成年後見制度とは

成年後見制度とは?

 

 

最近、両親の物忘れが多くなり、認知症ではないかと心配だと感じることはありませんか?

人間は年齢を重ねていくうち、加齢が原因で意思能力が下がっていきます。 個人差はありますが、年齢を重ねれば、記憶力や情報処理能力などが下がるのは、生きている以上、仕方がないことです。

成年後見制度とは、認知症や知的障害、精神障害といったような理由で、判断能力が十分でない、または、判断能力が十分でなくなった人たちが不利益を被らないようにするために設けられた制度です。

高齢者の方が、十分な判断が出来ず、不用意に高額で不必要な物品やサービスの提供を受ける契約をした場合、それを取消ができるようにしておくと、その方の保護に有益です。他方、成年被後見人とされても、日用品を購入したりすることはできます。

また、事故や病気などによって、親族が法的な判断をする能力が無くなってしまったような場合、その親族本人にかわって、法的な事項に関する意思決定をする者がいなければ、社会生活上の不都合が生じる場合があります。例えば、施設に入所する契約を結びたくても、成年後見人が選任されなければ、入所契約もできません。このような場合に、本人に変わって法律行為を行うことができる者を選任する必要性も生じます。

成年後見制度は、法的判断能力が無いか乏しい人の利益を守るとともに、障害のある人もない人も、互いに支え合い、地域で生き生きと明るく豊かに暮らしていける社会を目指す「ノーマライゼーション」の理念とを両立させることを目的としています。

 

どんな人が後見人になるか?

成年後見制度を考えるにおいて、誰が後見人になれるのか、把握しておきましょう。

後見人とは、判断能力に乏しい人(この人は、成年被後見人といいます)の財産を管理する権限を有する人のことをいいます。

後見人に選ばれる人は、被後見人の配偶者や子供などの親族が挙げられます。また、弁護士や司法書士、社会福祉士などの専門家が選ばれることもあります。

厚生労働省より発表された「平成30年度 成年後見制度の現状」によると、親族による後見は全体の26.2パーセント、親族以外の第三者の選任が約73.8%となっています。

以前までは、親族の割合が上回っていましたが、後見人による使い込みの発覚などが社会問題となり、現状では、全体の7割近くの後見人が専門家となっています。

後見人は誰が決めるか?

成年後見制度を利用するには、まず、家庭裁判所に成年後見人を選任することを申し立てることが必要です。

後見人は家庭裁判所によって選出されます。

申し立てができる人は、本人、その配偶者、4親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人、検察官です。

また、法律上の一定の条件を満たしている場合には、市町村長も申立てができます。

成年後見の申し立て書類には、後見人等の候補者を記載する欄があります。ただし、ここに記載された候補者が、必ずしも成年後見人に選出されるとは限りません。

親族が後見人等になれるか?

配偶者や子供などの親族は、成年後見人になることができます。

ただし下記の欠格事由にあたる人は後見人等になうことはできません。

【欠格事由】

  1.  未成年者
  2.  家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、補佐人、補助人
  3.  破産者
  4.  本人(成年被後見人となる者)に対して訴訟をしている者、その配偶者、その直系血族
  5.  行方の知れない者

法定後見人の選任を申し立てるのはどのような場合か?

成年後見人制度を利用は以下のような例が挙げられます。

  • 親名義の不動産を処分して親の老後に備えたいが親の判断能力が欠如して契約が締結できない
  • 不慮の事故で重篤な後遺障害が残り施設入所をしたいが本人に意思能力がないため入所契約が結べない
  • 認知症の進行によって親が独力で法的判断が出来なくなった(もしくは、できない蓋然性が高い)

他にも、料理や洗濯など日常生活を送るには問題ないけれど、金額の高い買い物をするときや、契約を交わすときなど、親の判断能力の低下が顕著であるときには、保佐人や補助人の選任を検討することが考えられます。

