢者世帯の方、質問者さんのように家族がいない時間帯がある方など、栄養剤の注入に不安がある方は訪問看護師などにお願いすることができます。また、日中は腸ろうの対応が可能なデイサービスを利用しても良いでしょう。 詳細は、ケアマネジャーに相談してください。

腸ろう造設後の日常生活について

腸ろうの周囲は、常に清潔に保つようにしましょう。腸ろうカテーテルのキャップが閉まっていることを確認すれば、特に保護することなく入浴することも可能です。腸ろう周辺をきれいにし、入浴後には清潔なタオルでしっかりと水気をふき取ってください。

栄養剤の注入は、基本的には通常の食事と同様で1日3回です。

腸ろうは洋服で隠れるので、外出も支障ありません。

口腔ケアを継続しましょう

口から食事をしていなくても、毎日口腔ケアを行いましょう。口の中の汚れを誤嚥してしまうことで、誤嚥性肺炎を起こしてしまうことがあります。

リハビリで経口摂取を目指せます

腸ろう造設後にもリハビリを続け、経口摂取に戻ることが可能です。経口摂取と併用することが可能なので、口から食べる咀嚼(そしゃく)や嚥下(えんげ)のリハビリもできます。

口の機能を衰えさせなければ、やがて口からの食事のみに戻れる可能性もあります。

まとめ

腸ろうを造設している方でも、自宅で生活することは可能です。大切なのは、医師の指示に従ってケアすることです。処置の手順や注意事項のほか、注入中や注入後に気を付けたい症状についても確認しておきましょう。

腸ろうへの栄養投与は、病院で指導を受けることで家族が行うことが可能です。仕事があるので毎食の対応が難しい、同居家族が高齢なため不安だ…などの事情がある方は、訪問看護師やデイサービスなどにお願いすることができます。ケアマネジャーに相談し、ケアプランに組みこんでもらうようにしましょう。

この記事が、腸ろうの方を介護しているご家族のお役に立てれば幸いです。

※この記事は2021年12月時点の情報で作成しています。

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医師:谷山由華
監修者:谷山 由華(たにやま ゆか)

医師:谷山 由華(たにやま ゆか)

【経歴】
・防衛医科大学校医学部医学科卒業
・2000年から2017年まで航空自衛隊医官として勤務
・2017年から2019年まで内科クリニック勤務
・2019年から内科クリニックに非常勤として勤務、AGA専門クリニック常勤

内科クリニックでは訪問診療を担当。内科全般、老年医療、在宅医療に携わっている