認知症の親の収集癖は治せますか?おかしなものを収集するのはなぜですか?勝手に捨てても構わないでしょうか。止めさせる方法を教えてください。

質問

質問者認知症の親が、ティッシュなどをかばんに詰め込んだり、使った後のものをたんすにため込んでいたりします。ボロボロになったのを捨てようとすると、「大事なものだ!」と言って怒ります。なぜ収集癖が起こるのでしょうか。外出先ではお店に備え付けてある紙ナプキンを全部取ろうとするので、外食に行くのがイヤになります。このような行動をする場合には、どう対応すれば良いのでしょうか。また止めさせる方法があれば教えてください。

 

 

専門家

認知症の症状のひとつに収集癖というものがあります。しかし不衛生なものや、不要なもの、取ってきてはいけないものであるという区別はつかないため、家族にとっては収集癖がしばしば悩みの種になります。これらは家族にとっては不要なものかもしれませんが、相談者の親御さんも仰っている通りご本人にとっては大事なものであり、必要であると思っているのです。そのため、その気持ちは否定せずに対応をしていくようにすることが収集癖への対応のポイントとなります。

ここでは、認知症の収集癖への対応が上手くできるように、その原因と具体的な対応策について解説をしていきます。

 

認知症の人の収集癖とは

認知症の人の収集癖とは



認知症の人の収集癖は、介護する側から見れば困った行動に思われがちです。しかしそれが本人にとって意味のあることだと理解すれば、今後の対応に役立ちます。認知症の収集癖とはどのようなものなのかを見ていきましょう。

収集癖は認知症の症状

認知症の収集癖はすべての人に起こるわけではありませんが、周辺症状としてはよく見られる行動です。

一般的には正常な人から見れば、「ゴミ」のようなものを集めてしまいこむといった様子が見られます。

外出先で紙ナプキンやトイレットペーパーなどの紙類をその都度集め、ボロボロの状態のものが大量に見つかるという例も多くあります。

本人にとってはゴミではない

収集されるものにあまり価値がないように見えても、本人にとっては大切なもの。決して周囲が考えるような、ゴミではないのです。

集めることには本人なりの理由があり、目的があります。

そのため、勝手に捨てると「盗まれた!」「無くなった!」など気持ちが追い詰められ、「もの盗られ」の被害に遭ったと感じることも。

まず、本人にしてみれば大事なものであるのを理解し、対応していくことが大切です。

収集癖のさまざまなパターン

認知症の収集癖にも、人によってさまざまなパターンがあります。

集めてもすぐに忘れてしまい、「補充しなければ」という思いから次々にため込む人もいます。認知症とわかる前に、同じ商品ばかりを買い込んでいたという話はよくあることです。

食品や調味料、また下着など、同じものが大量にある場合には、認知症による収集癖である可能性が考えられます。

集めたものを自分なりに、しっかりと管理をするタイプの収集癖もあります。引き出しなどにすき間なくものを詰め込み、少しでもスペースが空くと不安を感じるケースです。この場合、勝手に捨てるとすぐに気が付いて反発したり、盗まれたと騒いだりすることもあります。

その他にも長い時間をかけて家族に知られないように、巧妙に集めるといったタイプも 見られます。

なぜものを収集するの?

なぜものを収集するの?



本人にとっては大切なものを集めているという心理が働いている、認知症の収集癖。そこにはどのような理由が、考えられるのでしょうか。

もったいないという性分

収集癖のある人の中には、「もったいない」という気持ちから捨てられなくなっているケースが目立ちます。

特に物資不足を体験した世代の人はものを大事にする気持ちが強く、認知症になる以前から「捨てないで取っておく」のが習慣化していることが多いです。

こうした場合、 「再利用したい」という気持ちからものを集め続けますが、活用方法がわからなくなり、ただただものが増え続けていくことに。

ゴミ捨て場にあるものを拾ってきたり、割りばしなど本来使い捨てとなるものを集め続けたりするといった例があげられます。また使用済みの尿パッドをため込んでいるケースも見られます。

