義母がアルツハイマー型認知症だと診断されました。症状や進行について、理解しておくべきこと、心得ておくべきことは何ですか? 数年後には徘徊が始まったり、寝たきりになったりしてしまうのでしょうか? 教えてください。

質問

質問者

別居している義母がアルツハイマー型認知症だと診断されました。介護保険サービスを利用しながら、義父と2人での生活を今後も続けていくようです。

アルツハイマー型認知症は今後どのように進行していくのでしょうか? 今のところ、物忘れや時間が分からなくなっているのが目立つ程度で、トイレや食事も自立しています。アルツハイマー型認知症が進行すると、数年後には徘徊が始まったり、寝たきりになったりしてしまうのでしょうか? 教えてください。

 

 

専門家

アルツハイマー型認知症は、認知症の中でも最も罹患者の多い認知症です。2013年の調査では認知症の67.6%がアルツハイマー型認知症であると報告されています。多い認知症だからと言って、家族が不安になる気持ちは変わらないでしょう。

認知症の症状には、必ず現れる中核症状と環境や個人によって出たり出なかったりする行動・心理症状(BPSD)があります。質問にある徘徊は、行動・心理症状(BPSD)に含まれます。この記事では、アルツハイマー型認知症で主にみられる中核症状と行動・心理症状についてまとめました。

また、アルツハイマー型認知症の進行や、家族が心構えとして知っておきたい接するときのポイントについてもご紹介しています。ぜひ、現在や今後の生活にお役立てください。

 

 

アルツハイマー型認知症について知ろう

アルツハイマー認知症について知る

アルツハイマー型認知症の症状や対応方法を知る前に、まずはアルツハイマー型認知症とはどんな病気なのかを説明します。

原因と特徴を知ろう

アルツハイマー型認知症は、脳にアミロイドβやタウ蛋白という特殊なたんぱく質が増えることによって、脳の一部が萎縮して起きる認知症です。このような特殊なたんぱく質がなぜ増えてしまうのかは、まだ完全には解明されていません。

日本の認知症で最も多く、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害によっておきる脳血管性認知症、レビー小体という特殊なたんぱく質が大脳皮質や脳幹に集まって起こるレビー小体型認知症とともに、3大認知症と呼ばれています。

アルツハイマー型認知症の診断

アルツハイマー型認知症かも? と思ったら、まずはかかりつけ医に紹介状などの作成をお願いし、認知症に詳しい医師や病院を紹介してもらいましょう。

もし、かかりつけ医がいない場合には、神経内科や精神科、もの忘れ外来などを受診しましょう。認知症サポート医など、認知症を得意とする医師についての情報は、自治体がまとめているので、地域包括支援センターなどで教えてもらうこともできます。

病院では、本人への問診や家族から日常の様子を聞いて、現在の症状を確認するところから始まります。気になる言動の内容やいつ気付いたのかをメモしておくと良いでしょう。

続いて、一般的な身体検査、テスト形式の神経心理検査、CTやMRIなどの画像検査、脳血流SPECTなどにより、症状がアルツハイマー型認知症なのか、違うものなのかが鑑別されます。

アルツハイマー型認知症の症状

アルツハイマー型認知症のイメージ



アルツハイマー型認知症には、脳の萎縮によって起こる中核症状と、環境や性格によって現れる行動・心理症状(BPSD)があります。主な症状を確認していきましょう。

アルツハイマー型認知症の中核症状

アルツハイマー型認知症の中核症状には次のようなものがあります。

記憶障害

アルツハイマー型認知症の症状として、もっともよく知られているものです。出来事のそのこと自体を忘れてしまいます。「昼ごはんを食べたことは覚えているけれど、昼ごはんの内容は覚えていない」というのは加齢によるもの忘れですが、記憶障害では昼ごはんを食べたこと自体を忘れてしまいます。

最近の出来事から忘れていき、病状が進行するにつれて、過去の体験に関する記憶や学習で得た知識なども忘れていきます。

見当識障害

時間や場所、人間関係が分からなくなる症状です。今は何時ごろか、自分がどこにいるか、一緒にいる人は誰なのか…などが分からなくなります。約束の日時を守らなくなる、季節に合わない服装をする、いつも通っている道が分からなくて迷子になる、家族に対しても「あなたは誰?」と聞いてしまう、といったことが起こります。

