レビー小体型認知症とはどんな病気ですか?症状や本人への対応など教えてください。

親がレビー小体型認知症と診断されたら?

質問

質問者同居している親の様子がおかしいので、病院に行ってみると、レビー小体型認知症と診断されました。あまり聞いたことのない認知症で、今までイメージしていた認知症と症状が違うため戸惑っています。 できるだけ今までの暮らしを続けて欲しいと思っているのですが、家族として心構えをするためにも、これからどのような症状が出てくるのか知りたいです。また、そこにいない人が見えるなど、戸惑ってしまう言動があります。家族としてどのように対応したらいいのでしょうか。

 

専門家レビー小体型認知症は、聞きなれない認知症かもしれませんが、3大認知症と呼ばれている認知症の1つです。そこにいない人が見える幻視は、レビー小体型認知症に特徴的な症状です。他にも、レム睡眠障害やパーキンソン症状など、認知症でイメージするものとは異なる症状が現れることがあります。 ここでは、レビー小体型認知症の症状やどのように進行するのか、そして治療方法や症状への対処方法についてご紹介します。現在や今後の生活の参考にしてください。

 

レビー小体型認知症について知ろう

レビー正体の説明図

レビー小体型認知症の症状や対応方法を知る前に、まずはレビー小体型認知症とはどんな病気なのかを知っておきましょう。

原因と特徴を知ろう

レビー小体型認知症とは、脳の広い範囲にレビー小体という異常なたんぱくがたまり、脳の神経細胞を傷つけてしまうことで引き起こされる進行性の病気です。基本的には遺伝しません。

レビー小体型認知症サポートネットワークによると、日本には現在、約50万人のレビー小体型認知症の患者がいると推計されています。認知症患者のおよそ20%がレビー小体型認知症であり、アルツハイマー型認知症、血管性認知症とともに、3大認知症と呼ばれています。

1976年に日本の小阪憲司医師が最初に発見し、1990年代後半から広く知られるようになりました。

レビー小体型認知症の診断

レビー小体型認知症の診断は、ご本人や家族などへの問診から始まります。いつどのような症状が出たのかなどをメモしておくと良いでしょう。

その後、診察により運動症状や認知機能異常の有無が確認されます。血液検査で認知症以外の病気ではないかが確認され、画像検査によりレビー小体型認知症と診断されます。

レビー小体型認知症の症状は幅広く、個人差もある病気です。 パーキンソン病やうつ病、アルツハイマー型認知症、その他の精神疾患と間違われることがあります。間違った診断で処方された薬が、レビー小体型認知症の症状を悪化させてしまうことがあるため、レビー小体型認知症かもと思ったら、認知症を得意としている専門医を選ぶようにしましょう。

レビー小体型認知症の症状と経過

レビー小体型認知症の症状例:手の震え

レビー小体型認知症には、非常に幅広い症状があります。主な症状とどのように進行していくのかを確認していきましょう。

レビー小体型認知症の主な症状

認知機能の低下・変動

注意力がなくなったり、いつ・どこでといった状況の把握が難しくなったりといった認知機能障害が現れます。認知症というと記憶障害のイメージが強いですが、レビー小体型認知症では、初期のうちには記憶障害は目立たないことが多いです。

認知機能は日や時間帯によって変動が見られ、頭がはっきりしている時と、ボーっとしている時が入れ替わり起こります。

パーキンソン症状

手首や肘などの関節のこわばり、手のふるえ、無表情、動作がゆっくりになる、まえかがみで小刻みに歩く、などが起こります。身体のバランスをとることが難しくなり、立ちくらみを伴うことも多いため、転倒に注意が必要です。

幻視

そこには存在していない人や小動物などが、はっきりと見えます。また、揺れるカーテンが人に見えるなど、見間違いが頻繁に起こります。

睡眠時の異常行動

本人には自覚がなく、家族が気付くことが多い症状です。眠っている間に、大きな声で叫んだり、暴れたりといった異常行動を起こします。身体は寝ていても、脳が活動しているレム睡眠中によく起こる症状です。