不安感がある

ものが少ないと不安になり、たくさんあれば安心。そうした心理が収集行動へつながっていることもあります。

例えばティッシュやトイレットペーパーなどを集める行動は、尿失禁への恐れが原因である場合が考えられます。

「失敗したらどうしよう」という不安が、紙類をたくさん集めるという行動となって現れるのです。

ある感情への代償行為

ものへの執着や収集行為が、何らかの感情への代償行為であるということも考えられます。

これまでできていたことができなくなっていく「不安」や「欠落感」などを埋める行為として、自分にとって価値のあるものを集めます。

また寂しさを感じており、その孤独感を埋めるために部屋をものでいっぱいにしている例も珍しくありません。

「自分はこんなに良いものをたくさん持っている」など、自尊心を満たす行為となっているのです。

収集癖のある認知症の人への対応のポイント

収集癖のある認知症の人への対応のポイント



認知症に対しては、その人の行動の根本にあるものを「理解する姿勢」を忘れてはなりません。収集癖のある認知症の人への、対応のポイントを見ていきましょう。

無理に止めさせない

認知症の人に対しては、強硬な態度が逆効果となる場合があります。

収集癖についても無理に止めさせるのはおすすめできません。精神的に不安定になって混乱をきたしたり、問題行動へと発展したりする可能性があるからです。

否定されたと感じ、介護者に対しての反発心を高めてしまう結果となることも考えられます。

集めているものを取り上げない

集めているものを取り上げてしまうと、本人の気持ちが満たされず、ますます収集癖が悪化するといったことも起こり得ます。

怒られると収集したものをあちこちに隠すようになったり、別のものを集めるようになったりすると逆効果です。

特に不安を解消するための収集であるときには、精神的に不安定となる恐れもあります。

理由を考える

収集癖を理解するためには、その根源となっている理由を探る必要があります。

本人の行動をよく観察し、どのようなときに収集行動を起こすのか、何かきっかけがあるのかといった点を考えます。

話してくれるようであれば、直接本人から理由を聞いても良いでしょう。

ものを集めたくなっている背景を推測することで、安心感を与えられる手段や改善できる方法についてのヒントが得られるかもしれません。

認知症の収集癖への対策

認知症の収集癖への対策



本人にとっては必要な行動であっても、不潔であったり危険であったりする場合には見過ごせなくなります。認知症の人の収集癖への具体的な対策には、どのようなものがあるのでしょうか。

収納場所をいっぱいにする

集めているものが問題のないものであれば、本人の満足感を高めるために収納場所をいっぱいにするという方法があります。

例えばタオルや下着、ハンカチのようなものであれば集めていても問題はありません。ティッシュや紙類であっても、「たくさんありますね」とほめましょう。満足感を与えると、納得して気持ちが落ち着くことが多いです。

問題のあるものは「交換」する

不衛生なものや危険物を集めている場合は、放置できません。その場合には、中味を別のものと入れ替えるなどの対応が必要です。

使用済みのおむつやパッド、ティッシュなどは未使用のものを同じように丸めて入れて置くようにします。 「捨てる」のではなく、「交換する」ことで対応していきましょう。

落ち着いた環境の提供を配慮する

収集癖につながる不安感を増大させないためには、なるべく落ち着いた環境を提供していくことが重要です。大きな変化を与えないように配慮し、辛抱強く向き合いましょう。

ゆっくりと話を聞き、相手が大切にされていることを感じられるような対応をします。

精神的な安定により、極端な収集癖が収まった例もあります。

どうしても廃棄が必要な場合には、「整理する」ということばを使い、本人の了解を得たり一緒に片づけたりしていきます。本人を尊重する姿勢がとても大切です。

収集癖の裏側にあるものを感じる

収集癖の裏にあるものを感じる



介護する人にとっては、認知症の収集癖は厄介な問題と思えるかもしれません。多忙な毎日の中では、イライラしてしまうのもうなずけます。しかし、収集癖には本人なりの「理由」があります。そこを理解せずに「捨てる・叱る」といった表面的な対処をすると、さらにエスカレートしたり問題行動へ移行したりしかねません。

まずは介護する側が冷静になり、行動の裏にあるものを探ります。生活に問題がないようであれば、見守る姿勢も必要です。衛生面と安全面に問題がある場合については、ものをすり替えるなどの現実的な対応をしていきましょう。

 ※この記事は2020年2月時点の情報で作成しています。

物盗られ妄想とは 原因と対応方法 | 介護の無料相談&ハウツー「安心介護」

 

監修者:寺岡純子

監修者:寺岡純子(てらおか じゅんこ)

主任介護支援専門員 看護師
合同会社 カサージュ代表
看護師として病院勤務8年、大手介護事業者で約19年勤務し管理職を経験。
2019年8月合同会社カサージュを立ち上げ、「介護特化型研修事業」「介護離職低減事業」など介護に携わる人への支援を行っている。企業理念は「介護に携わるすべての人の幸せな生活をサポートする」。