失語

言葉を司る脳の部分が障害され、言葉をうまく使えなくなる症状です。言葉が出てこなくなったり、会話が理解できなくなったりします。アルツハイマー型認知症では「喚語困難」といって、言いたい言葉が出てこなくなり、「あれ、それ」が増えるのが特徴です。思うように話すことができないので、口数が減って次第に無口になったり、反対にイライラして怒りっぽくなったりします。また、言葉で会話を理解することが難しくなるため、相手の表情や態度に敏感になります。

実行機能障害

計画を立てて手順通りに目的を達成することができなくなる症状です。仕事や家事など日常的にできていたことができなくなります。例えば、料理が得意だった人が、メニューを決めて必要な食材の買い物ができない、作り慣れた料理が作れなくなる、味付けが変わるといったことが起こります。

アルツハイマー型認知症の行動・心理症状(BPSD)

行動・心理症状(BPSD)は、認知症になったら必ず出る症状ではなく、環境や性格、周囲のかかわり方などによって、出たり出なかったりする症状です。認知症の進行によって、出やすいものがあります。

自分で片づけたのに盗まれたと主張する「もの盗られ妄想」、仕事に行こうとしたり昔住んでいた家に帰ろうとしたりして家を出てそのまま歩き続けてしまう「徘徊」、不安や抑うつなどの感情面の症状、意欲の低下などがあります。

アルツハイマー型認知症の進行

アルツハイマー型認知症の進行について



アルツハイマー型認知症は、いつの間にか始まり、徐々に進行していく病気です。進み方は人それぞれですが、主な進行を見ていきましょう。

アルツハイマー型認知症の進行

アルツハイマー型認知症を7つのステージに整理したFASTでは、進行を次のように表しています。

ステージ1:主観的にも客観的にも認知機能に障害がない状態

ステージ2:通常の加齢によるもの忘れなどの症状が出ている状態

ステージ3:境界となる状態。仕事上の複雑な作業ができない、新しい場所への旅行が難しいなど

ステージ4:軽度。買い物や金銭管理など、日常生活での複雑な作業ができないなど

ステージ5:中等度。状況や季節に合った洋服が選べない、入浴に支障が出るなど

ステージ6:やや重度。着替えができない、入浴を嫌がる、尿や便の失禁など

ステージ7:重度。理解できる言語が極端に限定される、歩行や座位ができなくなる、無表情になる、意識がなくなるなど

アルツハイマー型認知症では、最近の出来事を忘れてしまう記憶障害から始まります。話したことも忘れてしまうため、同じ話や質問を繰り返してしまいがちです。また、実行機能障害も初期のうちから現れ、料理の手順や味付けを間違えてしまいます。

まずIADL(手段的日常生活動作:買い物、食事の準備、家事、服薬管理、金銭管理、交通機関を使った外出など)の低下がみられるようになり、次第にADL(日常生活動作:移動、入浴、食事、更衣、排泄など)も低下していきます。

見当識障害は、時間なら「時間→日付→年」の順に、場所なら「遠くの場所→近所や通いなれた場所→家の中」の順に、人なら「親しくない人→親しい人→家族」の順にわからなくなっていきます。

進行によって出やすい行動・心理症状(BPSD)

初期のうちでは、物盗られ妄想や抑うつなどが出やすくなります。妄想や攻撃性などの症状は、認知機能障害がある程度重度になるとあまり見られなくなります。

徘徊は、軽度のうちはみられませんが、ある程度症状が進むと出てくることがあります。長期間にわたって持続しやすい症状です。

アルツハイマー型認知症の方と接するときの3つのポイント

アルツハイマー型認知症の方との接し方について

アルツハイマー型認知症になっても、感情は変化しません。マイナスの感情が残ってしまうと、行動・心理症状(BPSD)の原因になったり、症状を悪化させてしまったりすることがあります。アルツハイマー型認知症の方と接する際に気を付けたい3つのポイントを紹介します。

柔らかい表情や態度を心がけましょう

アルツハイマー型認知症の方の感じ方は、「映画を途中から見ているよう」と表現されます。何が起こっているのか、どうしてそこのいるのかわからない状態で、理解をしようと周囲を観察しているのです。

言葉の理解が難しくなってきた分、表情や態度から読み取ろうとしています。視界も狭くなっているため、できるだけ視線を合わせるようにして、やわらかい表情や態度で接するようにすると安心してもらえるでしょう。

叱らない、否定しない

記憶障害や実行機能障害があるため、間違っていることを指摘されても、何が間違っているのか理解できずに混乱してしまうことがあります。また、非難されたと羞恥心を感じさせたり、自尊心を傷つけたりしないような配慮が必要です。