抑うつ症状

気分が落ち込み、意欲が低下します。なんとなく元気がない、食欲がないという訴えから気づかれることがあります。初期の段階から抑うつ症状が現れることが多く、うつ病と間違えて診断されてしまうことがあるので注意が必要です。

自律神経症状

血圧や体温、内臓機能を調整する自律神経の働きが悪くなるため、立ちくらみや失神、便秘、発汗異常、倦怠感といった不調が起こります。失神を起こすと、ひどい転倒をして大怪我につながるため注意を要します。

レビー小体型認知症の経過

レビー小体型認知症の発症の前兆として、抑うつ症状や睡眠中の異常行動が現れます。

初期には、まず遂行能力や判断力等の認知機能障害が現れます。記憶障害も見られますが、軽度のことが多く、簡単な検査では記憶力は正常範囲内のこともあります。その他、人や小動物の幻視、立ちくらみや便秘などの自律神経症状、パーキンソン症状も見られるようになります。

中期になってくると、認知機能障害が進行して、もの忘れや時間や場所がわからなくなる見当識障害が目立ってきます。幻視から被害妄想が見られるようになったり、パーキンソン症状が悪化して歩行障害がひどくなり転倒しやすくなったりしてきます。

症状が進むにつれて、嚥下機能が障害されるため食べ物の飲み込みが悪くなって誤嚥性肺炎を繰り返しやすくなり、また認知機能の低下によって他者とのコミュニケーションが困難になります。

末期には、パーキンソン症状が進行して寝たきりとなり、全身が衰弱して死に至るというケースがほとんどです。

アルツハイマー型認知症との違い

アルツハイマー型認知症とレビー小体型認知症は、症状や経過が大きく違います。

アルツハイマー型認知症では、初期にもの忘れの症状が目立ち、記憶障害を中心とした認知機能障害が主な症状となります。レビー小体型認知症では、初期のうちには記憶障害は比較的目立ちません。幻視や睡眠時の異常行動、抑うつ症状が見られ、認知機能の障害とともに、パーキンソン症状が起こります。

緩やかに進行していくのはどちらも同じですが、レビー小体型認知症では時間帯や日によって認知機能の変動が見られます。認知機能が保たれている時間は、進行するにつれて次第に短くなっていきます。

症状への対応方法

レビー小体型認知症の症状に対処するには

ここまで、レビー小体型認知症の症状や経過を説明しました。テレビなどで取り上げられる認知症とは、イメージの異なる症状が多く、驚かれた方もいるのではないでしょうか。続いて、それぞれの症状ごとの対応方法についてポイントを解説します。

幻視への対応

レビー小体型認知症の初期に多く見られる幻視ですが、「実際には存在しないものが見えている」と本人が自覚していることがあります。しかし、急に現れた幻視に驚いてしまうことがあるため、落ち着いてもらうこと、本人や家族の安全を確保することが大切です。

本人が幻視だと自覚していない場合では、本人を否定せずに「驚いたね」「大丈夫だよ」と声をかけて安心してもらうようにしましょう。

見間違いについては、室内を明るくして影ができにくい環境にする、壁に洋服や絵画などを掛けない、目立つものは置かないなどの工夫で減らすことができます。

妄想への対応

物を盗られた、悪口を言われている、同居人が入れ替わったなど…の妄想が起こったら、本人の言葉を繰り返し、気持ちを聞いて落ち着いてもらいましょう。「物を盗られた!」という時には、一緒に探してあげるのも良いでしょう。探しているうちに、ご本人が落ち着いてくることがあります。

否定したり怒ったりするのはNGですが、さらに妄想を信じてしまう恐れがあるため、肯定することもNGです。

自分が妄想の対象になってしまったら、なかなか冷静ではいられないものです。相手や自分の気持ちを落ち着かせるために、その場を離れて他の家族やヘルパーさんなどに間に入ってもらうようにしましょう。

