義父は要介護1です。体は元気なのですが、認知症は進んでいるように感じます。家族だけでサポートするのが難しくなってきたので、そろそろ介護施設を利用しようかと話し合っています。 介護施設は本人にとってもメリットがあるのでしょうか? 要介護1の場合、どのような介護施設が利用できるのかも教えていただきたいです。
認知症が進行してくると家族だけのサポートでは難しくなり、多くの方が介護施設の利用を検討されるようになります。反面、「本人にとっては自宅の方が良いのではないか」「介護を放棄したと思われるのでないか」と感じ、施設利用を躊躇することもあるでしょう。
介護施設は上手に利用すれば、ご本人やご家族が有意義な介護生活を送ることを可能にします。
ここでは、施設を利用するメリット・デメリットや、様々な介護施設の特徴についてご紹介します。ご本人やご家族の希望に合った介護施設を選ぶ参考にしてください。
介護施設を利用するメリット・デメリット
認知症介護のために施設を利用すると、どのようなメリットが得られるのでしょうか。介護施設の種類をお伝えする前に、まずはメリット・デメリットを確認しておきましょう。
認知症の在宅介護は負担が大きい
認知症は進行する病気なので、症状が重くなるにつれて介護を担う方の負担は増していきます。介護が長期化すれば、心身の疲弊は増大してしまうでしょう。そうなる前に、選択肢のひとつに入れておきたいのが介護施設の利用です。
施設利用のうれしいメリット
介護施設を利用すると、ご本人やご家族にとって以下のようなメリットがあります。
専門的なケアが受けられる
介護施設では介護の専門家による専門的なケア・サービスが受けられます。施設には、介護福祉士やケアマネジャーなど知識も経験も豊富なスタッフがいるため、安心して介護を任せることができます。症状や身体状況に応じた適切なケアが受けられるのは、ご本人にとっても大きなメリットです。
介護の負担が軽減できる
介護施設を利用すれば、介護を担う方の負担を軽減することができます。在宅介護は24時間、常に気を張った状態でいなければならず、自分の時間は後回しになりがちです。その点、介護施設を利用すれば時間的な余裕が生まれますし、緊急時でも専門家が適切に対処してくれるので安心です。
ご本人の生活にメリハリが出る
介護施設では軽い体操やレクリエーションなどのプチイベントがあり、脳や体に良い刺激を与えることができます。在宅介護だと最低限の身の回りのお世話で精一杯になることが多く、生活が単調になりやすいですが、施設を利用すればメリハリがつけられるでしょう。
デメリットも要チェック
デメリットとしては次の2点が挙げられます。
費用がかかる
施設を利用するには費用がかかるため、経済的な負担を考慮に入れる必要があります。とはいえ、介護保険が適用される施設・サービスであれば費用負担を抑えることが可能です。例えば、日帰りのデイサービスなら1日1,000円前後で利用できます。
かかる費用は施設のタイプによっても大きく変わるため、ケアマネジャーなどの専門家に相談しながら検討しましょう。
施設に馴染めない人もいる
介護施設はご本人にもご家族にもメリットがありますが、人によっては施設に馴染めない場合があるので要注意。介護を受ける方のなかには、他人に排泄や入浴を介助されることに抵抗を感じる方や、集団生活にストレスを感じる方もいます。
最初は拒否感が強くても次第に慣れてくるケースもありますが、逆効果の場合は施設の利用方法を考え直す必要があるかもしれません。
認知症の方が利用できる介護施設の種類
では、認知症の方が利用できるおもな介護施設をご紹介しましょう。
特別養護老人ホーム
特別養護老人ホーム(特養)は、日常的に介護が必要な65歳以上の方を対象としています。原則的に要介護3〜5の方が対象ですが、事情によっては要介護1〜2の方も入居できる場合があります。介護保険で利用できる公的な施設サービスなので、入居型のサービスのなかでは費用負担は少なめです。
介護老人保健施設
介護老人保健施設(老健)も介護保険で利用できます。介護を要する高齢者が自立的な生活を送れるようにサポートする施設で、リハビリによる機能回復を目指します。そのため、利用できる期間は3ヶ月程度となっています。要介護1〜5の方が対象です。
介護療養型医療施設
病状を踏まえて長期療養が必要な方のための施設です。要介護1〜5の方が対象で、介護保険が適用されます。サービスは医療ケアがメインで、看護やリハビリを行ないます。民間施設と比べて費用負担は少ないですが、医療ケアが増えればその分、費用は加算されます。
介護付き有料老人ホーム
有料老人ホームは運営主体が民間企業の場合も多く、施設によって方針が異なります。「介護付き」の場合は介護スタッフが常駐し、食事や入浴、排泄をサポートします。施設によっては看護師やリハビリを担当する理学療法士が配置されているところも。要介護状態ではない方でも入居できる場合があります。入居サービスのなかでは費用は高めです。
グループホーム
少人数制の介護施設サービスです。1施設あたりの入居者は5〜9人に限られ、アットホームな環境で共同生活を送ります。対象となるのは、認知症と診断された要支援2または要介護1以上の方で、その市区町村に住民登録をしている必要があります。
最適な介護施設を選ぶための検討ポイント
様々なタイプの介護施設から、最適な施設を選ぶにはどうすれば良いのでしょうか。おもな検討ポイントをチェックしておきましょう。
必要なケアが受けられるかどうか
まず確認しておきたいのは「ご本人に必要なケアが受けられるかどうか」です。力を入れているサービスや目的は施設によって異なるため、ミスマッチがあるとご本人のためになりません。認知症の症状や身体状況に見合うサービス・ケアが受けられる施設を選びましょう。
費用・場所が適切かどうか
介護生活は長期化する可能性があるため、費用面も長期的な視点で検討しておく必要があります。施設によっては、所得額に応じて費用負担を軽減できる場合があるので、料金体系や介護保険の適用範囲はしっかり確認しておきましょう。
また、ご家族にとって不便な場所だと面会や手続き等で通いにくいため、アクセス面も要チェックです。
まずはケアマネジャーに相談を
施設選びは、ケアマネジャーのアドバイスを受けながら進めましょう。知識も経験も乏しいご家族だけで最適な施設を選ぶのは難しいですが、ケアマネジャーならご本人やご家族の状況を踏まえた的確なアドバイスがもらえます。客観的な意見を聞くことで、ご本人・ご家族のどちらも満足できる選択がしやすくなるはずです。
長期的な視点で介護施設を選ぼう
在宅介護をしている人にとって、介護施設は心身の負担を軽減できる心強い存在です。ご本人にとっても、質が高い専門的なサービス・ケアを受けられ、生活にメリハリが出るという意味でメリットは大きいでしょう。
様々なタイプのなかから、最適な施設を選べば介護が長期化しても安心できます。サービス内容や費用面など検討すべきポイントは色々とあるので、ケアマネジャーに相談しながら最適な施設を選びましょう。
※この記事は2019年12月時点の情報で作成しています。
主任介護支援専門員 看護師
合同会社 カサージュ代表
看護師として病院勤務8年、大手介護事業者で約19年勤務し管理職を経験。
2019年8月合同会社カサージュを立ち上げ、「介護特化型研修事業」「介護離職低減事業」など介護に携わる人への支援を行っている。企業理念は「介護に携わるすべての人の幸せな生活をサポートする」。