認知症の親の介護をしています。家族からの支援が受けられず「ワンオペ」に陥りそうです。先が見えない介護に日々ストレスが募っていき、イライラと絶望感に苛まれてます。助けてください。

質問

質問者離婚して実家に戻り、認知症の母親の介護をしています。父はすでに施設に入所していますが、手続きや税金関係もすべて自分が引き受けています。弟がいますが海外で暮らしているため助けてもらえません。

周囲の親戚もすべて高齢者となり、親族に頼ることができなくなりました。母親が要介護認定されたときに仕事を辞め、社会とのつながりを感じられず孤独です。母は目を離すと勝手に出かけてしまい、いつも一緒にいなければなりません。トイレを失敗することが多くなってきたのでおむつをしてもらっているのですが、知らないうちに外しています。

今のところはまだ足腰が立つので要介護度2の判定となっています。今でもいっぱいいっぱいなのに、この先動けなくなっていくことを考えると絶望しかありません。ただ、父を施設に入れているため母まで入所させるのは抵抗があります。最近、何でもないことでも涙が出てきます。自分は介護うつなのでしょうか。これからいったいどうすれば良いのでしょうか。

 

 

専門家

家族に頼れる人がいない、いわゆる「ワンオペ」介護。これほどつらいものはありません。介護は子育てとは違い、いつまで続くのか先が見えないものです。特に認知症の介護は常に目が離せない状況であったり、イライラする状況になったりすることが多いものです。それだけに、介護を一人で抱え込むと介護うつに陥る危険性が増します。

介護者の心身の健康があっての介護です。ストレスを溜めない介護を行うためには、専門家の意見を参考にしながら状況に応じた対応をしていきましょう。

ここでは認知症の介護を行っている介護者が陥りがちな問題点をあげ、介護の負担を減らすための考え方や改善策について解説していきます。

認知症の介護をする人が抱えるストレスとは

認知症の介護をする人が抱えるストレスとは

認知症の介護は辛く長い道です。介護をする人がストレスを貯めたまま我慢していると、心身への大きな影響が出てきます。認知症介護をする人が感じるストレスについて見ていきましょう。

精神的ストレス

介護をする人をもっとも苦しめるのは、精神的なストレスだと言われます。身体的に大変なのはもちろんですが目に見えない心にかかるストレスによって眠れなくなったり、常に追い詰められた気持ちになったりして、ゆっくりと休養が取れなくなりさらに疲労感を増していきます。

特に辛いのは、親身に世話をしている要介護者からの反発や暴言です。認知症の親からひどいことばを浴びせられると、頭ではわかっていても感情が乱れます。

そうした状況に家族から理解を得られないと、自分だけが悪者になったようで悲しくなります。自分の力の至らなさに、情けなく感じる人もいるようです。

周囲からの「介護して当然」といったプレッシャーも、介護する人を追い詰めていきます。ちょっと目を離したすきに徘徊をして勝手に出かけてしまう要介護者がいると、行動の見張り役として暗に責められる視線を感じます。

「自分がしなければならない」「家族のため」という責任感が強いほど、精神的なストレスも高まります。

生活へのストレス

介護を引き受けている人は、自立した一人の人間としての生活ができなくなります自分の時間を割いて介護にあたることになります。常に目を離せない相手がいると、自分の時間を犠牲にし、すべてのことを後回しにせざるを得ません。

「時間がない」「自分のしたいことが何もできない」そうした思いを日常的にするうちに、強いストレスとなって精神をむしばんでいきます。

さらに金銭的な余裕がない場合には、例えば気晴らしに美味しいものを食べるといった、ささいな楽しみまで奪われてしまいます。介護にかかる費用は想像以上の負担となって、生活を圧迫します。介護者の責任支援が経済的面にまで及んでいると、ストレスは倍増していくでしょう。

孤立感からのストレス

毎日朝から晩まで介護を続け、理解してくれる人が誰もいないという状況は本当に孤独なものです。認知症の人は同じことを話を何度もくり返し、こちらの言うことを聞き入れてくれませんがなかなか通じないこともあります。認知症の進行度の程度にもよりますが、話し相手として期待できません。

大事な話を相談する相手になってもらうには難しいことがしばしばあります。

足腰が丈夫だと一見して要介護認知症であるとはわからないこともあり、周囲の理解を得るのがさらに難しくなるケースも見られます。

介護する人と要介護者される人の2人きりの家庭では、「話し相手がいない」という問題は思う以上に深刻です。実際に「自分までおかしくなりそうだ」とひんぱんに感じてしまう介助者が少なくありません。健常者とのコミュニケーションの社会とのつながりの不足が、孤立感を生み、ストレスを与えます。

