入浴補助具は介護保険でレンタルできますか?種類や使い方も教えてください。

入浴補助のイメージ

質問

質問者

要介護認定を受けた母親と暮らしています。

まだ家族だけで入浴させられますが、転ぶなどの危険性があるため目が離せなくなってきました。また今後のことを考えると、お風呂場で使える安定したいすなども必要になるかと思います。入浴補助用具というものがあるのは知っていますが、どのような種類があり、また用途やどんな人に必要なのかがよくわかりません。そうしたものはレンタルですか?介護保険は使えるのでしょうか。お風呂周りの用具について何を選べば良いのか教えてください。

 

専門家お風呂は、床が滑りやすいため心配ですよね。身体が不自由な方の場合、思いがけない事故につながる可能性があります。入浴補助用具についてご説明しましょう。入浴補助用具は安全に入浴するために、座位の安定や浴槽の出入りのサポートをするための補助用具です。入浴補助用具にはさまざまな種類があります。主なものとしては、入浴用いす、浴槽内いす、浴槽用手すり、浴室内すのこ、浴槽内すのこ、入浴台、入浴用介助ベルトなどがあげられます。ご利用者様の身体状態によってどれを選択するか変わるため、導入を検討する際にはケアマネジャーさんに相談して頂くことをおすすめします。入浴補助用具は、介護保険の購入対象となりますので、要介護度により1割負担の方、3割負担の方で値段が変わります。

入浴補助用具とは

入浴補助用具とは

入浴は心身の状態を良好に保つために欠かせない習慣ですが、高齢者や身体が不自由な人の場合には危険がともなうこともあります。入浴を安全にサポートする、入浴補助用具について見ていきましょう。

入浴補助用具の定義

入浴補助用具とは福祉用品の種類のひとつで、身体の不自由な人や筋力の低下した高齢者の入浴をサポートする器具類を指します。

具体的には入浴時に浴槽の中での座り姿勢の保持や、浴槽へ出入りする際の補助をします。

入浴補助用具には、主に「いす」「手すり」「すのこ」「台」といった4つのタイプがあります。

タイプ別入浴補助用具の紹介

「入浴用いす」は身体を洗う際、利用者が腰かけるために使います。高齢者は、通常の浴室用いすでは低すぎてうまく座れません。また背もたれがないため後ろへひっくり返る危険性があり、立ち座り時には足腰への負担が大きくなります。入浴補助用具のいすは、座りやすい高さに配慮され、背もたれやひじ置き、キャスターなどが付いています。

「浴槽用手すり」は浴槽のふちに固定し、出入りの際に身体を支えるためのものです。浴槽をまたぐときに片足の状態となっても安定感が得られ、介助者への体重のかかりも軽減されます。

「浴槽内すのこ」は浴槽が深すぎる場合に、調整に使います。また浴槽内の、滑り止めとしての働きもあります。同様の使い方をするものとして「浴槽内いす」がありますが、こちらは立ち上がりを容易にするために用いられます。「浴室内すのこ」は、脱衣所と浴室の段差を解消または少なくするための用具です。高齢者はわずかな段差でも足を取られがちになるため、特に滑りやすく危険度の高い浴室では注意しなければなりません。

「入浴台」は浴槽にまたいで入れない人のために、一度腰かけて移動ができるようにするものです。ボードに付いた足を浴室側に立てて、反対側を浴槽のふちに固定して使うものが一般的です。

入浴する状態で選択

さまざまな種類のある入浴補助用具ですが、選ぶ際には利用者の状況と介護状態を考慮します。ひとりで入浴ができる場合と、介助が必要な場合では選ぶ用具も異なります。足を上げて浴槽に入れるか、手すりにつかまれば大丈夫なのかなど、入浴時の動作をどの程度できるのかによって、必要となる用具を選択していきます。

浴室の深さを調節するものや、いすの高さについては、利用者の体格によっても適切なサイズが変わります。それぞれの使用目的と利用者の状態をよく確認しながら、過不足なく選ぶことが大切です。

入浴補助用具を使うメリット

入浴用いす

入浴補助用具を導入するメリットについて確認していきます。

入浴時の動作が楽

手すりや台、すのこによって浴槽への出入りの際の、足の上げ下ろし動作が軽減されます。関節の可動域がせまくなる高齢者にとっては、わずかな動きにも苦痛を感じることがあります。また足を上げる際に安定感が失われ、恐怖を覚えている人も少なくありません。

入浴補助用具を使うことで、入浴時の動作を楽にするとともに、スムーズに入れることで精神的にも好影響を与えます。

事故防止

入浴時に何よりも避けたいのが、転倒・水没などの事故です。介助する場合でも、滑りやすい床や高すぎる浴槽などでは危険がともないます。

介助者まで一緒に滑ってしまったり、無理な介助姿勢になったりするのを回避するためにも、入浴補助用具の適切な導入は有効です。

浴槽内すのこや浴槽内いすを使えば、浴槽での水没防止となり、わずかに目を離したすきにおぼれるといった事故を防ぐことができます。

介助者の負担減

浴室内での介助は蒸し暑さの中でしなければならず、介助者にとっては重労働です。身体がむき出しの状態で、要介護者が転べば大きな事故につながるため、一時も気が抜けません。

