父が脳梗塞で入院し、現在は急性期病棟で治療を受けています。治療がひと段落したら、リハビリを受けた後で自宅に戻る予定です。
急に介護が始まることになりましたが、何から始めていいのかもわからず不安です。要介護認定はいつ、どのように受ければいいですか?
要介護認定についての質問ですね。介護保険制度を利用してサービスを受けたり、住宅改修をしたり、福祉用具のレンタルをしたりする際には、要介護認定を受けて要支援または要介護の認定を受ける必要があります。つまり、要介護認定は介護の入り口で行う手続きです。
この記事では、要介護認定の内容や手続き、要介護認定を受けた後でしておくことについてまとめました。ぜひ、今後や現在の生活の参考にしてください。
要介護認定について知ろう
まずは、要介護認定の基礎知識からみていきましょう。
要介護認定とは
65歳以上の方または40歳以上の特定疾病の方が、介護保険を利用する際に必ず必要となるのが要介護認定です。
介護保険を利用して受けられるサービスには、訪問介護や訪問看護、デイサービス、ショートステイなどの居宅サービス、特別養護老人ホームなどの施設サービスなどがあります。介護保険サービスを利用するために、どれぐらい介護が必要な状態なのかを判断するものが、要介護認定です。
要介護度とは
要介護度は、自立、要支援1、2、要介護1、2、3、4、5の8段階があります。介護保険サービスを利用することができるのは、要支援1、2、要介護1~5の方です。自立の方は利用できません。
それぞれの段階により利用できるサービスの種類が異なります。また、月々に利用できる金額が要介護度ごとに決まっており、要介護度が高くなるほどに利用できるサービスや回数が増えるようになっています。介護保険サービスだけではなく、自治体が提供している高齢者向けサービスや施設入居などの基準としても利用されています。
要介護認定の申請手順
続いて、要介護認定の申請方法を見てみましょう。
市区町村の窓口で申請を
要介護認定の申請は市区町村の役所の介護保険関連窓口にて行います。ケアプランを作成する居宅介護支援事業所や地域包括支援センターに、手続きの代行を依頼することも可能です。
申請に必要なもの
要介護認定の申請に必要となるものは、次の書類です。
・申請書
・介護保険被保険者証(65歳未満で新規申請の方は不要)
・65歳未満の特定疾病の方:医療保険の保険証
・主治医の氏名と医療機関の名称及び所在地の情報(主治医意見書作成依頼のため)
申請書は各市区町村の窓口に用意されていますが、市区町村の役所によってはホームページなどでダウンロードすることもできます。
主治医がいない、かかりつけの病院がないという場合には、新たに医療機関を受診して、主治医を決める必要があります。詳しくは市町村の窓口、地域包括支援センターなどでご確認ください。
要介護認定の認定調査とは
要介護認定の申請をすると、1~2週間ほどで認定調査員が自宅や入院先などを訪問し、認定調査を行います。その調査内容をみていきましょう。
訪問調査の内容をチェック
介護認定の基本となる情報収集なので、調査項目に漏れがないように、全国一律の認定調査票を基に質問されます。確認される内容は、身体機能や認知機能、生活機能、精神・行動障害、社会生活への適応などについてです。
介護保険を受ける本人および家族への質問のほか、本人に実際に身体を動かしてもらっての動作確認などをします。例えば「歩行について」であれば、「1.つかまらないでできる」「2.何かにつかまればできる」「3.できない」など、何がどの程度できているのかが確認されます。
認定調査票で表現できない部分に関しては、調査員の判断で「特記事項」が記されます。
調査には、家族が同席することも可能です。知らない人の前ではしっかりしてしまうことがあるので、できるだけ普段の様子を知っている家族が同席するようにしましょう。何がどこまでできるのか、困っていること、気になる症状を事前にメモしておくことをおすすめします。
調査から判定が出るまで
要介護認定では、訪問調査と主治医意見書の内容を基に、要介護度が判断されます。
結果が出るのは、申請から30日以内です。要介護認定結果は郵送で届き、介護保険証も同封されています。主治医意見書の提出が遅かったなど、30日を超える理由がある場合には、市区町村から認定等延期通知書が送付されます。
もし、がん末期などで早急に介護サービスが必要な方は、申請の際に窓口でしっかりと伝えるようにしましょう。多くの自治体では、早急に認定調査を行う手配をしてくれる場合があります。
要介護認定が出た後でしておきたいこと
それでは、要介護認定が出た後にしておきたいことをみていきましょう。
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ケアプランを作成しましょう
要介護認定が出たら、要支援1、2の方は地域包括支援センター、要介護1以上の方は居宅介護支援事業所のケアマネジャーがケアプランを作成します。地域の居宅介護支援事業所のリストは、地域包括支援センターなどで提供しています。電話で問い合わせた際の雰囲気や口コミなどを参考にして、選ぶと良いでしょう。
ケアマネジャーは現在の状況や環境、本人や家族の希望などを踏まえてケアプランを作成します。困っていることなどを事前にメモして置き、しっかりと伝えておくことが大切です。
自宅の環境を整えましょう
自宅で安全に暮らし続けられるように、手すりを設置したり段差を解消したり、トイレを洋式にしたりといった住宅の改修を行い、事故が起こりにくい住環境を作りましょう。
介護保険では、住宅の改修にかかった費用のうち9割(一定の所得がある方は、所得に応じて8割または7割)が申請の上で支給されます。適用される改修には条件があるため、詳しくはケアマネジャーにご確認ください。独自の補助制度がある自治体もあります。
地域の介護サービスについて知っておきましょう
地域の介護サービスに関する情報や自治体が独自に提供している支援、近隣のボランティア団体についての情報を収集しておきましょう。ケアマネジャーに任せられることですが、自分でも情報を集めておくと、相談や提案がしやすくなります。
また、施設入居が必要になった時のために、近隣の介護施設の情報を知っておいても良いでしょう。
まとめ
年齢を重ねるにつれて自立して生活をするのに介助が必要になり、要介護認定を受ける場合もあれば、質問者さんのように脳梗塞などをきっかけに要介護認定を受ける場合もあります。後者だと「急に介護が必要になった」と感じられ、不安に思ってしまう方も多いことでしょう。
現在は急性期病床で治療を受けているとのことなので、リハビリ病床に移って落ち着いてから、病院の相談員さんに「要介護認定の申請をしたい」と相談すると良いでしょう。
家族間で、連絡体制や要介護度が高くなってからのこと、費用や介護の負担などについて話し合っておくことも大切です。この記事が、不安を軽くするお役に立てれば幸いです。

【経歴】
1982年生まれ。
医療福祉系学校を卒業後、約11年医療ソーシャルワーカーとして医療機関に勤務。
その後、一生を通じた支援をしたいと思い、介護支援専門員(ケアマネジャー)へ転身。
2017年1月 株式会社HOPE 設立
2017年3月 ほーぷ相談支援センター川越 開設
代表取締役と共に、介護支援専門員(ケアマネジャー)として、埼玉県川越市で高齢者の相談支援を行っている。
他に、医療機関で、退院支援に関するアドバイザーと職員の指導・教育にあたっている。
医療・介護に関する新規事業・コンテンツ開発のミーティングパートナーとしても活動。大学院卒(経営研究科)MBA取得している。
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