高齢者に関する相談ができる社会福祉協議会とは?

高齢者に関する相談ができる社会福祉協議会とは?

両親が高齢となると検討しなければならないのが介護でしょう。介護の経験が過去にある方はまだしも今回、ご両親の介護が初めての介護となる場合、自身の知見では限界が来ることも考えられます。そうした際に1人で悩まないように相談の間口は広げておきたいものです。今回は、高齢の両親について相談できる場でもある社会福祉協議会についてご紹介します。高齢者本人、ご両親と一緒に住んでいる方はもちろん、ご両親が遠くに住んでいるという方でも利用できるので、ぜひこの記事を読んで社会福祉協議会について知っていただければと思います。

 

社会福祉協議会とは

まず、知っておきたいのが社会福祉協議会とは何かというところです。

社会福祉協議会とは昭和26年(1951年)に制定された社会福祉事業法(現在の「社会福祉法」)に基づいて設置されているもので、民間の社会福祉活動を推進することを目的としています。

職員は、公務員とは異なります。営利を目的としない民間組織なので報酬などは発生しません。社会福祉協議会は、それぞれの都道府県・市区町村でその地域に暮らす方が安心して生活をしていくことができるように、民生委員・児童委員、社会福祉法人・福祉施設等の社会福祉関係者、保健・医療・教育など関係機関の参加・協力のもとで様々な活動を行っています。

社会福祉協議会はその規模別に全国社会福祉協議会、都道府県社会福祉協議会、市区町村社会福祉協議会の3つに分類されます。

 

全国社会福祉協議会

全国社会福祉協議会は、都道府県社会福祉協議会の連合会として設置された、全国の社会福祉協議会を統一するものです。

都道府県社会福祉協議会

都道府県社会福祉協議会は都道府県レベルでの地域福祉の充実をめざした活動を行っているところです。市区町村の社会福祉協議会と連携して日常生活自立支援事業など社会福祉におけるさまざまな事業を展開しています。指定都市では、指定都市社会福祉協議会がその市の社会福祉協議会と連携を図りながら、都道府県社会福祉協議会に準じた活動を行っています。

市区町村社会福祉協議会

市区町村社会福祉協議会は市区町村レベルで活動しており、最も身近な社会福祉協議会ともいえます。都道府県社会福祉協議会と連携しながらさまざまな活動を行っています。他の社会福祉協議会と比べて、地域の社会資源を容易に結び付けてくれることが特徴です。

社会福祉協議会の仕事

社会福祉協議会がどのような仕事をしているのかを、前述した3つの分類別にご紹介します。

全国社会福祉協議会の仕事

全国社会福祉協議会は東京都にあり日本全体を統一しているため、全国の福祉関係者や福祉施設等事業者の連絡・調整や、社会福祉のさまざまな制度改善に向けた取り組みをメインに行っています。 また社会福祉に関する図書・雑誌の刊行、福祉に関わる人材の養成・研修といった仕事も行っており、日本全体の社会福祉の増進やレベルの底上げに努めているといえます。

さらに、日本国内だけでなくアジア各国の社会福祉への支援なども行っており、福祉分野の国際交流を積極的に行うなど、その仕事内容は多岐にわたります。

都道府県社会福祉協議会の仕事

都道府県社会福祉協議会の仕事は大きく分けて4つに分類されます。

1つ目は先ほども出た日常生活自立支援事業で、認知症や知的障がい、精神障がいなどによって自分自身の判断能力に不安のある方を対象とし、福祉サービスの利用援助や日常的な金銭の管理をおこなう事業です。

2つ目は運営適正化委員会といい、福祉サービスに関する苦情の相談を受け付け、中立の立場から助言、あっせんなどを行って問題解決へと導いています。これはサービス事業者の適正な事業運営と、サービス利用者の支援を目的として行われている仕事です。

3つ目は福祉サービスの第三者評価事業です。福祉事業の対して、第三者の視点から評価・助言をおこなうものです。全体的な福祉サービスの質の向上を目的としており、サービスを利用する方の安心と満足を実現できるように働きかけています。

4つ目は金銭の貸し付けで、経済的な支援を必要とする方へ生活福祉資金(生活や就業に必要な賃金)を低利で貸し付けしています。また、近年は介護福祉士修学資金等貸付制度、保育士修学資金貸付等制度、ひとり親家庭高等職業訓練促進資金貸付事業、児童養護施設退所者等に対する自立支援資金貸付制度など各種貸付制度も都道府県社会福祉協議会で実施しています。