入浴補助用具の使用で、手すりや高さの調節ができるようになり、体重移動の際の支えが楽になります。安全性が少しでも確保できれば、介助の負担も軽減されます。

背もたれのないいすでは落下や後ろに倒れることのないよう、気を付けながら洗わなければなりません。介護に特化した「入浴用いす」であれば、姿勢が保持できて介助者もゆっくりと洗えるようになります。

生活の中での自由が少ない利用者にとって、入浴は大きな喜びです。安心して入浴が楽しめるようにするためにも、入浴補助用具の導入が役立ちます。

入浴補助用具と介護保険

介護保険のイメージ

「入浴補助用具があれば、もっと楽にお風呂に入れられるかもしれない」そう考えても、自己負担がどのくらいになるのか気になります。入浴補助用具と介護保険について確認していきましょう。

入浴補助用具は「特定福祉用具」

入浴補助用具は「特定福祉用具」として扱われているため、レンタルではなく購入のみとなります。利用限度は1年間で10万円(税込)までと定められており、自己負担は原則1割(一定の所得がある方は、所得に応じて2割または3割負担)となります。

基本的には同一用途の用具は認められず、どちらかしか保険の適用とはなりません。ただし「いす」や「すのこ」などは、浴槽内外のものがいずれも適用できます。

また同じような用具であっても、用途や機能が違うと認められた場合、破損した場合、介護の状態が進むなどした場合は、再度の購入ができる可能性もあります。

入浴補助用具の価格

入浴補助用具の価格例をご紹介しておきましょう。

「入浴用いす」は、5,000円~15,000円程度のものが多く見られます。1割負担であれば、500円~1,500円の自己負担額となります。「浴槽用手すり」は5,000円前後、「浴槽内いす」「浴槽内すのこ」も同程度の価格が多く見られます。

「入浴台」は「バスボード」という名称で販売されているものが多く、価格は機能にもよりますが2万円~3万円台とやや高めの傾向です。

それでも1割負担ならば2,000円~3,000円程度であるため、年額10万円の上限であれば必要物品がかなりそろえられると考えて良いでしょう。

利用の流れ

「特定福祉用具」の場合には、利用者が一時的に全額負担をしなければなりません。そのため利用の流れとしては、指定業者から先に購入することになります。

その後、介護保険の申請を行い、認定されると9割が給付されます。ただし、一定以上所得者の場合は、所得に応じて8割または7割です。介護保険の適用については、この給付のことを償還と呼びます。

入浴補助用具の選び方

入浴介助の光景

各種入浴補助用具を導入する際の、選び方についてのポイントを見ていきます。

いすの選び方

「入浴用いす」「浴槽内いす」を選ぶときには、利用者の体格と身体の状態に合わせた選択をしていきます。背もたれなどが低すぎると、十分に身体の保持ができず、滑り落ちる危険性があります。程度に合わせて、ひじ置きが付いたタイプを選ぶようにすると安心です。

「入浴用いす」にもいろいろなタイプがありますが、安定性が良いからと大きいものを選ぶと、浴室のサイズに合わず介助者が動きにくくなることもあります。

導入する際には、浴室の広さや形状に考慮しながら購入を検討しましょう。

入浴用手すりの選び方

「入浴用手すり」はつかんだときに外れたりずれたりしないよう、しっかりと固定する必要があります。浴槽の材質やふちの厚さによっては、取り付けられない、また浴槽を傷めてしまうということも考えられます。

購入前には取り付け可能であるか、浴室のサイズや材質との適合を確認しておきましょう。

入浴台の選び方

「入浴台」は回転式など、より浴槽への移動が簡単にできるタイプもあります。利用者が一度腰かけてから使うことを考慮し、体格や状態に合わせて無理なく座れる高さになるかを確認します。

浴室側に支柱を立てるタイプの場合には、体重がかかってもぐらつきがないように安定性を十分に確認する必要があります。

入浴補助用具は、利用者が快適・安全に入浴するためのサポート用具ですが、選び方や使い方を間違えると事故発生の原因となることも忘れてはなりません。

入浴補助用具で入浴を楽しめる環境に

日本人は伝統的にお風呂を楽しむ民族です。身体の自由が利かなくなっても、温かいお風呂に入りたいと願うのも当然と言えるでしょう。

しかし介助者にとって浴室は危険も多く、なかなか大変な作業に感じられます。またひとりで入浴できる利用者についても、無事に入れるのかが心配です。利用者の状態に合わせ、入浴補助用具を適切に導入することで危険防止策となり、双方の負担も少なくなります。

介護保険の対象とするためには、ケアマネジャーのケアプランが必要です。日頃から入浴時の状態をよく観察しながら、導入についての相談をしてみると良いでしょう。

※この記事は2019年10月時点の情報で作成しています。

 

監修者:山岸駿介
監修者:山岸駿介

理学療法士。臨床経験は7年。
急性期から慢性期、スポーツ分野など幅広い分野を経験。医療・介護・スポーツなど幅広い分野のリハビリに携わり、老若男女に正しい運動で、健康的な生活を送るサポートしている。