通院は高齢者の健康維持や病気の治療に欠かせません。しかし、時間がかかってしまうため家族が毎回付き添うのは難しいものです。本記事では、通院介助で使える介護保険サービスについてや自費サービスについて解説しています。通院介助でお悩みの方は、ぜひご確認ください。
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- 通院介助とは?知っておきたい基本ポイント
- 介護保険が適用される通院介助サービスの内容
- こんなときには介護保険外の通院介助サービスを
- 通院介助でかかる料金
- 通院介助の利用方法
- 時間のかかる通院介助を介護のプロに任せてみては
通院介助とは?知っておきたい基本ポイント
まずは、通院介助の基本ポイントを確認していきましょう。
時間の掛かる通院を訪問介護員(ホームヘルパー)に依頼できるサービス
高齢者の健康を守るためにも病院の受診は欠かせません。しかし、予約を取っていても検査通院や大きい病院での受診には時間がかかってしまうことがあります。定期通院でも、家族が決まった時間や曜日に付き添うのは簡単なことではありません。
そんな時に頼りになるのが、訪問介護員(ホームヘルパー)による通院介助サービスです。通院前の自宅の準備から病院までの移動、受診手続き、病院から自宅までの移動を、介護の専門資格を持つ訪問介護員(ホームヘルパー)にお願いできるサービスです。
内容によっては介護保険が適用されないことがあるので注意が必要です。
介護保険が適用される通院介助サービスの内容
介護保険が適用される詳しい内容を見ていきましょう。
介護保険が適用される通院介助
通院介助で介護保険が適用される範囲は、自宅から病院の往復にかかる以下のサービスです。ケアマネジャーが必要だと認め、ケアプランに追加した場合に介護保険が適用されます。
自宅
- 更衣介助などの外出準備
- お財布や診察券などの確認
移動(往復)
- 徒歩(車いす)、公共交通機関、タクシーを利用した移動の介助
- 移動中の体調確認
- 乗車、降車の介助
病院内
- 診察券の提出などの受診手続き
- 診療科までの移動介助
- 診療科からの移動介助、料金の支払いや薬の受け取りの同行
介護タクシー
- 訪問介護員(ホームヘルパー)が運転するタクシーを利用し、上記のサービスを受ける
病院の中での移動、待ち時間や診察室内への付き添いは、病院のスタッフがすることなので原則として訪問介護員(ホームヘルパー)にお願いできません。
待ち時間中の付き添いに介護保険に適用される例
病院内での付き添いには、原則として介護保険が適用されません。しかし、院内での待ち時間に付き添いが必要な状態だとケアマネジャーが判断し、病院側による対応が難しい場合には、病院内であっても訪問介護員(ホームヘルパー)に付き添いをお願いできます。
例えば、家族や顔見知りの訪問介護員(ホームヘルパー)がいないと不安になってしまう場合、認知症などで常に見守りが必要なのに病院側の人員では対応できない場合、受診する科が複数にまたがる場合、待ち時間に排泄介助などの身体介護が必要な場合などに病院内の付き添いが認められます。
通院介助が適用される対象者
通院介助は介護保険の訪問介護にあたるサービスです。利用できるのは、要介護1~5の認定を受け、ケアマネジャーが通院に介助が必要だと認めた方です。 自立の方、要支援1,2の方は原則として利用できません。
こんなときには介護保険外の通院介助サービスを
それでは介護保険が適用されない通院介助のサービス内容を見ていきましょう。
介護保険外の通院介助や付き添いが必要な場合
介護保険を利用した通院介助では、原則として病院内の待ち時間や診察室内での介助は対応できません。
病院内の待ち時間については、前述の例のように介護保険の適用が認められることがあります。しかし、診察室まで訪問介護員(ホームヘルパー)が同席し、最近の状況を医師に伝えたり、診察の結果をメモに取ったりすることはできません。
認知症などにより現在の状況がしっかり伝えられなかったり、耳が遠いなどの理由でコミュニケーションが難しかったりすると、利用者本人だけでしかるべき診察を受けるのは難しいことがあります。そんな場合には、自費で訪問介護員(ホームヘルパー)の同席をお願いすることも可能です。
自宅以外で待ち合わせる場合
通院介助は、介護保険の訪問介護にあたるサービスです。通院は利用者の健康維持や病気の治療には欠かせませんが、自宅→病院→自宅のみが介護保険の対象に認められます。自宅ではなく親戚の家などの別の場所を発着にしたい場合には、介護保険は適用されません。
