若年性認知症とは?

「認知症」という言葉を聞くと多くの方が高齢者がなる病気と思われるかもしれません。ですが、認知症の中でも若年性認知症の場合は高齢でなくても認知症となってしまうため、ご自身の親だけでなく兄弟やパートナーさらにはご自身の子どもが若年性認知症になってしまうという可能性もゼロではありません。そんな身近な人がなってしまう可能性がある若年性認知症についてここで詳しくご紹介します。

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若年性認知症とは?

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若年性認知症とは65歳未満で発症する認知症のことを言います。2020年のデータになりますが、若年性認知症の数は3.57万人。人口10万人当たり50.9人となります。若年性認知症は男性に多いことが特徴で、年齢別にみると40歳までの有病率は一桁台ですが、40歳を過ぎると年齢階級が5歳上がるごとに有病率がほぼ倍増しています。
2009年のデータによると、推定発症年齢の平均は51.3歳となっています。

若年性認知症と高齢者の認知症の違いとは?

同じ認知症という病気ですが若年性認知症と高齢者の認知症ではさまざまな観点から違いが見受けられます。その違いをまとめました。

若年性認知症と高齢者の認知症の違いその1 発症年齢と性別

前述したように若年性認知症の発症年齢は65歳未満。発症の平均は51歳となります。一方高齢者の認知症は65歳以上がなるものであり、さらに年齢を重ねるごとになりやすくなります。また、性別でみても若年性認知症は男性が女性よりもなりやすい傾向にあります。

若年性認知症と高齢者の認知症の違いその2 若年性認知症と診断がつくまでに時間がかかる

若年性認知症は若い人がなる認知症のため、実は患者自身が認知症の症状に気づくことができ、人によっては非常に早いタイミングで受診することができます。ですが年齢ゆえに仕事や育児などで忙しくなかなか受診ができなかったり、更年期障害だろうと勝手に決めつけてしまったりすることで、医療機関への受診が遅れ、若年性認知症と診断されるまでに時間がかかってしまうのです。

若年性認知症と高齢者の認知症の違いその3 経済的な問題が大きい

高齢者の認知症では、すでに年金をもらっていたり、会社を退職して退職金が出ていたりと認知症によって社会生活の遂行が困難になってしまっても、ある程度生活していくための経済的な余裕はあります。ですが、若年性認知症では働き盛りの方が認知症となってしまい、働くことができなくなることが多いため、経済的な負担が大きくのしかかるというのが特徴です。後述もしますがこの経済的なダメージが実は若年性認知症の最たる課題でもあります。

若年性認知症と高齢者の認知症の違いその4 介護者の負担がが大きい

高齢者の認知症よりも実は若年性認知症の方が介護者への負担が大きくなることが多いです。高齢者の認知症の場合、配偶者とその子供世帯など、介護やそのフォローのできる人が複数いることが多いですが、若年性認知症の場合は主たる介護者が配偶者1人だけということが多いです。

主たる介護者である配偶者にとって、介護の対象はパートナーだけでなく、高齢の両親あるいは義両親の介護もしないといけないことがあります。また、晩婚の影響で子育ても並行していることもあり、この場合は配偶者の負担がさらに大きなものになってしまいます。

配偶者がいない方の場合は両親が面倒を見ることになりますが、高齢で両親も介護状態になる、先に亡くなるなど、主な介護者を早い段階で失う可能性があります。

若年性認知症と高齢者の認知症の違いその5 原因が異なる

後述もしますが、若年性認知症と高齢者の認知症では認知症になる原因の疾患が少し異なります。

高齢者の認知症では、アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症、レビー小体型認知症が3大認知症といわれていますが、若年性認知症の場合はアルツハイマー型認知症、脳血管性認知症の次に、前頭側頭型認知症や外傷による認知症が多いのが特徴です。

若年性認知症の原因は?

若年性認知症の原因は頭部外傷、感染症、脳腫瘍、変性疾患など原因が多様である事が特徴です。若年性認知症の原因で最も多いのがアルツハイマー型認知症で52.6%、次に脳血管性認知症で17.0%。次いで前頭側頭葉変性症が9.4%、外傷による認知症が4.2%、レビー小体型認知症が4.2%、アルコール性認知症が2.8%の順となっています。

若年性認知症の症状と進行

若年性認知症には認知症の症状の基本となる中核症状と二次的に発生する行動・心理症状があります。中核症状は若年性認知症の方においては誰にでも見られる症状ですが、症状が出現する時期などは人によって異なります。一方、行動・心理症状は中核症状が出ているうえで、そこにさまざまな要因が加わることによって二次的に発生する症状です。誰にでも見られるというわけでもなく、さらに個人差が大きいのが特徴です。

中核症状

中核症状には記憶障害、見当識障害、判断力、理解・判断力の低下、実行機能障害、失語・失行・失認などがあります。


記憶障害の場合、初期では数日前のことを思い出せなくなりますが、症状が進むにつれて前日、数時間前、数分前のことが分からなくなり、徐々に思い出せる時間軸が短くなっていきます。例えば5分前に聞いた話が思い出せない、周りから同じ話を何度もしているといわれるという状態が見られます。

