介護にはどの位お金が必要?在宅介護・施設介護にかかる費用が知りたいです。

介護費用のイメージ写真

質問

質問者持ち家でひとり暮らしをしている80代の実母がいます。現在は要介護1で、ヘルパーさんに週に2回来てもらいながら、年金で充分暮らせていますが、これから要介護度が上がった時に、年金だけで暮らせるのかが心配です。

介護には通常どれくらいの費用が掛かるものなのでしょうか? 在宅介護と施設に入居した時でどれくらい費用が変わるのでしょうか? 教えてください。

専門家介護費用についての質問ですね。「生命保険に関する全国実態調査/令和3年度」によると、月々の介護費用は平均8.3万円でした。平成30年度の調査と比べると、介護期間は長くなり、介護にかかる総費用は高くなっています。

介護費用には、月々にかかる費用に比べて住宅改修など一時的にかかる費用もあります。この記事では、介護にはどれくらいかかるのか、月々にかかる費用と一時的にかかる費用、在宅と施設でかかる費用の違いなどをご紹介します。ぜひ、現在や今後の生活の参考にしてください。

介護にかかる費用とは

費用について考える

まずは、介護にかかる費用についてみていきましょう。

月々にかかる介護費用

介護費用という言葉に明確な定義はありません。介護にかかるお金にはさまざまなものがありますが、一般的に次の費用がかかります。

  • 介護保険の介護サービスの自己負担額
  • 通院費用
  • デイサービスやショートステイでの食費や居住費など
  • おむつ代や介護食など生活していくうえで必要なもの日常生活費用

介護でかかる一時費用とは

介護では、月々にかかる費用だけではなく、住宅改修やシャワーチェアなどの福祉用具の購入費用など、一時的にかかる費用があります。介護保険が適用されるものの場合は、その自己負担分が一時費用です。

介護の平均費用と期間

介護費用の平均について考えるイラスト

続いて、「生命保険に関する全国実態調査/令和3年度」から、介護の平均費用と期間を確認しておきましょう。

月々にかかる介護費用の平均額

月にかかる介護費用は、2021年の調査結果によると平均が8.3万円とされています。

最も多かったのが、「15万円以上」(16.3%)で、「1万~2万5千円未満」(15.3%)、「2万5千円~5万円未満」(12.3%)、「10万~12万5千円未満」(11.2%)が続いています。

月々10万円以上かかっているという回答は、全体の20.4%でした。一方で、2万5千円未満という方は19.6%おり、月々にかかる費用にはばらつきがあることが伺えます。

参考までに介護対象者の要介護度を見てみると、直近(または最後の)要介護は、「要介護3」(23.3%)が最も多く、「要介護4」(17.4%)、「要介護2」(15.6%)となっています。特別養護老人ホームの入居要件である「要介護3以上」の方は全体の56.1%、「要介護2以下」の方は、36.4%、公的介護保険の利用経験なしは、5.9%でした。比較的、要介護が高い方が多いと言えるでしょう。

一時費用の平均額

一時的にかかる費用の平均は74万円となりました。1回にかった金額ではなく、「これまでにかかった金額」です。

「15万円未満」(18.6%)と「かかった費用はない」(15.8%)が合わせて、34.4%となっています。一時的にかかる費用はそれほどない方が多いようですが、100万円以上かかった方が14.3%おり、平均額を押し上げています。

介護の平均期間

続いて、介護の平均期間をみてみましょう。介護中の方は、介護を始めてからの経過期間を回答しています。平均期間は、61.1ヵ月(約5年1ヵ月)です。

最も多いのが、「4~10年未満」(31.5%)となり、「10年以上」(17.6%)、「3~4年未満」が(15.1%)が続いています。

平均総額はいくら?

今回の調査結果から、介護の平均総額を計算してみましょう。

「月々にかかる介護費用の平均額(8.3万円)」×「介護の平均期間(61.1ヵ月)」+「一時費用の平均額(74万円)」で、結果は約581万円となりました。

在宅介護と施設介護でかかる費用

在宅介護と施設介護の費用はどれくらい違う?

