夜間におむつを外してしまう原因と対策

夜間におむつを外してしまう原因と対策

夜間のおむつ外しは、必ずしも認知症が原因だとは限りません。排泄に関わる問題は介護者の負担も大きく、対応が難しいものです。間違った対応は虐待になりかねません。夜中のおむつ外しにはどんな原因があり、どんな対策が有効なのかをまとめました。ぜひ参考にしてみてください。

>>夜間におむつを外してしまう対処法を介護の専門家に相談する:安心介護Q&A

 

なぜおむつを外してしまうのか

なぜおむつを外してしまうのか



夜間にひとりでトイレに行くのが難しい高齢者が、大人用紙おむつやパッドを使用するのはよくあることです。せっかく着用している大人用紙おむつやパッドを、夜中のうちに外してしまうことがあります。これは認知症があるかないかに関わらず起こります。

特に多いのはパッドだけを外してしまうことです。朝になって起こしに行ったら、濡れたパッドが床に落ちていて、汚染されたパジャマとシーツを見てがっかり…という経験は、多くの介護者が経験しています。

「おむつに排尿することに慣れていないから」「濡れた感じや暑くて蒸れる感じが気持ち悪くて無意識のうちに」「長年の経験から、パンツを脱がないと排尿できないためつい脱いでしまう」などの理由が考えられます。また、おむつをつけていることに納得していないのかもしれません。

夜間だけではなく日中にもおむつを外してしまう場合には、認知症の行動・心理症状(周辺症状/BPSD)の可能性があります。かかりつけ医やケアマネジャーに相談をしてみてください。

おむつを外さないようにする対処法

おむつを外さないようにする対処法



夜間におむつを外さないようにするためには、どんな方法があるのでしょうか。安心介護内に投稿された専門家の意見を中心にまとめます。

夜中におむつを交換する

ベッドに入ってから起床するまでの間におむつを外してしまうのであれば、夜中におむつ(またはパッドのみ)の交換をしましょう。

しかし、日中に介護や仕事をしている家族が夜間も対応をするのは難しいものです。定期巡回・随時対応型訪問介護看護や夜間対応型訪問介護などの介護保険サービスを利用してみるといいでしょう。詳細はケアマネジャーに相談してみてください。

それでもうまくいかない場合には、朝に訪問介護で起床介助に入ってもらい、濡れたシーツなどの処置を頼むという方法もあります。

おむつ以外の方法を検討する

なぜ、おむつを使用することになったのかを考え、おむつ以外の方法がないかを考えてみましょう。

夜は暗くて移動が危ないという理由であれば、夜間だけポータブルトイレを使用したり、トイレの場所がわからないということであれば、矢印などの表示をつけてトイレに行きやすくしたりと、おむつ以外の選択肢がないかをケアマネジャーや本人と話し合ってみるといいでしょう。

おむつのつけ方を工夫する

おむつのつけ方で外しづらくする方法に、テープ式紙おむつを普通とは反対に(テープ部分が背中側にくるように)つけるという方法があります。こうすることで、簡単には外せなくなります。腹巻の着用やお腹の周りをバスタオルで包んで脱ぎにくくする方法は、冷え性の方には喜ばれるかもしれません。

高齢者本人がおむつ外しを辞めたいと考えている場合に、同意の上で行ってください。

つなぎのパジャマや介護用ミトンは虐待?

つなぎのパジャマや介護用ミトンは虐待?



おむつを外さないようにする対策として、上下がつながっているパジャマや介護用ミトンといった介護用品を使用するという方法があります。

安心介護内の投稿を見てみると、こうした方法をすすめる専門家の声もあれば、虐待だという指摘もあります。

つなぎのパジャマや介護用ミトンとは

つなぎのパジャマとは、ズボンに手を入れられないように、上下がつながっているタイプのパジャマです。高齢者用の衣服は、自分で着脱がしやすいような工夫がされていますが、つなぎのパジャマはファスナーが固定できるなど、脱ぎにくいようになっています。

つなぎのパジャマについて



介護用ミトンは、手首から上を覆ってしまうものです。おむつを外す方だけではなく、皮膚をかきむしってしまう方や点滴を外してしまう方などに使用されています。他にも不潔行為やオムツ外し対策用の短パン状のオムツホルダーなどもあります。

つなぎのパジャマや介護用ミトンなどを着用させることは虐待に当たるのでしょうか。

身体拘束と考えられる

つなぎのパジャマや介護用ミトンの使用は、身体拘束であり虐待だと考えられます。

同様にベッドから落ちてしまう方をベッドレールで囲って出られなくしたり、歩けないのに車イスから立ち上がろうとして転倒してしまう方をベルトで固定したりといった対策も身体拘束になり、虐待と考えられます。

身体拘束については、在宅で介護をしている世帯については明文化されていませんが、介護保険サービスでは禁止されています。本人や周囲の人の安全を確保するために必要であり、他に方法がなく、一時的である場合を除いては、身体拘束はできません。施設の場合には、職員の独断で身体拘束が行われることはなく、家族の同意が必要となります。

介護用品のカタログにはつなぎのパジャマや介護用ミトンが掲載されており、治療が優先である病院や在宅で使用されるケースも少なくはありませんが、高齢者の福祉に職務上関係のある人は「虐待の早期発見に努めなくてはならない」とされています。

まずは他の方法をケアマネジャーなどの介護職員に相談してみましょう。

おむつを変更してみては

おむつを変更してみては



おむつを装着している不快感でおむつ外しをしてしまう場合があります。次のような対策をしてみてはいかがでしょうか。

気に入るおむつを探す

肌触りがいいもの、通気性がいいものなどを選んでみるといいでしょう。また、おむつがきつくて脱いでしまうこともあるので、テープをきつく締めていないか、サイズが合っているかもあわせて確認をしてみてください。

重ね使用をやめる

比較的安いパッドを、紙テープ式おむつやリハパンに重ねて使うことはよくあります。汚れたらパッドのみ交換すれば経済的だからです。もしかしたら、重ね使用によるごわごわ感がおむつ外しの原因になっているのかもしれません。夜間だけでも重ね使用をやめてみてはいかがでしょうか。

おむつメーカーでも重ね使用はモレ対策にはならないため、モレが心配な人は吸収できる量の多いものを使用するようにとすすめています。

まとめ

おむつ外しの対策は、やり方によっては身体拘束になってしまいます。何が原因なのかを考えて、おむつ以外の方法やおむつの種類の変更などの対策を練りましょう。

大切なのは一人で抱えずに介護保険サービスを上手に利用すること、そして本人の希望を聞くことです。介護する側とされる側が、お互いに気持よく生活できるように家族と介護職、そして本人が連携していきましょう。

※この記事は2020年3月時点の情報で作成しています。

>>夜間におむつを外してしまう対処法を介護の専門家に相談する:安心介護Q&A

監修者:鵜沢静香
監修者:鵜沢静香

訪問介護事業所職員、福祉用具専門相談員。2015年から安心介護に関わっており、お話を伺った介護家族や介護職員の影響で介護職員初任者研修を取得し、訪問介護の仕事をスタートしました。2022年には介護福祉士、認知症ケア専門士の資格を取得し、自宅で介護をされる人・介護をする人、どちらも大切にしながら訪問介護の仕事を続けています。