まだ50代ですが父の様子若年性認知症患者の基礎疾患内訳がおかしいです。仕事でもミスをしているようで、若年性認知症ではないかと心配しています。どのような症状があり、どの診療科を受診したらいいのかを教えてください

質問

質問者まだ50代の父ですが様子がおかしく、数日前の出来事を忘れてしまうことが増えてきました。会社でもミスが増えて部署が異動となっていたようです。日常生活は大きな問題なく過ごせておりますが、家族や仕事の同僚がいるから何とかなってしまっている印象もあります。 もし認知症なのであれば、早めに治療を受けて、早期退職も視野に考えて、サポートをしながら生活を送れればと思っています。若年性認知症ではどのような症状がみられ、どんな病院を受診すればいいのでしょうか。また、自覚していない本人に何と言って、病院に連れて行ったらいいのかわかりません。教えてください。

 

専門家若年性認知症は、65歳未満の方が発症した認知症です。働き盛りで子育て中の現役世代のため、「なにかがおかしい」と気づいても、まさか認知症だとは思いません。そのため、診断が遅れてしまうことがあります。早期診断と早期治療は、認知症の方全てに重要ですが、若年性認知症では特に大きな意味を持ってきます。 ここでは、若年性認知症の症状や間違われやすい病気、そして受診方法や早期受診のメリットについてご紹介します。現在や今後の生活の参考にしてください。

 

若年性認知症とは

若年性認知症について考える家族の図

若年性認知症とは、65歳未満の方が発症する認知症のことです。原因となる疾患の割合など、高齢者の認知症とは若干の違いがあります。まずは2020年のデータから、若年性認知症の基礎知識を見てみましょう。

若年性認知症の原因は?

2020年3月のデータでは、若年性認知症を発症する基礎疾患の最多は、アルツハイマー型認知症(52.6%)となりました。アルツハイマー型認知症は、高齢者の認知症にも多い基礎疾患です。続いて、脳血管性認知症(17.1%)、前頭側頭型認知症(9.4%)となっています。

若年性認知症患者の基礎疾患内訳



出典:日本医療研究開発機構認知症研究開発事業による「若年性認知症の有病率・生活実態把握と多元的データ共有システムの開発」

高齢者の認知症では、アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症が4大認知症と呼ばれていますが、若年性認知症では、レビー小体型認知症/パーキンソン病による認知症(4.1%)に加え、外傷による認知症が4.2%と高齢者の認知症に比べて多いのが特徴です。

若年性認知症を発症する年代

2020年のデータによると、日本国内の若年性認知症者数は、約3万5700人と推計されています。これは18歳から64歳人口における人口10万人当たりに50.9人の若年性認知症患者がいることになります。

年齢別、男女別でみてみましょう。

男女・年齢別の若年性認知症有症率

45歳以降から数が増え始め、55歳以降になるとさらに増えているのが分かります。

これらのデータから、若年性認知症は仕事や子育ての現役世代である40代後半から、比較的男性の方がなりやすい傾向があるといえます。

若年性認知症の症状

認知症のイメージイラスト

若年性認知症では、どのような症状が出るのでしょうか。周囲の人が最初に気づく症状の例とともに紹介します。

最初に気づく症状は?

若年性認知症ではないかと最初に症状に気づいた年齢は、全体の平均で56.8歳です。最初に気づいた人は「配偶者」(53.8%)が最も多く、続いて「子」(23.2%)となっています。また、「本人」(13.9%)よりも「職場の仲間」(15.0%)が症状に気づきやすい傾向があるようです。

最初に気づいた症状で最も多かったのは、「もの忘れが多くなった」(66.6%)です。「職場や家事などでミスが多くなった」(38.8%)、「怒りっぽくなった」(23.2%)、「何事にもやる気がなくなった」(22.6%)がこれに続いています。

若年性アルツハイマー型認知症の症状

若年性認知症で最も多いアルツハイマー型認知症は、最初に気づいた症状のように「もの忘れ」が特徴的な症状です。初期では数日前のことを思い出せなくなります。体験の一部分ではなく、体験のすべてを忘れてしまいます。例えば、「昨日、友人と川沿いの公園でお花見をした」という体験をすべて忘れてしまい、後になっても思い出せません。誰と行ったか、お花見で何を食べたかなど、体験の一部分を忘れてしまうのは、年齢によるもの忘れです。

