「地域密着型のデイだから」と利用を断られました。地域密着型サービスの対象者や内容について教えてください。

質問

質問者

兄夫婦と同居をしている父ですが、兄が遠方に転勤になり、戻ってくるまでの予定で、隣町にある私たちの家で暮らしてもらっています。私たちは共働きなので、日中には家に1人になってしまうため、今まで通っていたデイサービスに、引き続き通ってもらおうと思っていました。しかし、「地域密着型のデイだから通えない」とのこと。

地域密着型とはなんでしょうか?今まで通えていたのに、通えなくなってしまうのはなぜですか? どうにかして通う方法はありませんか? 教えてください。

専門家

今まで通われていたのは、地域密着型通所介護という、地域密着型サービスのデイサービスのようですね。地域密着型サービスは、出来る限り住み慣れた地域で生活が継続できるように支援するサービスです。市町村により指定された事業者がサービスを提供し、その地域に住む住民を対象としています。原則として、事業者のある市町村の住民しか利用できませんが、例外が認められるケースもあります。

ここでは、地域密着型サービスの内容やメリット、例外が認められるケースについて解説します。現在や今後の生活の参考にしてください。

地域密着型サービスとは

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まずは、地域密着型サービスの基礎知識からみていきましょう。

地域密着型サービスの特徴

地域密着型サービスは、2006年の介護保険制度改正により創設されたサービスです。要介護度が高くなっても、出来る限り住み慣れた地域で生活が継続できるように、市町村により指定された事業者がサービスを提供しています。原則として、利用できるのは事業所と同じ市町村の住民のみです。

月額報酬制で自由度の高いサービスなど利用者のニーズに柔軟に対応できること、小規模な施設でアットホームな介護を提供できることがメリットです。

地域密着型サービスの一覧

地域密着型サービスには次のようなものがあります。市町村によって提供しているサービスは異なるため、詳しくはケアマネジャーや地域包括支援センターにご確認ください。

【訪問にて受けるサービス】

●定期巡回・随時対応型訪問介護看護

●夜間対応型訪問介護

 

【通所サービス】

●地域密着型通所介護(認知症デイサービス):定員18名以下

●認知症対応型通所介護(認知症デイサービス):定員12名以下

〇(要支援1、2)介護予防認知症対応型通所介護(認知症デイサービス)

 

【通い・訪問・宿泊を組み合わせたサービス】

●小規模多機能型居宅介護

〇(要支援1、2)介護予防小規模多機能型居宅介護

●看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)

 

【施設サービス】

●認知症対応型共同生活介護(グループホーム):1ユニット9名まで

〇(要支援2)介護予防認知症対応型共同生活介護(グループホーム)

●地域密着型特定施設入居者生活介護:定員29人以下

●地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護:定員29人以下

地域密着型サービスの対象者

地域密着型サービスの対象を解説

続いて、地域密着型サービスの対象者を見てみましょう。

利用対象者

. 地域密着型サービスの対象者は、次の通りです。

  • 事業所と同一の市町村に住んでいる方
  • 要介護認定にて、要介護1~5の認定を受けている方(要支援1、2の方は地域密着型介護予防サービス)

住所地が限定されている理由

. 地域密着型サービスは、国が提唱している地域包括ケアシステムの一環として創設されました。団塊の世代が75歳以上となる2025年までに、要介護度が高くなっても、住み慣れた地域で自分らしい暮らしを続けられるように、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される地域包括ケアシステムの構築を目指しています。

施設や事業所は、地域住民と交流が持てるような立地にあることも、地域密着型サービスの特徴です。地域密着型サービスは、高齢者が住み慣れた地域で生活を続けられるために、市町村内のニーズに合わせて、市町村から指定を受けた事業者がサービスを提供しています。そのため、地域外(他の市町村)にお住まいの方は原則として利用できません。

他市町村からの利用が認められるケース

サービスを利用するシニアのイメージ

原則として、地域の住民を対象とした地域密着型サービスですが、市町村が同意することで、他の市町村にお住まいの方でも利用が認められるケースがあります。利用が認められるケースとはどんなものかをみていきましょう。

例外が認められるケース

  • 利用者が住んでいる市町村には、同様のサービスがない
  • 利用を希望している事業所に空きがある
  • 虐待などのやむを得ない理由がある
  • 一時的に他市町村に在住する親族宅などに滞在している など

今回の質問者さんのケースだと、「一時的に他市町村に在住する親族宅などに滞在している」が当てはまります。市町村が示している基準の中にこの項目がなかった場合でも、一度相談をしてみてください。

同意なくサービスを利用すると、介護保険は適用されず、全額自己負担となります。

また、送迎ができないなどの理由で、事業所から利用を断られることがあるので、あらかじめ相談しておきましょう。

まとめ

地域密着型サービスは、要介護度が高くなっても住み慣れた地域で暮らし続けることを支援するためのサービスです。原則として、お住まいの市町村にある事業所のサービスしか利用できません。

市町村によって提供しているサービスにばらつきもあり、他の市町村の地域密着型サービスの利用を希望する方も少なくはありません。まずはケアマネジャー、または現在お住まいの地域の地域包括支援センターや介護保険課、利用を希望している事業所のある市町村の介護保険課などにご相談ください。

他の市町村の地域密着型サービスを利用する同意が得られなかった場合には、ケアマネジャーに他の方法がないかを相談しましょう。地域密着型のデイサービスは、小規模でキメの細かいサービスを受けられますが、通常のデイサービスよりも費用が高くなっています。地域密着型サービスにこだわらないことで、利用限度額に余裕ができ、他のサービスの選択肢も広がりますよ。

※この記事は2021年11月時点の情報で作成しています。

 

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i.ansinkaigo.jp

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ケアマネジャー:森裕司(株式会社HOPE)
ケアマネジャー  森 裕司(もり ゆうじ)

【経歴】 1982年生まれ。
医療福祉系学校を卒業後、約11年医療ソーシャルワーカーとして医療機関に勤務。
その後、一生を通じた支援をしたいと思い、介護支援専門員(ケアマネジャー)へ転身。
2017年1月 株式会社HOPE 設立
2017年3月 ほーぷ相談支援センター川越 開設
代表取締役と共に、介護支援専門員(ケアマネジャー)として、埼玉県川越市で高齢者の相談支援を行っている。
他に、医療機関で、退院支援に関するアドバイザーと職員の指導・教育にあたっている。
医療・介護に関する新規事業・コンテンツ開発のミーティングパートナーとしても活動。大学院卒(経営研究科)MBA取得している。

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