母が薬の服用を拒否します。認知症なので忘れるのは仕方ないと思いますが、飲むように促しても拒否されます。いい対処方法はありますか?

質問

質問者

最近、認知症の母に数種類の薬が処方されましたが、服用を拒否されてしまいます。理由を聞いても「いらない」の一点張り。病気が悪化しないかとても心配です。

どうすれば薬を飲んでもらえるでしょうか?対処法についてアドバイスが欲しいです。

 

 

専門家

認知症が進行してくると薬の服用を嫌がることはよく見られます。薬の服用ができないと体調の悪化も懸念されるため、何とかしたいものですね。

認知症の人が薬の服用を嫌がるのには、ご本人なりに色々な理由があることが多いです。薬の服用を促すには、その理由に応じた対応をすることがポイントとなります。

ここでは、服薬拒否がある場合に考えられる原因や理由、対処のコツなどをご紹介していきます。

 

ご家族を困らせる「服薬拒否」とは

ご家族を困らせる「服薬拒否」とは

認知症が進行すると、薬の服用を嫌がるようになる方がいます。認知症の方の服薬拒否は珍しいことではありませんが、ご家族にとっては悩ましい問題です。

認知症の方に見られる「介護拒否」の一種

服薬拒否は、認知症の方に見られる「介護拒否」の一種です。介護拒否は文字通り介護を拒む症状で、家族やヘルパーさんによる生活面のサポートを嫌がるようになります。拒否する内容は食事や入浴、トイレなど生活全般にわたり、「症状の現れ方」には個人差があります。

服薬を拒否されると「わがままな性格に変わってしまった」と思うかもしれませんが、認知症という病気の影響によるものであることを認識しておきましょう。

服薬拒否には適切な対応が必要

薬は健康を守るために必要なものなので、服薬拒否の症状が現れたら適切な対処が求められます。ご本人が嫌がるままに放置していると病状が悪化し、深刻な事態に陥る可能性があるので注意が必要です。

次章以降で、服薬拒否の原因や対応のコツをチェックしていきましょう。

なぜ服薬を嫌がるの?考えられる原因・理由

なぜ服薬を嫌がるの?考えられる原因・理由

服薬拒否などの介護拒否は、認知機能の著しい低下によって引き起こされます。認知症が進むと記憶力・理解力・判断力などの様々な認知機能が衰えるため、物ごとに対して適切な判断・対応ができなくなるのです。

服薬を拒否する理由は人によって異なりますが、おおむね以下のような要因が考えられます。

薬の必要性が理解できない

認知機能が低下すると「なぜ自分には薬が必要なのか」がわからなくなるケースがよくあります。また「薬というものが何なのか」さえ理解できず、「よくわからないものは口に入れたくない」という理由で拒否する場合も。

自分が病気であること、病気を治すには薬が必要なことを認識する能力が低下してくると、服用拒否が起こりやすいです。

体調が悪い

体調不良が原因で薬を拒否するケースも見受けられます。例えば、ご本人に「この薬を飲むと具合が悪くなる」といったネガティブなイメージがある場合に起こり得ます。しかし、認知症が進行すると薬と体調との因果関係を周囲の人にうまく説明することができず、シンプルに「拒否」という形で意思表示するようになります。

健康な人であれば、「いつからどのように具合が悪いのか」を順序立てて説明できますが、認知症が進むとそれができなくなり、周囲を困惑させてしまうのです。服薬拒否がある場合は体調不良も念頭に置きましょう。

うまく飲み込めない

高齢になると、食べ物などを飲み込む力が徐々に低下します。嚥下力(えんげりょく)が衰えると薬をうまく飲み込むこともできなくなるため、服薬拒否につながります。大きめの錠剤だけではなく、人によっては小さな錠剤や粉末タイプの薬も飲み込みづらさを感じている場合があるので注意が必要です。

不信感・病人扱いされたくない

認知症が進むと被害妄想の症状が現れることがあり、その影響で身の回りのお世話をする人に不信感を抱くケースも。例えば、薬のことを「毒かもしれない」と疑ったり、「知らない人だから信用できない」と言ったりして服薬を拒みます。

また、「弱い部分を見せたくない」「病人扱いされたくない」という気持ちから薬を嫌がることもあります。若い頃から薬を飲むことに否定的な考えを持っている方の場合も、服薬拒否が起こりやすいです。

