糖尿病性腎症とはどんな病気?|要介護認定の特定疾病

 糖尿病は、日本人の10人に1人がかかっている国民病ともいわれる病気です。ふつうは検出されない糖が尿中に出てくることが名前の由来ですが、その原因は血液の中の糖(血糖)が高くなることです。食生活の変化がその背景にあるといわれています。糖尿病の三大合併症として、糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症が知られています。いずれも要介護認定の特定疾患になっています。

 ここではそのなかで「糖尿病性腎症」を取り上げます。糖尿病性腎症とはどのような病気で生活はどう変わるのでしょうか。さらに、介護の際の注意点などについて学んでいきます。

糖尿病とは?

糖尿病とは

 身体の細胞の大部分は、ブドウ糖という糖の仲間をエネルギー源として利用して機能を維持しています。この機能をコントロールしているのがインスリンという膵臓から出るホルモンです。糖尿病で血糖が高くなるのは、インスリンそのものの分泌の低下や糖を利用する機能のバランスが崩れるためです。すなわち、血糖が高いのは結果であり、細胞にとってはブドウ糖の利用障害という深刻な事態が生じているのです。

 かつては、糖尿病になると、のどが渇き、多尿になるといわれていました。これは、高血糖状態を改善しようと身体が反応し、血液を薄めようとして水分摂取量を増やすためにのどの渇きを発生させ、大量に飲水することで多尿になるのです。しかしこれは、急性発症の際の症状です。最近は、健診の検査で偶然、糖尿病が見つかるケースが多くなっています。

 糖尿病の検査で基本的なものは血糖、尿糖ですが、血液の中にはブドウ糖と結合するたんぱくが存在します。酸素を運ぶ機能をもつ赤血球にもこのたんぱくがあり、グリコヘモグロビンといわれます。この中でHbA1cというものが検査で利用されています。血糖は食事の影響を受けやすい検査ですが、HbA1cは赤血球のたんぱくのため赤血球の寿命と関連があり、1~2月間の糖尿病の状態をみるのによい検査といわれています。

糖尿病性腎症の症状とは?

 糖尿病性腎症は、糖尿病になることで腎臓も悪くなる病気、すなわち糖尿病の合併症です。

 腎臓は、血液をろ過する装置です。身体の中で発生したさまざまな老廃物は血液に溶けて腎臓に至りろ過されて、不要物は尿の中に排出され、必要なものは再び血液に戻り身体の中を循環します。さらに、糖、塩分、水分などの調節にも重要な役割を果たしています。

 腎臓のこうしたはたらきに障害が起こると、高血圧、尿毒症(食欲低下、頭痛、倦怠感など)、浮腫(むくみ)などの症状が出ます。さらに、腎臓から出る造血ホルモンの低下に伴う貧血や塩分のバランスが崩れることに伴う骨粗しょう症なども出ます。

糖尿病性腎症の診断

 糖尿病性腎症であるかどうかの診断には、次の2つの値が使われます。

尿たんぱく(アルブミン)

 尿にはたんぱく質(アルブミン)が含まれていますが、腎臓のろ過機能によって再吸収されるので尿中には出ることがありません。ところが糖尿病性腎症になってろ過機能が衰えてしまうと尿中に出るようになり、その値を調べることで腎臓の状態を知ることができます。

クレアチニン

 クレアチニンは腎機能が低下することで出る成分で、この値を調べることで腎機能を見ていきます。  そのほかに、年齢や性別からおおよその糸球体ろ過量を見る糸球体ろ過量(GFR)が用いられ、18歳以上の場合、糸球体が1分間にろ過している血液量である推算糸球体ろ過量(eGFR)の値が使われます。

 糖尿病性腎症は、表のように5つの病期に分かれます。

糖尿病性腎症の病期

病期 尿たんぱく(g/g・Cr)
or
尿アルブミン(mg/g・Cr)
腎機能(GFR<eGFR>)(mL/分/1.73m2) 症状
第1期
(腎症前期)
アルブミン尿30未満(正常値) 30以上 血液検査でも異常はなく、自覚症状もありません
第2期 
(早期腎症期)
微量アルブミン尿30~299 30以上 自覚症状はないものの、血液と尿検査で異常が出ます
第3期
(顕性腎症期)
顕性アルブミン尿300以上または持続性たんぱく尿0.5以上 30以上 むくみ、倦怠感、夜間尿などの自覚症状が出るようになり、検査でも異常が出ます
第4期
(腎不全期)
問わない 30未満 尿毒症、食欲低下、息切れが出ます
第5期
(透析療法期)
透析療法中 透析療法中 透析療法を行わないと日常生活を送るのが困難になります

糖尿病性腎症の予防法は?

