現在要介護5で有料老人ホームに入居している義母ですが、夫が定年退職したら、在宅に戻し、自宅で看取りまで面倒を見たいと思っています。周りから無理だと言われますが、施設から在宅に戻すこと、自宅で看取ることは現実的ではないのでしょうか?

質問

質問者介護付き有料老人ホームで暮らしている要介護5の義母ですが、現在はほとんど寝たきりの状態で看取りが近づいてきています。

来月には夫が退職する予定でもあり、そのタイミングで私たちが同居する形で、施設から在宅に戻し、家で看取りまで面倒を見たいと思っています。周りからは無理だと言われるのですが、施設から在宅に戻すこと、自宅で看取ることは現実的ではないのでしょうか?

また、自宅での看取りについて、知っておいた方がいいことを教えてください。

 

 

専門家要介護5のお母様を、看取りを前提に自宅に戻したいとのこと。簡単なことではありませんが、けして無理なことではありません。自宅に戻られたことで笑顔が増え、状態が良くなり、想像よりも長い間、家族との思い出を増やせたケースをみたことがあります。

この記事では、要介護5の方を自宅に戻す際に知っておきたい、介護保険サービスのこと、在宅での看取りについて知っておきたいこと、準備や流れについて説明しています。ぜひ、現在や今後の参考にしてください。

 

自宅で看取りまでやりたい

 

要介護5とは

まずは、要介護5とはどのような状態なのかをみてみましょう。

要介護5の状態とは

要介護5は、全部で7段階ある要支援要介護認定の中で、最も介護が必要な状態です。排泄や食事、着替えなど、日常生活のほとんどに介助が必要で、寝たきりの状態の人もいます。リハビリによって要介護度の改善を目指す人もいれば、看取りの時期に入っている人もいます。

在宅介護の場合、要介護者の支援だけではなく、介護者のレスパイトも意識したケアプランが作成されます。介護者が感じている負担やストレスについて、日ごろからケアマネジャーに話しておくといいでしょう。

要介護5で受けられるサービス

介護保険制度では要介護度ごとに、上限金額が決まっています。要介護5の方が使える介護サービスの上限は、360,650円です。 自己負担額は原則1割。一定以上の所得がある方は、所得に応じて2割または3割です。

<上限までサービスを利用した場合の1ヵ月の金額>

1割負担:36,065円
2割負担:72,130円
3割負担:108,195円

介護サービス費用の自己負担金額が一定の金額を超えた場合、申請により超えた分が戻ってくる「高額介護サービス費制度」が利用できます。詳しくはケアマネジャーや地域包括支援センターなどに相談してください。

必要な介護保険サービスは、すべて利用の対象となります。介護保険施設も利用対象とはなりますが、介護保険施設以外のケアハウスや養護老人ホーム、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)では、介護度の高さから入居は難しいでしょう。

在宅での看取りで準備すること

続いて、看取りを視野に在宅介護をする際に、準備しておきたいことをみていきましょう。

ケアマネジャーを探す

施設から自宅に戻る際には、居宅介護支援事業所のケアマネジャーと契約をして、ケアプランを作ってもらうようにします。

お近くの居宅支援事業所については、市町村の介護保険関連窓口、地域包括支援センターなどで入手することができます。その中から電話で相談をした時の雰囲気、近所の口コミなどを参考に選ぶようにしましょう。

居宅介護支援事業所を選ぶ前に、「看取りの経験が豊富な人がいい」、「男性だと話しやすい」など、どんなケアマネジャーに担当してもらいたいのかを考えておくことも大切です。

在宅のかかりつけ医を探す

訪問診療(定期的な訪問による診察)や、状態が悪化したときの対応、死亡後の書類作成などを行ってくれるのが在宅のかかりつけ医です。また、訪問看護師に医療処置を支持指示するのもかかりつけ医です。在宅のかかりつけ医は、現在入居中の施設や施設入居前のかかりつけ医、ケアマネジャーに相談してみましょう。

訪問看護を利用する

自宅で看取りをする際には、訪問看護の力を借りることが必要不可欠です。訪問看護師は、自宅で療養している間の医療的なケアや、日常生活の処置など様々なことを行ってくれます。また、療養されている患者さんだけでなく、家族に対しても精神的なフォローや情報提供をしてくれます。

