認知症の介護が辛いとき、皆さんはどうしているのでしょう?親が認知症になってから、自分の精神状態も不安定になっている気がします。このままでいるとストレスで押しつぶされてしまいそうです。

質問

質問者家で認知症の母の面倒を見ています。ひとりっ子なので、他に頼る家族はいません。父親は寝たきりになり、施設に入所しています。定期的に母親を連れて見舞いに行きますが、母親は子どものようにすぐに帰りたがるので父が可哀想に思えます。

食事を食べさせても1時間経つと炊飯器をかき回していたり、入れ物から直接砂糖をなめたりします。叱るとまるで虐待しているかのようにわめきたてたり、泣き出したりするので思わず手を上げそうになります。まだ今は我慢できますが、自制するのが辛くなってきています。

パートの仕事をしている間はデイサービスに預けていますが、ときどき出かけるのを嫌がるのでイライラしてしまいます。仕事から帰るときには、このままどこかに行ってしまいたいと毎日考え、そんな自分が情けなく悲しくなります。

これから先、生きていく自信がありません。どう考えれば良いのか、教えてください。

 

専門家

認知症の介護をしていると体の疲労だけではなく精神的な疲労が蓄積してきます。自分の想いに反してイライラしてしまったり、大きな声をあげてしまったりつい手が出そうになることもあるかもしれません。そのようなことがあると、さらに自分を追い詰めて精神的に参ってしまいます。認知症介護をする上では、このような状況を避けることが重要です。

この記事では認知症介護でのストレスが蓄積するのを避け、平穏な気持ちで介護をしていくために役立つ情報をわかりやすく解説します。

認知症の介護をする上で知っておきたいこと

認知症の介護をする上で知っておきたいこと


それまで子どもとして頼っていた親が、認知症を患うことで変わっていくのを見るのはとても辛いことです。しかし、介護する上ではそれを現実として受け止めていかなければなりません。認知症の介護にあたり、知っておきたいことについて解説していきます。

本人の辛さを理解する

認知症はいきなりそうした症状になるわけでも、急激に悪化するというものでもありません。認知症が徐々に進行していく過程では、本人がもっとも辛く感じているはずです。

つい最近までできていたことができなくなるのを想像すれば、それがとても悲しいことであるのがわかります。

孫とメールのやり取りをしていた携帯電話の操作がわからなくなったり、住み慣れた家の中で照明がつけられなくなったりしていきます。

家族から見れば「何をやってるのか」と言いたくもなりますが、本人はわけがわからず、混乱や恐怖を感じている可能性もあります。

何か失敗して家族に叱られた場合、そのこと自体は忘れて何度もくり返すかもしれません。

しかし記憶はなくても、叱られて悲しい想いをしたという感情は残ります。

そうした感情が重なると、症状を進行させる原因になることもあります。

認知症になってしまった本人の悲しみや辛さを理解し、思いやるのは、介護をする上でとても重要であると言えます。

言い合いはムダ

介護をする人も人間です。

相手に何か言い返されると、つい感情的になってケンカのような言い合いとなることがあるかもしれません。

つい思っていた以上のことを口に出してしまい、自己嫌悪に陥る人は少なくありません。

認知症の人の頭の中では、正常とそうでない部分が混ざり合っています。

本当ではないことを真実だと思い込んでいたり、勝手なストーリーを組み立ててしまったりする場合もあります。

また本能的な自己防衛から、問い詰められると言い訳やごまかし、また何かを隠すといった反応が出てきます。

こうした相手に対しては、正論をもって言い合いをしてもまったくムダです。

回避するためには、その場を離れるのがもっとも簡単な方法です。

介護する人自身の心を守るためにも、ムダな口論は避けるよう心がけましょう。

本人にとっての事実

認知症の人にとっては、事実が普通の人とは違う意味となります。

つまり自分にとっての「事実」が存在するようになります。

ある出来事も忘れてしまえば、事実ではなくなります。

単なるもの忘れとは違って行動を丸ごと忘れるため、お風呂に入ったことやご飯を食べたことも事実ではなくなってしまうときがあります。

いくら言い聞かせても納得しないときには、本人にとっての事実ではないのだということを理解するようにします。

認知症介護の辛さを軽減するために

認知症介護の辛さを軽減するために


いくら認知症についての理解を深めようとしても、毎日の生活の中では介護する人の負担が募ります。少しでも認知症介護の辛さを軽減するためのポイントを見ていきましょう。

「〇〇しなければならない」を減らす

真面目な性格の人ほど、きちんと生活を送りたいと思うのは当然です。

しかし認知症の介護では、介護する人が息切れしてしまわないようするためにも、できる限り「〇〇しなければならない」を減らすことが大切です。

生活の一定「枠」に当てはめようとしても、なかなか難しいものがあります。無理に従わせようとしても、介護する人のストレスになるばかりです。

例えばハンカチやタオルを自分の部屋にため込むなど、見逃してもあまり害にならないことはいちいち怒らずに、見守るようににします。

食事の支度など時間通りにできない日もあるのを「良し」とし、「まあいいか」を自分に許していきましょう。

ひと工夫で切り抜ける

認知症の人は「何度言ってもわからない」ことが良くあります。

対応としては、片づけるもの・出しておくものを整理して触ってほしくないものは見えないところに片づけるようにします。

日付けがすぐに確認できるように、大きめのカレンダーにひと言日記を書く習慣をつける。メモを駆使して、大切なことを忘れないようにする。ラベルや張り紙でモノの場所を示したり注意を促したりする。