それでは、在宅介護と施設介護でかかる費用を比較してみましょう。

大きな差が出るのは一時費用

介護を行った、または行っている場所は、在宅が56.8%、施設が41.7%でした。施設は、「民間の有料老人ホームや介護サービス付き住宅など」(18.1%)、「特別養護老人ホームや介護老人保健施設などの公的な施設」(16.3%)、「病院」(7.4%)という結果でした。

介護をする場所によって大きな差が出るのは一時費用でしょう。施設介護で最も多い「民間の有料老人ホームや介護サービス付き住宅など」は、入居時に一時金などの初期費用が0円から数百万円ほどかかります。「特別養護老人ホームや介護老人保健施設などの公的な施設」では、初期費用はかかりません。

「在宅」でも、住宅改修やシャワーチェアなどの福祉用具の購入費用など、介護に適した環境を整えるための初期費用がかかります。

在宅で介護をするために環境を整えた方が、要介護度が進んで民間の介護施設に入居した場合には、介護にかかった一時費用の総額は高くなります。

要介護3の場合

続いて、要介護3の方を例に、介護の場所ごとにひと月(30日)でかかる目安の費用をみてみましょう。

在宅介護

要介護3の方の介護保険の支給限度額は27万480円です。限度額までサービスを利用した場合、ひと月(30日)の自己負担額2万7,048円*となります。

これに、デイサービスやショートステイでかかる食費や居住費、自宅での食費、医療費、介護用品の購入費、生活にかかる費用などが月々にかかります。質問者さんのケースでは持ち家ということなので、介護保険サービスが限度額内に収まるのであれば、月々にかかる費用は抑えられるでしょう。

【特別養護老人ホームの場合】

特別養護老人ホームでひと月(30日)にかかる費用は、入居している部屋のタイプによって異なります。多床室に入居している場合でみてみましょう。

介護保険サービス費用:2万1,360円*

食費:4万3,350円 (基準費用1,445円/日で計算)

居住費:2万5,650円 (基準費用855円/日で計算)

他に、おむつ代や洗濯代などの日常生活費(実費相当額)、介護保険の各種加算などがかかります。

利用者の所得によって食費や居住費が軽減される制度があるので、上記の金額よりも月々の金額が抑えられるケースがあります。詳しくは、ケアマネジャーまたは地域包括支援センターなどにご確認ください。

【介護付き有料老人ホーム】

介護付き有料老人ホームでは、特定施設サービス計画に基づいた介護保険サービスが受けられます。これは特定施設入居者生活介護の指定を受けたサービス付き高齢者向け住宅、軽費老人ホームなども同様です。

介護保険サービス費用:2万220円*

食費、居住費、水道光熱費など:民間の介護施設なため、施設によって差があります 他に、おむつ代などの日常生活費(実費相当額)、介護保険の各種加算などがかかります。

*基本的な利用料(「介護報酬の算定構造」令和3年4月改定版)です。自己負担割合が1割の方の金額で、一定の所得がある場合は、所得に応じて2割または3割負担となります。

まとめ

今回は、「生命保険に関する全国実態調査/令和3年度」を基に、介護にかかる総費用をまとめました。調査結果では、「月々にかかる介護費用の平均額(8.3万円)」×「介護の平均期間(61.1ヵ月)」+「一時費用の平均額(74万円)」で、介護にかかる総費用は約581万円です。

介護費用は、要介護者本人の年金や資産から捻出するようにしましょう。介護費用をどうするのか、どのような介護を受けたいのかについては、できるだけ早いうちから本人を含めた家族間で話し合いをしておきたいものです。

在宅介護と施設介護については、持ち家であれば在宅介護の方が比較的安く抑えられるでしょう。特別養護老人ホームなどの公的な介護施設は、所得に応じた軽減制度があるので、費用を抑えて手厚い介護を受けたい方に向いています。ただし、人気があるので希望するタイミングで、希望する施設に入所できないこともあります。

在宅での介護か施設介護かは、費用に加えて、本人の希望と家族の生活、ライフスタイルを基に考えるようにしましょう。

 

※この記事は2022年3月時点の情報で作成しています。

ケアマネジャー:森裕司(株式会社HOPE)
ケアマネジャー  森 裕司(もり ゆうじ)

【経歴】 1982年生まれ。
医療福祉系学校を卒業後、約11年医療ソーシャルワーカーとして医療機関に勤務。
その後、一生を通じた支援をしたいと思い、介護支援専門員(ケアマネジャー)へ転身。
2017年1月 株式会社HOPE 設立
2017年3月 ほーぷ相談支援センター川越 開設
代表取締役と共に、介護支援専門員(ケアマネジャー)として、埼玉県川越市で高齢者の相談支援を行っている。
他に、医療機関で、退院支援に関するアドバイザーと職員の指導・教育にあたっている。
医療・介護に関する新規事業・コンテンツ開発のミーティングパートナーとしても活動。大学院卒(経営研究科)MBA取得している。

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