認知症の見当識障害とは 原因や対応方法を知ろう!

認知症の見当識障害とは

時間・場所・人が分からなくなる見当識(けんとうしき)障害は、認知症の中核症状のひとつです。その症状や進行、自宅での対応方法についてまとめました。アルツハイマー型認知症では初期からみられる症状ですので、内容を把握しておけば認知症の早期発見にもつながります。

 

見当識障害とは

見当識障害とは

 

見当識障害とは、認知症が引き起こす中核症状のひとつです。失見当とも呼ばれています。見当識とは、時間や場所、人間関係を把握する機能のことで、これが低下すると自分がいる場所が分からなくなったり、昼と夜の区別がつかなくなったり、目の前にいる人が誰なのか分からなくなったりします。

アルツハイマー型認知症では、記憶障害と同様に認知症の初期から起こる症状です。

認知症の中核症状とは

認知症の中核症状とは、認知症によって脳の細胞が失われ、働きが低下することで起こる症状のことです。中核症状には他に、記憶障害、理解・判断力の低下、実行機能障害、失語・失行・失認などがあります。

認知症には中核症状の他に、環境やその人の性格によって異なった症状が現れる行動・心理症状(BPSD)があります。

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見当識障害の症状と進行

見当識障害の症状と進行について

見当識障害の症状と進行を詳しく見ていきましょう。

見当識障害の種類

見当識障害には、次の3種類があります。

時間の見当識障害

時間の見当識障害とは、年月日や時間、季節が分からなくなった状態です。今が「朝か夜か」、「何年何月何日か」、「夏か冬か」などが分からなくなります。

約束の時間や通院の日時を守らなくなったり、ゴミの日が分からなくなったり、季節に合わない服装をしてしまったりします。

場所の見当識障害

場所の見当識障害とは、自分がどこにいるのかが分からなくなった状態です。 外出しても帰り道が分からなくなって迷ってしまったり、トイレの場所が分からなくて失禁してしまうといったことがあります。

人物の見当識障害

人物の見当識障害とは、相手が自分とどんな関係なのかが分からなくなった状態です。目の前の人が友人か家族か、知らない人なのかが分からなくなり、長年一緒に暮らしてきた家族に対しても「あなたは誰ですか?」と聞くことがあります。

見当識障害の進行

見当識障害は、時間、場所、人物の順番で起こります。アルツハイマー型認知症では、記憶障害と同様に初期のうちからみられ、ゆっくりと進行していきます。

レビー小体型認知症では、パーキンソン症状や幻視などの症状が初期に現れ、見当識障害は中期から目立つようになります。また、ピック症などの前頭側頭型認知症では、見当識は保たれることが多いです。

見当識障害への対応方法

見当識障害への対応方法

 

見当識障害のある方には、どのように対応したらいいのでしょうか。すぐにでも実践できる対応方法をまとめます。

症状別の対応方法

時間の見当識障害への対応方法

●カレンダーに印をつける

部屋の目につくところにカレンダーを貼っておき、今日の日付のところに印をつけていくようにしましょう。その時に、今日の日付や曜日を声に出してもらうとより良いです。

起床→カーテンを開ける→カレンダーに印をつける…といったように、行動の流れを作っておくといいでしょう。規則正しく生活することも大切です。

●会話の中に季節や時間を盛り込む

同居をしていたり、こまめに電話をしていたりする場合には、「春だけど、朝は冷えるね」「お昼ごはんの時間だよ」「夜だからカーテンを閉めよう」など、会話に季節や時間を盛り込んでみましょう。

また、季節が分からずに夏に冬服を着てしまうことがあります。熱中症などの危険もあるため、「エアコンをつけた?」と声をかけたり、季節に合わない洋服はしまっておいたりなどの工夫が必要です。

●ヘルパーさんをお願いする

受診日に必ず病院に行けるようにヘルパーさんに同行をお願いしたり、デイサービスの送り出しをお願いしたりなど、介護保険サービスを活用しましょう。

遠距離介護のため帰省ができない場合には自費サービスとはなりますが、ヘルパーさんに衣替えをお願いすることも可能です。詳しくはケアマネジャーに相談してください。

場所の見当識障害への対応方法

●外出時には誰かが同行するようにする

外出したら迷子になってしまうからといって、家に閉じこめてしまうのは避けたいところです。認知症が進行してしまったり、歩く機能が低下してしまったりする可能性があります。また、夜に寝てもらうためにも、日中に身体を動かしておくことは大切です。