小さな工夫をしながら、介護する人もされる人もストレスのない方向を見つけていきましょう。

病気であることを意識

認知症になったからと言っても、本人がまったく変わってしまっているわけではありません。

認知症の症状にはあるパターンが見られます。それを学ぶことにより、「うちだけではないのだ」と思えるようになります。

「今の行動はこういう理由によるものだ」と理解すれば、冷静に見られるようになります。

認知症の症状別対処方法

認知症の症状別対処方法


認知症の介護では、どのような対応をして良いのか悩む場面がたびたび起こります。症状別の具体的な対処方法を見ていきましょう。

「〇〇を盗まれた」と騒ぐ場合

「盗まれた」モノでもっとも良く聞かれるのはお財布ですが、可能であれば同じ財布を用意しておき、「ほらここにあったよ」とすぐに安心させると落ち着きます。

それが難しい場合や、色々なモノが「ない」というときには、一緒に探してあげるようにします。否定をしたり「自分がなくしたのでしょ」と突き放したりすると、余計混乱がひどくなる場合があります。

認知症の人にとって「なくなっているモノ」が何を意味しているのかを考え、不安な気持ちを理解していくようにしましょう。

以前は食材を買い物していたのに、その役割を果たせなくなったことで寂しさを感じているなどの要因があるかもしれません。

一緒に買い物に出かけることで、騒ぎの頻度が減るという可能性もあります。

反発・反抗をする場合

介護をしようとしているときやデイサービスなどに出かけるときに、反発したり反抗的な態度を見せたりするのも良くあることです。

思わずカッとしそうですがまずは介護する人が冷静にならないと、状況はどんどん悪くなってしまいます。

どんなときにそのようになるのかを良く観察し、相手の反応を把握していきましょう。

例えばいきなり手を引かれたので、怖くなっているということもあります。これから何をするのか、話しかけながらゆっくりとした動作で向き合うようにしていきましょう。

本人から何がイヤなのか聞き出すという方法もあります。家族がうまく聞けないときには、介護を担当するスタッフなどにお願いしてみても良いでしょう。

本人ができるつもりでいるのに、手を出されたことで腹を立てているというケースも見られます。その場合にはできることはなるべくしてもらうように仕向けると、納得させられます。

夜寝ない・騒ぐなどの場合

夜になかなか寝付かなかったり騒いだりするというときには、昼間の過ごし方を見直してみてください。

散歩などの運動や外出を心がけ、生活に適度な刺激を与えます。

他人と過ごす時間を作ると、家族だけで過ごすよりも緊張感があるため、疲れて休みやすくなります。

足湯をさせたりアロマを炊いたりして、リラックスさせるのも効果的です。

認知症介護を辛くしないための考え方

認知症介護を辛くしないための考え方


認知症の介護は先が見えず、ひとりで考え込むと辛くなってしまいます。介護する人が辛くならないためには、どのように考えれば良いのでしょうか。

がんばりすぎない

介護をする人は、「自分がしっかりしなければ」という思いにとらわれたりすることがあります。またどうしても、周囲からの視線や発言が気になるという人もいるでしょう。

しかし認知症の介護は、介護される人との長い旅路のようなものです。あまり先を急ぎすぎると息切れをおこします。介護する人がダウンしてしまうと、生活全体が立ち行かなくなります。

決して自分ひとりで背負い込んではなりません。 どのような場合でも自分ひとりの責任と思い込まず、まずは自分に優しくなることを考えてください。

休むことは、介護をさぼっていることではありません。 がんばりすぎると視野が狭くなり、自分を追い込んでしまいかねません。

他者を頼る

辛い気持ちがあるときには、ケアマネジャーや相談員など他者に頼りましょう。

自分を休ませるためには、ショートステイのように利用できるサービスを使っても良いのです。

介護を続ける中では、共倒れを回避するのがもっとも重要です。

介護は一時的に誰かに委ねることができますが、あなたの代わりになる人はいません。

終わりがあるのを意識する

認知症の介護は同じことが永遠に続くわけではありません。

相手の状態もそのときどきによって変化していきます。

介護の終わりを考えることを不謹慎と感じるかもしれません。しかし終わりがあるからこそ、今できることがあります。

そう考えて心が軽くできれば、それは悪いことではありません。

認知症の介護で辛さに押しつぶされないために

認知症の介護で辛さに押しつぶされないために


認知症の介護は、経験した人ではわからない辛さがあります。自分がどれほど努力しても報われない空虚感に苛まれ、続いていく毎日に何もかも放り出したくなるときもあるでしょう。

その辛さに押しつぶされないために、弱音を吐く自分を許してあげてください。本音を話せる場所と休む時間を作りましょう。

介護する人が辛い気持ちで暮らしていれば、介護される人の心も不安定になります。自分が元気でいることが、家族みんなを救うのを忘れないようにしてください。

 

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監修者:寺岡純子

監修者:寺岡純子(てらおか じゅんこ)

主任介護支援専門員 看護師
合同会社 カサージュ代表
看護師として病院勤務8年、大手介護事業者で約19年勤務し管理職を経験。
2019年8月合同会社カサージュを立ち上げ、「介護特化型研修事業」「介護離職低減事業」など介護に携わる人への支援を行っている。企業理念は「介護に携わるすべての人の幸せな生活をサポートする」。