アルツハイマー型認知症とは?

3大認知症の1つであるアルツハイマー型認知症。認知症という病気の中では比較的聞いたことあるという方も多いのではないでしょうか。今回はアルツハイマー型認知症がどのような病気であるのか、またご家族など身近な人がアルツハイマー型認知症と診断されたときに何をしてあげられるのかについてお伝えします。

 

アルツハイマー型認知症とは?

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アルツハイマー型認知症は最も一般的な認知症で、一昔前まで認知症=アルツハイマー型認知症とされていたほどです。また、アルツハイマー病もアルツハイマー型認知症と同意語となります。アルツハイマー型認知症は認知症の中でも最も罹患者の多い認知症で、2009年の調査では認知症の約50~75%がアルツハイマー型認知症であると報告されています。また、80歳以上のおよそ20%がアルツハイマー型認知症ともいわれています。

アルツハイマー型認知症の原因

アルツハイマー型認知症認知症がどのように始まるかは現在のところもわかっていません。ですが、アルツハイマー型認知症の最たる原因は加齢であるとされています。また、約1%の割合ですが遺伝もアルツハイマー型認知症の原因になるということが分かっています。そのため、超高齢化社会となっている日本では今後もアルツハイマー型認知症は増加していくことが考えられています。

アルツハイマー型認知症の症状

アルツハイマー型認知症でよく見られる症状を項目ごとに紹介します。

記憶障害

アルツハイマー型認知症の特徴的な主症状は物忘れです。これは、脳の中でも記憶をつかさどる海馬という領域が侵されることによるものと考えられています。

記銘力の低下もアルツハイマー型認知症によく見られる症状の一種です。昨日や今日のことなど特に自分が関係したエピソードを忘れてしまうのが特徴です。日時が分からないというのもこの症状の一種ですが例えば、自分が購入したものを忘れてしまい家にあるのを見てこれは誰が買ったのか、などというのが典型的なアルツハイマー型認知症の症状です。また、記憶をとりつくろったり振り返ったりすることもあります。ですが、この時点ではまだ自分も家族も自身が認知症であるとは思っておらずただの加齢による健忘だと思って受診をしないというケースが多いです。また、症状が進行すると最近のことから順に長期記憶が障害されます。

他にも人や物の名前を忘れる語健忘、見たものの距離や方向を判断できない視空間性障害、麻痺がないのに目的とした行動ができなくなる失行、勉強したことを忘れる意味記憶障害に加えて、病識がなかったり意欲が低下したりします。語健忘によって言葉が拙くなり、会話がうまく成立しないということも少なくありません。重症になるとほとんどの記憶が失われてしまいます。

構成障害

構成障害もアルツハイマー型認知症ではよくみられる症状です。時計や立方体など複雑な図形が書けなくなるのが初発症状です。さらに日常で使う道具が使用できなくなる使用障害や複数部品の使用障害、視覚や口頭による命令を模倣できない模倣障害、運動失行の症状が加わります。

着衣失行

中等度のアルツハイマー型認知症でよく見られる症状です。洋服の着方が分からなくなるため、例えばパンツに腕を通す、シャツをはこうとするなどの行動が見られます。

遂行機能能力低下

記憶障害同様に比較的初期に見られる症状です。仕事や家事など日常にできていたことができなくなる症状です。進行すると行動しようとしなくなる発動の低下や同じ動作を繰り替えず保続、何かにこだわる固執、衝動的な行動や自分の行動を抑制できなくなる脱抑制となり、自分で行動を修正することが困難になります。

行動心理症状(BPSD)

イライラする場面が多くなったり些細なことで腹を立てることが多くなったりする(易怒的)、今までの日課をしなくなる、誰もいないのに、何かが見えており何かいると主張する(幻覚)、自分のものを誰かに盗まれたと主張する(もの盗られ妄想)、無目的に屋外に出て歩き回る(徘徊)、これらの症状を総称して行動心理症状といいます。

この行動心理症状はすべての方に見られるというわけではなく、家族など周囲のかかわり方や環境によって強く表れる方もいれば、今まで強く表れていたのに現れなくなるということもあります。

アルツハイマー型認知症の経過

アルツハイマー型認知症は進行するにつれてさらに病識がなくなり、ただニコニコしているということが増えていきます。ですが、進行するにつれて整容、着衣、食事、トイレ、入浴などのセルフケアができなくなります。言葉が理解できなくなり発語もほとんどできなくなります。やがて立つ、座る、歩くなど基本的な運動動作もできなくなり、寝たきり状態となります。

アルツハイマー型認知症の末期としては低栄養や誤嚥性肺炎、脱水、感染症などにより死亡する方が多く見られます。

アルツハイマー型認知症はこの病気自体を根本的に治すための治療法は確立されていません。ですが、早い段階で薬物による治療を開始すれば症状の進行を遅らせることはできます。

DSM-IV分類によるアルツハイマー型認知症の診断基準

アルツハイマー型認知症の診断基準としては以下の診断基準が用いられます。ご自身のご家族及び知り合いがアルツハイマー型認知症なのかどうかと悩まれている方は以下に当てはまるかをチェックしてみましょう。

