認知症の母が、最近怒りっぽくなり、文句ばかり言うので困っています。毎日文句を言われるのは辛いです。なぜこうなってしまったのか、どのように対応したらいいのかを教えてください。

認知症の母とコミュニケーションがうまく取れない図

質問

質問者認知症の症状が出ている要介護1の母が、最近怒りっぽくなり、文句ばかり言うので困っています。仕事が終わった後に母の家に行き、料理をしたり、お風呂を見守ったりと、一生懸命に介護をしているのですが、日中に電話に出られなかったことや料理について文句ばかり言ってきます。

仕事をしているので電話を出られないこともあると説明をしても、納得してくれません。いっそのこと仕事を辞めてしまおうかと考えることもありますが、ケアマネはそれだけはしないようにと言ってくれています。それでも毎日文句を言われるのは辛いです。以前はこんな人ではなかったのに…。なぜこうなってしまったのでしょうか。また、どのように対応したらいいのかを教えてください。

専門家認知症の方の中には、怒りっぽくなったり、家族に理不尽な文句をぶつけたりしてしまう方がいます。認知症の影響によるこういった症状は、環境を整えたり、気持ちに寄り添ったりすることで、状況が改善できることもあります。

ここでは、怒りっぽくなった認知症の方への対応方法などについてご紹介します。現在や今後の生活の参考にしてください。

 

認知症で怒りっぽくなり、文句ばかりが出る原因

まずは、なぜ怒りっぽくなり、文句が出てしまうのかについて考えていきましょう。

易怒性というBPSD

怒りっぽくなった、すぐにイライラする、攻撃的な発言や執拗な文句が多くなった…。それまでは穏やかだった人に、こんな傾向が出てきたら、それは易怒性(いどせい)という、認知症の行動・心理症状(BPSD)かもしれません。

認知症によって理解力や判断力、記憶力が低下しているところに、不安や焦燥感、ストレスなどが重なって、人によっては怒りっぽくなってしまいます。また、不眠や便秘、脱水などの体調不良を自覚できず、怒りやイライラにすり替わっているのかもしれません。

行動・心理症状は、認知症になったら必ず出る症状ではなく、本人の性格や環境によって出現するので、人それぞれに個人差があります。易怒性は認知症の初期から出ることがあり、家族が「なにかがおかしい」と気づくきっかけになることもあります。

被害妄想

認知症では記憶が欠落してしまいますが、本人はそのことに気づきません。その結果、勘違いを事実だと思い込んで、被害妄想を起こしてしまうことがあります。

認知症の被害妄想では物盗られ妄想がよく知られていますが、ご飯を食べたのに「食事をさせてもらえない」と思い込む、自分がのけ者にされている、見捨てられてしまうといった妄想を起こすこともあります。

記憶がつながらないことへのイライラ

体験の一部を完全に忘れてしまう認知症の方の日常は、「途中から映画を見ているよう」だと表現されます。なぜここにいるのか、なにをしていたのかがわからず、不安やイライラを抱えてしまうのです。

怒りっぽくなった認知症の方への対応方法

認知症の怒りっぽさに対応する

怒りっぽくなったり、文句が多くなったりすることで、それまで良好だった周囲の人々との関係が壊れてしまうことがあります。家族に距離を取られている、避けられていると感じることで、さらにイライラして執拗な文句で攻撃するといった、負のスパイラルを起こすことも。

認知症の方も介護をしている家族も、心穏やかに過ごすための対処方法を紹介します。

安心できる環境を整える

不安やストレスを軽減するため、部屋を明るくして適切な温度や湿度に調整し、本人が好きな音楽を流すなどして、安心できる環境を整えましょう。

しかし、認知症の方は環境の変化が苦手なため、模様替えなどで大きく環境を変えてしまうのはNGです。もし、部屋を変える、ショートステイに行ってもらうなどの環境の変化が必要になった場合には、愛用しているものやなじみのものを目に付くところに置いておくようにしましょう。

コミュニケーション方法を見直す

認知症の方は視界が狭くなっています。正面に回り、本人が分かりやすいようにゆっくりと、文章を区切って話しましょう。プライドを傷つけてしまうため、子ども扱いはNGです。

否定や強要を避ける

本人の言うことを否定したり、怒り返したりというのは避けましょう。妄想や幻覚についても、否定はNGです。どうしても我慢できない時には、距離や時間を置くことも大切です。

どうしても着替えて欲しい時に「着替えなきゃダメ」と言うのではなく、「AとBどちらに着替える?」と聞くなど、工夫をしてみるようにしましょう。

ショートステイを利用してレスパイトを

常に怒るのではないかと気を使ったり、文句を聞かされたりというのは、認知症の影響だと理解していても、介護をしている家族にとっては大きな精神的負担となります。

ショートステイなどの介護保険サービスを利用して、介護者も息抜きをするように心がけましょう。介護から離れる時間を作ることで心に余裕ができ、要介護者への接し方が変わることで、怒りっぽさや文句、イライラといった症状が軽減されることがあります。

医師に相談を

上記のような対応をしても改善しない場合には、体調不良が原因の場合や、認知症以外の病気の可能性もあるので一度医師に相談してみましょう。怒りっぽさやイライラなどの症状を軽減する薬物治療もあります。

まとめ

認知症になると、怒りっぽくなったり、イライラして文句が多くなったりすることがあります。こうした言動は、認知症の影響によって出る症状です。その背景には、口にできない痛みや不快感などの身体症状、記憶が抜け落ちていることからの不安や焦燥感、理解力や判断力の低下、ストレスなど様々な原因があります。

常に怒りやイライラを抱えている状態は、介護者にも本人にも辛いものです。原因をできるだけ取り除いて安心できる環境を整え、否定しないなどの認知症の方への対応を知ることで、症状の改善が期待できます。この記事がお役に立てたらうれしいです。

医師:谷山由華
監修者:谷山 由華(たにやま ゆか)

医師:谷山 由華(たにやま ゆか)

【経歴】
・防衛医科大学校医学部医学科卒業
・2000年から2017年まで航空自衛隊医官として勤務
・2017年から2019年まで内科クリニック勤務
・2019年から内科クリニックに非常勤として勤務、AGA専門クリニック常勤

内科クリニックでは訪問診療を担当。内科全般、老年医療、在宅医療に携わっている