判断能力が低下してしまうと、不必要な商品を頻繁に購入してしまうことがあります。高額で不必要なものを大量に親が買ってしまう、そのことを注意しても再び同じことをしてしまう、このようなことが続くようであれば、医師の診察を受け、判断能力の低下が認められれば、「成年後見制度の利用」について検討してみても良いでしょう。

法定後見制度と任意後見制度

法定後見人制度のほかに、任意後見と言う制度もあります。

法定後見と任意後見には、いったいどんな違いがあるのでしょうか。

 任意後見制度とは,本人があらかじめ公正証書で結んだ任意後見契約に従って,本人の判断能力が不十分になったときに,任意後見人が本人を援助する制度です。任意後見契約を成立させるには、口約束や本人同士での契約書ではなく、公正証書にすることが必要とされています。そして、家庭裁判所が「任意後見監督人」を選任したときから,任意後見契約の効力が生じます。

 任意後見では、任意後見契約において、予め、誰を任意後見人とするかを定めておくことができます。

 任意後見を利用できる条件として、任意後見契約の締結時に、被後見人になる方の意思能力に問題がないことが必要です。つまり、任意後見契約を結ぶ際には、被後見人は、契約を結べるだけの意思能力を有しているので、自分で自由に後見人を選ぶことが出来るのです。

 また、意後見契約の締結は必ず公正証書によって行わなければならないとされているところ、公正証書を作成した公証人は、作成後遅滞なく、作成した公証人の氏名と所属、証書番号、作成年月日などを、登記嘱託することが義務付けられています。

法定後見制度の種類

先ほどは法定後見と任意後見の違いを説明させていただきました。

次にお話したいのは、法定後見の種類についてです。

法定後見は、被後見人等の症状の程度によって、以下のように分類できます。

① 後見…被後見人

(親)の判断力が常にかけている状態のことを指します。重度の認知症や、寝たきりの状態の方などが当てはまります。

後見人に与えられた権限は以下になります。

【後見人の権限の範囲】

日常生活に関する以外のすべての行為を取消権、財産に関するすべての法律行為を代理権 が与えられます。ただし、「日用品の購入その他日常生活に関する行為」については取り消しできないことが民法に明記されています。

 

② 保佐…被保佐人

(親)の判断能力が著しく不十分であるときに適用されます。日常生活は送っていけるが、財産管理や重要な法律行為に対して、常にサポートが必要な状態のことです。

【保佐人の権限の範囲】

民法13条第1項所定の行為を被補助人がおこなうときの同意や取消権が与えられます。また、本人が同意し、家庭裁判所が認めた一定の法律行為についての代理権も認められます。

ちなみに、民法13条1項は以下のような規定です。

第13条 被保佐人が次に掲げる行為をするには、その保佐人の同意を得なければならない。ただし、第9条ただし書に規定する行為については、この限りでない。

一 元本を領収し、又は利用すること。

二 借財又は保証をすること。

三 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。

四 訴訟行為をすること。

五 贈与、和解又は仲裁合意(仲裁法(平成十五年法律第百三十八号)第二条第一項に規定する仲裁合意をいう。)をすること。

六 相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること。

七 贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、又は負担付遺贈を承認すること。

八 新築、改築、増築又は大修繕をすること。

九 第六百二条に定める期間を超える賃貸借をすること。

十 前各号に掲げる行為を制限行為能力者(未成年者、成年被後見人、被保佐人及び第十七条第一項の審判を受けた被補助人をいう。以下同じ。)の法定代理人としてすること。

 

 ③ 補助…被補助人

(親)の判断能力が日常生活を送るには支障はないが、契約などの重要な法律行為において、判断に不安を覚えるときに利用されます。

【補助人の権限の範囲】

本人が同意し、家庭裁判所が認めた民法13条1項の一部の行為の同意見が与えられます。そのほか、本人が同意し、家庭裁判所が認めた一定の法律行為の代理権も与えられます。

成年後見制度 利用できること、できないこと

成年後見制度にも後見人等が行使出来ることと、できないことがあり、それぞれ下記のようなものです

【できること】

(1)本人の財産に関する法律行為を代理すること(代理権)

(2)本人の財産を管理すること(財産管理権)

