家に閉じこもりがちになってしまう高齢者を、1日3~9時間ほど預かってくれるのが通所介護(デイサービス)です。本記事では、本人にも介護家族にもメリットの大きい通所介護(デイサービス)の内容や利用方法を解説します。笑顔で在宅介護を続けるためにも、ぜひ確認しておきましょう。
目次
- 通所介護(デイサービス)とは?知っておきたい基本ポイント
- 通所介護(デイサービス)を受けられる対象者
- 通所介護(デイサービス)のサービス内容
- そのほかの通所サービス
- 通所介護(デイサービス)でかかる料金
- 通所介護(デイサービス)の利用方法
- 本人にも家族にもメリットがある介護保険サービス
通所介護(デイサービス)とは?知っておきたい基本ポイント
まずは、通所介護(デイサービス)の基本ポイントを確認していきましょう。
専門の施設で日帰りの介護をお願いできるサービス
通所介護(デイサービス)とは、利用者が日帰りで介護の専門施設に通い、入浴や食事などの日常生活上の支援を受けながら、日常生活で生かせる機能訓練、レクリエーションなどを行う介護保険サービスです。
利用者にとっては、心身機能の維持・回復を目指しながら、家族以外と交流する機会になります。介護をしている家族にとっては、安心して介護から離れられる貴重な時間となるでしょう。家族のレスパイト(身体的・精神的負担の軽減、息抜き)も、通所介護(デイサービス)の大切な目的です。利用者の社会的な孤立感が解消でき、介護者の負担軽減や仕事と介護の両立を可能にするサービスだといえるでしょう。
サービス提供事業者によっては、日中に通所介護(デイサービス)で預かった利用者を、そのまま宿泊させる「お泊りデイサービス」を提供しています。日中の通所介護(デイサービス)には介護保険は適用されますが、「お泊りデイサービス」には介護保険は適用されません。
通所介護(デイサービス)の職員体制
通所介護(デイサービス)には、社会福祉士などの生活相談員、看護職員、介護職員が在籍しています。
また、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護職員、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師のいずれかの資格を持った機能訓練指導員が、日常生活に必要な機能を維持するための機能訓練を行います。
通所介護(デイサービス)を受けられる対象者
それでは、通所介護(デイサービス)を受けられる対象者を確認しましょう。
通所介護(デイサービス)が受けられる人
介護保険サービスの通所介護(デイサービス)を利用できるのは、要介護1~5の認定を受けた在宅の方です。要支援1、2の方、自立の方は利用できません。
通所介護(デイサービス)のサービス内容
それでは、通所介護(デイサービス)のサービス内容を見ていきましょう。
通所介護(デイサービス)で受けられるサービス
通所介護(デイサービス)では、以下のようなサービスを提供しています。
- 送迎
- 健康チェック(体温や血圧の測定など)
- レクリエーション(手工芸などの趣味の活動、ゲーム、歌など)
- 近隣への外出
- 体操などの機能訓練
- 入浴
- 排泄介助
- 昼食
- おやつ
サービス提供事業者によっては、園芸などの活動に力を入れていたり、自主性を伸ばすために自分でその日にやることを選べたりと、特徴のあるサービスを提供しているところもあります。
また、機能訓練やリハビリの施設が充実している「機能訓練特化型デイサービス」「リハビリ特化型デイサービス」と呼ばれる通所介護(デイサービス)には、午前中のみまたは午後のみで食事のサービスがないところや、入浴設備がないところもあります。
通所介護(デイサービス)の1日(例)
前日には着替えや歯ブラシ、予備のオムツなどの準備をします。一人暮らしの方は、訪問介護サービスの際にヘルパーさんに準備してもらうことも可能です。
※上記は一例です。サービス提供事業者、利用時間、サービス内容にもよって異なります。
そのほかの通所サービス
日帰りできる通所介護サービスは、通所介護(デイサービス)だけではありません。本人にはどのサービスが必要なのかを、比較してみるといいでしょう。
通所リハビリテーション(デイケア)との違い
通所リハビリテーション(デイケア)は、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士といったリハビリテーションの専門職によるリハビリテーションを通して身体機能の維持や回復、認知機能の改善を図るサービスです。入浴や食事といった、日常生活上の世話も行われています。要介護1~5の方が利用可能で、要支援1、2の方は介護予防通所リハビリテーション(デイケア)となります。
通所リハビリテーション(デイケア)とは? リハビリが必要な方の通所サービス - 介護の専門家に無料で相談「安心介護」介護の基礎知識
リハビリテーションの設備が整っている点や必ず1人以上の医師が常勤し、利用者ごとに医師の指示書などに基づいた「通所リハビリテーション計画書」が作成されている点も大きな違いです。
通所介護(デイサービス)では「通所介護計画書」が作成されますが、医師の指示書に基づいたものではありません。利用者の身体などの状況や環境、希望などを基に、機能訓練などの目標やサービス内容が記載されています。行われる機能訓練は、必ずしもリハビリテーションの専門家が行うものではありません。
認知症対応型通所介護
認知症対応型通所介護は、認知症の方を対象にした通所介護サービスです。通所介護(デイサービス)と同じように、食事や入浴などの日常生活上の支援や機能訓練などが受けられます。特徴は、利用定員12人以下の小規模であることや認知症の専門的なケアに慣れた職員がいることです。要介護1~5の方が利用可能で、要支援1、2の方は介護予防認知症対応型通所介護となります。