服薬拒否は認知機能の衰えによるものが多いですが、プライドや感情が影響していることもあると知っておきましょう。

服薬を拒否された場合の対応ポイント

服薬を拒否された場合の対応ポイント

では、服薬を拒否されたらどのように対応すればよいのでしょうか。対処のコツを5つご紹介しましょう。

無理強いせず、本人のペースに合わせる

基本的に心がけておきたいのは「無理強いはしない」ということです。

薬は健康維持に必要なものなので、本人のためにも無理にでも飲ませたくなる気持ちは理解できます。ですが、先述の通り、ご本人にとって薬は「よくわからないもの」「具合が悪くなるもの」である可能性があります。

自分が納得していないものを無理に飲まされるのは大変なストレスですし、無理強いすると介護をする方に対してネガティブなイメージを持つことも。そもそも、どこも悪くないと思っている人に対して「薬を飲まないと病気が治らないよ」という正攻法は通用しにくいです。

服薬拒否が見られたら、まずはその気持ちを受け止めましょう。ご本人的にタイミングが悪いだけであれば、少し時間を置いたら飲んでもらえる場合もあります。強制するような態度はご本人の拒否感を強める可能性が高いので、まずは本人のペースに合わせることをおすすめします。

丁寧に声かけ・説明をする

服薬拒否に限らず、介護拒否が見られたら、丁寧な声かけを心がけるようにしましょう。

お伝えしたように、認知機能が低下すると、自分が病気であることや薬が必要であることを理解できなくなります。自分が置かれている状態がよくわからない状況において、何の説明もなく、ただ薬を飲むように指示されたら不安になるのは当然のことです。

例えば、認知症の方でも理解しやすいように「これはお医者さんが出してくれたお腹のお薬です」「あなたが元気でいるために必要なものですよ」などと簡単な言葉で声かけをしましょう。わかりやすく丁寧に説明すれば、薬に対する拒否感が薄れる可能性があります。

体調変化をチェックする

服薬拒否は体調の悪さに起因している可能性もあります。副作用が現れていたり、具合が悪くて何も口に入れたくなかったりしても、認知症の方は状況をうまく説明できません。薬の必要性を理解していたとしても、体調不良だと体が受け付けなくなってしまうものです。

体調に何らかの異変がありそうな場合は、医師に相談して判断を仰ぎましょう。薬の種類や服用回数を減らすなどの対策がとれるかもしれません。

薬の服用方法を変える

薬の形態や味が原因で薬をうまく飲み込めない場合は、服用方法を変えれば解消する可能性があります。

薬には錠剤タイプ、液体タイプ、ゼリータイプ、顆粒タイプなどがあり、薬の種類によっては形態を変えられるものも。例えば「すぐにむせてしまう顆粒タイプの薬を、液体タイプに変えたらスムーズに飲めるようになった」というケースもあるので、形態や味が原因と思われる場合は医師や薬剤師に服用方法を相談しましょう。

ヘルパーや訪問介護を利用する

色々と試しても服薬拒否が改善されないときは、お世話をする人を代えてみるのも一案です。身内の言うことをなかなか聞いてくれない方でも、他人の指示なら素直に従う場合があります。人を代えるとサポートをすんなりと受け入れてもらえることがあるので、在宅介護介護拒否が見られる場合はひとりで抱え込まず、ヘルパーや訪問介護の利用を検討しましょう。

服薬拒否にはご本人なりの理由がある

服薬拒否は周囲の人を困惑させ、一見するとただのわがままに思えるかもしれません。ですが、認知症の方からすると、ご本人なりに拒否する理由がある場合が多いです。そのため、無理強いをするなど対応を誤ると、拒否感や不信感が強まり、服薬だけではなく介護自体を拒まれるようになるかもしれません。

服薬拒否が見られたら、お伝えしたポイントを踏まえて適切に対処しましょう。対応が難しいときは自己判断せず、医師や薬剤師に相談してください。

※この記事は2019年11月時点の情報で作成しています。

i.ansinkaigo.jp

 

監修者:寺岡純子

監修者:寺岡純子(てらおか じゅんこ)

主任介護支援専門員 看護師
合同会社 カサージュ代表
看護師として病院勤務8年、大手介護事業者で約19年勤務し管理職を経験。
2019年8月合同会社カサージュを立ち上げ、「介護特化型研修事業」「介護離職低減事業」など介護に携わる人への支援を行っている。企業理念は「介護に携わるすべての人の幸せな生活をサポートする」。