若年性認知症とは?

「認知症」という言葉を聞くと多くの方が高齢者がなる病気と思われるかもしれません。ですが、認知症の中でも若年性認知症の場合は高齢でなくても認知症となってしまうため、ご自身の親だけでなく兄弟やパートナーさらにはご自身の子どもが若年性認知症になってしまうという可能性もゼロではありません。そんな身近な人がなってしまう可能性がある若年性認知症についてここで詳しくご紹介します。

若年性認知症とは?

f:id:ansinkaigo:20191122170631j:plain

若年性認知症とは65歳未満で発症する認知症のことを言います。2009年のデータになりますが、若年性認知症の数は3.78万人。人口10万人当たり47.6人となります。性別でみると男性57.8人、女性36.7人と男性に多いことが特徴です。

年齢別にみると30歳までの発症率は一桁台ですが、30歳を過ぎると年齢が上がるごとに倍増していく傾向にあります。推定発症年齢の平均は51.3歳となっています。

若年性認知症と高齢者の認知症の違いとは?

同じ認知症という病気ですが若年性認知症と高齢者の認知症ではさまざまな観点から違いが見受けられます。その違いをまとめました。

若年性認知症と高齢者の認知症の違いその1 発症年齢と性別

前述したように若年性認知症の発症年齢は65歳未満。発症の平均は51歳となります。一方高齢者の認知症は65歳以上がなるものであり、さらに年齢を重ねるごとになりやすくなります。また、性別でみても若年性認知症は男性が女性よりもなりやすい傾向にあります。

若年性認知症と高齢者の認知症の違いその2 若年性認知症と診断がつくまでに時間がかかる

若年性認知症は若い人がなる認知症のため、実は患者自身が認知症の症状に気づくことができ、人によっては非常に早いタイミングで受診することができます。ですが年齢ゆえに仕事や育児などで忙しくなかなか受診ができなかったり、更年期障害だろうと勝手に決めつけてしまったりすることで、医療機関への受診が遅れ、若年性認知症と診断されるまでに時間がかかってしまうのです。

若年性認知症と高齢者の認知症の違いその3 経済的な問題が大きい

高齢者の認知症ですとすでに年金をもらっていたり、会社を退職して退職金が出ていたりと認知症によって社会生活の遂行が困難になってしまっても、ある程度生活していくための金銭的な余裕はあります。ですが、若年性認知症では働き盛りの方が認知症となって働くことができなくなってしまうため、経済的な負担が大きくのしかかるというのが特徴です。

後述もしますがこの経済的なダメージが実は若年性認知症の最たる課題でもあります。

若年性認知症と高齢者の認知症の違いその4 介護者の負担がが大きい

高齢者の認知症よりも実は若年性認知症の方が介護者への負担が大きくなることが多いです。高齢者の認知症の場合、配偶者とその子供世帯など、介護やそのフォローができる人数が複数人の場合が多いですが、年性認知症の場合、主たる介護者が配偶者1人だけという場合が多いです。

主介護者である配偶者も相手の介護だけでなく、高齢の両親あるいは義両親の介護で複数人の介護が発生したり、晩婚の影響で子育ても並行するという場合もあります。また配偶者がいない方の場合、両親が面倒を見ることになりますが、高齢で両親も介護状態になる、先に亡くなるなど、主な介護者を早い段階で失う可能性があります。

若年性認知症と高齢者の認知症の違いその5 原因が異なる

後述もしますが、若年性認知症と高齢者の認知症では認知症になる原因の疾患が異なります。高齢者の認知症の場合ほとんどがアルツハイマー病を契機に認知症を発症しますが、若年性認知症の場合は脳血管性認知症が主な発症の要因となっていることが分かっています。

若年性認知症の原因は?

若年性認知症の原因は頭部外傷、感染症、脳腫瘍、変性疾患など原因が多様である事が特徴です。若年性認知症の原因で最も多いのが脳血管性認知症で39.8%、次にアルツハイマー病で25.4%。次いで頭部外傷後遺症が7.7%、前頭側頭葉変性症が3.7%、アルコール性認知症が3.5%、レビー小体型認知症が3.0%の順となっています。

実は若年性認知症の原因の3分1の程度を退行変性疾患であるピック病が占めるという報告もあります。ですが、ピック病は研究が遅れていることもあり社会的な認知度が非常に低い病気です。そのため若年性認知症に至った原因が不明という診断になってしまう場合もあります。

若年性認知症の症状と進行

若年性認知症には認知症の症状の基本となる中核症状と二次的に発生する行動・心理症状があります。中核症状は若年性認知症の方においては誰にでも見られる可能性がありますが、症状が出現する時期などは人によって異なります。一方、行動・心理症状は中核症状が出ているうえで、そこにさまざまな要因が加わることによって二次的に発生する症状です。誰にでも見られるというわけでもなく、さらに個人差が大きいのが特徴です。

中核症状

中核症状には記憶障害と見当識障害と判断力、思考力、理解力の低下が見られます。記憶障害の場合、初期では数日前のことを思い出せなくなりますが、症状が進むにつれて前日、数時間前、数分前のことが分からなくなり、徐々に思い出せる時間軸が短くなっていきます。例えば5分前に聞いた話が思い出せない、周りから同じ話を何度もしているといわれるという状態が見られます。

見当識障害は時間や場所が分からなくなるため、いつ、どこといったことが分からなくなってしまいます。例えばいつも通っている道なのに道に迷う、電車・バスで乗る駅や降りる駅がわからないという状態が見られます。