ケアマネジャーや在宅のかかりつけ医に、訪問看護事業所(訪問看護ステーション)を紹介してもらと良いでしょう。

本人の意思を知る

終末期はどのように過ごしたいのかについては、あらかじめ意志表示してもらうようにしましょう。エンディングノートをあらかじめ作成してもらうのがおすすめです。本人に代わって家族が決断をしなくてはいけない時に、後悔のない選択ができるようになりますし、対応を巡って家族や親族でもめごとになることを避けられます。

自宅で看取ることとは

自宅での看取りを考える際に、知っておきたい内容をみていきましょう。

自宅で受けられる医療について

自宅で看取りを想定している場合、かかりつけ医による訪問診療と訪問看護を基本とした医療が提供されます。

緊急時には、訪問看護師などの報告を基にかかりつけ医が指示を出します。かかりつけ医が不在の場合でも、代理医師が指示を出せるようになっており、24時間体制でサポートを受けられます。

一刻を争うような急変時でもすぐに対応を受けるのは難しいこと、回復を期待するような治療や心肺蘇生などの延命処置については、基本的に対象外であることを理解する必要があります。

かかりつけ医や訪問看護師から受けられる治療や医療的ケアについて、あらかじめ理解しておくようにしましょう。

メリット

自宅で看取りをすることの最大のメリットは、「最期は自宅で」という本人の希望をかなえられることだと言えます。病院であれば禁じられることの多い食べ物の持ち込みや飲酒、喫煙なども、自宅であれば気兼ねなく行えますし、ペットと一緒に過ごすこともできます。

また、本人の希望を叶えることで悔いのない介護ができること、本人とゆっくりと時間を過ごせるという点が家族側のメリットです。また、一般的には、病院や施設での看取りに比べて経済的な負担が少なくなります。

デメリット

デメリットは家族の介護負担が大きい点です。ケアマネジャーに家族の状況をあるがままに説明して、必要なケアプランを作成してもらいましょう。例えば、排泄介助や入浴介助などの体力の必要なケアは難しい、胃ろうからの栄養摂取は専門家に任せたいなどです。

週に1日は別居している家族がお手伝いをする、夜間の介助については交代で行うなど、家族間で役割を話し合っておき、1人に負担を集中させないことも大切です。また、訪問介護などの介護保険サービスを積極的に利用するようにしましょう。

自宅での看取りの流れ

それでは、自宅での看取りの流れをみていきましょう。

安定期から不安定期

医師が医学的知見から「回復の見込みがない」、「医療機関での対応の必要性が薄い」と判断すると看取り介護が始まります。

身体状況は、安定期と不安定期を繰り返しながら、徐々に衰弱していきます。急変時の対応はどうするのか、医療的な介入はしなくてよいのか、緊急時は家族や親族間でどのように連絡を取り合うかなどを改めて確認をしていきます。

症状が日や時間単位で変化する時期

本人も家族も「死が迫っている」と実感する時期です。様々な心構えが必要になり、死後の準備を始める時期でもあります。訪問看護師やかかりつけ医が、状態の変化やこれから起こる症状を丁寧に説明してくれます。

会わせたい人に連絡をしたり、本人が好きだった音楽を聞かせてあげたり、好きだった香りを嗅がせてあげたりして、過ごすと良いでしょう。

まとめ

在宅での看取りは、簡単なことではありませんが、けして無理なことではありません。大切なのは、しっかりと準備をすることと、医療や介護の専門家の手を借りることです。身体介護はヘルパーができますが、長年の思い出を共有すること、いるだけで特別な時間を過ごすことは家族にしかできません。

家族が笑顔で後悔なく看取れるように、できるだけ介護保険サービスを利用して、医療や介護の専門家の手を頼るようにしましょう。

 

※この記事は2022年1月の情報を元に作成しています。

ケアマネジャー:森裕司(株式会社HOPE)
ケアマネジャー  森 裕司(もり ゆうじ)

【経歴】 1982年生まれ。
医療福祉系学校を卒業後、約11年医療ソーシャルワーカーとして医療機関に勤務。
その後、一生を通じた支援をしたいと思い、介護支援専門員(ケアマネジャー)へ転身。
2017年1月 株式会社HOPE 設立
2017年3月 ほーぷ相談支援センター川越 開設
代表取締役と共に、介護支援専門員(ケアマネジャー)として、埼玉県川越市で高齢者の相談支援を行っている。
他に、医療機関で、退院支援に関するアドバイザーと職員の指導・教育にあたっている。
医療・介護に関する新規事業・コンテンツ開発のミーティングパートナーとしても活動。大学院卒(経営研究科)MBA取得している。

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