症状が進むにつれて前日、数時間前、数分前のことが分からなくなり、徐々に思い出せる時間軸が短くなっていきます。数分前に聞いた話が思い出せなくなると、同じことを何度も聞くという状態がみられます。

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他にも、次に説明するような症状が現れます。

認知症の中核症状

認知症には、認知症の症状の基本となる中核症状と、人によって出たり出なかったりする行動・心理症状(BPSD)があります。

アルツハイマー型認知症で特徴的な記憶障害は、中核症状のひとつです。他には見当識障害、理解・判断力の低下、実行機能障害、失行・失認などが見られます。

最初に気づく症状で上げられた「職場や家事などでミスが多くなった」は、理解・判断力の低下や実行機能障害により現れた症状だと考えられます。理解・判断力が低下することで、考えるスピードが遅くなったり、同時に2つ以上の物事を考えられなくなったり、いつもと違うことに対応できなくなったりします。また、実行機能障害があると、物事を計画立てて段取り良く実行することができなくなります。

見当識障害は時間や場所が分からなくなるため、いつ?どこ?といったことが分からなくなってしまいます。例えば、いつも通っている道なのに道に迷う、電車・バスで乗る駅や降りる駅がわからないという状態が見られます。

認知症の種類によって、最初に現れやすい症状は異なります。

脳梗塞や脳出血といった脳血管障害に起因して起こる脳血管性認知症では、アルツハイマー型認知症の症状の現れ方は似ています。異なる点としては、初期には本人が認知症であることを自覚していること、部分的に能力が低下するまだら認知症であること、手足の麻痺などの身体的症状があることなどがあげられます。

脳の前頭葉と側頭葉前方に病変が出る前頭側頭型認知症では、感情のコントロールができない、相手の言ったことや行動を反復する、悪気なく万引きをしてしまうなどの反社会的行動同じ行動を繰り返す、といった症状が特徴的です。

外傷による認知症では、損傷を受けた脳の場所によって現れる症状は異なります。

レビー小体型認知症では、初期から睡眠時の異常行動、幻視、パーキンソン症状が現れることが多く、記憶障害は目立ちません。

行動・心理症状(BPSD)とは

行動・心理症状(BPSD)には様々な症状があります。認知症になったら必ず出る症状ではなく、本人や環境によって出たり出なかったりする症状です。他の疾患と似ている症状もあり、区別するためには認知症の中核症状が出ているかを見極める必要があります。

一例としては徘徊、抑うつ、被害妄想、帰宅願望や夕暮れ症候群、攻撃的な言動などがあります。

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若年性認知症と間違われやすい病気

若年性認知症と似た病気とは。

発症年齢が若い若年性認知症では、次のような病気と間違われて診断が遅れることがあります。

うつ状態

うつ状態でも記憶力や判断力の低下が見られます。うつ病のもの忘れは、新聞や仕事の資料を呼んでも頭に入らない、打ち合わせをした内容が頭に入らないなど、新しいことを覚えるのに問題が現れます。 認知症のもの忘れでは、体験した事柄自体を忘れてしまうのが特徴です。

更年期障害

女性において、女性ホルモンの分泌が急激に低下することで、ホルモンバランスが崩れて怒る更年期障害は、個人差はありますが閉経を挟んで45~55歳の方に現れるものです。これは若年性認知症を発症することの多い年齢とも重なります。

更年期障害の特徴的な症状は、ホットフラッシュや寝汗・発汗ですが、記憶力低下やうつ症状など、若年性認知症と共通する症状も現れます。

また、男性においても、40歳代以降は徐々に男性ホルモンの分泌が低下するため、女性と同じような更年期障害の症状が現れることがあります。

若年性認知症に気づくポイント

若年性認知症に気づくためのチェックポイントとは

「もしかしたら若年性認知症かも」と、気づくきっかけとなるポイントを紹介します。

チェックポイント

日常生活で、次のような変化が起きてはいないでしょうか?

