アルコール性認知症とはどんなものでしょうか?原因・症状・治療法を教えてください。高齢の父親が当てはまるのではないかと、気になっています。

質問

質問者最近、同居している父親の様子がおかしいと感じています。

まだ元気な年齢ですが、毎日多量の飲酒をしてあまり食事が進まないようです。アルコールと認知症は関係があるのでしょうか。また自分も父親に似て、若い頃から飲酒をしています。高齢でなくても認知症になることはありますか?この際、アルコールの危険性について理解を深め、父親についての判断をしたいと考えています。

 

専門家多量のアルコールの摂取により、認知症の症状が出ることが知られています。しかし、記憶障害はさまざまな病気や状態を起因とすることも考えられるため、素人目の判断は禁物です。アルコールが原因である認知症は、早期に治療を開始することで症状の改善が見られることもあります。

気になる症状があるときには早期に病院を受診し、必要な治療を開始できるようにサポートしてあげてください。ここでは、アルコールと認知症の関係性について解説していきます。

 

アルコール性認知症とは

認知症とアルコールは関係していますか?アルコール性認知症とは

 

アルコール性認知症は、アルコールの摂取により認知機能に障害が現れる症状です。その他の認知症とは、異なる特徴があります。最初にアルコール性認知症の、基本的な知識を見ていきましょう。

多量のアルコール摂取で発症する認知症

アルコール性認知症は、アルコールの摂取により発症する認知症を指します。

アルコールを多量に摂取しすぎると、脳梗塞などの脳血管障害を引き起こす可能性があります。そうした状況において、認知症の症状が出てくる恐れもあります。

多量の飲酒が習慣化している人は、脳が小さく萎縮する割合が高いとされています。そのため、アルコールの多量摂取そのものが、認知症のリスクを高めるのです。

また多量のアルコール摂取によってビタミンB1(チアミン)の吸収が阻害されると、意識障害などの症状をともなうウェルニッケ脳症を発症します。ウェルニッケ脳症を発症した人の約8割には回復後にも、コルサコフ症候群と呼ばれる記憶力の低下を特徴とする後遺症が残ります。さらに重症の場合には、その他の認知機能にも影響が及び、認知症と診断されることもあります。

このビタミンB1欠乏による栄養障害を総称して、「ウェルニッケ・コルサコフ症候群」と呼びます 。

年齢に関係なく発症する?

認知症は、一般的には加齢にともなって発症するため、高齢者に多く見られます。

一方、多量のアルコールが原因で発症する「アルコール性認知症」の場合、年齢に関係なく若い人でも発症する可能性があるのです。

アルコール性認知症の特徴は、アルコール依存症との高い関連性です。日本アルコール関連問題学会・日本アルコール・薬物医学会・日本アルコール精神医学会編集の「アルコール白書」によると、60歳以上のアルコール依存症では認知機能障害を合併する割合が43.5%となっています。

また高齢者施設に入所していて、なおかつ認知症の症状がある人のうち、 4分の1にはアルコールの問題が見られるとされています。

アルコールを継続して多量に摂取することで、通常よりも認知症のリスクが高まるのは間違いないでしょう。

高齢者のアルコール摂取

高齢のアルコール依存症者数は年々増えており、全国のアルコール依存専門治療施設でも高齢者の割合が急増しています。

こうした実情の主な要因は、退職による人間関係の減少、家族や友人との死別など、「社会的に孤立した環境」にあることです。また自由時間が多いのに対して、ストレス発散の方法が少ないといった傾向もあります。

その他、若い頃から飲酒の習慣がある高齢者に対しては、見過ごされがちであるのも要因のひとつです。

高齢者のアルコール性認知症は、「アルツハイマー型」や「レビー小体型」の認知症と合併する場合があります。単独の症状と比較して治療が難しく、完治しない可能性が高いと言われています。

アルコールと認知症の関係性

アルコールと認知症の関係性

 

アルコールと認知症の関係について、もう少し詳しく見ていきましょう。

関連が深いアルコールの多量摂取と認知症

厚生労働省が提供する情報によると、施設に入所している認知症の高齢者の29%は大量に飲酒したことが原因とされています。

アルコール摂取については、飲酒した期間も大きく関係してきます。過去に5年間以上多量摂取があった人や、社会生活に支障をきたすほどの飲酒歴がある人の場合、認知症の危険性が正常の人に比べて4.6倍、うつ病の危険性が3.7倍に増加するとの報告もあります。

飲酒の習慣が長期にわたるほど認知症のリスクが大きくなるのです。

少量の飲酒は認知症を予防する?

一方で、最近の調査では適量であれば認知症のリスクが軽減するというデータも報告されており、適度なアルコールの摂取が、認知症の予防効果があると期待する向きもあります。

しかし、アルコールの適量は人種や性別、体格によって異なります。

大量の飲酒は認知症の原因となるのは明らかとなっていますが、少量で予防するという確証が得られているわけではないことに注意しなければなりません。

アルコール性認知症の症状とは?改善は可能?

