「食べやすさ」や「栄養」など、いろいろと気を配らなくてはいけない高齢者の食事。特に栄養は要介護や認知症の予防に、深くつながる大切な要素です。
それでは高齢者の健康を維持するためには、どんな栄養に気を付けたらいいのでしょうか。
高齢者の虚弱化対策に「食と栄養」の観点から取り組んでいる、アクティブシニア「食と栄養」研究会が8月31日に公開した調査結果から、プロが考える高齢者の健康維持に必要な栄養素について紹介したいと思います。
同調査では、管理栄養士、栄養士、医師、薬剤師、看護師、介護士などの食と栄養のプロ118名を対象にアンケートを行っています。
健康維持に不足しているのは「タンパク質」(86.4%)
高齢者の健康維持に不足していると思う栄養素や機能性成分について聞いたところ、86.4%もの回答者が「タンパク質」を上げました。
「ビタミン」(55.1%)、「ミネラル」(55.1%)、「食物繊維」(42.4%)が続いています。
アクティブシニア「食と栄養」研究会
高齢者にタンパク質が必要な理由
エネルギーとしても使われるタンパク質ですが、肉や魚などのタンパク質を元に作られる物質に「アルブミン」があります。
▼アルブミンが減ると起こること ・筋肉の減少 ・血管がもろくなり、脳卒中の原因に ・免疫機能低下
アルブミンを作る力は年齢とともに弱まる傾向があるため、若い時よりも積極的に肉や魚を食べる必要があるのです。
《タンパク質が多く含まれる食品》 豚のヒレ肉などの肉、魚、卵、牛乳、大豆など
高齢者にビタミンが必要な理由
食べる量が減ったり、栄養を吸収する力が衰えたりすると不足しがちになるのがビタミンです。
ビタミンには水に溶けやすい「水溶性ビタミン」(ビタミンB群及びビタミンCなど)と、油に溶けやすい脂溶性ビタミン(ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK)があります。
高齢者のビタミン不足でよく取り上げられるのは「ビタミンD」です。
カルシウムの調節や筋肉の生成に関わるため、骨を丈夫にして筋力を向上させる働きがあります。また、神経伝達物質のひとつとして考えられており、アルツハイマー病やパーキンソン病、うつ病に関わっている可能性もあるそうです。
《ビタミンDが多く含まれる食品》 乾燥きくらげ、いわし・にしん・鮭などの魚、乳製品など
高齢者にミネラルが必要な理由
ミネラルは体の中で作られないため、食事やサプリメントなどで意識して摂取する必要があります。
高齢者が不足しやすいミネラルには、骨粗しょう症を予防する「カルシウム」、貧血を防ぐ「鉄分」、細胞の生まれ変わりを促し、味を感じやすくし、免疫力の低下を防ぐ「亜鉛」などです。
《カルシウムを多く含む食品》 牛乳や乳製品、桜えびやしらす干しなどの小魚、大豆製品、緑黄色野菜など
《鉄分を多く含む食品》 海藻類、かきやあさりなどの貝類、レバー、緑黄色野菜など
《亜鉛を多く含む食品》 かき(貝)などの魚介類、牛肉などの肉類、米などの穀類
一方で「ナトリウム」については、高血圧や脳卒中などの生活習慣病の原因になるので摂りすぎに注意をしたいところです。
《ナトリウムを多く含む食品》 塩、しょうゆなど
高齢者に食物繊維が必要な理由
高齢者は噛む力の低下とともに、食物繊維を多く含む食べ物の摂取が難しくなります。
便秘を改善し腸内環境を整える食物繊維は、心筋梗塞、肥満、 糖尿病などの生活習慣病の予防にも役立つ栄養素です。
《食物繊維を多く含む食品》 いんげんや小豆などの豆類、ごぼう、緑黄色野菜など
必要な栄養素を摂取するための工夫
必要でありながらも不足しがちな栄養素については、サプリメントで補うといいでしょう。
また、アンケートにて「必要な栄養素を摂取するために、どのような工夫が必要か」を上位3つまで聞いたところ、半数以上の方が「摂取しやすくなるように調理を工夫する」とともに、「家族や仲間と一緒に食べる機会を多く作る」と上げています。
アクティブシニア「食と栄養」研究会
仕事と介護の両立をしている人は、配食サービスを利用しながら、無理なく栄養管理ができるといいですね。