妄想については、まずは否定も肯定もせずに話を合わせます。その後、さりげなく話題を変えてみたり、場所を移動して気持ちを変えてもらったりすると良いでしょう。

安心してもらう

例えば、デイサービスに行く際に、行き先を説明せずに車いすに乗せるなど、「さっき伝えたから」、「どうせ忘れるから」、「いつもと同じだから」と、説明せずに準備を進めてしまうのはNGです。きちんと説明することで、安心してもらうことが大切です。

また、お風呂を嫌がるときにも無理強いはせず、「気持ちいいですよ」と声を掛けたり、脱衣所を暖かくしたりと、安心できる環境を整えてみましょう。

家族がアルツハイマー型認知症と診断されたら

家族がアルツハイマー型認知症と診断されたらどうすればいい?

家族がアルツハイマー型認知症だと診断されたときに、意識したいことを紹介します。

病気について理解しましょう

まずは、アルツハイマー型認知症とはどういう認知症なのかを理解するようにしましょう。本人の変化や行動が症状によるものだとわかれば、対応もしやすくなるでしょう。進行によって起こりえる症状を知っておけば、心構えもできます。

本人を介護するためだけではなく、自分の心を落ち着かせるためにも、病気について理解することは大切です。

今後について話し合っておきましょう

認知症が重度になってくると、家族が代わりに重要な判断をしなくてはいけないことがあります。

アルツハイマー型認知症が軽度のうちに、進行したらどのような介護をして欲しいのか、自宅で過ごしたいのか施設に入りたいのか、誰をキーパーソンにしたいのか…などを話し合っておきましょう。

介護の相談相手を作りましょう

家族の介護は難しいものです。分からないことがあったり、耐えられないことがあったりしたら、一人で抱え込まずに、ケアマネジャーなどの介護の専門家などに相談をしましょう。 介護者同士が集まって情報交換や相談をする「家族会」に参加してみるのもおすすめです。通いやすい地域にある家族会を探してみてください。

また、安心介護の「介護のQ&A」では、匿名で介護の専門家に質問をすることができます。「こんなこと相談していいのかな?」と思える悩みや疑問を投稿してみてはいかがでしょうか。

介護のQ&A | 介護の専門家に無料で相談「安心介護」


レスパイトも大切です

レスパイト(respite)とは、一時中断や延期、小休止などを意味する英語です。介護では、高齢者などを介護している家族が、介護から離れる時間をつくり、リフレッシュしてもらうことを意味しています。

無理をして体調を崩してしまったり、仕事を辞めなくてはいけなくなったりすることがないように、ショートステイや通所介護(デイサービス)などを上手に利用して、介護から離れる時間を作るようにしましょう。

まとめ

アルツハイマー型認知症は、体験自体を忘れてしまう記憶障害が、初期のうちから出てくる認知症です。記憶障害や実行機能障害、見当識障害など認知機能が低下することで現れる中核症状の他に、環境や性格、関わり方によって出てくる行動・心理症状(BPSD)があります。アルツハイマー型認知症は、最も罹患者の多い認知症ですが、進み方や行動・心理症状(BPSD)が人によって異なるため、介護の大変さは人それぞれです。

アルツハイマー型認知症の方の気持ちは、「映画を途中から見ているよう」と例えられます。行動・心理症状(BPSD)を引き起こしたり、症状を悪化させたりしないようにも、接する時に気を付けたいポイントを押さえておくようにしましょう。ただし、長い時間を一緒に過ごす家族にとって、簡単なことではありません。難しい、辛いなと感じたら、介護の専門職や家族会に相談するようにしましょう。

質問にある徘徊は、必ず現れる症状ではありませんが、現れると持続する期間が長い症状です。アルツハイマー型認知症は、穏やかに進行していく病気ですが、次第に失敗やできないことが増え、言葉や笑顔、反応が失われていきます。かなり重度になると、歩くことや座位を保つことが難しくなり、ベッド上で横になって過ごす時間も増えていきます。

進行するにつれて介護が必要になってきますので、今後について症状が軽いうちからしっかりと話し合っておくと良いでしょう。

※この記事は2021年11月時点の情報で作成しています。

 

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医師:谷山由華
監修者:谷山 由華(たにやま ゆか)

医師:谷山 由華(たにやま ゆか)

【経歴】
・防衛医科大学校医学部医学科卒業
・2000年から2017年まで航空自衛隊医官として勤務
・2017年から2019年まで内科クリニック勤務
・2019年から内科クリニックに非常勤として勤務、AGA専門クリニック常勤

内科クリニックでは訪問診療を担当。内科全般、老年医療、在宅医療に携わっている