認知症の父が入浴を拒否します。認知症でも入浴してもらう方法はありますか?

介助で入浴を楽しむシニアのイラスト

質問

質問者要介護2で認知症の父が入浴を拒否してしまいます。デイサービスに週に2回通っていますが、そちらでも拒否しているとのこと。

デイサービス自体を嫌がっているので、無理に入浴させずに、何とか自宅でお風呂に入ってもらいたいなと思っています。 何か良い対応方法があれば教えてください。

 

専門家入浴は毎日する必要はありませんが、衛生面を考えると週に2回程度は入ってもらいたいものです。入浴には身体を清潔に保つだけではなく、血行を促進したり、褥瘡(じょくそう、床ずれのこと)を予防したり、関節の痛みを和らげたり、リラックスしたりといった効果があります。

そんなメリットのある入浴ですが、認知症の方が拒否してしまうことは、珍しくはありません。しかし、無理にお風呂に入れようとするのは、余計に拒否が強くなってしまうことがあるのでNGです。

この記事では、認知症の方が入浴を拒否してしまう理由や入ってもらうための対応方法について紹介しています。ぜひ、現在や今後の生活の参考にしてください。

認知症の方が入浴を拒否してしまう理由

認知症家族にこまる介護者のイメージ

入浴拒否の対策を考えるには、なぜ入りたくないのか理由を知ることが大切です。認知症の方が入浴を拒否してしまう理由をいくつかみていきましょう。

お風呂に入る理由がわからない

認知症による記憶力や判断力の低下などが原因で、 入浴する理由が理解できなくなっているのかもしれません。また、毎日入っていると自分では思っていること、お風呂や入浴といった言葉自体が理解できないこともあります。

入浴しなくてはいけない理由や入浴が何かを理解できていないのに、服を脱がされて浴室に連れていかれるのは、不安になってしまうものです。

お風呂の入り方がわからない

入浴の意味は分かっていても、身体の洗い方を忘れてしまったり、入浴の手順を忘れてしまったりすることで、入浴が不安になっているのかもしれません。

浴室の環境が不快など

入浴後に体が乾燥してかゆくなったり、浴室が寒くて嫌だったり、段差や滑ることが怖かったりするために、入浴を嫌がってしまうことがあります。

裸を見られたくない

ヘルパーや家族が服を着ているのに、自分だけ裸になって見られるのが恥ずかしいのかもしれません。

面倒くさい

見たいテレビがあったり、元々入浴が嫌いだったりといった理由で、入浴を面倒くさがっていることもあります。

認知症の方にお風呂に入ってもらうための対応方法

入浴介助のスタッフのイメージ

では、認知症の方にお風呂に入ってもらうための対応方法をいくつか見ていきましょう。

声掛けを工夫する

入浴が気持ち良いものだと思い出してもらうことで、入ってもらえることがあります。そのために、「一番風呂だよ」、「柚子湯にしよう」、「お風呂上がりの牛乳はおいしいよね」、「汗をかいたからさっぱりしよう」などと声をかけてみましょう。きれい好きな方やお洒落だった方に対しては、「明日は出かけるので身だしなみを整えましょう」、「孫が遊びに来るから、きれいにしましょう」などもおすすめです。

お風呂や入浴という言葉がわからない方には、タオルや石鹸、お湯の張られた浴槽を見せると理解してくれることがあります。

入浴の手順を忘れてしまって不安な方には、「一緒に入ろうか」、「手伝うから大丈夫だよ」と声をかけてみましょう。

なんとなく面倒くさいという方は、機嫌の良い時に声をかけてみましょう。

NGな声掛け

「お風呂に入ってないから汚いよ」、「〇日も入ってないじゃん」、「入らないとダメ」といった、反発を呼ぶような言い方は避けましょう。余計に拒否が強くなってしまうことがあります。