話す相手がいないのはことで、サポートも得られないということですのではという不安を抱くこともあります。「このままずっと一人きりで見なければならない」という極端な思い込みを誘発しかねません。

身体のストレス

トイレの介助や身体的な世話などの直接的な身体への負担に加え、相手の行動が気になり眠れないといった二次的な身体ストレスもあります。認知症状が進み、叫ぶ・暴れるなどの不穏な行動が出ると、それを目にする精神的なストレスと押さえ込まなければならない身体へのストレスという二重のストレスに苛まれることになります。

他の家族の手助けがない場合には、介護をする人が家事もしなければなりません。介護との両立で、文字通り疲労困憊した状態となるのも無理のないことです。

介護ストレスで見られる感情のゆれ

介護ストレスで見られる感情のゆれ

介護ストレスを受けた人は、どのような感情の過程をたどるのでしょうか。一般的な傾向を見ていきましょう。

診断への否定・理解への拒否

親や家族が認知症であると診断されても、それまでの記憶の積み重ねがあるだけに、冷静に受け入れられないのが普通です。

人によってはそのような診断が下されたことに対して、医師への怒りや「治療法がない」ことへの憤りを表す場合もあります。

しかしこうした怒りは実は、二次感情と言われるものです。親が変わってゆくことへの戸惑いや悲しみ、やり場のない気持ちが一時感情として根底にあります。

他者から見ると怒りの感情であるものの底辺には、深い悲しみが潜んでいるのです。

否定や拒否の気持ちから事実であることを受け入れざるを得なくなると、急激な精神の落ち込みへと変わっていきます。認知症の症状が進行する本人を目の当たりにすると、絶望的な気分になるかもしれません。

混乱・拒絶

介護に取り組みつつも、「もう治る見込みがない」という現実の中で不安は増大を続けます。これからどうなるのか、仕事は続けられるのか、お金は足りるのかといった、生活状況による悩みが次々と現れます。

不安を抱えると、笑顔を見せなくなり常に周囲に対して不機嫌な態度を取るようになります。「こんなに自分が大変なのに、なぜみんなが笑っていられるのか」と理不尽な怒りを感じるようになり、「誰も自分の気持ちをわかってくれない」などの不信感を持つこともあります。

無気力・あきらめ

介護ストレスが増大すると、心身ともに疲弊し物事に鈍感になっていきます。何に対しても興味がなくなり、趣味に打ち込むこともできなくなります。テレビなどを見ても、面白いと感じられず、他人の話も耳に入らなくなっていきます。

集中力がなくなり、気が付くとぼんやりとしていったこともあるようです。疲れていることはわかっていても、あきらめの気持ちが先行し、すべてがどうでも良いと思えてきます。

ストレスが重症化すると、誰かが手を差し伸べようとしても、放っておいてほしいと感じるようになるかもしれません。

介護者と要介護者の生活が成り立たなくなる恐れがあり、危険性が高まります。

介護うつってどんな病気?症状は?

介護うつってどんな病気?症状は?

介護ストレスから発症する介護うつとは、どのような病気なのでしょうか。その定義と具体的な症状について見ていきましょう。

介護うつとは

「介護うつ」は、正式な病名ではありません。介護をする人がうつ病を発症した場合に、広く用いられていることばです。

介護うつの特徴は、慢性的な介護ストレスが要因となっていることです。特に責任感が強くまじめな性格ほどリスクが高く、献身的に尽くしている人ほど発症しやすいと考えられています。

「夜眠れない」「朝起きるのが辛い」といったごくありふれた症状が、実は介護うつである場合もあります。

介護ストレスの重大性に気づき、早期対処しないと重症化する危険性があります。最終的に悲惨な事件へとつながる可能性もあるのです。

自分は大丈夫、という人でも介護ストレスが募っているかもしれません。介護うつを理解することは、家族と自分を守ることにつながります。

介護とうつ病の関係

日本社会福祉学会の報告によると、介護の有無とうつの有無の関連には強い相関関係が認められています。この報告の中では、介護負担感が高いほど介護する人の死亡率が高いことが示されています。

介護の有無とうつの有無の関連の分析でも、介護をしている人の割合の方が明らかに高く、さらに介護の精神的負担は介護者の死亡率を 1.63 倍に高めるという結果が報告されています。

介護を経験した人はうつになりやすいだけではなく、自分自身が要介護が介護が必要な状態になる傾向が高いこともわかってきました。

介護うつの症状例

介護うつの具体的な症状は、一般的なうつ病と変わりがありません。主なものとしては、以下のような症状があげられます。

  • 不眠
  • 食欲不振
  • 疲労
  • 倦怠感
  • 注意力
  • 思考力低下
  • 感情の起伏がなくなる
  • 感情的になりやすい
  • 不安感
  • 焦燥感

