デイサービスを嫌がる認知症の父。対策はありますか?また認知症デイサービスについても教えてください。

質問

質問者

実父がデイサービスに通い始めたのですが、毎回行くのを嫌がります。日中に一人になってしまうし、デイでお風呂に入ってほしいし、なによりもデイサービス以外では、家族としか会話をしないので認知症が進行してしまうのではないかと心配です。しかし、本人はデイサービスになぜ行かなくてはいけないのかが分かっていないようです…。

どうしたらデイサービスに行ってくれるようになるでしょうか。また、認知症デイサービスがあると聞いたのですが、どのようなものですか? そちらなら拒否の対応ができるでしょうか?

 

 

専門家認知症の方のデイサービス拒否についての質問ですね。認知症の方がデイサービスを拒否してしまうのには、様々な理由があります。理由を探った上で、対策をしていくようにしましょう。

この記事では、認知症の方がデイサービスを拒否する原因と対策について紹介しています。また、質問にあった認知症対応型通所介護(認知症デイサービス)についてですが、拒否がある方にもメリットがあるサービスです。そちらも合わせて紹介していきます。ぜひ、今後の生活の参考になさってください。

 

認知症がある要介護1の実父ですが、デイサービスを嫌がります。対策はありますか?

認知症の方がデイサービスを拒否する原因

まずは、デイサービスを拒否してしまう原因をいくつかみていきましょう。

デイサービスになじめていない

初めてデイサービスを利用し始めたという方の場合、慣れない環境に戸惑っているのかもしれません。また、異性が多い、仲の良い人がいない、入浴が急に恥ずかしくなった…などが原因なこともあります。

また、デイサービスでは洗濯物を畳むお手伝いなどを、利用者さんに頼むことがあります。持っている機能を維持するため、役になっていると実感してもらうためのことですが、家事が嫌いな方などは「やらされた」と感じてしまっているのかもしれません。

認知症の方は、ネガティブな感情が記憶に残りやすいものです、デイサービスで他の利用者と行き違いがあったり、嫌な思いをしたりしたことが拒否の原因かもしれません。

行く理由がわからない

なぜデイサービスに行かなくてはいけないのかが理解できず、面倒くさいからと拒否につながっているのかもしれません。

また、行ったことのある場所でもそのことを忘れてしまい、どこに行くのかがわからないから不安だという気持ちから、拒否してしまっていることがあります。

行く準備がイヤ

着替えができなくなった、冬に布団から出たくない、朝に準備をせかされるのがイヤ…などが原因で、デイサービスを拒否しているのかもしれません。

認知症の方のデイサービス拒否への対策

続いて、デイサービスへの拒否に対する対策をみていきましょう。

デイサービスでの様子を聞く

デイサービスに苦手な人がいるのか、入浴の様子はどうか、どのように過ごしているのか…などを、デイサービスの方に確認してみましょう。

苦手な人がいる、周囲の雰囲気になじめない、他に同性の利用者がいない…などが原因であれば、席を変えてもらったり、曜日やデイサービス自体を変えたりすることで、デイサービスに行ってくれるようになるかもしれません。

ずっと眠そうにしている、入浴が恥ずかしそう…などであれば、お昼寝をさせてもらう、入浴時の着替えを工夫してもらうなど、デイサービスの人と一緒に解決策を模索してみましょう。

通いたてでデイサービスになじめていないようであれば、「嫌だったら帰ってきてもいい」と声を掛ける、慣れるまで一緒に通うといった方法もあります。1ヵ月も経てば、環境にも慣れて友達もでき、自然に行ってくれるようになるかもしれません。

デイサービスの意義を伝える

「デイサービス」とは伝えずに、「体操したり、お昼ご飯を食べたりする場所」、「大きなお風呂がある場所」など、デイサービスですることを具体的に伝えてみましょう。

それでも嫌がるようであれば、リハビリ特化型やカラオケがあるデイサービスなど、興味を持ってくれそうなデイサービスに変えてみるという方法もあります。

また、デイサービスで作った工作やイベントでの写真を目につくところに飾っておき、「私にも作ってきて」、「みんなとまた会えるね」と声をかけて送り出してみると良いでしょう。

送り出しをヘルパーさんにお願いする

着替えなどの準備や布団から出るのを面倒くさがっているようであれば、ヘルパーさんに朝の準備から送り出しをお願いしてみてはいかがでしょうか。朝の忙しい時間に家族がバタバタと送り出しの準備をすることで、本人が警戒してしまっていることもあります。また、家族だとついつい甘えて嫌がってしまっても、ヘルパーさんの言うことであれば聞いてくれることがあります。