抑うつへの対応

話をじっくりと聞き、負担にならない程度に言葉や意思決定を促していきましょう。できるだけ安心できる環境を整えて、孤独感や不安、焦燥感を取り除いてあげることが大切です。

抑うつ症状が出ている方には、注意や叱責、そして励ますようなことは控えましょう。

転倒に注意しましょう

レビー小体型認知症の方はパーキンソン症状が現れるため、転倒への注意も必要となります。立ち上がりや歩き出しには介助をしたり、転倒をしないように室内の段差をなくすなど環境を整えたりすると良いでしょう。「これぐらいなら大丈夫だろう」という低い段差でも、つまずいてしまう可能性があります。

驚いたりバランスを崩したりすることを避けるために、後ろからではなく前に回り込んで声をかけることも、転倒を予防するポイントです。

薬での治療やリハビリも継続していきましょう。

家族がレビー小体型認知症と診断されたら

家族がレビー小体型認知症と診断された時に何をすべきか

家族が認知症だと診断されたら、誰でも不安になるでしょう。レビー小体型認知症という聞きなれないものであれば、なおさらです。誰にも相談できないという孤独や介護疲れを感じる前に、こんなことを意識してみてはいかがでしょうか。

病気について理解しましょう

まずは、レビー小体型認知症とはどういう認知症なのかを理解するようにしましょう。本人の変化や行動が、認知症の症状によるものだとわかれば、対応もしやすくなるでしょう。起こりえる症状を知っておけば、心構えもできます。本人を介護するためだけではなく、自分の心を落ち着かせるためにも、病気について理解することは大切です。

介護の相談相手を作りましょう

大認知症であるレビー小体型認知症ですが、一般的に認知症でイメージする症状とは大きく異なるため、周囲の人に理解してもらえないと感じるかもしれません。

最も身近な介護の専門家であるケアマネジャーに相談をしたり、介護者同士が集まって情報交換や相談をする「家族会」に参加してみたりすると良いでしょう。家族会の中には、「レビー小体型認知症の人を介護している家族の会」など、対象を限定しているものもあるので、通いやすい地域にある家族会を探してみてください。

また、安心介護の「介護のQ&A」では、匿名で介護の専門家に質問をすることができます。「こんなこと相談していいのかな?」と思える悩みや疑問を投稿してみてはいかがでしょうか。

レスパイトも大切です

レスパイト(respite)とは、一時中断や延期、小休止などを意味する英語です。介護では、高齢者などを介護している家族が、介護から離れる時間をつくり、リフレッシュしてもらうことを意味しています。

無理をして体調を崩してしまったり、仕事を辞めなくてはいけなくなったりすることがないように、ショートステイや通所介護サービスなどを上手に利用して、介護から離れる時間をつくるようにしましょう。

まとめ

レビー小体型認知症は、幻視や睡眠中の異常行動、抑うつ症状、パーキンソン症状など、さまざまな症状がある認知症です。初期のうちには記憶障害が目立たないので、認知症だと気づかずに、他の病気だと間違われることもあります。

一般的にイメージする認知症とは症状が異なるため、診断を受けた本人や家族は戸惑ってしまうことでしょう。症状を理解し、家族として症状に対応するお手伝いを、この記事ができたら幸いです。

 

※この記事は2021年6月時点の情報で作成しています。

医師:谷山由華
監修者:谷山 由華(たにやま ゆか)

医師:谷山 由華(たにやま ゆか)

【経歴】
・防衛医科大学校医学部医学科卒業
・2000年から2017年まで航空自衛隊医官として勤務
・2017年から2019年まで内科クリニック勤務
・2019年から内科クリニックに非常勤として勤務、AGA専門クリニック常勤

内科クリニックでは訪問診療を担当。内科全般、老年医療、在宅医療に携わっている