A. 多彩な認知障害の発現として以下の2項目がみられる
  1. 記憶障害(新しい情報を学習したり、以前に学習した情報を想起する能力の障害)が見られる  
  2. 以下の認知障害と言われるものが1つ以上ある   
    1.  失語(言語の障害)がみられる 例:言葉がうまく話せない、どもる、単語のみしか発せない等  
    2. 失行(運動機能は障害されていないのに、運動行為が障害される)がみられる  例:うまく歩けない、歩き方がぎこちない等  
    3. 失認(感覚機能が障害されていないのに、対象を認識または同定できない)がみられる  例:物の名前が分からない、地名が言えない等  
    4. 実行機能(計画を立てる、組織化する、順序立てる、抽象化すること)の障害がある  例:料理ができなくなる、買い物に行けなくなる(商品をかごに入れる、お金を払うなどができない)等
B.上記の認知障害において、社会的または職業的機能が低下していて病前の機能水準からの著しい低下を示し、病前にできていたことがほとんどできない場合
C. ゆるやかに症状が進行していて、物忘れだけではない、明らかに持続的な認知の低下が見られる
D. 上記Aに示した認知機能の障害は以下のいずれによるものでもないことが明らかである  
  1. 記憶と認知に進行性の障害を引き起こす他の中枢神経疾患  (例:脳血管障害、Parkinson病、Huntington病、硬膜下血腫、正常圧水頭症、脳腫瘍)  
  2. 痴呆を引き起こすことが知られている全身性疾患  (例:甲状腺機能低下症、ビタミンB12欠乏症、葉酸欠乏症、ニコチン酸欠乏症、高カルシウム血症、神経梅毒、HIV感染症)
E. 上記の障害は、意識障害(せん妄)の期間中だけに出現するものではない
F. 他の主要精神疾患(例:うつ病、統合失調症など)の症状ではない場合

以上のA~Fに当てはまる場合はアルツハイマー型認知症である可能性がありますので、専門医による診察を受けましょう。

アルツハイマー型認知症の人への対応方法

アルツハイマー型認知症の方の行動は援助者の鏡ともいわれています。すなわち介護者がイライラとした気持ちで接していれば認知症の方もイライラとした気持ちになってしまいます。まずは認知症の人の見ている世界を理解することが対応としては最も重要です。

そのため、認知症の人が発した言葉に対して話を聞いたり、見ている世界を想像したり反応を見たりして理解を示しましょう。また、すべてをこちらで決めつけるのではなく、あえてご本人にどうしたいかを聞いたり相談したりするのも対応としては良い方法です。認知症の人を全人的にとらえてかかわるということが重要で、その人の人間性や今までの経験などを否定しない関わりが重要です。

特にアルツハイマー型認知症においてはコミュニケーション力の低下がみられます。そのため、コミュニケーション方法については特に注目したいものです。空間や自然、時間などを含む環境すべてがコミュニケーションであると考える事に加えて、表情や声の抑揚、行動、歩き方、身体反応などに現れる意思を把握することでコミュニケーションをとることが可能になります。

さらにアルツハイマー型認知症はいずれは介護が必要となる疾患でもあります。平成19年のデータになりますが、介護が必要となった疾患別に見た結果、介護が必要になった人の14.0%は認知症が原因と報告されています。その半数以上がアルツハイマー型認知症と推測されることからいずれ来る介護の体制に備えることが必要となるでしょう。

介護が必要だと感じたら介護認定を申請しましょう。要介護認定がでれば担当ケアマネージャーに相談しプランを組んでいきます。

もしも施設を探されている場合には、地域密着型サービスである小規模多機能型居宅介護や認知症対応型デイサービスがふさわしいと考えます。特に小規模多機能型居宅介護においては訪問サービス、通所サービス、宿泊サービスなど1つの施設でサービスを多岐にわたって受けることができるため環境の変化によって症状が変化しやすい認知症の方でも安心して利用しやすい施設形態となっています。

まとめ

認知症の中で最も罹患者が多いアルツハイマー型認知症。記憶の障害は自身の生活をはじめ社会生活にも影響を及ぼし結果的に寝たきりなどになる可能性も否めません。しかし周囲の方のかかわり方で症状は良くも悪くもなります。正しい対応法を取得してアルツハイマー型認知症の方のケアができるとよいのではないでしょうか。

対応次第で良くも悪くもなりうるアルツハイマー型認知症。病気について正しく理解し正しくかかわることはアルツハイマー型認知症の患者さんだけでなく介護者や家族にも影響を及ぼします。 アルツハイマー型認知症がどんな病気かまだ分からない、どうやって対応すればいいかわからないという方が周りにいらっしゃいましたらぜひシェアをしていただければと思います。

 

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監修者:春田 萌
監修者:春田 萌

日本内科学会 総合内科専門医、日本老年医学会所属
15年目の内科医師です。大学病院、総合病院、クリニックでの勤務歴があります。訪問診療も経験しており、自宅や施設での介護についての様々な問題や解決策の知識もあります。