認知症は自分たちでも予防できるものですか?そもそも認知症の原因となるのは、何ですか?高齢の親がおり、心配です。予防方法があれば教えてください。

 

認知症は自分たちでも予防できるものですか?

質問

質問者高齢の親がいるので、認知症については他人事ではありません。今はまだ元気ですが、ずっとこのままでいて欲しいと願っています。自分たちもそろそろ気をつけなければならない年代に差し掛かっていますが、認知症は予防可能なのでしょうか。認知症全般についても良くわかっていません。あまり難しいことはできそうもないのですが、日常生活で注意することや積極的にした方が良いことなどがあれば教えてください。

 

専門家

認知症は他人事ではなく、自分の身近でも起こりうるものです。認知症の原因には様々なものがあり、これをすれば認知症が予防できるというものは残念ながらありません。しかし日常生活での危険因子となる生活習慣を改善しておくことは、認知症予防には大いに有効です。

ここでは、認知症を引き起こす要因になるものにはどのようなものがあるか。また予防するためには、どのような点に気をつけて日常生活を送っていくのが良いのかなどの、具体的な方法をご紹介します。現在の日常生活を見直す参考にしてください。

認知症は予防できるの?

認知症は予防できるの?

高齢化が進行する中、認知症は社会の大きな課題となっています。自己努力で認知症が防止できるのであれば将来的な希望が持てますが、認知症の予防は可能なのでしょうか。

認知症について知ろう

認知症は脳の細胞に異常が発生することで、記憶障害や認知障害が起こる状態です。

認知症はそれらの症状の総称であり、病名ではありません。

認知症には原因別に以下のような種類があります。

アルツハイマー病

高齢者の認知症の6割に及ぶ病気です。脳の海馬周辺の萎縮から始まり、次第に脳全体に進行します。

レビー小体型認知症

「レビー小体」と呼ばれる変異したタンパク質によって、脳の神経細胞が侵される病気です。幻聴や幻視といった症状が見られ、主に75歳以上の高齢者で多く発症します。

前頭側頭型認知症

タンパク質の異常により、脳の前頭葉や側頭葉が萎縮することで発症します。65歳未満の「若年性認知症」の主な原因のひとつとされています。

 

このほかにも脳梗塞など、脳の疾患に伴って発症する認知症もあります。

また老人性のうつ病では、口数が少なくなり反応が薄いなど、認知症に似通った症状も見られます。

どのような病気であっても、家族による早期発見が重要なポイントとなります。

認知症の種類により対処が異なる

認知症状が現れた場合には、その種類や原因によって対処方法が異なります。

投薬によって症状の緩和や改善を図る方法もありますが、生活習慣の見直しで予防・改善できる場合もあります。

高齢者に多く見られるアルツハイマー病の場合、ある日突然発症するのではなく、緩やかに進行していきます。

初期段階のうちに発見できれば、それだけ進行を遅らせられる可能性も高くなります。

「認知症の予備軍」での対策が効果的

認知症予防については、その原因も多岐にわたるため「コレ」といった決定打はありません。

認知症に至るまでには、「軽度認知障害」(MCI)と呼ばれる正常と認知症の中間の症状が現れる傾向が多く見られます。この時点で適切な介入があれば、認知症の予防や進行の回避ができる可能性があります。

「軽度認知障害」と診断を受けた人のうち、約半数は認知症に進行すると言われますが、認知機能が正常化できる人も数多く存在します。

その対策として、運動・トレーニングで一定の効果が得られるほか、食事内容や生活習慣の見直しなどが大きく関係してきます。

認知症予防のための基本的な考え方

認知症予防のための基本的な考え方

認知症は特別な人がかかる病気でも、絶対に回避できるという症状でもありません。ごく身近にあり、誰もがリスクを背負っています。認知症を予防するための基本的な考え方について見ておきましょう。

認知症は脳の細胞の障害

先にも出ていましたが、認知症とは脳の細胞の障害です。

脳の細胞が傷つく原因は人や環境によっても異なりますが、要因として挙げられているのが運動不足や肥満、塩分の過剰摂取、飲酒、喫煙といった生活習慣のほか、高血圧症、高脂血症、糖尿病、心疾患などの既往症です。

生活習慣の改善や持病の治療に取り組んでいくことは、認知症のリスクを低くし、予防のための対策として大きな意味を持ちます。

認知症予防の2大要素

認知症予防の大きな柱が、食事と運動です。

メディアなどでも認知症予防に効果のある食材や食事内容が良く取り上げられていますが、青魚や野菜・果物、豆類やオリーブオイルなどをバランス良く摂取することで、脳に十分な栄養と機能を守るための成分を届けられるようになります。