服を脱いでもらう対策

服を脱ぐのを嫌がる方は、ボタンではなくてマジックテープのシャツにしたり、脱ぎ着しやすいズボンにしたりして、人の手ではなくできるだけ自分で服が脱げるようにするようにすると良いでしょう。 自分だけ裸なのは嫌だという方は、一緒にお風呂に入るように声をかけたり、銭湯で入浴してもらったりしても良いかもしれません。 どうしても嫌がる場合には、下着姿で入ってもらうようにしても良いでしょう。

足浴や清拭だけなどできるところまで

どうしても入浴を嫌がる場合には、足浴や清拭をして最低限の清潔を保つようにしましょう。また、足浴や清拭で気持ち良いと感じることで、入浴したくなることがあります。

浴室の環境を整える

段差があるから怖い、転びそうで嫌だなどの理由で入浴拒否を起こしている場合には、福祉用具で段差を解消したり、滑り止めマットを利用したり、住宅改修で手すりを設置したりして、安心してお風呂に入れる環境を整えましょう。

また、寒くていやだという場合には、浴室暖房をつけたり、入浴前にシャワーを出して浴室の温度を上げておいたりして対策するのがおすすめです。

安全に入浴するために

入浴介助のイラスト

最後に、安全に入浴してもらうためのポイントを確認しておきましょう。安全に入浴してもらうことで、「お風呂は快適」、「怖くない」と感じてもらうことにつながります。

入浴前の準備

安全で快適に入浴するためには、事前の準備が大切です。滑り止めマットを敷く、浴室を暖めるなどの環境を整えておきましょう。お風呂に入ってから足りないものに気が付くことがないように、シャンプーや石鹸を確認し、タオルや着替えを用意しておきましょう。

体温や血圧などを測り、体調を確認してください。あらかじめ医師に、「血圧200以上なら清拭で」などの目安を確認しておくと安心です。

リラックスしてゆっくりお風呂に入ってもらうように、入浴前にトイレと水分補給を済ませておきましょう。

入浴後にはケアを

入浴後に乾燥して痒くなることで、入浴を拒否してしまうことがあります。入浴後にはしっかり保湿をしましょう。また、入浴後にもしっかり水分補給をすることも大切です。

入浴拒否は理由を探り、対策しましょう

認知症の方が入浴を嫌がるのは珍しいことではありませんが、理由は様々です。お風呂や入浴と聞いて理解できないそぶりはないか、お風呂に入る時に不安そうな様子はないか、入浴後に痒がっていないか…など、行動を見て拒否の理由を探るようにしましょう。

入浴を嫌がる相手を無理やり説得したり、無理に服を脱がせたりすると、余計に反発したり拒否が強くなってしまうことも。認知症の方は最近の出来事を忘れても、嫌なことをされたという感情は残っているものです。あまりにも嫌がるようであれば、別の日にする、足浴だけにする、別の人が声をかけるなど、押すだけではなく引くことも大切です。

入浴を拒否していた方でも、入浴は「気持ち良い」、「怖くない」と感じてもらうことで、その後の拒否が無くなることも珍しくはありません。

 

※この記事は2022年3月時点の情報で作成しています。

ケアマネジャー:森裕司(株式会社HOPE)
ケアマネジャー  森 裕司(もり ゆうじ)

【経歴】 1982年生まれ。
医療福祉系学校を卒業後、約11年医療ソーシャルワーカーとして医療機関に勤務。
その後、一生を通じた支援をしたいと思い、介護支援専門員(ケアマネジャー)へ転身。
2017年1月 株式会社HOPE 設立
2017年3月 ほーぷ相談支援センター川越 開設
代表取締役と共に、介護支援専門員(ケアマネジャー)として、埼玉県川越市で高齢者の相談支援を行っている。
他に、医療機関で、退院支援に関するアドバイザーと職員の指導・教育にあたっている。
医療・介護に関する新規事業・コンテンツ開発のミーティングパートナーとしても活動。大学院卒(経営研究科)MBA取得している。

ホームページはこちら