気分の落ち込みが長期に続き、眠れず、食欲がわかないのはすでにうつの症状と考えて間違いありません。特に朝起きたときに毎朝、深い絶望感を覚えるようであればかなり重症化が進んでいます。

介護うつの防止と改善のために

介護うつの防止と改善のため

介護は心身へのストレスが大きく、うつへのリスクが高いということがわかっています。それではいったいどうすれば、介護うつになるのを避けることができるのでしょうか。

SOSを出す

精神・生活・身体的なストレスについても見てきたように、介護を一人で背負い込む体制は、非常に危険です。声に出して「辛い」と言える場所があれば、それだけでもストレスを軽減できます。

在宅介護の場合でも、ケアマネージャーとの密な連携は介護ストレスを少なくするという観点からとても重要です。ただケアマネージャーにも、さまざまなタイプがいるのは確かです。まだ経験が浅く、各方面とのつながりがない人の場合、あまり知られていませんが、ケアマネージャーは家族の要望で変えてもらうこともできます。地元の介護状況に詳しく、また在宅介護支援の経験も豊富なケアマネージャーを見つけてください。

訪問看護の手配、生活支援、デイサービスの利用など、生活状況を改善するための方策は少なくありません。施設を利用できるようになれば、施設担当者という相談窓口を一つ増やすこともできます。

家族がいる場合には親の状況を伝えると同時に、支援してほしいことを具体的に伝えるようにします。例えば購入してきてほしいものや、行ってほしい手続きなど、他の家族にもできることはあるはずです。一緒に暮らしているのであれば、家事分担も提案してみてください。介護は一人だけの仕事ではありません。伝えづらいという場合には、ケアマネージャーなどの力を借りるのも良い方法です。

ケアマネージャーや介護サービス関係者、友人、親戚など誰でも構いません。辛くてたまらないときには、愚痴をこぼせる相手を確保してください。ただ気持ちを聞いてもらえるだけでも、安心できて、ずっと心が落ち着くものです。

孤立感をなくす

介護は孤独感が募ります。同じような経験をしている仲間がいれば、どれだけ心強いことでしょう。

孤立感をなくすためには、そうした仲間を見つけるのが一番です。すき間の時間でも実行できるSNSやブログでの発信も一つの手段です。インターネットを介せば、似たように辛い思いをしている人たちがたくさんいることがわかります。お互いに励まし合ったり情報を交換したりできれば、孤独な気持ちに陥らずにすみます。

同様に認知症介護のサークルに参加することで、介護の孤立感を薄れさせます。時間が取れないというときには、ケアマネージャーに相談してみてください。一時預かりなど、何らかの方法を提案してもらえます。最初から「出かけられない」とあきらめるのは、ストレスを貯める考え方です。

自分が介護うつになってしまうことの重大さを考えれば、数時間の外出は必要なものと思えるようになります。

利用できる機関・組織を活用する

超高齢化社会にある現代の日本では、国をあげて介護問題に取り組んでいます。介護うつは社会の中でも大きな課題です。

厚労省電話相談では、介護うつに限らず広く心の問題に対処しています。「よりそいホットライン」など、専門的な対応を実施している相談窓口もあります。他ではしにくい生活費などに関する相談も、まずは電話でたずねてみると良いでしょう。

地域に密着した「認知症カフェ」の活用もおすすめです。2014年時点では41都道府県280市町村で、655カフェが運営されています。

自分のための介護うつ対策

介護ストレスは目に見えない部分で、精神や身体の健康をむしばんでいきます。認知症は、身体に支障がある場合と比べて介護認定も低めの傾向があります。そのため在宅で介護する家が多く、家族には大きな負担がかかります。

公的な支援、相談窓口を上手に使いながら、一人で抱え込まないようにしていくことが、もっとも重要なポイントです。

ケアマネージャーに相談しながら、自分でもできる限り介護ストレスを貯めない工夫をしていきましょう。少しでも症状があれば早めに受診し、心身の状態を悪化させないことが大切です。

 

介護相談なら:安心介護 - 介護の悩みを解決する無料相談&介護ハウツー情報

※この記事は2019年8月時点の情報で作成しています。

 

 

寺岡純子(てらおか じゅんこ

監修者:寺岡純子(てらおか じゅんこ)

主任介護支援専門員 看護師
合同会社 カサージュ代表
看護師として病院勤務8年、大手介護事業者で約19年勤務し管理職を経験。
2019年8月合同会社カサージュを立ち上げ、「介護特化型研修事業」「介護離職低減事業」など介護に携わる人への支援を行っている。企業理念は「介護に携わるすべての人の幸せな生活をサポートする」。