地域密着型サービスなので、原則としてお住いの市区町村以外の施設は利用できません。
療養通所介護
療養通所介護は、医療的なケアが必要な方や看護師の観察が必要な方が利用することができる通所介護サービスです。一般的な通所介護(デイサービス)のサービスに加えて、必要に応じて医療ケアを受けることができます。主治医や訪問看護ステーションと連携していることや、1日9人以下の小規模であることが特徴です。要介護1~5の方が利用できます。要支援1、2の方は利用できません。
地域密着型サービスなので、原則としてお住いの市町村以外の施設は利用できません。
地域密着型通所介護
地域密着型通所介護は、利用定員が18人以下の小規模な通所介護サービスです。少人数なため、通所介護(デイサービス)よりも、手厚いサービスを受けることができます。要介護1~5の方が利用でき、要支援1、2の方は利用できません。
地域密着型サービスなので、原則としてお住いの市町村以外の施設は利用できません。
通所介護(デイサービス)でかかる料金
通所介護(デイサービス)を利用すると、どのくらいの費用が掛かるのでしょうか。金額を見ていきましょう。
1回ごとの基本料金
通所介護(デイサービス)は、以下の金額となります。
3時間以上 4時間未満 | 要介護1 | 368円 |
要介護2 | 421円 | |
要介護3 | 477円 | |
要介護4 | 530円 | |
要介護5 | 585円 | |
4時間以上 5時間未満 | 要介護1 | 386円 |
要介護2 | 442円 | |
要介護3 | 500円 | |
要介護4 | 557円 | |
要介護5 | 614円 | |
5時間以上 6時間未満 | 要介護1 | 567円 |
要介護2 | 670円 | |
要介護3 | 773円 | |
要介護4 | 876円 | |
要介護5 | 979円 | |
6時間以上 7時間未満 | 要介護1 | 581円 |
要介護2 | 686円 | |
要介護3 | 792円 | |
要介護4 | 897円 | |
要介護5 | 1003円 | |
7時間以上 8時間未満 | 要介護1 | 655円 |
要介護2 | 773円 | |
要介護3 | 896円 | |
要介護4 | 1,018円 | |
要介護5 | 1,142円 | |
8時間以上 9時間未満 | 要介護1 | 666円 |
要介護2 | 787円 | |
要介護3 | 911円 | |
要介護4 | 1,036円 | |
要介護5 | 1,162円 |
※自己負担割合が1割の方の金額です。一定の所得がある場合は、所得に応じて2割または3割負担となります。
※上記は通常規模型通所介護(1ヵ月の平均利用人数が延べ301~750人)の金額です。料金は規模によって異なります
※上記は基本的な利用料(「介護報酬の算定構造」令和3年4月改定版)です。時間帯(早朝・深夜)やサービス内容、サービス提供事業所の所在地などによって金額は異なります。詳しくは担当のケアマネジャー、もしくは市区町村の高齢者窓口や地域包括支援センターにお問い合わせ下さい。
その他にかかる料金
上記の金額の他に、昼食費やおやつ代がかかります。いずれもサービス提供事業者によって金額が違うので、あらかじめ確認しておくといいでしょう。また、おむつ代やクラブ活動の材料費などの日常生活費(実費相当額)がかかります。
送迎については基本料金に含まれていますが、「入浴」など別途加算される介護保険サービスもあります。
通所介護(デイサービス)の利用方法
最後に、通所介護(デイサービス)を利用する基本手順を確認しておきましょう。
通所介護(デイサービス)の利用方法
要介護1~5の認定を受けている場合、利用手順は以下のようになります。
- 1.担当のケアマネジャーか地域包括支援センターに相談する
- ケアマネジャーの助けも借りて、複数のサービス提供事業者(施設)をピックアップし、見学や体験利用をする
- 施設が決まったら、ケアマネジャーが利用申込みをする
- ケアマネジャーがケアプランを作成
- サービス提供事業者(施設)と契約を交わす
- 指定日時よりサービス開始
曜日によって利用者も変わるので、雰囲気が違うことがあります。見学や体験利用をする際には、利用をしたい曜日に設定するのがお勧めです。
※上記は基本的な流れです。サービス提供事業者やケアマネジャー、利用者の状況によって異なります。
本人にも家族にもメリットがある通所系サービス
高齢者は、外出の機会や家族以外との交流が減りがちです。社会から取り残されたような孤独感を解消してくれるのが、通所介護(デイサービス)です。1日3~9時間ほどを介護施設で過ごし、食事や入浴、排せつ介助などの日常生活上の支援や体操などの機能訓練を受けます。集団でのレクリエーションやクラブ活動などもあり、家族以外と交流する貴重な機会になるでしょう。家族にとっても、安心して介護から離れられる貴重な時間となります。本人にも家族にもメリットの大きい通所介護(デイサービス)。ぜひ、利用を検討してはいかがでしょうか。
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訪問介護事業所職員、福祉用具専門相談員。2015年から安心介護に関わっており、お話を伺った介護家族や介護職員の影響で介護職員初任者研修を取得し、訪問介護の仕事をスタートしました。2022年には介護福祉士、認知症ケア専門士の資格を取得し、自宅で介護をされる人・介護をする人、どちらも大切にしながら訪問介護の仕事を続けています。