また最近の研究では有酸素運動の量や強度が、認知症発症と大きく関係していることもわかってきています。

有酸素運動の習慣を日常生活に取り入れることで、認知症の要因となる肥満防止にもつながります。

しっかり栄養を摂り、身体を動かすという非常にシンプルな方法こそが、認知症予防の最良の手段と言えます。

生活を楽しむことも予防の一環

生活を楽しみ、人生に喜びを感じることも、認知症予防への対策の一環となります。

近年、若い人以上に元気で生き生きとしたお年寄りの姿が多くなりましたが、趣味を持ち、人と交わる機会が多い人ほど認知症を遠ざけているようです。

文章を読む、書くといった知的活動も、脳への良い刺激となります。

読書や映画、ゲーム、ダンス、球技といった夢中になれるものが、認知症の抑制に一役買います。

若い頃にできなかったことがあれば、思い切って始めてみるのも良いでしょう。

没頭できる楽しみを見出せるよう、周囲が協力していくことも大切です。

認知症予防のための具体的な方法とは

認知症予防のための具体的な方法とは

家族が知っておきたい認知症予防のための具体的な方法について、ご紹介していきましょう。

認知症を回避するための生活改善

「知的活動」「運動」「コミュニケーション」「食事」「睡眠」は、認知症を予防するための5つのキーワードと呼ばれています。

認知症を回避するための生活の見直しをするときには、このキーワードに従ってチェックしていきます。

最初に、生活から認知症の要因を取り除くことに対して取り組んでいきましょう。例えば禁煙や肥満の解消、持病の治療などがあります。

一度に改善するのは無理でも、認知症予防の重要性を考えながら、生活の中で進めていくことが大切です。

食生活の見直しでは、これまでの食事内容を把握して認知症予防に良いとされるものを積極的に取り入れていきます。野菜や果物、魚を中心に、豆類やオリーブオイルをバランス良く摂取していきましょう。

特に控えたいのは塩分や糖分、動物性脂質です。これらは血管を脆くしたり詰まらせたりする原因となりやすく、脳の機能にも悪影響を与えます。

ゆったりとした気持ちで毎日が過ごせるように、入浴や睡眠時間などにも気を配ることも必要です。家族が協力し合って、高齢者の部屋の掃除を手伝うなどしながら、快適な生活環境を整えていきましょう。

身体の各所を使ったトレーニング

有酸素運動のほかに、身体と脳を同時に使うようなトレーニングも認知症予防には高い効果が認められています。

ひとりジャンケンゲームや手遊びなどは、わずかな時間でもできます。車などの移動時間に、促してみてはいかがでしょうか。

やや負荷がかかる軽度の筋トレ、スクワットもリズムを取りながら行うとさらに効果がアップします。

ステップを踏みながら手拍子をするなど、身体を動かしながら同時に頭を使うものは効果が高いとされています。

生活の中の生きがい

先にも出ていましたが、生活の中に生きがいを見出すと、脳に良い刺激が与えられます。

囲碁や将棋といったゲーム、園芸、料理、パソコンなど興味のあることであれば何でも役に立ちます。ウォーキング、水泳、ダンス、体操などの運動は、家族や友人と連れ立って行えばさらに効果的です。

趣味を通して他人に交わると効果が倍増すると考えられているため、サークルへの参加などもおすすめです。

家族みんなで取り組む認知症予防

家族みんなで取り組む認知症予防

高齢者は自分の居場所がないと感じることも多く、疎外感を持つ場合もあります。こうした状態が長く続くのは、認知症予防の観点からは好ましくありません。家族で取り組む認知症予防について解説します。

コミュニケーション不足が認知を早める

家族ができる認知症対策には、会話の量を増やすという方法があります。

日頃から良く話をしていれば、「何度も同じ話をするようになった」「つい先ほどのことを忘れているようだ」など、違和感に気づくことができます。

家族が早期に「軽度認知障害」の段階で気づければ、認知症への進行を食い止められる可能性もあります。

高齢者は最近のことが思い出せなくても、思い出話は得意という人がほとんどです。認知予防には「回想法」という手法がありますが、過去の話をすることで、脳の記憶を司る機能を刺激する効果が得られます。

「このときは〇〇だったよね」「そのときはどんなだったの?」と、上手に話を引き出してみましょう。

笑顔でトレーニング

笑うという動作は、実はかなり高次脳機能であると考えられています。

精神活動が不活発になると、笑顔がなくなり表情が消えていきます。

なぞなぞ・しりとりで頭の体操をしながら、みんなで笑顔になれるような時間を過ごすことが、認知症予防に大きな効果が期待できます。

例えばどれほど良い脳トレドリルでも、与えっぱなしでは継続できないのが普通です。家族と一緒に考えながら、間違いをおおらかに笑い合えれば良い時間を過ごせます。

家族間でのハンドマッサージや柔軟体操の補助なども、ふれあいながら笑顔になれるひとときです。「くすぐったい」「痛い痛い!」と言った声が上がれば、笑顔があふれます。

ながら動作が認知症予防に効く

「ながら動作」は一般的にはあまり良いイメージをもたれませんが、認知症予防から見たときには有効な方法です。

テレビを見ながら洗濯物をたたむなどの家事をする、右と左で違う動作を行う「デュアルタスク運動」などは、脳を活性化する効果があります。

音楽を聴きながら編み物をする、茶わんを洗いながら歌を歌うといったことでも構いません。 日常的に2つのこと同時にする習慣を、取り入れていきましょう。

構えずに認知症予防を日常習慣に

認知症予防というと何か難しいことをするようですが、これまで見てきたように実はそれほど特別なことではありません。

バランスの良い食生活を心がけ、手足を動かし、生活を楽しみながら、良い睡眠をとる。これらは世代に関係なく、現代人にとって必要な習慣ばかりです。

高齢家族の認知症予防は、家族全員の健康を守る対策にもなります。構えずに力を抜いて、確実に継続できるよう実践していきましょう。

 ※この記事は2019年12月時点の情報で作成しています。

 

監修者:寺岡純子

監修者:寺岡純子(てらおか じゅんこ)

主任介護支援専門員 看護師
合同会社 カサージュ代表
看護師として病院勤務8年、大手介護事業者で約19年勤務し管理職を経験。
2019年8月合同会社カサージュを立ち上げ、「介護特化型研修事業」「介護離職低減事業」など介護に携わる人への支援を行っている。企業理念は「介護に携わるすべての人の幸せな生活をサポートする」。