介護保険料の滞納による差し押さえ処分、初の高齢者1万人超

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介護保険料を滞納してしまい、市区町村から資産の差し押さえ処分を受ける65歳以上の高齢者が、2014年度に初めて1万人を超えました。

実際に財産を処分されたのは6305人

厚生労働省が1741市区町村を対象に調査したところ、滞納をして預貯金や生命保険などの差し押さえ処分を受けた高齢者がいるのは、517市区町村の1万118人でした。預貯金などの十分な資産がない人も多く、実際に財産を処分されたのは6305人にとどまりました。

同様の調査は2012年度から開始されていますが、2014年度が最も多く、初めて1万人を超える結果となりました。

差し押さえ処分を受けた高齢者の数

2012年度:9670人 2013年度:7900人 2014年度:1万118人

低年金者に集中

介護保険制度が始まった2000年度には、65歳以上の保険料は全国平均2911円でした。3年ごとに改定されており、2014年度は月4972円、2015年度からは月5514円と、上昇を続けています。

この65歳以上の介護保険料は年金が年額18万円以上なら天引きされていますが、それ以下であれば自治体に直接収めます。差し押さえ処分は、直接納付している低年金者に集中しているとみられているそうです。

差し押さえ処分を受けるタイミング

差し押さえ処分を受けるタイミングは、数ヵ月の場合もあれば数年の場合もあり、自治体によって様々でした。

介護サービス利用の有無にかかわらず、差し押さえは実行されます。

保険料を滞納するとどうなるか

65歳以上の高齢者が介護保険料を滞納した場合、下記のような処置が行われます。

納付期限翌日~20日程度

市区町村が督促状を発行します。自治体によってはこの時点で「督促手数料(数10円~100円程度)」や「延滞金」がかかります。

納付期限から1年以上滞納した場合

介護保険サービスを利用した場合に、通常1割で済む負担分を、いったん全額事業者に支払う必要があります。その後、自治体に申請をして、介護保険給付分にあたる9割分の払い戻しを受けます。

納付期限から1年6カ月以上滞納した場合

さらに滞納を続けると、申請をしても9割分の払い戻しが受けられなくなります。それでも滞納分を納付しない場合には、介護保険給付額を滞納している介護保険料に充てることがあります。

納付期限から2年以上滞納した場合

介護保険料は2年以上経過すると時効になり、未納が確定します。未納が確定した分があった場合にはどうなるのでしょうか。

実際に要介護認定を受けて介護保険サービスを利用する際に、過去10年間に時効が成立していた介護保険料があると、滞納していた期間に応じて一定期間、通常1割で済む自己負担分が、3割に引き上げられます。また、この期間は高額介護サービス費の払い戻しを受けられません。

滞納当時に介護保険サービスを使っていなければ、滞納しても不便を感じることはないかもしれません。ただし、実際に介護保険サービスを受けるようになってから、金銭的負担が大きくなってしまいます。

親に滞納させないために

生活が苦しくて支払えないケースや、認知症などが理由で請求書の支払いなどが滞ってしまうケースなど、滞納する理由は様々です。

災害などの特別な理由で支払えないケースには、各自治体の介護保険窓口に相談をしてみてください。徴収が猶予されることや、介護保険料の一部または全額が免除されることがあります。

生活が常に苦しい場合には、生活保護を申請すると介護保険料の現金が上乗せして支給されますので、そちらを介護保険料の支払いに充てましょう。

認知症などで払い込みがうまくできない場合には、銀行口座からの自動引き落としなど、必要な変更手続きをするとよいでしょう。

(参考) >>(外部サイト)朝日新聞「介護保険料滞納で差し押さえ、高齢者で1万人超す」(5/23)

>>(外部サイト)産経新聞「介護保険料の滞納1万人超え 平成26年度、65歳以上の高齢者」(5/30)

>>(外部サイト)尾道市「介護保険料を滞納し続けると給付の制限を受けます」