見当識障害は時間や場所が分からなくなるため、いつ、どこといったことが分からなくなってしまいます。例えばいつも通っている道なのに道に迷う、電車・バスで乗る駅や降りる駅がわからないという状態が見られます。

理解・判断力の低下や実行機能障害、失行といった症状は、それまでできていたことが急にできなくなることで気づかれることが多いです。例えば、今までできていた料理ができなくなった、鍋を焦がす、ガスの火を消し忘れる、水道の水を出しっぱなしにする、いつも同じ服を着て着替えたがらない、家電製品の使い方がわからないという状態が見られます。

行動、心理症状

行動・心理に症状では徘徊、妄想、幻覚に加えて不安・焦燥・抑うつ状態が見られます。
徘徊は目的もなく歩き回っているもの。ですが、本人には目的があるという場合が多いです。妄想では、現実的に起きていないのに本人にとっては起きていると思ってしまうものです。例えば、通帳、印鑑、財布などをよく失くし、家族が盗ったと主張するものとられ妄想が圧倒的多数にみられます。

幻覚とは現実には見えないものが見えるようになることで例えば、子どもや動物が見える(表情や形までははっきりしない)という状態がみられます。また、他の人には聞こえていない音が聞こえる幻聴という症状が出る場合もあります。

不安・焦燥・抑うつでは強い不安を感じる、イライラする、何もしたくなくなるという方が多く、例えば外出をしなくなる、今まで趣味でやっていたことを急にやらなくなる、テレビや新聞を見なくなる、関心がなくなるという状態が見られます。

若年性認知症の介護者にアンケートをとった結果によると、最初に若年性認知症では?と気づかれた症状は「もの忘れが多くなった」が最も多く66.6%、「職場や家事などでミスが多くなった」が38.8%、「怒りっぽくなった」が23.2%、「何事にもやる気がなくなった」が22.6%となっています。

また、アルツハイマー型の若年性認知症は特に進行が速く、重症化しやすいのが特徴です。

若年性認知症の人への対応

若年性認知症は働き盛りの世代が発症する可能性の高い認知症であるため、本人や家族の精神的負担が強いという特徴があります。また、一家の収入を担っている方が発症することで経済的なダメージも重くのしかかります。前述したようにこれが若年性認知症で最も悩ましい問題です。


ここでは若年性認知症の方への社会的な対応をメインにご紹介します。

まずは相談先を作る

若年性認知症の場合、多くの相談窓口が準備されているため、若年性認知症の人やその家族はその窓口を有効活用するとよいでしょう。

相談できる窓口は医療機関のソーシャルワーカー、最寄りの地域包括支援センター、市区町村の窓口があります。他にも、若年性認知症ならではの相談窓口としては、若年性認知症におけるさまざまな相談にのる若年性認知症コールセンター、相談にのるだけでなく具体的なサービスや支援の情報を提供する若年性認知症支援コーディネーター、介護の知識がある方がさまざまな情報を提供したり同じ境遇の方との情報交換ができる家族会などがあります。

支援を活用する

現在企業などで働かれている方は、企業からの支援をいくつか受けることができます。具体的な支援は、医療費の自己負担が1割もしくは収入に応じて減額される自立支援医療、加入している健康保険によっては若年性認知症で仕事を休まなければならない時にその間の収入を保証する傷病手当金があります。他にも初診日から6か月経過していれば入手することのできる精神障害者保健福祉手帳、障害年金などがあります。

本人の気持ちを受け止めやりたいことの支援を

若年性認知症の場合、症状によって社会的生活を遂行することが困難であっても、本人は仕事を継続したいという方が多いことが特徴です。まずは本人の気持ちを否定せずにしっかりと受け止め、専門の医療機関へ相談しましょう。

上記の支援などを活用する、会社に直接相談することで、今まで働いていた職場であれば継続して働くことができることもあります。

まとめ

働き盛りの若い世代が発病し、多くが進行性でもある若年性認知症。高齢者の認知症よりも経済的な負担が重くのしかかってしまい、介護をする家族も疲弊してしまいがちです。さまざまな支援を活用して、家族にかかる負担を減らし
、若年性認知症を発症した方のサポートをしていくようにしましょう。

この記事を読まれている世代の方でも発症する可能性がある若年性認知症。それは自分かもしれないしご家族かもしれません。そんな時に備えて知識をつけておくのは大切です。この記事を読んで、もし若年性認知症の知識が少しでも増えたなと思われましたら、是非シェアをしていただければと思います。

※この記事は2021年10月時点の情報で作成しています。

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医師:谷山由華
監修者:谷山 由華(たにやま ゆか)

医師:谷山 由華(たにやま ゆか)

【経歴】
・防衛医科大学校医学部医学科卒業
・2000年から2017年まで航空自衛隊医官として勤務
・2017年から2019年まで内科クリニック勤務
・2019年から内科クリニックに非常勤として勤務、AGA専門クリニック常勤

内科クリニックでは訪問診療を担当。内科全般、老年医療、在宅医療に携わっている