母の物忘れがひどくなってきたので認知症が心配です。病院で診てもらう予定ですが、どのような種類の診断テストを受けるのでしょうか?

質問

最近、75歳の母の物忘れがひどくなってきました。認知症かもしれません...。病院に連れて行こうかと思っていますが、色々な種類の検査を受けるのでしょうか?

また、本人のプライドを傷つけずに検査を受けてもらうコツがあれば教えていただきたいです。

 

専門家

認知症は早期に発見し、治療を始めれば進行を抑えることができます。

認知症の診断では、加齢による単なる物忘れなのか、認知症の症状による物忘れなのかを見分けます。また、認知症を引き起こす病気にはいくつかの種類があり、認知症が疑われる場合には様々な検査が行なわれます。

しかし、病院で検査を受けることを、ご本人が拒否する場合もしばしば見られます。認知症かどうかを調べに行くと言うと抵抗感が増すため、一般的な健康診断として受診を促したり、かかりつけ医から検査を受けに行くように伝えてもらったりするなどの工夫をすると良いでしょう。

ここでは、認知症のテストや検査の内容、上手な受診の進め方についてご紹介していきます。

認知症が疑われたら放置はNG

認知症が疑われたら放置はNG

 

「以前より物忘れがひどくなった」

「何度も同じことを訊いてくる」

 

ご家族や身近な人にこのような変化が見られたら、認知症かもしれないと心配になりますよね。とはいえ、うっかり忘れることは誰にでもあるので、専門知識のない人が「ただの物忘れなのか、認知症なのか」を判断するのは困難です。

だからと言って、認知症が疑われる状態のまま何もしないのは適切ではありません。

認知症は早期診断・早期発見を

認知症は、進行性の脳の病気です。そのため、「いったん発症したら治る見込みはない」というイメージがあるかもしれませんが、早期に発見して治療をスタートさせれば症状を抑えられる可能性が高まります。

例えば認知機能の障害は、甲状腺機能低下症やビタミンB1欠乏などが原因で引き起こされることがありますが、適切な治療により改善できます。認知機能の低下は、認知症以外の病気によって引き起こされることがあるため、「改善が期待できるかどうか」は病院で判別する必要があります。

反対に、発見が遅れると治療効果が得にくくなる可能性があるため、日常生活における言動の変化を見逃さず、受診につなげることが大切です。

認知症の診断には専門的な検査が必要

認知症かどうか診断してもらうには、専門医による検査を受ける必要があります。インターネットで検索すると認知機能をチェックできる様々なテストが出てきますが、それらはあくまでも簡易的なものですし、一般の人が結果を適切に分析することはできません。簡易的なチェックテストは受診を考えるための参考程度にとどめ、診断は専門医にゆだねましょう。

次章では、医療機関で行なわれている代表的な認知機能テストや診断の基本的な流れをご紹介します。

病院で行なわれる検査と認知機能テストの種類

病院で行われる検査と認知機能テストの種類

では、病院ではどのような検査が行なわれるのでしょうか。代表的な認知機能テストや検査の流れをご紹介しましょう。

代表的な認知機能テスト

認知機能テストには様々な種類がありますが、日本では、おもに「改訂 長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)」や「ミニメンタルステート検査(MMSE)」が用いられています。  

改訂 長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)

精神科医の長谷川和夫氏によって開発された認知機能テストです。1974年に作成され、部分的な改訂はあったものの、現在までほぼ同じ形式で使用されています。

検査は、被験者に9つの質問や問題を投げかける形式で、その回答をもって認知機能のレベルを判定します。内容は以下の通りです。

  1. ご本人の年齢(2歳までは誤差とする)
  2. 今日の日にち(年、月日、曜日を順に質問する)
  3. 今いる場所(自発的に答えられるか、ヒントを出して答えられるか)
  4. 3つの言葉を覚えてもらい、あとで回答してもらう
  5. 計算問題(100から7を順に引いてもらう。最初の質問「100-7」ができない場合は打ち切る)
  6. 3桁、4桁の数字を伝え、逆から復唱してもらう(3桁の逆唱ができなかった場合は打ち切る)
  7. 4. で覚えた言葉を言ってもらう(自発的に答えられるか、ヒントを出して答えられるか)
  8. 5つの無関係な物品を見せ、隠してから答えてもらう
  9. 知っている野菜の名前をできるかぎり多く言ってもらう

 

検査の所要時間は10〜15分程度です。30点満点中の20点以下だと認知症の疑いが高いとされ、得点によって認知症のレベルを判定していきます。  

ミニメンタルステート検査(MMSE)

