介護の現状とお金の問題に詳しい、「特定非営利活動法人 くらしとお金の学校」のファイナンシャル・プランナー等の方々に、介護にまつわるお金の問題について書いていただきました。
介護にはかなりの額の費用負担が伴います。少しでも介護費用を抑えるために、下記のような制度を活用していくことが大切です。
- ①高額介護(介護予防)サービス費
- ②高額医療・高額介護合算療養費
- ③保険料の減免
- ④介護保険施設の食費・住居費の軽減
- ①医療費控除
- ②扶養控除
- ③社会保険料控除
- ④障害者控除
- ①介護休業・介護休暇
- ②介護休業給付金
①高額介護(介護予防)サービス費
同じ月に利用したサービスの自己負担の合計金額が高額になった場合に、「高額介護(介護予防)サービス費」として後から給付されます。1ケ月あたりの負担が、下記の表の負担限度額を超えた時に、その超えた金額が申請により戻ってきます。同じ世帯にサービス利用者が複数いる場合は全員の1割負担を合計し、世帯の上限額を超えた金額が対象となります。ただし、福祉用具購入費・住宅改修費・食費・居住費(滞在費)・日常生活費などは対象外です。
高額介護(介護予防)サービス費の基準
2021年8月からの高額介護サービス費の負担上限額は以下の通りです。
②高額医療・高額介護合算療養費
同じ世帯内で、医療保険と介護保険の自己負担の合計金額が年間の負担限度額を超えた場合、申請により「高額医療・高額介護合算療養費」として後から給付されます。計算期間は毎年8月から翌年7月までの12カ月です。
高額医療・高額介護合算療養費制度の基準(負担限度額:年額)
70歳未満
70歳以上
(クリックすると拡大します)
※こちらの記事は2021年3月時点の情報です。最新の情報をご確認ください。
>>意外と多くの人が当てはまる!? 高額医療・高額介護合算療養費制度
③保険料の減免
災害で一定の被害を受けた、失業等で所得が減少した、低所得で生活が困難などの場合、介護保険料の減免を受けられる場合があります。
④介護保険施設の食費・住居費の軽減
低所得の方でも施設の利用が困難にならないように、所得に応じた自己負担額の上限があります。超えた分は申請により「特定入所者介護サービス費(補足給付)」として介護保険から給付されます。負担の軽減を受けるには、介護保険課に申請して「介護保険負担限度額認定証」の交付を受け事業者に提示することが必要です。
対象となるのは、介護老人保健施設(特別養護老人ホーム)、介護老人保健施設、介護老人医療施設、ショートステイ(短期生活入所介護)で、デイサービス(通所介護)は対象外です。
世帯分離した配偶者の所得が住民税課税の場合は対象となりません。また、本人の預貯金が一定額以上(※)ある場合も対象外です。負債は相殺します。
(※)一人暮らし1,000万円以上、夫婦世帯2,000万円以上
税金を少なくする仕組みとして、以下のような所得控除があります。所得税や住民税は、所得に対してかかります。所得控除は所得を少なく計算する制度で、この分、所得税や住民税が少なくなるわけです。これも介護負担の助けになるのではないかと考えます。
①医療費控除
医療費控除は、一定額以上の医療費を払った場合に、その金額に応じて、所得を少なく計算する制度です。ただ、医療費だけでなく、介護に関する費用も一部対象になっています。対象になるものをご紹介します。
医療費控除額(最高200万円)=実際に支払った医療費-保険金など補填額-上限10万円(所得金額の5%)
※医療費控除を受けるには、税務署への確定申告が必要です。
・居宅サービス(予防給付は除く):訪問看護などの医療系サービスの自己負担分
※訪問介護(生活援助中心型を除く)は、上記のサービスと併用するときに対象となります。
・特別養護老人ホーム:施設サービスの対価(介護費、食費及び居住費)として支払った額の2分の1に相当する額。
・介護老人保健施設と介護療養型医療施設:施設サービスの対価(介護費、食費及び居住費)として支払った額。
・その他
・紙おむつ代(医師が発行する「紙おむつ使用証明書」が必要です。
・病院に通うタクシー代(公共の交通機関の利用が困難など)
②扶養控除
「生計が一」の親(所得38万円以下)は、扶養に入れることができます。そうすることで、所得を少なく計算し、所得税と住民税の減額につながります。
例えば、親が70歳以上の場合、同居は58万円、別居は48万円が所得税の扶養控除です。住民税については、同居45万円、別居38万円となります。
③社会保険料控除
社会保険料控除は、その年に払った社会保険料の金額が対象です。「生計が一」の親の介護保険料を負担すれば「社会保険料控除」が増えます。
④障害者控除
身体障碍者手帳や精神障害者保健福祉手帳等の交付を受けられない人でも、要支援・要介護認定を受けている65歳以上の方で、「身体の障害または認知症の状態が障害者に準ずると市長などが認定した方」は、障害者控除の対象です。申告することで障害者控除を受けることが出来る「障害者控除対象者認定書」が交付されます。控除額は27万円(特別障害者40万円、同居の特別障害者75万円)となっています。
仕事を辞める理由の大きなものに、「家族の介護」があります。親や配偶者に介護が必要になると、仕事との両立は並大抵のことではありません。以下にご紹介する制度を活用して、少しでも負担を減らしてください。
①介護休業・介護休暇
家族を介護するために、労働者が取得することができる休業制度です。介護状態(負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態)であれば、要介護認定を受けていなくても構いません。急に介護が必要になった場合など、この制度を利用して介護の体制を整えるとよいでしょう。
家族が要介護状態になるごとに1回、93日までの休暇を3回を上限に分割取得することができます。
短時間勤務などの「所定労働時間の短縮措置」は介護休業とは別に、利用開始から3年の間であれば、2回以上の利用が可能です。また、介護の必要がなくなるまで会社に残業免除が請求できます。さらに、年5日の介護休暇は、時間単位で取得できます。介護休業の対象家族は、配偶者、子、配偶者の父母のほか、同居・扶養していない祖父母、兄弟姉妹及び孫も対象です。
②介護休業給付金
介護休業は、原則として賃金は支払われません。そのため、雇用保険制度から、介護休業給付金が支給されます。支給額は賃金月額の67%です。休業期間中も一部賃金が支払われる場合は、その割合に応じて給付額も異なります。休業前2年の間に、賃金の対象となる日が11日以上の月が12カ月以上ある人が対象になります。
なお、この給付は非課税です。
このほかに、民間の支援制度で「飛行機の介護割引」があります。
飛行機の介護割引
飛行機の介護割引、介護帰省割引は、離れて暮らす介護認定を受けている親族のもとに介護のために飛行機を利用する時に適用される割引の制度です。現在、国内の航空会社4社(日本航空、全日空、他)で導入されています。それぞれの会社で内容は異なりますが、このような割引制度を利用して、遠方の親族の介護に伴う介護費用を抑えるのもよいでしょう。
執筆者
坂本 英子
ファイナンシャルプランナー(AFP)、千葉県社会福祉協議会生活支援員、介護職員初任者、視覚障害者移動介護従事者、民生委員。民間の会社を退職後、在職中に取得したファイナンシャプランナーとして活動している。現場経験が何より必要と考え、介護の職場経験を積んでいる。今までの人生経験・体験、子育て(女3人)を生かして、介護とお金の知識の普及に努めている。
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