アルコール性認知症の症状とは?改善は可能?

 

アルコール性認知症の症状には、他の認知症との違いがあるのでしょうか。またアルコール性認知症の症状の特徴と、改善の可能性について見ていきましょう。

アルコール性認知症の症状

アルコール性認知症の症状は、アルコール依存症と似ています。 初期にはうつ症状や意欲の低下などが見られるほか、歩行時にふらつく、手が震えるといった身体的な症状が出ることもあります。

身体・精神療法のコントロールが失われ、何かにすがらないと歩けなくなったり急に激高したりするケースも見られます。

栄養障害によるコルサコフ症候群の症状としては、「記憶障害」「見当識障害」「作話」などがあります。

コルサコフ症候群の作話については、本人には嘘を話すつもりはなく、記憶の空白部分を埋めるために辻褄を合わせようとして結果的に作り話となるようです。

断酒による改善の可能性

アルコール性認知症はその症状が単体で起きているときには、断酒で改善される可能性が高くなります。

しかしすでに脳の萎縮が進行していたり脳血管障害が起こっていたりする場合や、また年齢によっては改善されない恐れも出てきます。

特にアルツハイマー型やレビー小体型の認知症と合併している場合には、治療は困難なケースがあるようです。

アルコール性認知症の治療

アルコール性認知症の主な治療としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 断酒とそれができる環境(入院)
  • 断酒を継続できる環境(依存症の自助グループなどへの参加)
  • 抗酒剤の処方

これらは一般的なアルコール依存症の治療と変わりません。入院や通院、断酒会への参加といった社会的な治療法がメインとされ、抗酒剤はその補完として活用されます。

アルコール性認知症について知っておきたいこと

アルコール性認知症について知っておきたいこと

 

アルコール性認知症が疑われるときに、家族として知っておきたいことを見ておきましょう。

介護保険は適用される?

アルコール性認知症と診断され、介護が必要となった場合には65歳以上であれば介護認定によって介護保険が適用可能です。

アルコール依存症への治療については、医療保険の適用となります。

すでにアルコール依存症と診断されている場合でも、介護認定はされますが、介護支援のサービスと障害者総合支援法に基づく各種福祉サービスとの重複はできないため注意が必要です。

対象者が65歳未満の場合では、アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症、脳血管性認知症といった特定疾病であれば介護保険の対象となります。40~64歳は初老期認知症という区分で扱われます。

ただしアルコール性のものは「中毒性疾患」のため、介護保険は適用されません。

アルコール性認知症が疑われるときは?

高齢者でアルコール認知症が疑われるときには、自己判断をせずに早めの受診をすることが大切です。

早期に判明するほど、完治できる可能性は高くなります。気づくのが遅れるとそれだけ、認知症が進行してしまうという恐れがあります。

家族は受診に備え、日頃からアルコール性認知症が疑われる高齢者の飲酒の量や頻度、気になる言動を把握するように努めましょう。

アルコール性認知症への対応

アルコール性認知症と診断された場合には、家族が協力して断酒の徹底を実施していかなければなりません。

併せて生活習慣や食生活を見直し、特にビタミンB1欠乏による栄養障害を回避するようにします。

アルコールの摂取には、精神的な要素が大きく関係しています。そのため、寂しさを感じさせないよう関わりを多くする、生きがいを見つけるサポートをするといった精神面でのケアも大切です。

高齢者に多量飲酒をくり返させないためには、周囲の気配りと観察が重要なカギとなります。

高齢者の飲酒はリスクが大きい

高齢者の飲酒はリスクが大きい

 

年齢を重ねるにつれて若い頃よりもお酒が弱くなるというのは、体内の水分量が減りアルコール血中濃度の上昇が早まるからです。また高齢になるほど、服薬している薬の種類も増える傾向にあるため、アルコールとの相乗効果が強くなることも考えられます。高齢者の飲酒は、転倒やアルコール依存、そして認知症という大きなリスクがあります。飲酒の習慣をもつ高齢者の家族は、日頃からアルコール摂取量に注意し、少しでもアルコール性認知症の疑いがあるときには、できるだけ早期に受診する判断が求められます。

 ※この記事は2020年2月時点の情報で作成しています。

【認知症の症状】初期症状や種類ごとの症状の違いをまとめてチェック - 介護の専門家に無料で相談「安心介護」介護の基礎知識

 

監修者:寺岡純子

監修者:寺岡純子(てらおか じゅんこ)

主任介護支援専門員 看護師
合同会社 カサージュ代表
看護師として病院勤務8年、大手介護事業者で約19年勤務し管理職を経験。
2019年8月合同会社カサージュを立ち上げ、「介護特化型研修事業」「介護離職低減事業」など介護に携わる人への支援を行っている。企業理念は「介護に携わるすべての人の幸せな生活をサポートする」。