認知症の初期症状にはどのようなものがありますか?父のもの忘れがひどく、心配になってきました。

質問

質問者最近、父が忘れっぽくなり、1日に同じことを何度も聞いてきたりします。もしかしたら認知症かも?と心配です。認知症の初期症状なのでしょうか。

 

 

専門家

年をとると誰でも同じ話をくり返したり、もの忘れの症状が出てきたりはします。しかし、加齢によるものだと思い様子を見ていたら、実は認知症だったということもあります。

加齢によるもの忘れなのか、認知症なのかを専門知識のない方が見極めることは困難です。認知症が疑われる症状を知っておき、これらの症状が出てきた場合には、早期に専門医を受診されることをおすすめします。

このページでは認知症の初期症状や認知症のサインに気づくコツ、認知症が疑われる場合の対応について解説していきます。

気をつけたい認知症の主な初期症状

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認知症は軽い症状からはじまり、少しずつ進行するケースがよく見受けられます。「いつもと様子が違うな」と感じたことが、認知症の初期症状だったということもあるので、ご高齢の方の言動の変化には注意が必要です。

認知症が疑われる初期症状としては、主に以下のような変化が挙げられます。

忘れっぽくなる

初期の認知症では、以下のようなもの忘れの症状が現れます。

  • 何度も同じ話や問いかけをくり返す
  • 同じものを何度も買ってくる
  • 忘れものや探しものが増える
  • 日にちや曜日を忘れる
  • 約束をすっぽかす

年齢を重ねると誰でも少なからず記憶力が低下するため、多少忘れっぽくなっても「年のせいかな」と思いがちです。認知症の兆候として、もの忘れが増えるケースはとても多いので、頻度が高い場合は早めの受診をおすすめします。

理解力・判断力の衰え

理解力や判断力の低下も、認知症の初期症状として見受けられる変化です。

  • 会話やテレビ番組の内容が理解できない
  • 料理の段取りがうまくできない
  • お店の支払い時に小銭の計算ができない
  • 車の運転ミスをする

認知症の影響で、以前は見られなかったミスや、失敗したときに言い訳や責任転嫁のような発言をすることがよくあります。

意欲・好奇心がなくなる

認知症の方は、ものごとに対する意欲や好奇心が低下する傾向があります。何をするのも億劫になり、打ち込んでいた趣味や好きなテレビ番組にも興味を示さなくなることも。着替えや化粧を面倒がり、身だしなみに気を遣わなくなる方も見受けられます。

性格の変化・落ち込みやすくなる

認知症の初期症状として、「怒りっぽくなった」「急に落ち込むことが増えた」など、人柄や性格に変化が現れることもあります。例えば、穏やかな性格だった人が攻撃的な態度をとるようになったり、感情の起伏が激しくなったりするなど、以前には見られなかった言動が増えてきたら要注意です。

もの忘れとの違いと認知症の特徴

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認知症によるもの忘れは、加齢にともなう単なるもの忘れに似ているので見過ごされがちです。しかし、認知症と単なるもの忘れには「忘れ方」や「生活への影響度合い」に違いがあります。

体験したこと自体を忘れる

認知症がただのもの忘れと異なるのは、「体験したこと自体を忘れてしまう」という点です。

例えば、食事を済ませたのに「食べていない」と言ったり、人と会ったことを覚えていなかったりします。単なるもの忘れであれば、食事の内容を忘れることはあっても、食べたこと自体は覚えているものです。

ですから、やったことや行ったこと自体の記憶が抜け落ちている場合は、単なるもの忘れとは言えません。

自覚がなく日常生活に支障が出る

認知症によるもの忘れは本人が自覚していないケースがとても多く、そのことが原因でトラブルを招いてしまうことがあります。

例えば、電話で友人と食事に行く約束をしたのに、話したこと自体を忘れて約束をすっぽかしてしまうなどの失敗です。ご本人は自覚していないことが多いので「電話はしていない」と言い張り、友人との関係がギクシャクしてしまうことも。