判断力、思考力、理解力の低下ではそれまでできていたことが急にできなくなって症状に気づかれることが多いです。例えば今までできていた料理ができなくなった、鍋を焦がす、ガスの火を消し忘れる、水道の水を出しっぱなしにする、いつも同じ服を着て着替えたがらない、家電製品の使い方がわからないという状態が見られます。

行動、心理症状

行動・心理に症状では徘徊、妄想、幻覚に加えて不安・焦燥・抑うつ状態が見られます。

徘徊は目的もなく歩き回っているもの。ですが、本人には目的があるという場合が多いです。

妄想では、現実的に起きていないのに本人にとっては起きていると思ってしまうものです。例えば、通帳、印鑑、財布などをよく失くし、家族が盗ったと主張するものとられ妄想が圧倒的多数にみられます。

幻覚とは現実には見えないものが見えるようになることで例えば、子どもや動物が見える(表情や形までははっきりしない)という状態がみられます。また、他の人には聞こえていない音が聞こえる幻聴という症状が出る場合もあります。

不安・焦燥・抑うつでは強い不安を感じる、イライラする、何もしたくなくなるという方が多く、例えば外出をしなくなる、今まで趣味でやっていたことを急にやらなくなる、テレビや新聞を見なくなる、関心がなくなるという状態が見られます。

厚生労働省が行った若年性認知症の介護者にアンケートをとった結果によると最初に若年性認知症では?と気づかれた症状は記憶障害が最も多く50%、行動の変化が28%、性格の変化が12%、言語障害が10%となっています。

出展:平成21年3月19日 厚生労働省 「若年性認知症の実態と対応の基盤整備に関する研究」の調査結果の概要

若年性認知症は若い方がなるということもあり、脳の萎縮スピードが高齢者に比べて早いため、症状の進行も早いことが特徴です。

若年性認知症の人への対応

若年性認知症は働き盛りの世代が発症する可能性の高い認知症であるため、本人や家族の精神的負担が強いという特徴があります。また、一家の収入を担っている方が発症することで経済的なダメージも重くのしかかります。前述したようにこれが若年性認知症で最も悩ましい問題です。

ここでは若年性認知症の方への社会的な対応をメインにご紹介します。

まずは相談先を作る

若年性認知症の場合多くの相談窓口が準備されているため、介護者や家族はその窓口を有効活用するとよいでしょう。相談できる窓口は医療機関のソーシャルワーカー、最寄りの地域包括支援センター、市区町村の窓口があります。

他にも、若年性認知症ならではの相談窓口としては若年性認知症におけるさまざまな相談にのる若年性認知症コールセンター、若年性認知症の家族から相談に乗るだけでなく具体的なサービスや支援の情報を提供する若年性認知症支援コーディネーター、介護の知識がある方がさまざまな情報を提供したり同じ境遇の方との情報交換ができり家族会などがあります。

支援を活用する

現在企業などで働かれている方は、企業からの支援をいくつか受けることができます。具体的な支援は医療費の自己負担が1割もしくは収入に応じて減額される自立支援医療、事業所は限られますが若年性認知症によって仕事を休まなければならない時にその間の収入を保証する傷病手当金があります。他にも初診日から6か月経過していれば入手することのできる精神障碍者保健福祉手帳、障害年金などがあります。

本人の気持ちを受け止めやりたいことの支援を

若年性認知症の場合、症状によって社会的生活を遂行することが困難であっても本人は仕事を継続したいという方が多いことが特徴です。まずは本人の気持ちを否定せずにしっかりと受け止め、専門の医療機関へ相談しましょう。

上記の資源などを活用する、会社に直接相談することで今まで働いていた職場であれば継続して働くことができることもあります。

まとめ

働き盛りの若い世代が発病し多くが進行性でもある若年性認知症。高齢者の認知症よりも経済的な負担が重くのしかかってしまい、介護者も疲弊してしまいがちです。さまざまな支援を活用して介護者への負担も少なく若年性認知症に発症した方のサポートができるとよいでしょう。

この記事を読まれている世代の方でも発症する可能性がある若年性認知症。それは自分かもしれないしご家族かもしれません。そんな時に備えて知識をつけておくのは大切です。この記事を読んで、もし若年性認知症の知識が少しでも増えたなと思われましたら、是非シェアをしていただければと思います。

※この記事は2019年10月時点の情報で作成しています。

若年性アルツハイマー/若年性認知症とは 10の初期症状 | 介護の無料相談&ハウツー「安心介護」

Q&Aをカテゴリから探す(介護の専門家に無料で相談する)
[質問カテゴリ]
| 介護保険制度  | 要介護認定  | 認知症  | 在宅介護 
| 施設介護  | 介護サービス | 福祉用具 | 高齢者の食事  | 介護疲れ
| 介護費用 | 高齢者の入院 | 介護の終わり | 遺産・相続 | 何でも介護相談

介護者同士で交流する(無料)
https://i.ansinkaigo.jp/posts

会員登録する(無料)
※会員登録で400円相当のポイントプレゼント!
https://i.ansinkaigo.jp/users/sign_up
監修者:春田 萌
監修者:春田 萌

日本内科学会 総合内科専門医、日本老年医学会所属
15年目の内科医師です。大学病院、総合病院、クリニックでの勤務歴があります。訪問診療も経験しており、自宅や施設での介護についての様々な問題や解決策の知識もあります。