他にも福祉関係者のための専門的な研修事業の実施、ボランティア活動の推進、被災地における復興支援、小中高校における福祉教育の推進、求職情報の提供などもおこなっています。

市区町村社会福祉協議会の仕事

市区町村社会福祉協議会の仕事は大きく分けると2つです。

1つは福祉サービスの提供です。具体的にはホームヘルプサービス(訪問介護)や配食サービスなど在宅での生活を支援するためのサービスを行っています。また、市区町村社会福祉協議会はその地区オリジナルの事業に取り組むことができるという特徴があります。そのため、自分の地域の特性を踏まえたうえで地域の社会資源と協力してオリジナルの事業を行っているところもあります。

もう1つは地域の福祉ネットワークの拡充です。具体的には地域のボランティアと協力し、高齢者や障がい者、子育て中の親子が気軽に集える「サロン活動」を展開したり、ボランティア活動に関する相談や活動先の紹介、、小中高への福祉教育の支援を行っています。

社会福祉協議会に相談できること

社会福祉協議会は、社会のいわゆる総合案内、総合窓口的な役割を目指しており、さまざまな相談をさまざまな立場から解決へと導いてくれます。

高齢者支援の面で言いますと、介護保険制度の概要や申請方法、利用できるサービスなどの相談から、高齢者の日常生活への不安や金銭管理の不安、認知症への不安なども相談できます。さらに権利擁護や高齢者の虐待の件といった深いところまで多岐にわたった相談ができます。特に、市区町村の社会福祉協議会は地域に精通しているということもあるため、地域に密着した相談内容も多いようで、例えば隣の住人が高齢の1人暮らしだけど大丈夫かなどといった他者に関する相談をされる方もいるようです。

社会福祉協議会への相談料は原則無料です。さらにプライバシーの保護に重点を置いているので相談内容や個人を特定できる情報が外部に漏れることはありません。

社会福祉協議会へ相談したい時は?

社会福祉協議会に自身の両親のことを相談したいとなった場合には、まずはお住まいの市町村に設置されている社会福祉協議会へ相談しましょう。前述したように地域に密着した仕事を展開しているのは市区町村の社会福祉協議会であるため、なんらかの支援の必要性を感じる両親についての両親についての相談に取り合ってくれるのは同じ社会福祉協議会の中でも市区町村の社会福祉協議会のみとなります。そのため、もし自身の両親について相談したいという場合はご両親が居住されている市区町村の社会福祉協議会へ相談をする必要があります。

社会福祉協議会に相談する方法は3つあります。1つは社会福祉協議会に直接言って相談をする方法、2つ目は電話などで相談をする方法、3つ目は社会福祉協議会の職員に直接訪問してもらい相談をする方法です。

例えば、ご両親の居住する場所が自身の自宅などと近く、すぐに行くことができる距離であればご両親にもお話ししたうえでご両親の自宅に家族が集まり、そこに社会福祉協議会の職員を呼んで話をするという形が理想的です。また、遠方にご両親が住んでいるなどの事情で前述の形が難しいという場合には電話などでご家族から社会福祉協議会に先に相談をしておき、その後改めて職員にご両親の自宅を訪問をしてもらって相談内容の確認や具体的な解決方法を明示してもらうという手段があります。

まとめ

私たちの地域や福祉を守り、発展させているともいえる社会福祉協議会。高齢の両親が心配だという方はぜひ活用してみてはいかがでしょうか。相談は無料でできますし、様々な内容の相談ができます。このくらいのことで相談していいものか…?と躊躇せずにまずは気軽な気持ちで相談に一歩踏み出していただければと思います。

福祉の面でかかわりがないとなかなか知ることのできない社会福祉協議会。この記事を読んで社会福祉協議会がどのような事を行っているかわかったという方はぜひシェアをしていただけると嬉しいです。また、記事を読んで自分の両親や親せきのことを困った時は社会福祉協議会に相談しようというきっかけ作りにもなれれば幸いです。

※この記事は2019年10月時点の情報で作成しています。

 

陽田 裕也
陽田 裕也 (ひだ ゆうや)

2001年、介護福祉士養成校を卒業と同時に介護福祉士を取得し特別養護老人ホームにて介護職員として勤務する。
その後、介護支援専門員や社会福祉士も取得し、介護以外でも高齢者支援に携わる。現在はソーシャルワーカーとして、 特別養護老人ホームで勤務しており、高齢者虐待や身体拘束、成年後見制度などの権利擁護について力を入れて取り組んでいる。