  • 同じことを何度も聞く/話す
  • 大切な約束を忘れる
  • 財布や携帯電話、鍵などを無くしてよく探している
  • 無くしたものを、家族が盗ったと主張する
  • よく知っているはずの道で迷ってしまう
  • 使い慣れた家電製品の使い方を忘れてしまう
  • やり慣れた仕事の手順を忘れる/ミスが増える
  • いつも同じ服を着ている/季節に合った服装ができなくなる
  • 風呂に入りたがらない
  • 趣味を辞めてしまう/外出をしたがらない
  • 怒りやすくなった/攻撃的になった

もしかしたらと思ったら受診しましょう

若年性認知症の診察イメージ

家族が「何かがおかしい」と気づいたら、早急に病院を受診しましょう。

まずはかかりつけ医・産業医に相談を

何かがおかしいと思うけれど、どこで診てもらえばわからないという方は、まずはかかりつけの医療機関や職場の産業医に相談をしてみましょう。専門医療機関への紹介状を書いてもらうこともできます。

本人が認知症だと気づいていない場合でも、かかりつけ医であれば「家族が心配しているから健康診断に行こう」と声をかけやすいでしょう。

また、受診について不安なことや疑問があれば、認知症支援コーディネーターが配置された若年性認知症の相談窓口が都道府県ごとに設置されているので、利用すると良いでしょう。本人や家族だけではなく、職場の人も相談できます。

(参考):全国各地の専門相談窓口(外部サイト)

専門医療機関

認知症の検査や診断をする専門医療機関には、認知症を専門とする医師がいる「認知症疾患医療センター」があります。その他にも、精神科や心療内科、脳神経外科、神経内科、もの忘れ外来などのある病院や診療所、クリニックなどで受診も可能です。

迷ったらかかりつけ医や産業医、若年性認知症の相談窓口に相談してみると良いでしょう。

診断方法

若年性認知症は、問診と身体的検査、脳の働きを調べる神経心理検査、画像診断によって診断されます。

問診の際に家族が同行し、いつからどのような症状が出ているのかを伝えると、医師の診断の役に立ちます。日ごろから気づいたことをメモしておき、受診の際に持参すると良いでしょう。

早期受診のメリット

早期受診のメリットの説明



若年性認知症かもと思ったら、早いうちに病院を受診しましょう。早期受診にはこんなメリットがあります。

早期に治療を開始できる

アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症には、進行を遅らせる薬があります。症状が軽いうちに治療を開始することで、できるだけ日常生活を継続させ、QOL(生活の質)を維持することが目指せます。

早くから支援を受けることができる

本人も配偶者も働き盛りに発症する若年性認知症では、未成年の子供がいることも少なくはありません。本人が仕事を続けられなくなったり、配偶者が介護のために仕事を減らしたりなどの理由で、発症後に収入が下がってしまうケースは57.4%にもなっています。

経済的な支援や就労支援、自立支援医療制度、障害者手帳、障害年金など、生活を支える様々な支援や制度を早いうちから利用することで、配偶者の介護離職や子どもの進学への影響を防ぐことができるでしょう。

また、医療費や介護費用が高額になった場合には、高額療養費、高額介護サービス、高額医療・高額介護合算療養費制度など、一定の金額を超えた分が支給される制度があります。

詳しくはケアマネジャーまたは若年性認知症の相談窓口にご相談ください。

また、早期のうちから症状に合わせたサポートを、医療や介護の専門職から受けられることも、大きなメリットです。

将来について話し合うことができる

まだ症状が軽いうちから診断を受ければ、仕事をどうしたいのか、症状が進んだらどうしたいのかなど、本人が家族と今後について十分に話し合うことができます。本人にも家族にも、病気であることを受け入れる時間が取れることもメリットです。

まとめ

若年性認知症は、まだ若いことからうつや更年期障害などと間違われることがあります。症状を知ること、若年性認知症に気づくポイントを知っておくと、早期診断・早期治療につなげることも可能です。

若年性認知症は、現役世代にとって自分自身や家族、友人、そして職場の同僚が発症するかもしれない病気です。この記事が早期発見の役に立つことを願っています。

医師:谷山由華
監修者:谷山 由華(たにやま ゆか)

医師:谷山 由華(たにやま ゆか)

【経歴】
・防衛医科大学校医学部医学科卒業
・2000年から2017年まで航空自衛隊医官として勤務
・2017年から2019年まで内科クリニック勤務
・2019年から内科クリニックに非常勤として勤務、AGA専門クリニック常勤

内科クリニックでは訪問診療を担当。内科全般、老年医療、在宅医療に携わっている