銀行やお店の経由も対象外となるので注意が必要です。ただし、必要が認められてケアプランに組み込まれれば、介護保険が適用されることもあります。
自費サービスについて
介護保険の限度額まで他のサービスを利用しているので通院介助を追加できない場合、ケアマネジャーは必要だと感じていないが念のため通院介助をお願いしたい場合、自立や要支援1、2の方の場合には、自費サービスで通院介助を利用します。
人出が足りずに通院介助は自費でしか受けていなかったり、時間の掛かる大規模病院や遠方への通院介助を受けられなかったりする事業所もあります。
顔なじみのヘルパーさんがいる事業所に、徒歩(車いす)や公共交通機関を利用しての通院介助をお願いすることが可能です。ただし、自費サービスの場合には事業所によっては提供できないことがあります。詳しくはケアマネジャーにご確認ください。
通院介助でかかる料金
通院介助でかかる費用を見ていきましょう。
介護保険が適用される料金
介護保険が適用される通院介助には2種類あります。
徒歩(車いす)、公共交通機関を利用した場合
これは訪問介護の中の身体介護にあたるサービスです。1回ごとの利用料金は以下の通りです。
身体介護 | 20分未満 | 167円 |
20分以上30分未満 | 250円 | |
30分以上1時間未満 | 396円 | |
1時間以上 | 579円に30分増すごとに+84円 |
介護タクシーを利用した場合
介護タクシーを利用した場合には「通院等乗降介助」が適用され、1回当たり99円となります。
※自己負担割合が1割の方の金額です。一定の所得がある場合は、所得に応じて2割または3割負担となります。
※上記は基本的な利用料(「介護報酬の算定構造」令和3年4月改定版)です。時間帯(早朝・深夜)やサービス内容、サービス提供事業所の所在地などによって金額は異なります。詳しくは担当のケアマネジャー、もしくは市区町村の高齢者窓口や地域包括支援センターにお問い合わせ下さい。
介護保険外の料金
介護保険以外の自費サービスを利用するケースには、介護保険サービス+自費サービスまたは、全て自費サービスの2つがあります。
いずれにせよ、金額は事業所によって異なります。目安としては30分あたり500円~1000円程度です。病院の待ち時間が長い場合などには金額が大きくなってしまうことがあります。
また、本人+訪問介護員(ホームヘルパー)の公共交通機関の交通費が実費で請求されます。
介護タクシーを利用した場合には、運賃+介助料+介護器具レンタル費用が掛かります。料金の目安は、運賃が30分500円~1000円、介助料が200円から600円(介護保険適用の場合)です。お得なパック料金を設定している事業所もあります。ストレッチャーやリクライニングの車いすをレンタル費用した場合には、数千円かかることがあります。
通院介助の利用方法
最後に、通院介助を利用する基本手順を確認しておきましょう。
通院介助の利用の流れ
要介護1~5の認定を受けている場合、利用手順は以下のようになります。
1.担当のケアマネジャーに相談する
ケアマネジャーにサービス提供事業者を探してもらいましょう。介護保険を利用しない場合でも、ケアマネジャーを通した方が情報共有をしやすくなります
2.ケアマネジャーがケアプランに組み込む
3.ケアマネジャーがサービス提供事業者に依頼
ケアプランに組み込まれなかった場合(介護保険が適用されない場合)でも同様です
4.契約を交わして指定日時よりサービス開始
※上記は基本的な流れです。サービス提供事業所やケアマネジャー、利用者の状況によって異なります。
時間のかかる通院介助を介護のプロに任せてみては
通院介助は、介護の専門家である訪問介護員(ホームヘルパー)に自宅から病院の往復の介助をお願いできるサービスです。介護保険が適用される範囲が限られており、なかなかわかりにくいところが多いかもしれません。通常であれば介護保険が適用されない待ち時間や診察室での付き添いも、自費サービスでお願いすることができます。仕事や育児のため、通院の付き添いが難しい方はぜひ利用を検討してみてはいかがでしょうか。

訪問介護事業所職員、福祉用具専門相談員。2015年から安心介護に関わっており、お話を伺った介護家族や介護職員の影響で介護職員初任者研修を取得し、訪問介護の仕事をスタートしました。2022年には介護福祉士、認知症ケア専門士の資格を取得し、自宅で介護をされる人・介護をする人、どちらも大切にしながら訪問介護の仕事を続けています。