ただし、ひとりでは外出しないように家族の誰かが付き添うようにしましょう。難しい場合には、訪問リハビリや外出支援サービスを利用するのがおすすめです。詳しくはケアマネジャーにご相談ください。

さらにひとりで外出してしまった時のために、連絡先を書いたメモやGPSを身に着けておいてもらうと安心です。

●トイレの場所を分かりやすく

見当識障害の影響で家のトイレの場所が分からなくなっている場合には、トイレの扉に張り紙をしたり、トイレまでの道順を矢印で示したりして、トイレの行き方が分かるようにしましょう。トイレの場所が遠い場合には、近い部屋に移動することも検討してください。

ひとりで行けるようになるまでは、時間を見て声をかけ、一緒にトイレに行くようにしましょう。

人物の見当識障害への対応方法

●自分から名乗る

目の前の人が誰か分からなくなっている方には、「娘の〇〇だよ」と自分から名乗るようにしましょう。他の人の名前で呼ばれた時にも同様です。

「私が誰だか分かる?」という問いかけは、ストレスになる可能性があるので避けましょう。

●古いアルバムなどを見て話をする

古いアルバムを見ながら、写真に写っているのは誰でいつ撮ったものかなどの思い出を引き出しましょう。間違ったことを言ってもあえて否定や訂正をせず、耳を傾けます。これは回想法と呼ばれるリハビリテーションの手法ですが、家族でも気軽に行うことができます。

認知症の方への接し方

症状であることを理解しましょう

見当識障害の症状が現れている方は、日時が認識できなくて約束をすっぽかしてしまったり、トイレに行けずに失禁してしまったり、家族や友人を「知らない」と言ってしまったりすることがあります。

周囲の人を困らせるためにやっているわけではなく、認知症の症状であることを理解してくれぐれも振り回されないようにしましょう。

怒ったり責めたりはNG

認知症の方は自分の見当識障害を自覚していないため、なぜ怒られているのかが理解できません。自尊心を傷つけたり、混乱してしまったりして認知症の症状が進行してしまうことがあります。

しかし、介護をしている家族も人間です。忙しい時や失禁された時、知らない人だと言われた時には怒りや悲しみが押し寄せてくることもあるでしょう。そんな時には、その場を離れて冷静になる時間をつくるのも大切です。

見当識障害の予防と改善方法

見当識障害の予防と改善方法

見当識障害の予防や改善を目指すには、どのようなことに気を付ければいいのでしょうか。

認知症自体の予防を

認知症には特効薬はありません。見当識障害は認知症によって脳の細胞が失われ、働きが低下することで起こる症状です。

見当識障害を予防するためには、高血圧や糖尿病などの生活習慣病をしっかり管理する、身体を動かす、栄養バランスの整った食事をする、他人と交流するなど、認知症の予防を目指した生活を送るようにしましょう。

早期診断と治療が大切

見当識障害のような症状が現れたら、病院で診断を受けるようにしましょう。認知症の薬物療法は、脳の神経細胞がある程度維持されている初期のうちに始めた方が、改善する可能性が高いと言われています。

まとめ

時間や場所、人が分からなくなる見当識障害は、認知症により脳の働きが低下することが原因でおこる症状です。アルツハイマー型認知症では、初期のうちから見当識障害の症状は現れます。「もしかしたら」と感じる行動に気づいたら、早めに病院を受診するようにしましょう。早期のうちから治療を受けることで、進行を遅らせることができます。

見当識障害が現れても、症状に合わせた対応をすることで自立した生活を送ることが可能です。ケアマネジャーなどの専門家に相談しながら、上手に見当識障害と付き合いましょう。

※この記事は2020年5月時点の情報で作成しています。

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監修者:春田 萌
監修者:春田 萌

日本内科学会 総合内科専門医、日本老年医学会所属
15年目の内科医師です。大学病院、総合病院、クリニックでの勤務歴があります。訪問診療も経験しており、自宅や施設での介護についての様々な問題や解決策の知識もあります。