ミニメンタルステート検査も、長谷川式簡易知能評価スケールと同様に質問を投げかける形式。認識力や理解力、状況を把握する力などをチェックします。MMSEは、Mini Mental State Examinationの頭文字をとった略称です。1975年にアメリカで開発されたもので、日本語版は2006年に作成されました。

MMSEの質問は11項目あります。内容は長谷川式簡易知能評価スケールと似ていますが、MMSEでは短い文章を復唱してもらう問題や、提示した図形を真似て描いてもらう問題なども出題されます。

30点満点のうち、23点以下だと認知症の疑いがあるとされています。  

その他のテスト

病院で行なう認知機能テストには上記以外にも様々な種類があり、検査目的や実施する病院・施設の状況によって任意に選択することになっています。

日本老年医学会では以下のような検査も紹介しています。

・地域包括ケアにおける認知症アセスメントシート(DASC-21)

・Mini-Cog

・MoCa(Montreal Cognitive Assessment)

・ABC-DS(ABC認知症スケール)

病院によっては複数の検査を組み合わせることもあります。

一般社団法人 日本老年医学会:認知機能の評価法と認知症の診断 

医師による面談

認知症の診察では、医師による問診も丁寧に行なわれます。一般的な問診と同じように、体調や既往歴、薬の服用状況などについて質問されますが、ご本人が答えられないことがあるため家族の付き添いが必要です。

また、身近なご家族から見たご本人の様子や言動の変化についても確認されます。あらかじめ、普段の様子をまとめたメモを用意しておくと伝えやすいでしょう。

ご紹介した様々な認知機能テストは「神経心理学検査」と呼ばれ、問診のあとに行なわれることが多いです。

一般的な身体検査

認知症についての検査のほか、血液検査や尿検査、胸部レントゲン、心電図などの身体検査も診断に役立てられます。認知症を含めた治療方針を立てるためにも、身体状態を細かくチェックしてほかの疾患の有無を確認することは大切です。

脳の画像診断

脳の画像検査では、脳の萎縮度合いや血流を調べることができます。脳の形状、萎縮度合いの確認にはCTやMRIが用いられ、脳梗塞や脳腫瘍などの病変の有無もチェックされます。脳の血流については、おもにSPECT検査やPET検査で調べます。

ご本人が抵抗なく検査を受けられるようにするコツ

ご本人が抵抗なく検査を受けられるようにするコツ

認知症かどうかは、専門医による診察や検査を受ければはっきりします。ですが、ご本人に自覚がなければ、専門的な診察が受けられる病院に連れて行くのは難しいでしょう。

ご本人にスムーズに検査を受けてもらうには、次のような点を意識することをおすすめします。

プライドを傷つけない声かけを

まず気をつけたいのは、言葉遣い・言葉選びです。例えば、高齢の親御さんの物忘れがひどくて明らかに言動がおかしい場合、ご家族は「すぐにでも病院に連れて行きたい」と思うでしょう。

ですが、ご本人に自覚がなく、抵抗感がある場合に「最近おかしいから、すぐ病院に行こう」と無理強いするような態度をとると、反発される可能性があります。適切な促し方はご本人の性格にもよって異なりますが、むやみにプライドを傷つけないように配慮することが大切です。

ご本人の気持ちを受け止めつつ「家族が心配しているから、病院に一緒に行ってみよう」など、こちらの気持ちも丁寧に伝えるようにすれば、応じてもらいやすくなるでしょう。

かかりつけ医に検査をすすめてもらう

かかりつけ医がいる場合は、その病院を受診する際に相談するのもおすすめです。通い慣れた病院であれば、ご本人も抵抗感がありませんし、担当医から専門病院の受診をすすめられたらスムーズに受け入れてくれるはずです。

専門医を受診して早期発見につなげよう

身近な人に物忘れが増え、「認知症かも」と心配になったときは専門的な認知機能テストを受けることをおすすめします。ご紹介したように、認知機能テストでは様々な視点から認知機能の状態をチェックでき、物忘れの原因が病気によるものかを判断できます。

認知症が疑われる場合、早期に専門的な治療をスタートさせれば、進行を遅らせたり症状を緩和させたりすることが可能です。

ご家族に気になる変化が見られたら、かかりつけ医に相談するなどして、専門医の受診を促すようにしましょう。

 ※この記事は2019年12月時点の情報で作成しています。

 

監修者:寺岡純子

監修者:寺岡純子(てらおか じゅんこ)

主任介護支援専門員 看護師
合同会社 カサージュ代表
看護師として病院勤務8年、大手介護事業者で約19年勤務し管理職を経験。
2019年8月合同会社カサージュを立ち上げ、「介護特化型研修事業」「介護離職低減事業」など介護に携わる人への支援を行っている。企業理念は「介護に携わるすべての人の幸せな生活をサポートする」。