誤嚥性肺炎入院中の父ですが、食事がとれず点滴で栄養を取っており、中心静脈栄養をすすめられました。本人は口からの食事を希望しており、迷っています。中心静脈栄養は一度つけたら外せないものですか?

中心静脈栄養は延命のためにするもの?

質問

質問者

95歳の父についての質問です。現在、2回目の誤嚥性肺炎を起こし、急性期病床で治療を受けており、点滴で栄養を取っている状態です。主治医から中心静脈栄養にする必要があると言われましたが、リスクがあるということ、何よりも本人が口からの食事を希望していることから迷っています。

中心静脈栄養にしたら、もう外すことはできないのでしょうか? ずっと付けたままですか? 中心静脈栄養は延命のためにするものなのでしょうか?

 

専門家

中心静脈栄養は、口から食事や水分が取れなくなった方に提案される方法です。心臓の近くにある太い静脈にカテーテルを挿入して栄養などを点滴します。延命のためだけではなく、リハビリや治療に必要な体力をつけるために栄養補給する方法として選択されています。

この記事では、メリットやデメリットを含めた中心静脈栄養の基本情報、知っておきたいリスク、口からの食事に戻れるかどうかについてまとめています。ぜひ、現在や今後の参考にしてください。

中心静脈栄養について知ろう

中心静脈栄養について理解する

まずは、中心静脈栄養の基礎知識からみていきましょう。

中心静脈栄養とは

中心静脈栄養(TPN:Total Parenteral Nutrition)とは、中心静脈という心臓の近くの太い血管内にカテーテル(管)を挿入し、高濃度・高カロリーの輸液を点滴するというものです。かつてはIVH(Intravenous Hyperalimentation)とよばれていました。

中心静脈はとても太くて血流が多いので、輸液は一瞬のうちに大量の血液で薄められます。血管への影響や副作用も少なく、十分なエネルギーを補給することができます。一般的に中心静脈栄養は病院で行われますが、在宅で行うことも可能です。

中心静脈栄養が選ばれる条件

7日以上口から食事が摂れない、以下のような場合に中心静脈栄養が選択されます。

  • 重度の腸管麻痺や吸収障害などがあり、消化管が十分に機能していない場合
  • 消化管の使用が不可能、あるいは、すべきでないと判断された場合
  • 治りにくい下痢や嘔吐がある場合
  • 消化管が閉塞している場合
  • 小腸の手術により栄養が吸収できない場合
  • 腸管に重い炎症があり、腸管を安静に保つ必要がある場合

消化管がきちんと機能している場合には、鼻から胃にチューブを入れる経鼻経管栄養や、腹壁から胃や腸に孔を開け、カテーテルを通して栄養を送る胃ろうや腸ろうといった経管栄養法が選択されることが多いです。大きな外科手術後、病気が重症な場合、吸収不良を引き起こした場合など、消化管では十分な栄養を吸収できない状態の場合には、中心静脈栄養法が提案されます。

血管に栄養を送る方法には、中心静脈栄養の他に、手足など末梢の細い静脈に点滴をする「末梢静脈栄養」があります。栄養管理をする期間が短期(7〜14日以内程度)であれば、末梢静脈栄養が選択されることがあります。

中心静脈栄養のメリットとデメリット

【メリット】

  • 消化管に頼らずに栄養や水分などを補給でき、栄養成分や水分量など状態に応じて適切な栄養管理が可能
  • 自宅での生活が可能
  • 長期的に利用できる
  • 点滴のように何度も針を刺さなくてよい
  • 症状が悪化した時に、薬剤投与なども容易に行える

【デメリット】

  • 在宅で過ごす場合、医療的な管理を家族が行うので介護の負担がそれなりに重くなる
  • コストが高い
  • 使わない消化管の機能が低下する可能性がある
  • 合併症や感染症を引き起こすリスクがある

中心静脈栄養で考えられるリスクとは

中心静脈栄養栄養のリスクについて考える

続いて、中心静脈栄養で考えられるリスクについて確認していきましょう。

抜去に注意

自宅で過ごす場合、家族が注意したいのが抜去(誤って抜いてしまうこと)です。カテーテルを自分で抜いてしまったり、うっかりひっかけたりして抜けてしまうことも少なくありません。

中心静脈栄養の穴はふさがりやすいので、抜けていることに気づいたら、すぐに点滴を中止し、医療機関に連絡をしましょう。

感染症

カテーテルを挿入している皮膚や接続部、輸液の汚染などにより、感染症を引き起こす可能性があります。

適切に使用器具や輸液ラインを管理すること、カテーテルの挿入部の皮膚や本人の状態を毎日観察して、感染の予防・早期発見することが大切です。

合併症

中心静脈栄養で起こりえる合併症としては、細菌感染による敗血症、血栓性静脈炎などに注意が必要です。その他、機械的合併症(カテーテルの閉塞、破損など)や代謝性合併症(血糖異常などの糖代謝異常、電解質異常、高トリグリセリド血症など)、消化器合併症(胃炎や潰瘍、消化管粘膜の萎縮など)があります。

口からの食事に戻れる?

中心静脈栄養から経口摂取に戻ることは可能?

安心介護内には、中心静脈栄養を提案されたご家族から、後で口からの食事に戻れるかについての質問が数多く投稿されています。中心静脈栄養を受けた方が、口からの食事に戻れるかどうかをみていきましょう。

リハビリにより口からの食事に戻れます

中心静脈栄養により栄養状態が改善され、身体の状態がよくなれば、リハビリをすることで経口摂取に戻ることが可能です。中心静脈栄養は経口摂取と併用することが可能なので、口から食べる咀嚼(そしゃく)や嚥下(えんげ)のリハビリを並行してすることができます。 リハビリのタイミングなどは、医師や専門家とよく相談しましょう。

口腔ケアを継続しましょう

口から食事をしていなくても、毎日口腔ケアを行いましょう。口の中の汚れを誤嚥することで、誤嚥性肺炎を起こしてしまうことがあります。

まとめ

心臓の近くにある太い血管にカテーテルを通して直接栄養を送る中心静脈栄養。嚥下機能が低下していたり、消化管を利用できない方でも、栄養や水分を補給することで、治療に必要な体力の回復を期待することができます。

中心静脈栄養を取り入れたからといって、口からの食事をあきらめなくてはいけないわけではありません。体力が回復し、治療が進んでから、リハビリにより口からの食事に戻ることも可能です。

終末期の方に中心静脈栄養が提案されている場合には、本人や家族でよく話し合いましょう。点滴のように毎回針を刺す必要がないので、痛みもなく栄養を補給することができます。ただし、感染症や合併症などのリスクもあるので、主治医の説明をよく聞いたうえで判断するといいでしょう。

中心静脈栄養に限らず、要介護度や認知症が進んでから、どのような治療や介護を受けたいのかについては、早いうちから意志を確認しておくことが大切です。

この記事が、中心静脈栄養について悩んでいる方のお役に立てたのなら幸いです。

※この記事は2021年12月時点の情報で作成しています。

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i.ansinkaigo.jp

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医師:谷山由華
監修者:谷山 由華(たにやま ゆか)

医師:谷山 由華(たにやま ゆか)

【経歴】
・防衛医科大学校医学部医学科卒業
・2000年から2017年まで航空自衛隊医官として勤務
・2017年から2019年まで内科クリニック勤務
・2019年から内科クリニックに非常勤として勤務、AGA専門クリニック常勤

内科クリニックでは訪問診療を担当。内科全般、老年医療、在宅医療に携わっている