 糖尿病性腎症を予防するためには、なによりも糖尿病を管理することが一番の近道となります。糖尿病の管理の基本は、「食事療法」、「運動療法」です。また、「薬物療法」も重要です。

 食事で重要なのは、一日に必要なカロリーを意識して食べ過ぎに注意すること、塩分、とく特に、ナトリウムの摂り過ぎすぎに注意すること、あるものに偏らないバランスのよい食事を摂るとることです。

 運動では、ウォーキング、ジョギング、水泳、水中ウォーキングなどの有酸素運動のほか、ダンベルや腕立て伏せ、スクワットなど、筋肉を鍛える「レジスタンス運動」を組み合わせると効果的で、筋肉が増えると血糖を下げる効果が出てきます。また、食事のあとの運動は血糖を下げる効果があります。

 薬物療法では、糖尿病に対する治療のほか、血圧に対する治療、脂質に対する治療などがあります。糖尿病に対する治療は内服薬のほかにインスリンの注射を行うこともあります。

糖尿病性腎症の症状が現れたときの対処法は?

 糖尿病性腎症と診断されたら、大きく「食事療法」「運動療法」「薬物療法」の3つが行われます。

 食事療法では、一般的な糖尿病食ではなく、たんぱく制限や果物、生野菜などのカリウムを含むものの制限が必要で、必要なカロリー摂取のために甘い食事に変える必要が出てきます。

 運動療法は病期で第3期に入ると激しい運動は制限されるため、やみくもに運動することは避けましょう。 薬物療法は、糖尿病に対する治療のほかに、厳密な腎機能を保護する対応が必要になってきます。血圧管理のほかに塩分の調整をする薬剤、尿毒症に対応する薬剤などが必要になってきます。

 仕事をしている人は、病期の第3期までは通常と変わりなくできますが、第4期と第5期になると、種々の制限がでてきます。

 いろいろな対応で腎機能の悪化の進行が止められなかった場合には血液透析となります。透析になる原因の病気では糖尿病が一番多いといわれています。

糖尿病性腎症は介護保険が利用できるの?

 介護保険制度は、65歳以上で、「要支援状態」か「要介護状態」と認定された方が対象の「第1号被保険者」と、40歳以上64歳までで、16の特定疾病と診断されている方が対象の「第2号被保険者」に分かれますが、糖尿病性腎症は特定疾病なため、40歳以上64歳まででも糖尿病性腎症と診断され、「要介護認定」を受けた場合に、介護保険制度を利用して介護サービスを受けることができます。

 もちろん、介護施設にも入所することもできますが、糖尿病性腎症になると食事に制限が必要になるので、食事制限に対応している施設である必要があります。また、血液透析になった場合には、透析に通院する支援がある必要にながあります。

糖尿病性腎症の介護の注意点

 糖尿病性腎症は、代表的な生活習慣病である糖尿病の合併症です。

 糖尿病の管理を厳密にすること、つまり、食事療法、運動療法などふだんの生活をきちんとしていくことが重要です。 また、主治医を決めて、病気の管理をしっかりしていくことも大事です。

まとめ

 糖尿病性腎症は糖尿病になることで起こります。糖尿病は日々の生活が原因となるため、ふだんから塩分を控えたり、暴飲暴食などはしないようにし、運動はできるだけするようにしましょう。

 もし、糖尿病性腎症と診断されても、早期であれば血糖・血圧コントロールなどを行うことで腎機能の悪化を防ぐことができます。諦めずに生活を改善していきましょう。

 透析療法を受ける人は年々増えており、そのなかでも、原疾患が糖尿病性腎症である割合は約40%にも達し、原疾患の第1位となっています。

 今や糖尿病はだれでもなる病気です。他人事とは考えず、常日頃から自分の生活を見直していきましょう。

※この記事は2019年10月時点の情報で作成しています。

特定疾病とは? - 介護の専門家に無料で相談「安心介護」介護の基礎知識

監修者:下 正宗
監修: 下 正宗(しも まさむね)

東葛病院臨床検査科科長。1984年広島大学医学部卒。 認定病理医、臨床検査専門医、プライマリケア指導医。『最新 目で見る介護のしかた全ガイド』『家庭でできるリハビリとマッサージ』『介護用語ハンドブック』(成美堂出版)、『絵を見てわかる認知症の予防と介護』(法研)、『体位変換・移動・リハビリの介助』(桐書房)、『身近な人の上手な在宅介護のしかたがわかる本』(自由国民社)など、著作・監修多数。