日常生活に支障が出てしまうレベルの忘れ方が目立つ場合は、認知症が疑われまするかもしれません。

認知症は2つの症状に大別される

認知症と言えばもの忘れなどの記憶障害のイメージが強いですが、それ以外にもさまざまな症状があります。

大きなくくりでは、以下の「中核症状」と「周辺症状」に分けられます。  

中核症状

認知症の症状のうち、誰にでも起こりうる症状のことを中核症状と言います。典型的なのは、先述したもの忘れ(記憶障害)の症状です。

ほかには、自分がいる場所や周りの人との関係性がわからなくなる「見当識障害」、料理や着替えを順序よくこなせなくなる「遂行機能障害」などがあります。  

周辺症状

生活環境や本人の性格など、さまざまな要因が影響して出てくる行動面・精神面の症状が周辺症状です。中核症状より個人差が大きく、よくある症状としては徘徊や妄想、興奮、焦燥感などが挙げられます。

認知症の方に不可解な言動が見られる場合は、このような特有の症状が出ているのかもしれない、と思っておくと冷静に対処しやすくなるでしょう。

認知症かも?と思ったときの対処のコツ

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認知症の初期段階では、ご本人も「おかしいな」と不安に感じていることが多いので、接し方には注意が必要です。

ご家族や身近な人にひどいもの忘れや以前と違う言動が増え、「認知症かもしれない」と感じたら、以下のような対応を心がけましょう。

プライドを傷つけない

まず念頭に置いておきたいのは、ご本人のプライドを傷つけないことです。 初期の認知症の方は、ご自身でも「おかしいな」「最近、失敗が多いな」と感じながら、失敗や不調を認めたくない気持ちも同時にあります。そのような不安感が強い状態のときに、身近な人から強く指摘されたり、失敗を責められたりすると、ご本人はさらに混乱してしまいます。

認知機能が低下しても、プライドや羞恥心は残っている場合が多いようです。そのため、理解しがたい言動があったとしても、すぐに否定や訂正はせず、まずは受け止めてあげましょう。

穏やかに接する

なるべく穏やかに接することも大切なポイントです。認知症の方が失敗をしたときに大声で叱責したり、イライラをぶつけたりする方がいますが、感情的な態度は逆効果になることがあります。

元気でしっかりしていた頃の様子を知っているご家族にとって、認知症の方の言動や失敗はストレスですし、「元に戻ってほしい」と願うのは当然のことです。しかし、失敗のたびに強く叱責され続けると、ご本人にも怒りの感情や自責の念が強まり、症状の悪化やうつ状態につながる可能性があるため要注意です。

「言っていることのつじつまが合わない」と感じても、相手の調子に合わせつつ、顔を見て穏やかにコミュニケーションをとりましょう。

メモを活用する

認知症の初期症状が現れたら、メモを活用することをおすすめします。

初期の認知症の方は、置き場所や手順を忘れてしまいがちです。そんなとき、目につく場所に「メガネはテレビ台の上」などとメモを貼っておけば探しものをする回数が減りますし、ご本人の混乱も避けられます。

炊飯器の使い方やゴミ出しの日など、日常生活で忘れがちな事柄についても、メモを活用すれば失敗しにくくなるでしょう。

早めに専門医を受診しよう

「様子がおかしい」「普通のもの忘れとは違うようだ」と感じたら、早めに専門医を受診しましょう。ご本人に「認知症かどうか診てもらおう」とすすめると反発されやすいので、まずはかかりつけ医にいつもの診察の延長線上で相談してみるのも一案です。

より専門的な診察を受けたい場合は、もの忘れ外来や神経内科、心療内科などを受診してください。

認知症と診断された場合、要介護認定を受ければ各種介護保険サービスを利用できるようになります。

ご家族の負担軽減のためにも、早めに専門医に相談されることをおすすめします。

認知症が疑われるサインは放置しない

認知症の初期症状のような症状が現れても、専門知識のない一般の方が病気かどうか見分けるのは困難です。かといって、お伝えしたような言動の変化を放置していると、症状を悪化させてしまうことになりかねません。

認知症は早期に発見し、早めに治療を受ければ進行を遅らせられます。ご家族や身近な人に「認知症かもしれない」と思われるサインがみられたら、早めに専門医を受診して今後の対応を相談・検討しましょう。

(文・吉村綾子)

※この記事は2019年9月時点の情報で作成しています。

 

 

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監修者:寺岡純子(てらおか じゅんこ)

主任介護支援専門員 看護師
合同会社 カサージュ代表
看護師として病院勤務8年、大手介護事業者で約19年勤務し管理職を経験。
2019年8月合同会社カサージュを立ち上げ、「介護特化型研修事業」「介護離職低減事業」など介護に携わる人への支援を行っている。企業理念は「介護に携わるすべての人の幸せな生活をサポートする」。