また、冬に布団から出るのを嫌がるようでしたら、起きる時間に合わせて暖房を入れるなどの工夫をしてみましょう。

認知症対応型通所介護(認知症デイサービス)とは

続いて、質問にもあった認知症デイサービスについて説明します。

認知症対応型通所介護(認知症デイサービス)とは

認知症デイサービスの特徴

認知症デイサービスは、認知症に特化した通所サービスです。入浴や排泄介助、食事などの支援、認知症の方に適した内容のレクリエーションや機能訓練が提供されています。認知症デイサービスのメリットは、職員が認知症の方の対応に慣れている点です。

また、利用定員が12人以下の小規模なデイサービスなので、職員の目が届きやすい環境の中で過ごすことができます。一般的な通所介護(デイサービス)になじめなかった方や重度の認知症の方、利用者に合った柔軟なケアが必要な方に向いています。

認知症デイサービスの対象者

要介護1以上の認定を受けていて、認知症の症状がある方が利用できます。要支援1、2で認知症の症状がある方は、介護予防認知症対応型通所介護となります。

65歳未満の若年性認知症の方でも、要支援または要介護認定を受けていれば利用が可能です。詳しくは、主治医またはお住まいの市区町村の役所、地域包括支援センターにご確認ください。

介護が必要になっても、住み慣れた地域で生活できるように支援する事を目的とした「地域密着型サービス」のため、原則として地域密着型通所介護(小規模デイサービス)の事業所と同じ市区町村に住んでいる必要があります。

拒否がある方が利用するメリット

認知症の方に慣れている職員が多いため、「ここがどこかわからない」、「なんのために来ているのかわからない」など、認知症による拒否への対応にも慣れています。

また、同じ市区町村内にあるので、慣れるまで家族が付き添う場合にも負担は大きくありません。住み慣れた地域の施設なので、顔見知りの方や共通の話題がある利用者さんがいる可能性も高く、なじみやすいでしょう。

1日の利用者も少人数なため、職員の目が行き届きやすく、手厚いケアが受けられます。

まとめ

認知症の方がデイサービスを拒否してしまうことは、珍しいことではありません。日中にひとりになってしまうことが心配、外出をして身体を動かして欲しい、家族以外とも交流を持って欲しい、お風呂に入ってきて欲しい…など、家族の気持ちはなかなか伝わらず、無理に行かせてしまうと、マイナスの感情が記憶に残り、余計に拒否が強くなってしまいます。

大切なのは原因を知ったうえで、対策をすることです。デイサービスの職員さんと連携を取り、必要に応じて曜日や施設を変えてみると良いでしょう。デイサービスから持って帰ってくる工作物や写真を、家族が一緒に楽しむ時間を作ったり、目に見えるところに飾ったりすることで、デイサービスに前向きになってくれることがあります。

また、家族だと甘えが出てしまうことから、ヘルパーさんに朝の準備から送り出しまで

 

i.ansinkaigo.jp

 

お願いすることも可能です。まずはケアマネジャーに相談をしてみてください。

認知症の方に特化した認知症デイサービスは、職員が認知症に慣れていること、少人数でアットホームなこと、住み慣れた地域にあることから、一般のデイサービスにはなじめなかった方にも利用しやすいサービスです。認知症の方がデイサービスを選ぶ際には、選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。

※この記事は2022年2月の情報を元に作成しています。

 

ケアマネジャー:森裕司(株式会社HOPE)
ケアマネジャー  森 裕司(もり ゆうじ)

【経歴】 1982年生まれ。
医療福祉系学校を卒業後、約11年医療ソーシャルワーカーとして医療機関に勤務。
その後、一生を通じた支援をしたいと思い、介護支援専門員(ケアマネジャー)へ転身。
2017年1月 株式会社HOPE 設立
2017年3月 ほーぷ相談支援センター川越 開設
代表取締役と共に、介護支援専門員(ケアマネジャー)として、埼玉県川越市で高齢者の相談支援を行っている。
他に、医療機関で、退院支援に関するアドバイザーと職員の指導・教育にあたっている。
医療・介護に関する新規事業・コンテンツ開発のミーティングパートナーとしても活動。大学院卒(経営研究科)MBA取得している。

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