(3)本人が行った法律行為を取り消すこと

(4)本人の居住用不動産の処分は家庭裁判所の許可が必要

【できないこと】

(1)日用品の購入という法律行為の取消権(日用品の購入は被後見人であっても自分でできるため)

(2)介護をする行為など等(これは事実行為であって、法律行為ではありません)

(3)医療行為について本人に変わって承諾することはできません

(4)遺言、離婚、養子縁組、離縁など(一身専属権と呼ばれています)

(5)本人の居住用不動産の処分(これを行うには、家庭裁判所の許可が必要です)

 

なお、できないことにある(2)や(3)は、後見人が監護権を持つ親族(親)であれば、おこなうことが可能です。とはいえ、先述のとおり、後見人等は家庭裁判所によって選任されるので、必ずしも監護権を持った人が、後見人等に選ばれるわけではないので、監護権の問題については、今後の課題になるかもしれません。

成年後見制度 手続きの流れ

成年後見制度を利用したい時は、どこへ相談すればいいの?

親の判断能力がにぶり、成年後見制度を利用したい場合、どこに相談をすればよいのでしょうか。

相談方法はさまざまあり、専門家である弁護士や司法書士などに相談するほか、地方自治体の中には窓口を設置しているところもあります。

そのため、まずはお住いの地域に成年後見センターなどの相談できる窓口があるかどうかを確認しても良いかもしれません。

成年後見の申し立ては誰ができるの?

法定成年後見を利用するには、家庭裁判所へ申し立てが必要です。

申し立ては、4親等までの親族、検察官、市区町村長、任意後見人、任意後見受任者、成年後見監督人ができます。

ただ、4親等といってもぴんと来ない方もいらっしゃるでしょう。4親等とはどんな関係性であるのかを以下で確認してみてください。

1親等…親・子供・配偶者
2親等…兄弟姉妹・祖父母・孫
3親等…叔伯父母・甥・姪
4親等…いとこ・大伯叔父母等

成年後見の申立てで必要なものは?

成年後見制度を家庭裁判所に申し立てる際必要な書類は以下になります。

  1. 後見・保佐・補助開始申立書
  2. 申立事情説明書
  3. 親族関係図
  4. 被後見人等(親)の財産目録及び、その資料(預貯金通帳・保険証券・株式、投資信託の資料・負債などのコピー。不動産を所有している場合は3か月以内に発行された全部事項証明書の原本等)
  5.  被後見人等(親)の収支報告書及びその資料(年金など収入に関する資料・領収書などの支出に関する資料のコピー)
  6. 診断書など(成年後見制度用診断書・診断書付票・本人情報シートのコピー)
  7. 申立日から3か月以内に発行した戸籍抄本
  8. 被後見人等(親)・後見人等候補者の住民票または、戸籍の附票

 

成年後見制度を利用するにあたって、収入印紙や切手代も必要になります。代金は申し立てをおこなう裁判所によって異なることがありますので、事前に確認しておきましょう。

さいごに

今回は、成年後見制度についてお話をさせていただきました。

法定後見制度は、親の意思能力が下がっても申請できるメリットがありますが、本人が好きに後見人を指定することができません。

そのため、親が財産管理を親族に任せたいと言ったときには、任意後見を利用することをおすすめします。

ただし、任意後見は親の判断力が鈍くなってからでは認められない可能性があります。 親の判断力がはっきりしているうちに、老後のことなどを話し合い、早め早めに準備をしておいた方が良いでしょう。

実際に親が認知症と診断されてから、慌てないよう事前に対策を打っていけると良いです

 ※この記事は2020年10月時点の情報で作成しています。

 

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監修者:鈴木 一
監修者:弁護士 鈴木 一 (虎ノ門協同法律事務所)

1994.03 青山学院大学法学部卒業
2002.10 弁護士登録(第一東京弁護士会)
2002.10〜2004.05 津山法律事務所
2004.09〜2006.01  弁護士法人渋谷シビック法律事務所
2006.2~  虎ノ門協同法律事務所